石川幹人

2022年07月12日


石川幹人の新刊が出ました~。 
タイトルは『だからフェイクにだまされる』 

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…何ですかこのタイトルは。 
「お前ら俺の嘘に騙されてんじゃねーよ」、あるいは「私は疑似科学に引っかかってます」という自己言及ギャグのつもりなんでしょうか?【※註】 

こういうの、他でも見たことあるなぁ… 
環境保護否定からスタートして、最近ではどんどんネトウヨさん化の道を突き進む武田邦彦はこんな本を出しています。 
『エネルギーと原発のウソを全て話そう』(産経新聞出版) 

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書名で『ウソを全て話そう』、帯で「武田先生、本当のことを教えて!」ですよ…? 
これもう自虐ネタやろ… 

そんな石川幹人ですが、『チコちゃんに叱られる!』で「穴があったら覗きたくなるのはなぜ?」という疑問についても出演していたことは既にお伝えしました。 
詳しくは↓このエントリを参照。 

『石川幹人その6 『チコちゃん』でまたやらかす』 
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/15450692.html

どうもコレ、元ネタがあったみたいです。 
石川幹人は2021年、以前に取り上げた『生物学的に、しょうがない!』の直後に、児童向けの『なぜ、穴を見つけるとのぞきたくなるの? 子どもの質問に学者が本気でこたえてみた。』という本も出していた模様。 

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『生物学的に、しょうがない!』については↓こちらを参照。 

『石川幹人が「進化心理学の第一人者」になってる件(前編)』 
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/13981620.html 

『石川幹人が「進化心理学の第一人者」になってる件(後編)』 
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/13981688.html 
根拠に実証的な実験の一つもないのに、どうしてこの人、やたらチコちゃんに呼ばれるのか、と思ってたのですが… 
このネタに関しては「一応活字になってるので何となく信頼しちゃった」んですかね… 

あとこの本、科学全般の様々な疑問に答えてるのですが…専門分野の超心理学自体がトンデモ、次に手を出した進化心理学は進化論自体をろくろく理解していない、そんな石川幹人にそんなことされてもなぁ… 

あと先ほど触れた武田邦彦も専門は工学系なのに環境問題に嘴を挟み、しかもその内容がトンデモなのに政治にまで口を出した結果がネトウヨさん化…あちゃ~見てられん! 

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別に「専門外のことを言うな」などと主張している訳ではありません。 
専門外でも素晴らしい仕事や発言をしている人は沢山います。私など何の専門家でもありませんし。 
ただ、既に専門外でトンデモな主張をしている人に、さらに別の分野にまで手を延ばされてもなぁ、って話です。 

石川幹人にはさらに『職場のざんねんな人図鑑 ~やっかいなあの人の行動には、理由があった!』(2020年)という著作も。 

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…帯には「ちょっと厄介なふるまいには理由があった?!」とまたして自己言及…?

こちらは『ざんねんないきもの事典』を皮切りに、雨後の筍の如く出版されたざんねん系図鑑のひとつですね。 

出版界には『へんないきもの』以降、ゆるめの動物図鑑はヒットが出たらフォーマット丸パクの便乗本を山ほど出す悪癖があるのです。 
ざんねん系図鑑には「生物に興味を持つきっかけに」という大義名分があり、さらに「生物は全能の神が設計した完璧な存在ではなく、その場しのぎで増改築を繰り返してきた進化の産物で、おそろしく不完全な存在」であることを知ってもらう、という意義があります。 
しかし同時に生物の持つ精緻さへに対する畏敬の念を欠くきらいもあってやや問題。 
面白おかしくするために、無理に生物を貶めた表現もあるし。 
ヒットしシリーズ化もされた類書『わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』に至っては、「オパビニアはデコりすぎて絶滅」などとあって噴飯もの。 
ちなみに竹内久美子の『悪のいきもの図鑑』もそんなざんねん系図鑑のひとつ。 
この人らすぐ便乗本出すなぁ…あ、『悪のいきもの図鑑』も自己言及タイトルなのかも。 

…といった話は↓ココで詳しく。 

【またかよ】竹内久美子2018「リベラルは睾丸が小さく浮気などできない」→竹内久美子2020「睾丸の大きい男は行動も怪しい」…小さくても大きくても何か言われる模様 
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/14117080.html


あと石川幹人、またもや『チコちゃんに叱られる!』に出演(3回目)。 
22年5月6日放送の「なぜ子どもは秘密基地を作りたがる?」という問題に「子どもが秘密基地を作りたがるのは命を守る練習をするため」と回答してました。 
『生物に命の危険が迫ったときの行動』は『戦う』『逃げる』『隠れる』の三択なのだそうです。「相手を脅かす」とか「疑死行動」は無視ですかそうですか。 
秘密基地を作る理由も、「秘密の共有による社会性の獲得」とか「ヒーローのごっこ遊び」「建築への憧れ」「家や部屋を所有することへの憧れ」「保護者に対するプライバシーの希求「自立心の表れ」など、思い付きで良ければ仮説はいくらでも挙げられるのですが、そういうのも全スルー。 
相変わらずです。 
やっぱり正確性に拘る研究者は「〇〇の場合は☓☓という可能性があります」とか、条件付きだったり断言せずにモソモソ歯切れが悪く聞こえちゃいますからね~… 
嘘でも断言するタイプが重宝されがち。 
この混沌とした世の中では、根拠レスでも「これが真実だ!」と言い切る人がもてはやされる、というのはひろゆきや陰謀論に一定の人気があることからも窺い知れますね…。 











【※註:自己言及】 

自己言及とは本来「文がその文自体について言及しているもの」であり、「筆者が自分について言及しているもの」のことではありません。 
例えば「『張り紙禁止』の張り紙」とかが自己言及で、「私はカレーが好きだ」とかは自己言及ではなく自分語りです。 
…が、最近は後者も「自己言及」とされる様になってきているので、その例に倣っています。 


(00:01)

2022年07月10日


『理科の探検 RikaTan』という雑誌をご存じでしょうか。 
大型書店にもほぼ置いておらず、Amazonにすら直接の扱いはありません。 
Amazonマーケットプレイスでは最新号が3倍の値段。 
取り寄せようと出版社に電話してもいつも留守電、という幻の雑誌です。 
どうやって成り立ってるのか不思議ですが、学校や教員が買っているのでしょう。 

編集長は教育学者の左巻健男。 
最近出た『あなたもだまされている 陰謀論とニセ科学』という本を読んでみましたが、スタンスはごくまとも。 

…でも文章が下手~! 
あちこちに書いた文章を再構成する時に推敲が甘かったのか、話の前提が全く説明されてなかったりとかが平気である…。 
さらにおそらくはできるだけ平易な表現を目指した結果、ちょっと頭が悪そうな文体に。 
まぁコレはよくある現象ですね(私も人のことは言えませんが…) 

主に、UFOに関する、疑似科学批判を行っている、藤木文彦も、言ってることは、まともなのに、読点が、多すぎて、とても、頭が悪そうに、見えてしまいます(自己言及文)。 
ついでに言えば私の文章がエントリによって常体だったり敬体だったり統一されてないのは、「常体は偉そうなので避けたいところだが、敬体だと子供っぽくなってしまうと思いました」(自己言及文)というジレンマのせいです。 


話を戻してこの雑誌、年に1~2回は「ニセ科学を斬る!」という特集を行っています。 
最盛期でも隔月刊、今や不定期発行なのに! 
しかも「特集記事が4ページ」という雑誌も多い中、本誌の特集は70ページくらいあったり。 
そして「ASIOS」「と学会」「ジャパンスケプティクス」のメンバーや懐疑主義系の有名ブロガーなど、多岐に渡る執筆陣… 


2018年4月号(通巻31号)の特集「ニセ科学を斬る! 2018」には「反ニセ科学のサイトたち」という記事が。 
執筆は暗黒通信団のシ(原文ママ)。 
暗黒通信団は『円周率100桁表』『素数表150000個』とかの素敵な同人誌を発行しているサークルですね。 
数百円で買える小冊子ばかりですが、同人誌といえどもISBN(国際標準図書番号)を取得しているので大型書店やAmazonで買えるよ。 

同記事のプロフィールによれば… 

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シ 
暗黒通信団の雑文書き。暗黒通信団はただの同人誌サークルで、もともとニセ科学には興味のない団体だったが、EM研究機構の顧問であった人がブログ(http://dndi.jp./mailmaga/mm/mm151209.php)で暗黒通信団を名指し批判し、一気に反ニセ科学に傾いた。 
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…だそうです。 

同記事には多くの反ニセ科学サイトが紹介されており、その中に『疑似科学とされるものの科学性評定サイト』もあります。 
紹介文は↓こんな。 

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♦︎疑似科学とされるものの科学性評定サイト 
http://www.sciencecomlabo.jp/ 
 疑似科学という語はほぼニセ科学と同義である。おそらく「ニセ科学」で検索するとかなりの高確率でこのサイトがヒットするのではないか。文部科学省の補助を受けて、明治大学科学コミュニケーション研究所が中心となって運営されている評定サイトだ。日本語で読めるニセ科学評定サイトとして、たぶん最も有名であり、用語の定義は評定の基準も明確にされていて、本誌編集長の左巻健男も参加している。実際内容のほとんどはおかしくない。 
 ただ注意点がある。このプロジェクトの中心メンバーである明治大学教授の石川幹人の研究は「メタ超心理学研究室」(http://www.isc.meiji.ac.jp/~metapsi/)という。筆者は超心理学は100%ニセ科学だと考える。この評定サイトでは超心理学自体はテーマに上がっていないが、代わりに「ESP」とか「念力」は取り上げられているので「不思議現象」の項目は慎重に読むべきだ。 
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反ニセ科学サイトの紹介なのに、わざわざ『内容のほとんどはおかしくない』『慎重に読むべき』と念押しされ、さらに『超心理学は100%ニセ科学』とまで言われる石川幹人。 
一応はニセ科学批判をしてることになってるのに、お仲間の懐疑主義者サイドから背中を撃たれてるやん…。 

まぁ懐疑主義者たるもの、「ニセ科学は鋭く批判するが、内輪にはその精神を発揮しない」というダブスタでは困る訳で。 
懐疑主義団体のASIOSが石川幹人をリサーチ会員に据え、無批判なのがおかしいんですけどね。 
無批判というか、「石川幹人を批判した人が逆に批判されて出て行った」という…。 



【参照】 

この辺の問題については以下を参照。 

『石川幹人がASIOSにいる件 石川幹人その4』 
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/14029401.html




【付記】

『理科の探検 RikaTan』はいつの間にか休刊してた模様。
擬似科学特集号は全て(7冊もある)購入できてよかったです。



(00:04)

2022年07月06日


【これまでの石川幹人シリーズ】



◉石川幹人が「進化心理学の第一人者」になってる件(前編)

http://wsogmm.livedoor.blog/archives/13981620.html


◉石川幹人が「進化心理学の第一人者」になってる件(後編)

http://wsogmm.livedoor.blog/archives/13981688.html


◉超能力は進化するか? 石川幹人その2

http://wsogmm.livedoor.blog/archives/13981705.html


◉話のレイヤー 石川幹人その3

http://wsogmm.livedoor.blog/archives/14029379.html


◉石川幹人がASIOSにいる件 石川幹人その4

http://wsogmm.livedoor.blog/archives/14029401.html


◉ASIOSの愉快な仲間たち 石川幹人シリーズ番外編

http://wsogmm.livedoor.blog/archives/14029805.html


◉「ヒューマニエンス」嘘回の嘘 石川幹人その5

http://wsogmm.livedoor.blog/archives/14030240.html





またしても石川幹人が『チコちゃんに叱られる!』に出演。 
またしてもやらかし発言。 

2022年4月22日放送回、お題のひとつが「穴があったらのぞきたくなるのはなぜ?」でした。 
それに対する石川幹人の解答は、 
「穴の中に良いものがあると刷り込まれているから」 
というもの。 


…いや、生物学で「刷り込み」と言えば、普通はインプリンティング、つまりは学習のことでしょ… 
Wikipediaの説明によれば↓こう。 

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刷り込み(すりこみ、imprinting)とは、動物の生活史のある時期に、特定の物事がごく短時間で覚え込まれ、それが長時間持続する学習現象の一種。刻印づけ、あるいは英語読みそのままインプリンティングとも呼ばれる。 
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石川幹人の言い方だと、学習の成果が遺伝してるみたいに聞こえるんですけど。 
獲得形質の遺伝はとっくに否定されてるのに。 

番組内での発言は↓こう。 
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(石川幹人) 
穴があったらついのぞいてしまうのは穴の中に良いモノがあるかもしれないと生まれる前から刷り込まれているからなんです。 
私たちの先祖がまだ狩りをしていた時代の生物学的本能が今でも残っているんですね。 

(中略) 

(ナレーター) 
今からおよそ100万年前、人類の祖先が命がけで野生動物を捕獲し生活していた時代、その狩りで学んだことは、穴があればまずはのぞいてみるということでした。 

(石川) 
食べ物を探しに行くと、木の幹や地面に穴がありました。 
穴をのぞいたところ、そこは生き物のすみかで、簡単に小動物を見つけることができたのです。 
穴をのぞくと良いモノが見つかるかもしれないという好奇心がある人が食料を見つけやすく、生存競争に勝てたのです。 

(ナレーター) 
生きのびるために穴をのぞく、この本能が私たちにも受け継がれていると先生はおっしゃいます。 
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…やはり『刷り込まれている』『その狩りで学んだことは』と、学習ベースの表現が… 
一方で「進化心理学者」の割に、自然選択への直接的な言及は全くありません。 
一応『生存競争に勝てた』『この本能が私たちにも受け継がれている』と、自然選択の基盤である「生存率の差と遺伝」に言及してはいますが… 
普通、誤解のない様に「獲得形質の遺伝」めいた表現は避けて、「自然選択」を強調するよね? 

これまでの検証からも石川幹人は進化論をちゃんと理解してないことが窺えるので、今回のも「誤解を与える表現をしちゃってる」というか、それ以前に「ご本人があまり解ってないんじゃ…?」という印象。 

そもそも「穴があったらのぞきたくなるのは、中に良いものがあると刷り込まれているから」というのは石川幹人がそう主張しているだけ… 
そういった形質に遺伝的基盤があるとか、進化心理学的な論文があるとかいった裏付けは何もありません。 
今回もかよ。 

あるいは逆に、「穴を覗く」という行動は100万年前というごく最近の先祖に由来するのではなく、(例えばシロアリ釣りをするためにアリ塚を覗くチンパンジー等)ヒトがヒトになる以前に出現し維持されてきた行動なのかもしれません。 
多くの種にごく普遍的に見られる形質である可能性もあります。 
…が、石川幹人はそういうことは考えない様です。 


そのかわり、番組ではこんな実験が行われます。 
動物園に覗き穴の付いた箱を設置。 
箱の中には(石川の指示で)ホワイトタイガーらしきぬいぐるみと『本能に忠実ですね』という張り紙が。 

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…しかし誰も覗かずスルー。 
箱に『覗かないでください』と大書された張り紙をしたら、ようやく覗く人がいくらか出現。 


…いや、ソレだともはや「穴があると覗きたくなる」実験じゃなくて、「禁止されると却ってやりたくなる」というカリギュラ効果についての実験やろ。 
しかし石川幹人はこの件に関してどこ吹く風で 
『好奇心が高い人は、禁止されるとより好奇心が大きくなってなおさら覗いてしまう、本能に忠実な人と言えるかも』 
と言い放ちます。てきとう~! 


「のぞく人が少なかったのは、動物園では他に興味をひかれるものがたくさんあるからでは?」 
ということで商店街でも実験を続けますが…やはり完全スルーされ、張り紙作戦を展開。 

…で、この商店街の実験、箱の後ろに等身大のネコキャラ人形があるのが気になります… 

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調べてみたところ、戸越銀座商店街のゆるキャラ「戸越銀次郎」でした。 
商店街の案内所「ほっとスポット」前に設置されてる模様。 

…つまり穴を覗きに行くと、中にホワイトタイガーがいたり、背後に人間サイズのネコがいる訳ですね。 
とっても危険。 
大型のネコ科動物は、先史時代には人類の主な天敵ですよ…? 
なんか子供を抱えて中を覗かせてる親もいるし。一家4人で動物園か。おめでてーな(なつい)。 

実際、穴を覗くことには「食べ物が見つかる」というメリット意外に、危険との遭遇というリスクもあり、両者はトレードオフ(交換取引)関係にあったりする筈ですが、石川幹人がその辺を考慮した形跡は全くありません。 

海外ドラマ『ビッグバン☆セオリー ギークなボクらの恋愛法則』でも、天才博士のシェルドンが 
「僕の叔父さんは煙突の掃除をしていてアナグマに襲われて死んだんだ。獰猛な動物に素手で挑む様な、うかつな遺伝子が僕にも受け継がれてるかもしれない」 
みたいなことを言って心配するシーンがあります。 

穴を覗く時も、穴を覗くことの適応的な意味を語る時も、もうちょっと慎重にした方が良くないですかね…? 





(00:02)

2022年03月31日


さて、ここしばらく連続で石川幹人について批判したり、NHKの『ヒューマニエンス』に見られる問題を扱ってきた訳ですが…
遂に『ヒューマニエンス』の「“嘘” ウソでわかる人間のホント」(2022年3月10日放送)という回にかしこブレーンとして石川幹人が出演。 
これは以前に出演していた『チコちゃんに叱られる!』の様な雑学バラエティーではなく、れっきとした科学教養番組なので、NHKはさらにギルティ―。 
きっちり 「進化心理学がご専門の明治大学教授 石川幹人さん」 と紹介されてました。 

さらに今回も、 
◉『もし日常的にウソをつくと、そういった協力関係が破綻してしまいまして、集団の活力を失ってしまいます』 
◉『(ヒトは狩猟時代に)少人数の集団で協力して生活をしていました。食べ物も少ないのでお互い協力して分担してうまく狩猟や採集ができると。そういう集団が生き残った、ということになるんですね。どんな集団が生き残るかというと、やはり他者を信頼して嘘をつかないと。こういうことが大事だっていうことなんです。』 
◉「そういった嘘に関するバランスの良い人々が協力集団を作って、そういった協力集団が今日まで生き延びてきて、我々はそういった人々の末裔だという事ですね」 
などと発言。 
だからそれ群選択やて。 
詳しくはこの↓エントリを参照。 


【ありとあらゆる全般的ぐちゃぐちゃ】
『石川幹人が「進化心理学の第一人者」になってる件 前編』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/13981620.html


今回はさらに「嘘の起源は一万年前の農耕革命によって人口密度が上がり、知らない人と付き合いだしたからでは」的な発言も。 
…いや、嘘はチンパンジーかてつくやん? 


【THE SANKEI NEWS】 
『【もう一人のあなた 嘘の構図(4)】チンパンジーは仲間をだましニヤッと笑った… 他者の心が分かる知性と表裏一体の「進化の副産物」』 
https://www.sankei.com/article/20150409-4GFIPFIBOJNMLDDKJ25ZDU3M4I/?outputType=amp

しかも嘘が選択によって獲得された能力であることを認めてる割に、その起源が一万年前からって…自然選択の働く時間ないやん。 

例えば、クリストファー・ライアン&カシルダ・ジェタの『性の進化論 女性のオルガスムは、なぜ霊長類にだけ発達したか?』では「一夫一妻制の起源は農耕革命以降」という、ちょっと見は似た仮説が唱えられているのですが… 
こっちは「ヒトは自然状態では一夫多妻制や乱婚制がデフォ、一夫一妻制は農耕革命以降の文化的流行に過ぎない」という話で、ここ1万年の間の急速すぎる進化は前提になってません。 

地質学的にはごく最近のことまで全て選択で説明しちゃうのは、竹内久美子くらいだと思ってたのに…石川幹人よ、お前もか。 


ヒトは表情のわかりやすい顔を進化させ、よりコミュニケーションの得意な動物になりました。 
そしてドーキンスとクレブスによれば、そもそもコミュニケーションの本質は「信号伝達」ではありません。 
そこには常に嘘によって利益を得たいという誘惑があります。 
しかしコミュニケーションの本質は「欺瞞」でもありません。 
それは正直な信号伝達が利益になるなら正直さを、欺瞞が利益になるなら嘘を選ぶ「操作」なのだ、というのが二人の結論でした。 
つまり「嘘」なんてのは、初めからコミュニケーションに織り込み済みなのですね。 
なので私は「嘘の起源は1万年前」とか言われても信じる気になれません。 


そして「嘘を見破るのが苦手」な我々はどうすればよいのか? というクエスチョンに、石川幹人が持ち出した答は…『懐疑の精神』。 
…一応は懐疑主義団体ASIOSに名を連ねてるとはいえ、超絶おまゆう。 


ちなみに他のかしこブレーンの話は面白かったです。 

まずは文教学院大学の村井潤一郎教授のお話。 
◉嘘と感じる理由は、 
 ・状況証拠 40% 
 ・その人への知識 30% 
 ・行動的手がかり 7% 
  で、しぐさ等の行動的手がかりはあまり使われない 
◉「ヒトが嘘を見破る正確さ」は、2000年代に出たメタ分析による有名な論文によれば54% 
◉嘘をついてる時に「視線が増える」という研究もあるが、減るという研究もある 
◉教授が大学生にアンケート調査した結果では、一日に嘘をつく回数は男性1.57回・女性1.96回。 
 しかし嘘を言われたと感じるのは男性0.36回・女性0.36回。 
 つまり嘘の多くはバレてない。 
◉ヒトは初期条件としてコミュニケーションの相手が正直であると仮定する(トゥルース・デフォルト)。 

「トゥルース・デフォルト」は興味深いですね。 
そう、問題は「何故ヒトは嘘をつくか」ではなく、「何故ヒトはもっと嘘をつかないのか」とか「何故ヒトは相手の話をとりあえず真実と見做すのか」の方なんですよ。だって嘘はコミュニケーションの本質に組み込まれてるのだから。 

こんな優秀な人が石川幹人の不誠実さを見抜けなかったのも謎ですが、まぁ嘘を見抜ける確率は54%でしかないらしいし、仕方ないですね。 


あと京都大学の阿部修士准教授によるコイントス実験の話が面白かったです。 
被験者は結果を心の中で予想してからコイントスし、当たってかどうかを申告する…これを繰り返す、というシンプルな実験。 
この実験が巧みなのは、嘘をついてるかが判る点です。 
コイントスの予想的中率は50%なので、それより大幅に多く的中申告する人は嘘を言っている蓋然性が高いですよね。 
そして報酬系である側坐核の働きが高い人は、的中率が高いのだそうです。 
つまり報酬に対する感受性が高い人ほど嘘をつきやすい、ということ。 

…コレ、ESP擁護派の石川幹人は、 
「側坐核の働きが高い人は確率を超えて的中率も高い…つまり側坐核こそ超能力の源泉なんだよ!」 
とか解釈しなくていいんですかね? 


あとこの回、ちょけた織田裕二が「嘘はついてません、という嘘をつく」といった小ギャグを噛ましまくってましたが、メタ発言のつもりだったんでしょーか。 

それよりも、先程の「チンパンジーも嘘をつく」という話で貼ったリンク先… 
アレは「チンパンジー 嘘」でぐぐるとトップに表示された記事なのですが、 
◉媒体が産経新聞 
◉研究してるのが京大霊長類研究所、コメントしてるのが松沢哲郎 
というところに戦慄。 
産経新聞社は歴史修正主義的なトンデモ企業。 
そして松沢哲郎って…研究資金5億円の不正支出で懲戒解雇された上、名門・京大霊長類研を解散に追い込んだ戦犯やんけ~! 
ちなみに京大前の古書店に、この人が他の研究者に贈ったサイン入り著者謹呈本があったのでGET。 
ため書きがあるので、叩き売った研究者の名前も丸わかり…。 

嘘を語る番組にあまり正直と思えない人が出ていたので調べていくと、こちらのソースにも背後に嘘や裏切りが…! 
地獄。 
こっちの方が織田裕二のギャグより遥かにメタ構造でした~。 




【オマケ】 

『ヒューマニエンス』、「“顔” ヒトをつなぐ心の窓」( 2021年12月2日放送)という回では 
「嘘は微表情で見抜ける」的な話をしていたのにねぇ…… 
そっちの方では元・京大総長の山極寿一が「ヒトは白目があるから表情によるコミュニケーションが発達した」的な話をしてました。 
こういうのはお互いがお互いを強化し合うサイクルだと思いますが、それでも順番から言えば「ヒトは表情によるコミュニケーションを発達させる方向に進化したから、視線方向が分かりやすい様に白目が目立つようになった」の方が適切では…逆~! 
そういやこの人も京大霊長類研の出身だな~… 





(02:26)

2022年03月30日


…さて、前回ワカシムという名が出たのでちょっとその辺の話を。 

その前に。 
ここしばらく、私自身が尊敬してやまない人々に結構、弓曳いちゃってる訳ですが、コレほんとに本意じゃないのよ。 
でもね、科学と懐疑主義の自浄作用として、あるいは記録として、誰かがやらなきゃダメな訳ですよ。 
とは言え、そもそも私みたいに知性に限界がめちゃめちゃある人間がこんなことするの、無理あるし。 
かといって本当に知的な人にこんなことにリソースを割いていただくのも何だし。 
私としても無理してやってることなので、「こいつレベル低っ!」と思われる向きは、もっと知的レベルの合う場を探した方が賢明かと。 
発表してる以上 責任は取りますが、あまり高度なことを期待されても困っちゃう。 

で、ワカシムという人なのですが、いろいろ書きづらいのです… 
何しろご本人のサイトから何からほぼ消えてて、記憶に頼らないと仕方のない部分が多く、ソースが示せないんですよね…でも頑張る。 

ASIOS公式サイトの「メンバー情報」によれば↓こう。 

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若島利和(Wakashima, Toshikazu/客員) 
ASIOS創立時副会長。2009年から客員に移行。個人サイト「懐疑論者の祈り」を運営。2011年に重篤な若年性脳梗塞で入院後、奇跡的なレベルで回復したが半隠居中。現在、一般社団法人超常現象情報研究センターの事務局長を務め、超常現象とされる主張の信頼度を査定し、国内外の関連情報を収集整理している。
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…ということで、大病をされたのですね。 
サイト『懐疑論者の祈り』も消滅してしまいました。 
mixiもやっておられましたが、今は廃墟状態です。 

そのmixi、時々拝読していたのですが、ある時、急に 
「日本は韓国にやられまくってます! これは妻とも話し合った結論です」 
みたいなことを書き出され… 
その時は、まぁネトウヨさんみたいなのではなく、単に韓国の政策を批判したものかと思っていたのですが… 

前回もふれた「ながぴぃ」こと長澤裕は↓こう指摘しています。 


【Skeptic's Wiki】 
『「ながぴい」こと長澤裕による「ASIOS」の項』
http://sp-file.qee.jp/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?page=ASIOS 

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若島利和氏は「一般社団法人潜在科学研究所」事務局長の肩書きで、「幸福の科学」が出版する「ザ・リバティ」2014年10月号において、「健全な懐疑派は強引な否定論に批判的」というタイトルのインタビューに応じている。 
また、「懐疑論者の祈り」のサイトには以下のような懐疑論とどういう関係があるのかよくわからない内容のコンテンツもある。 
「フジテレビ韓国偏向問題抗議及び周知デモの実態と正当性」 平成23年12月10日 ワカシム(HN)以下15名, 懐疑論者の祈り 
このうち特に「添付⑥:抗議資料『フジテレビドラマに散見される反日演出』」というのは、懐疑論とは本来相容れない内容だと思う。 

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…「フジの偏向ガ―!」ですか…わりとわりかしですね~… 

で、mixi絡みで奥様の話が出たので触れておくと、この方もASIOSメンバーです。 
ASIOS公式サイトの「メンバー情報」によれば↓こう。 

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若島美穂(Wakashima, Miho/客員) 
Webサイト「気になる資料室」の元運営者。旧名・那須野。2008年12月に若島利和と結婚。多忙につき2009年4月より客員に移行した。一般社団法人超常現象情報研究センター会員。
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この方は「NAZOO」名義で『気になる資料室』というサイトを運営されていましたが…こちらも今はありません。 
そしてこのサイト、めちゃめちゃ面白かった! 
特に様々なオーパーツの正体を暴くページはそのまま出版していただきたいレベルで、失われたのは本当に痛手。 
さらに「ミイラ船 良栄丸」「ソニー・ビーン一家」などの奇談も充実。 
特に「タイタニック号とオリンピック号のすり替え説」はここで初めて知りましたが、あまりにも都市伝説っぽい話なのでにわかには信じられず、当時ぐぐってみたけど何も見つからなかった覚えがあります。 
このサイトが日本で最初の情報だったのでしょう。 

しかし結局のところ、タイタニック号すり替え説は根拠となる「二隻は窓の数が違う」という情報がガセでした。 
どちらの船も途中で窓の数が変更されたため、窓が少ない時期と多い時期があった様です。 
またソニー・ビーンの方も、実在を証明する書類の類が見つからないという謎… 
結構やらかしてますね。 

『気になる資料室』はリンク切れになりましたが、分室だけ残ってました。 

【気になる資料室 〔分室〕 職員のサボリ部屋】 
http://nazoo.blog18.fc2.com/ 

そしてワカシムの『懐疑論者の祈り』も一部が↓ミラーで残ってました。 


【懐疑論者の祈り】(ミラーサイト) 
https://geolog.mydns.jp/www.geocities.co.jp/wakashimu/ 



ながぴぃが指摘した部分は↓ココ。 


【懐疑論者の祈り】 
[フジテレビ韓国偏向問題抗議及び周知デモの実態と正当性 
添付⑥:抗議資料『フジテレビドラマに散見される反日演出』]

上記リンク先からは入れませんが、下記URLから入れる模様。

https://geolog.mydns.jp/www.geocities.co.jp/wakashimu/hoki06.html 

そしてココ↓によると… 


【懐疑論者の祈り】 
『プロフィール』 
https://geolog.mydns.jp/www.geocities.co.jp/wakashimu/prof/prof.html 

…職業犯罪者という異例の出自。 


ちなみにASIOSは原田実や故・志水一夫もリサーチ会員です。
原田実については以前に扱いました。 


【ありとあらゆる全般的ぐちゃぐちゃ】
『原田実の微妙なポジション』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/12835457.html



志水一夫は「夜帆」という名でmixiをやっておられましたな。
優れた著作から懐疑主義者だと思っていたのですが、亡くなられた時の山本弘のコメントで実はビリーバー側の人物であったことを知りました。 
まぁどの様な信念を持っていようが、事実と根拠に基き論理的に考え、不適切な仮説をちゃんと排除できるなら文句はないです。 
志水一夫はそういう人物だったし、そういう意味では懐疑主義者であったと思います。 

…が、原田実・志水一夫は素晴らしい仕事をしていながら、元「つくる会」会員なんだよなぁ…。 
二人ともビリーバー出身という異例の経歴だし。 
そしてワカシムも異例の経歴に嫌韓という極右属性…この界隈、何かあんのか…? 



全方向に喧嘩を売り過ぎたのでちょっとフォロー。 



志水一夫はカメラを「キャメラ」、キャスターを「アンカーマン」と表記するなど、言葉に神経質な人でした。 
それが女性アイドルや女優の名を表記する時は「○○さん♡」とか書いてて、おたくへの同属嫌悪でぞわっとしたものです。

…が、その辺はガチガチの科学主義&左寄り、という、志水一夫の対極にいる山本弘も同様で、トンデモさんを嘲笑する時に
「ぎゃはははは!」とか書いてるのにぞわぞわ。 
まぁネット用語とか多用してる私も誰かに同じ目で見られてるんだろうけど。 

あ、フォローのつもりで余計に敵を増やしてしまいましたかね? 
でも山本弘への尊敬の念はガチですよ! 
この方もご病気されてるので、これまで様々な作品で楽しませていただいたお礼に、一万円くらいなら余裕でカンパしたい…
どっかで課金できないんですかね? 
ご本人は覚えておられないでしょうが、某イベントの打ち上げで一緒に無料の素麺(通称フリーソーメン)を食べたり、隣の席で一つ皿の料理をつつき合った仲だし。 
あの時は「うわぁ、コレ実質ディードリットと間接キスやんけ!」とどちゃくそ興奮しましたよ!(←クソバカ) 


政治が絡む問題は難しいものです。 
先ほど触れた原田実に関する日記を読んでいただければ分かる様に、ともに超有能な懐疑主義者である山本弘と原田実の間でも、南京事件については意見が一致しません。 
価値観が人それぞれなのは当然としても、事実を巡ってすら一致しないのです。 
歴史修正主義者やトンデモさんは引き分け狙いで両論併記に持ち込もうとするため、本来はこういう扱いはしたくないのですが、山本弘と原田実のどっちが正しいにせよ、片方は間違ってる訳です。 
名うての懐疑主義者と言えども、イデオロギーの影響は拭い難いものなのですね。 
払拭しきれないまでも、せめてそのことには我々は自覚的になるべきでしょう。 



【オマケ】 

『懐疑主義者の祈り』ロゴ部。 
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…うわぁ。 
単なる差し色かと思いきや、よく見たら日の丸やん。 

さすが懐疑主義にイデオロギーを持ち込んでいる、と指摘されるだけのことはありますね! 



(05:47)