竹田恒泰
2024年04月16日
今回はアイヌ話の続き。
【前回】
「アイヌなんていないんだから差別できる訳ない」←存在すら否定する以上の差別ってある?
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/22616963.html
さて、アイヌ関連で調べものをしていたら、たまたま
『真実を探すブログ。科学の中に混ざっているエセ科学、医療の中に混ざっているエセ医療を見抜いて正しい情報を集める』
と謳うブログを発見。
おお、当ブログと同じ方向性。
ええやん!
と思いきや…
ブログの正式タイトル(長い)は↓こうです。
『真実を探すブログ。科学の中に混ざっているエセ科学、医療の中に混ざっているエセ医療を見抜いて正しい情報を集める。コ口ナはでっち上げで茶番。ハプログループの分布 分子構造で見抜ける。』
…批判者ちごてビリーバー側のお方でしたー!
ブログの巻頭言みたいなやつが↓こんな。
『真実部分を集めるブログ。科学の中に混ざっているエセ科学、医療の中に混ざっているエセ医療を見抜いて正しい情報を集める。赤にも青にも加担しない。陰謀論は真相論の場合も多い。内部リークによる「真相」かもしれない。』
『赤にも青にも加担しない』と言いつつ、記事は特定方向に偏りまくり。
アイヌ関係は↓こう。
『中国共産党によるウイグル人への虐殺や生きたままの臓器摘出からの移植などが行われているという情報へのリンクの紹介。偽アイヌの存在についても。』
https://stopbrainhacking.blog.fc2.com/blog-entry-2581.html
『アイヌ人になりすました偽アイヌが利権化して税金にたかっているという情報の続きの紹介。展示されているナイフにOK印があり、岡田製作所の現代のものだった。』
https://stopbrainhacking.blog.fc2.com/blog-entry-2589.html
で、↑この下の方のエントリにはこうあります。
『本物のアイヌ人は本物のユダヤ人で先住民族で、沖縄と同様にハプログループDの遺伝子を持っている本物のユダヤ人かと思います。』
アイヌ沖縄ユダヤ同祖論という独特すぎる主張。
「ハプログループ」という学術用語を持ち出しておいて、結局は根拠もなく自分の主張に牽強付会。
なんやコレ?
しかし驚くには当たりません。
前々から思っていたのですが、実は専門家でもないのに「ハプログループ」という言葉を持ち出す人、大体ヤバい。
「ハプログループ」とは…
まず「ハプロタイプ」という専門用語がありまして、意味は難しいのですが、めちゃざっくり言うと「ある種の遺伝子の組み合わせ」のコトです。
で、あるハプロタイプと似たよーな組み合わせを持つ者たちをまとめて「ハプログループ」と呼びます。
要するに「遺伝子の組み合わせが似てるやつら」のコトですね。
で、遺伝子の組み合わせが異なる様々なグループを比較していくと、
「どうもこの集団はあの集団から枝分かれして成立したみたいだな」
といった系統関係が分かるのですね。
ネトウヨさんは「日本人の起源」とかの話題が大好物なので、すぐ「ハプログループ」という言葉を持ち出し、そこにウヨい主張を絡めだします。
しかしあまり意味を分かって使ってるとは思えないことがしばしば…。
例えば↓このエントリで紹介したネトウヨさんは…
『そんなバカな! 遺伝子と神について』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/9545681.html
…はい、「ハプログループ」使いまくりで、その割に科学性にはとんと乏しいですね。
「ホツマツタヱ」とか出てきちゃうし。
実際、X内を「ハプログループ」で検索し、ちゃんと正しく使ってる専門系のものを除くと↓こんなんばかりです。


突如降り立つ「カタカムナ」「ホツマ文字」「ムー大陸」等のパワーワード。
なぜ科学と超古代オカルトを混ぜる…?
先ほどの「ホツマツタヱ」と全く同じ構図。
こういう人たち、日本人の起源を古史古伝、というか誤史誤伝に求めないと死んじゃう病気か何かに罹ってんの?
…なんかアレなんですかね…?
自分のアイデンティティーを「素晴らしき日本人」と結びつけて肥大化させまくった挙句、普通の「日本人像」ではものたりなくなって、日本人をオカルティックでありえない「超偉大な存在」に仕立て上げなきゃ気が済まない、的な…?
で、科学の権威にも頼って「ハプログループ」とか専門用語を駆使。
でも疑似科学だからトンデモ&オカルト用語も混ぜちゃう、という。
男系天皇を擁護するためにY染色体論とか引っ張り出してきてて、遺伝の仕組みとかまるで理解できてないのが丸出しの竹田恒泰先生も勿論「ハプログループ」ユーザー。

『【コンス鑑定士】竹田恒泰先生が解く! 万世一系のひみつ』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/9322067.html
アイヌ絡みでこういう疑似科学を振り回す輩にほとほと呆れたのか、専門家が論文できっちり批判してるのを発見↓。
【国立大学法人 旭川医科大学】
『DNA解析と「アイヌ民族否定論」:歴史修正主義者 による先住民族史への干渉』
https://amcor.asahikawa-med.ac.jp/modules/xoonips/download.php/2022060201.pdf?file_id=9351
めちゃ面白いので是非。
(23:55)
2021年03月04日
明治天皇階下の玄孫であらせられる竹田恒泰先生は天皇家が男系の万世一系である理由をY染色体にあると主張しておられます。
これがどういうものなのか、先生ご自身のお言葉で語っていただきましょう。
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…な、なるほどー!
なんという自信に満ち溢れたお言葉、なんというシャープで明快な論理性!
流石、皇室の血筋に連なる方は違いますね。
要するに皇室には初代から脈々と受け継がれる万世一系のY染色体があり、これが天皇制の正当性に科学的根拠を与えているのです。
皇室に百済の血が入っているなどという不遜な主張は反日左翼(と雁屋哲)によるデマゴーグに過ぎません。
さらにこのY染色体の継承を断ち切る女系天皇などもっての他。
…でもXとYって性染色体のことですよね…?
ヒトの染色体は23対、そのうち性染色体は1対に過ぎません。
それ以外の常染色体22対は男系からも女系からも半分ずつ遺伝します。
何それ丸ごと無視しとんねん。
そしてそういうコトであれば、百済の血、がっつり入ってね?
いやいやいや、そんなことないですよ。
ほらアレだ、血は1代ごとに半分に薄まるし。
10代先にはおよそ1/1000になるんだし、百済のくだらない血(高度な洒落)なんてほぼ無視できるレベルに希釈されてるんですよ!
…まぁその論理を持ち出せばより古い天皇家の血はもっと薄まるんだけどさ。
あ、そうだ、そこでY染色体ですよ!
Y染色体は男系のみでまるごと遺伝するので、薄まることがないのです。
たま~にX染色体と交差する、つまり混じりあう可能性も捨てきれませんが、そんなのはちょっぴりのことなのです。
ともかく、Y染色体だけは万世一系!
あとはそこに天皇家特有の、なんかこう、日本を総べるに値する特別な形質を持つええ感じの遺伝子が乗っかっていればそれで話は大団円なのです。
…まぁそんなものが存在するという科学的根拠は何ひとつありませんが。
でもきっと乗ってる、日本人ならそう信じようよ、ね?
それくらい、愛国心で目を濁らせればそんなに難しいことじゃないんですよ!
…でもY染色体って染色体の中でも最少で遺伝子は数十個のみ、主な機能は体を男性にするスイッチを入れるくらいで、あとは耳毛遺伝子とかそんなんしかないんじゃなかったっけ?
そんなとこに本当に都合よくミラクルな遺伝子が乗ってるかなぁ…?
仮にあったとして、持ち主をそんなに有利にしちゃう凄いスーパー遺伝子なら、歴代天皇の兄弟やらご落胤やらから下々へと広まって、今ごろは殆どの男性がそれを持っていることになりませんかね?
じゃあ万世一系とは言えないんじゃ…?
そもそも避妊も生殖医療もない時代、天皇家が一度の浮気もなく125代に渡り、系図通りに子を残した、と考えるのは素朴に過ぎる気がします。
マイクル・ドロズニンの『聖書の暗号』というヒット本がありまして、「聖書を特定の方法で解読すると予言が現れる」と主張してるんですが、コレ写本に写本を繰り返してきた聖書が一度の誤りもなく原典通りに写されてきたことを前提にしちゃってるんですよね。
いわゆるトンデモ本というやつですが、天皇家の系図をガチ信じするのってまぁそれみたいなモンですね。
要するに天皇家のアイデンティティーがY染色体にあるという珍説は、
「Y染色体上にこれこれの特殊な遺伝子があるから天皇家は万世一系」
という科学的仮説であるというよりは、
「どうしても天皇階下は偉大だということにしておきたい!」
という政治的意図を持った人が
「しまった、血は1代ごとに薄まっちゃうじゃん。じゃあ天皇家に固有のサムシングは存在しないことになっちゃうじゃん。困るじゃん」
↓
「ああっ、そういえばY染色体だけは薄まらないよね!」
↓
「じゃあそこに天皇家の正当性があるってコトにすればいいじゃん!」
という、逆立ちした論理によって持ち出してきた言説なのですね。
近代になり、科学の進歩によって神サマの居場所はどんどんなくなってきました。
そこで科学のメスがまだ及ばぬ領域を持ち出して
「そこに神がいるのだ!(…という可能性も否定はできないはず…! 肯定もできないけどな!)」
と宣言しちゃう、あからさまに無理めな論法を「隙間の神」と呼びます。
天皇という「かつて日本に君臨していた神サマ」を「天皇家のY染色体」という未調査の隙間に無理矢理押し込め、「ここに神がおわしたどー!」と叫ぶ、という行為は科学的には完全にアウトです。
なので当初は保守派に人気のあったこの理論も段々と支持者が減り、今や提唱者である八木秀次先生を除けば竹田恒泰先生くらいしか信奉していません。【註】
今ドキこんなトンデモについて語り入れるとか果敢すぎます先生ー!
言いだしっぺが信じるのはまぁいいとして、乗せられているのが他ならぬ天皇家の血を引くことを売りにしている人物のみ…。
ちなみに先生は「皇室の血を絶やさぬために必要なら自分の遺伝子を提供する」という意味のことをおっしゃっています。
なんだか竹田恒泰先生の血筋に対する執着と妙な願望を感じてしまいますな。
あれ?
竹田恒泰先生の主張が胡散臭さ大爆発な代物で、Y染色体にそんなあれやこれやのパワーはないとすると、じゃあ動画で
「ウチのイトコも祖父母から見て息子の子と娘の子は顔が違う」
とか言ってたのはナニよ、ということになっちゃわないですか…?
だってコレ、Y染色体の差が顔立ちにまで影響する、って話でしょ?
フランスの科学者ルネ・ブロンロはX線に続く新たな放射線「N線」を発見したと思い込み、あるはずのないN線を検出してしまいました。
オランダの科学者ハルトゼーカーは精子を顕微鏡で見るうちにその中にホムンクルス(小人)がうずくまっているのを「発見」し、図に残しちゃってます。
誤った理論であってもそれを信じる者にはしばしばそれを裏付けるものが見えちゃったりするのですね。
竹田恒泰先生もこの珍説にのめりこむあまり、うっかりありもしない傾向を見てしまったのでしょうか。
…いや待って下さい、竹田恒泰先生がそんな軽率な振る舞いをされる筈がありません。
竹田恒泰先生の父方の交差イトコと並行イトコは実際に顔が違っているに決まっています。
だとすれば考え得るその理由はひとつ…
「竹田恒泰先生の伯父・叔父たちと伯母・叔母たちはタネが違う」
ということです。
つまり祖母には複数のパートナーがいたということですね。
…やっぱ天皇家に近い血筋でも浮気はありますやん…。
しかももし伯父・叔父たちの方が浮気の子だった場合、竹田恒泰先生は明治天皇の血を全く継いでいないことになります。
やばい、先生のアイデンティティーが大ピンチ!
しかし、この結論を回避する方法もなくはないです。
より単純な説明が可能なのにわざわざ複雑な説明を持ち込むことは「オッカムの剃刀」に抵触するのでできれば避けたいのですが…
「伯母・叔母たち全員が浮気のみで子供を作っていた」と考えればいける!(男性が家庭内で浮気の子を残すことは困難ですからね)。
…余計に家の中が乱れてますやん…。
これらの不愉快な結論を否定したいのであれば、先生は「イトコの顔が男系で女系で違っているというのは気のせいでした」ということを認めざるを得ません。
…という訳でいろいろ問題が多いことがわかりましたが、それでも私の竹田恒泰先生に対する尊敬の念は少しも変わりません。
中学校で習う常染色体と性染色体の区別もついていない癖に自信満々に上から目線で語る先生の動画には笑い死にするかと思うほど楽しませていただきました。
また爆笑動画で私の生活に彩りを添えて下さることを切に願い、今後のご活躍を心よりお祈り申し上げております。
ところで最後にどえらいことに気付いてしまったのですが…
竹田恒泰先生と言えば「明治天皇の玄孫」というのがアイデンティティーの方。
例の裁判でも訴状の原告自己紹介にわざわざ「明治天皇の玄孫」と書かれるほどです。
でも先生って明治天皇の娘の血筋ですよね…?
…Y染色体、受け継いどらんがな!
Y染色体論を持ち出すなら、先生が受け継いだ血統には何の価値もないことになるのでは…?
やばい、先生のアイデンティティーが(再び)大ピンチ!
でもそれって自縄自縛だしなぁ…
(00:04)