民俗学・民俗学・文化人類学・考現学

2022年10月08日


「件」シリーズ第4回。


『件(クダン)の噂』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/16462705.html

『件(クダン)の噂:2 カタストロフの予言』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/16463367.html

『件の噂:3 異聞』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/16462718.html



(承前)




「件」シリーズ第3回「件の噂:3 異聞」において「牛の首を被せて殺された犠牲者」というモチーフを取り上げた。
それを彷彿とさせる漫画があったので紹介したい。

だが先に多少の解説が必要だろう。



【蘇民将来説話と夏越の祓】

むかーしむかし、あるところに貧しい兄と裕福な弟がおったそうな。
兄の名は蘇民将来(そみんしょうらい)。
弟の名は巨旦将来(こたんしょうらい)。
変な名前の上、ファミリーネームが後に来るとか、どこの国の話やねん…と思うとこじゃが、日本各地に伝わる話じゃそうな。


ある日、ヨボヨボの小汚い爺さんが巨旦将来の家を訪れた。

爺さん「道に迷ってしまったもんで、一晩泊めてはいただけませぬか」

巨旦将来「知らん」


そこで爺さんは蘇民将来の家を訪ね、やはり一夜の宿を乞うた。
蘇民将来は爺さんを泊めてもてなした。


よくある話で、爺さんは異界から来訪してきた人ならぬ存在じゃった。
武塔神(むとうしん)という神様だったんじゃ。
武塔神は言った。
「蘇民将来よ、お前の一族には茅の輪をつけさせなさい。それを目印として命を助けよう。そして茅の輪をつけてない巨旦将来一族は…皆殺しじゃあー!」

武塔神は荒ぶりすぎる、少し残念なタイプの神様じゃった。
蘇民将来は武塔神をもてなしたのに、助命されただけで特に報われることはなかったんじゃと。
そして巨旦将来は別に悪いことしてないのに一族郎党皆殺し…

家族も巻き添えじゃし、茅の輪をつけてない無関係の人まで巻き込まれたかもしれんのう。
こんな危なっかしい奴に関わろうとしなかった巨旦将来の判断こそがある意味正解じゃったかもしれん。

しかしこういうヤベー奴が出た時は祀ることでなだめすかし、クールダウンさせるのは日本人の得意技なんじゃ。


それからというもの、人々は一年が半分を過ぎる6月30日に「夏越の祓え」(なごしのはらえ)として茅の輪くぐりをしたり、「蘇民将来之子孫也」と書かれた札を貼って身分詐称し、神様を騙くらかすようになったげな。

とっぺんぱらりのぷう。


ちなみに「後に再訪した武塔神が、蘇民将来に茅の輪を身につければ疫病を免れると教えた」というマイルドバージョンもある。

武塔神はスサノオや牛頭天王と習合・同一視されがち。まぁスサノオも暴れん坊だしね。
牛頭天王を祀る神社の多くでは6月の「夏越の祓(なごしのはらえ)」の際、「茅の輪くぐり」を行う。
茅の輪は病魔退散・無病息災の呪物なのだ。
有名な京都の祇園祭も牛頭天王を祀るもの。



で、本題の作品紹介。


『八雲百怪』
大塚英志 森美夏

第1話「夏越の祓」


【ストーリー】


ある村を訪れた小泉八雲一行は「よそ者をもてなす風習」により歓待を受け、牛肉を供される。

しかしその村では奇妙な事件が起きていた。
神社に首のない男の死体と牛の頭が転がっていたのだ。
犯人とされたのは山奥に住む牛畜の屠殺人。

事件の謎を追う八雲らは夏越の祓の秘祭を覗き見し、信じられないものを目撃する。
夏越の祓の夜、茅の輪は異界(冥土)への門となるのだ。
村人たちはもてなしていた客人と牛に綱をつけ、茅の輪の向こうに追いやり、その後、引き戻す。
すると「蝿男の恐怖」よろしく、牛と人が混ざって牛頭人身となって戻ってくる。
村人たちは儀式としてそれを殺す。

実はこの村の者は蘇民将来説話に出てくる悪役・巨旦将来の血を引いているため、武塔神に素直にすがることができないのだ。
そこで牛頭人身の「件」を作り出し、牛頭天王(=武塔神)に見立てた。
それを殺すことで「俺らの方が強いんやぞオラ。祟ったりしたら承知せんぞ!」と凄んでみせることで牛頭天王を鎮めていたのだ。

村では伝統的にそれを行っており、それは公然の秘密だったのだが、明治になって駐在が村に来たために殺人事件が発覚。
そこで村人たちは「山の者」にして屠殺人、つまりは被差別民を犯人にでっちあげ、真実を隠蔽していた…。

これが事件の全容である。
ちなみに牛の体と犠牲者の首はどうなったかというと…
それぞれがくっついて人頭牛身の「件」となり、実は今も冥土で幸せに暮らしているのです。






「蘇民将来説話」と「件」を結びつけ、しかも件の牛頭人身バージョン・人頭牛身バージョン両方を説明するという大変クレバーなストーリー。
しかもこのエピソードは第1話なので、各メインキャラクターの能力や動機が断片的に語られており、本当はもっとややこしい構成になっている。

ストーリー担当の大塚英志は大学で民俗学を学んだ後、ロリコン漫画誌「ブリッコ」の編集等を経て現在はサブカルチャーを中心とした評論家・小説家・漫画原作者の三足のわらじを履く、変わった経歴の持ち主。
都市伝説や偽史・オカルトに明るく、それらの「嘘」に民俗学の知識を巧妙に織りこんだ虚実ないまぜの世界観には定評がある。【註1】

〔Wikipedia:大塚英志〕

↓こことか面白いっす。
〔六本木ヒルズで大塚英志が大暴れしたらしい〕
http://chiruda.cocolog-nifty.com/atahualpa/2005/10/post_c459.html



この作品は民俗学三部作「北神伝綺」「木島日記」「八雲百怪」の3シリーズ目。
「北神伝綺」には柳田邦男、「木島日記」には折口信夫、「八雲百怪」には小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が狂言回しとして登場する。
いずれも大塚英志がストーリー、森美夏が作画を担当しており【註2】、絵も非常にレベルが高い。

だが達筆すぎる字がかえって読みにくいのと同様、画風もコマ運びのテンポも独特なその絵は難解なストーリーとあいまって非常に読みにくい。
じっくりと読み、何度か反芻する必要があるだろう。


都市伝説に詳しい大塚英志の作品なので、おそらくこれが「牛の首を被せて殺された犠牲者」という件をめぐる噂の震源地ではなく、むしろ噂を取り入れた結果と思われる。


だがこのエピソード、「肉食」「屠殺業への差別」といった「牛」をめぐるダークサイドにも触れている点に注目したい。





【オマケ】


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画像は京都にある大型精肉店。
屋根の上に牛の立体看板、というあたりがかのミートホープを連想させる。【註3】

私が小学生の頃は大通りから橋ひとつ隔てた川向こう、それも二本の河の合流地点突端の三角形のあたり、というややこしい場所にある小さな店だった。
当時としてはまだ珍しかった様々なホルモンを豊富に扱っていたのを覚えている。

かつて川や橋といえば人間の領域であるムラと人の力の及ばぬ野山との境界であり、境界とはそのまま異界への入り口であると考えられた。
物語の中で、茅の輪が異界への入り口であった様に。
同じことは道の交差点にも言え、とりわけ三叉路は異界につながりやすいとされた。

食肉業は先述の通り不当な差別の歴史を背負っている。
彼らは「河原者」と呼ばれて川向こうに押し込めらる存在だったのだ。
内蔵肉は被差別民のみが口にしたタブーの味である。

川の三叉路その向こうからやってきた、内臓肉を売る精肉店。
異界度マックスのその店に、「件」の足跡を見ることができる。


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人身牛面タイプの「件」。
ちなみに目がロンパリなのはこの店の牛キャラの基本仕様であるが、デザインされたのが狂牛病騒ぎ以降だったら絶対無理なデザインである。



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原住民タイプの「件」。
「戦時中、黒豚と称して原住民を喰った伝説」と「飢饉の村で牛の首をかぶせて人間を食べた伝説」をつなぐミッシング・リンクか?



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「食べてすぐに横になると牛になる」の図?
牛にまつわる文化を全て取り入れるつもりなのかこの店は。

なお、我が家では「食べてすぐに横になると件になる」と言われている(主に私に)。



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うちゅーじんにアブダクトされる牛。
そう、牛と言えばキャトル・ミューティレーション。
これもまた牛をめぐる文化史のもうひとつのダークサイドである。
だがこれで牛肉の広告効果があるのか!?


※【用語解説】

〔アブダクト〕
うちゅーじんによる誘拐。

http://www.paradisearmy.com/doujin/pasok_abduct.htm

…いつからおたく用語に?


〔キャトル・ミューティレーション〕
家畜の死体の一部が切り取られたり血液を全て抜き取られるという異常な惨殺事件。
うちゅーじんの仕業だとさんざん言われたが、ただの自然現象であった。

【Wikipedia】

『キャトル・ミューティレーション』
【アンサイクロペディア】
『キャトル・ミューティレーション』


キャトル・ミューティレーションについて調べていたらこんなボカロ曲を発見。


初音ミク
『恋のキャトル・ミューティレーション』


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

眠れない夜 あの人を想うの 
今頃何してるかな 
誰かと会ってたりして 

小さな胸が 不安で壊れちゃう 
闇にとらわれる前に 
窓を開け 目を閉じて 願いをかける 

ミューティレーション お願い宇宙人 
あの人の記憶に書き込んで 
ずっと二人 千年前からの 
続く愛のメモリー

眠る町並み ぼんやりと見てたら 
51番地の空で 
微かに キラリと 何か光った 

アブダクション お願い宇宙人 
あの人と私を連れ去って 
星座の彼方 銀河の最果ての 
二人だけの星へ

時空を超えて願いよ届け 
宇宙(そら)へ 

ミューティレーション お願い宇宙人 
あの人の体に埋め込んで 
もしも二人 離れてしまったら 
世界を終わりにする爆弾 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

恋の不安感が世界の終わりに直結する見事なセカイ系。

でも体に何かを埋め込むのは「インプラント」な。
ミューティレーションは「切断・切除」だよ!




【オマケのオマケ】

ヴィレヴァンの店頭にいた件。

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【註1:大塚英志】

大塚英志原作の「多重人格探偵サイコ」第一話では田島照宇の実に巧みな絵で都市伝説「だるま女」をモチーフに正面から残酷描写が行われており、これを雑誌で読んだ時の衝撃は今も忘れることができない。
絶対回収騒ぎになると思ったね!



【註2:森美夏】

森美夏は単なる作画を超えた作業をしているらしく、クレジットは「ストーリー構成・演出 森美夏 / 原作・脚本・プロデュース 大塚英志 株式会社ガクソ」となっている。

ガクソは「多重人格探偵サイコ」その他の大塚英志作品に登場する極秘機関の名前なので、氏の会社(事務所?)であろう。

なお、大塚英志は文体も素晴らしく巧い。
「木島日記」の小説版がお薦め。



【註3:ミートホープ】

全く関係ないのだが、京都に豚ミンチのハンバーグを売りにしているハンバーグレストランがある。
豚ミンチに高級な牛の脂で風味付けしているとのことだが、その手法は完全にミートホープだろ。







(00:00)

2022年10月03日


件の話は前回で完結するはずであった。

…が、件をめぐる新たな都市伝説らしきものを発見したので追加する。


ネットで「牛の首」について検索すると

「昔、ある村で飢饉の時に人肉に手を出すしかなくなり、犠牲者の頭に牛の首を被せて殺して『これは牛の肉だ』ということにしてその肉を食べた、という」

といった話がいくつかヒットする。【註1】

だがソースは不明で、実話とは思えない。
そもそも「牛の頭」とやらがあるなら先にそっちを喰えよ、と突っ込みたくなる。【註2】

かといって整合性をとるために「牛の首は張りぼて」とかにすると恐怖半減だし、痛し痒しですな。


そしてこの話、「飢餓でやむなく人を獣に見立てて食べる」という構造が「戦時中南方では飢えた日本兵が白人捕虜を『白豚』、原住民(もしくは黒人捕虜)を『黒豚』と称して喰ってた」という噂と共通している様に感じる。
これが元ネタなのだろうか?

ではこの捕虜食人譚には裏づけがあるのか、というと、これが見当たらない。
どうもこの話、元ネタはドキュメンタリー映画『ゆきゆきて、神軍』で有名な故・奥崎謙三の主張らしい。


【ゆきゆきて、神軍】
http://www.st.rim.or.jp/~r17953/impre/Movie/OKU_1.html



捕虜食人をめぐる話はこのあたり。
http://blog.livedoor.jp/standupjoe1/archives/50560910.html


神軍平等兵・奥崎謙三先生ですかー!?
先生はねぇ…その生き様そのものが作品というか…もう情報ソースとして正確かどうかなんて次元を超越しちゃった存在だからねぇ…。
まぁ水木しげるに「妖怪なんて実在せえへんやろ」と突っ込む人はいない、的な。
また先生は私の中で扱いが政治畑ではなくサブカル畑のため、妙なバイアスが働いてしまうのです…。

『90年代サブカルの呪い』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/10239598.html


なので女装させられて女王様にアナル責めされてた黒歴史とか忘れたくても海馬行き。
藪をつついて蛇を出すというか、「件」をつついてえらいモン出てきちゃったな~…。
ということで真相は藪の中。

ちなみに先生のご自宅は私の祖母の家の近所で、『田中角栄を殺す』等の看板に埋め尽くされた電波ハウスの前を何度か通りがかった記憶が。



今回もいろいろ調べものをした訳だが、検索中ふと気付いた。
例えば「件 くだん」でぐぐるとヒット数が「約128,000件」と表示されるのだが…

じゅうにまん はっせん くだん!

怖ぇ~!









【註1:その肉を食べた】

この話に関するネット上 最古の記録は2001年に2ちゃんねる上に立った以下のスレッドの様だ。

http://piza.2ch.net/occult/kako/986/986546607.html
(現在はリンク切れ)

これが人肉食説の原型か?



【註2:先に牛の頭を喰えよ】

これは「メロンパンは水不足の地域で仕方なしにメロン果汁でパン生地をこねたのが起源」という俗説に対して「パンも作れないほどの渇水なのにメロンは育つのかよ」という突っ込みが可能であるのに似ている。






【オマケ:「件」関連リンク集】


件は江戸のチェーンメールだった
http://ifs.nog.cc/nsrex.hp.infoseek.co.jp/documents/kudan.html


六甲 牛女
http://www.tanteifile.com/onryo/onryo_map/map/hyogo/04.html人面・牛面の両バージョンがあり、他にも件の影響が見てとれる。


六甲牛女は精神病になった精肉業者の娘?
http://kowainews.blog122.fc2.com/blog-entry-250.htmlコレはオカルト色が薄く、ありえる話。
かえってリアル。





(01:42)

2022年09月29日


前回扱った『件』(クダン)の話を続行。


『件(クダン)の噂』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/16462705.html


『妖怪・憑依・擬人化の文化史』という本のコラムにこんな話が載っていた。
要約するとこんな感じだ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2012年5月22日、著者は教育実習中に中学生から「今日、地震が起きるって本当ですか?」という質問を受ける。
事情を聞くと、予言をした子供の噂が流れているのだという。

『障害のある子供が生まれ、3.11ぐーらぐらとうたっていた。それから、間もなく東日本大地震が起きた。その子は次に5.22ぐーちゃぐちゃという歌をうたうようになった』

この手の噂が流行しているらしく、ぐぐってみると類話がいくつも見つかった。
例えばこういったものだ。

『店長が言ってたんだけど、障害ある子どもが3.11よりも前に「311ゆらゆら~」って歌ってたんだって。で、そのあとその子が歌った通り地震きて、で、今その子が「522ぐちゃぐちゃ~」って歌ってるんだって。で、その子だけじゃなくて他の子も言ってるらしい。こわいよ5/22』
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

この手の話は私も目にしたことがあった。
だがよくあるつまらない噂だと思い、完全にスル―していた。
だがこの著者はこの様に指摘する。


『「くだん」の名も、いくつかの要素も抜け落ちてはいるが、件と似た構造を持った流言飛語であることは一目瞭然だ』



…確かに、「異常誕生譚」「必ず成就する予言」という部分は全く同じだ。

それに、牛面人身タイプの「件」の目撃は空襲直後に集中していた。
カタストロフの直後にまたも瓦礫の上に表れた「件」。

人々が願望や恐怖を「噂」に仮託して囁き続ける限り、その眷属は何度でも現れる。


著者はこう締めくくる。

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摺り物、剥製などを媒体に噂にされた妖怪「くだん」。これからはどのような媒体が登場するのだろうか。その時、何を言っているかはわからないが、また「くだん」の如き妖怪は現れると予言をしておく。
 ―—仍て件の如し。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ちなみにこの「件」をめぐるコラムのタイトルは『「くだん」が何を言っているかわからない件』である。
これは勿論、ネットやラノベで流行したスタイルをパロディー化したものだ。
コラム内の小見出しも『「くだん」が現在でも人気の件について』など、同じスタイルを踏襲している。
という訳で私もパロディーでこの話を締めくくろう。


『この「クダン」が、最後の一匹だとは思えない。もし人々の噂が続けて囁かれるとしたら、あの「クダン」の同類が、また、日本のどこかへあらわれてくるかも知れない・・・』


…ダメだ、おっさんだから使い尽くされたネタしか思いつかない。









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【オマケ】


震災後のこの手の噂についてぐぐってみるとこんなまとめが。

【地震】5月22日が危ない?【予知】
http://matome.naver.jp/odai/2133522812018131501 
(現在はサービス終了によりリンク切れ)

内容はかなりメチャクチャ。
例えばこんなのだ。

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5月22日に大地震が起こるらしい

1 :M7.74(埼玉県) 2012/03/19(月) 21:31:23.46 ID:BIu01G/e0
とある養護施設で、東日本大震災が来る以前に生徒達が、「さんいちいちゆ~らゆら」と歌っていたらしい。
勿論、職場の人間は気にしてはいなかったが、その後、東北震災があってから気づいたらしい。そして今度は「ご~に~にぐ~らぐら」と歌っているみたいなんだ。
5月22日はスカイツリーの完成日。
本当に怖いのは、サバス症候群の天才的なところ。
サバス症候群は健常人にあるのに、病気のため欠けている脳の領域を使っているので、物凄く、ある部位だけ発達すること。
果たして5月22日に何かあるのか。

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サバス症候群て…そらサヴァンやろ。


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ごく親しい人からの情報です。 その人が直接、その子供から聞いた話です。
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というのも都市伝説の定番。
FOF(フレンド・オブ・フレンド)と言って、「関係者に直接聞いた本当の話です!」とか主張してても実際に調査するとその「関係者」は「実は私じゃなくて私に教えてくれた人が関係者」とか言いだし、どこまで調査してもその連続で、いつの間にか手繰り寄せた糸は途切れ、結局本当の「関係者」には辿り着かない。

あと


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アメリカのちきゅうのクルーが、見学会に来たおばちゃんと仲良くなって
そっと教えてくれた話しってる?
「5月頃に大きな地震が来るから海沿いに近寄っちゃダメだよ」って話
ここスレ見て思い出した。
探せば出てくるかも!先月どっかで見たよ。

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とか、

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2ch情報ですけど、掘削船ちきゅうの外国人クルーが今年か来年の5月頃東南海で地震があるとか書いていたのを思い出しました。
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とか、地球深部探査船「ちきゅう」の名が出てくるのは人工地震陰謀論の絡みだろう。





(00:03)

2022年09月26日


都市伝説が好きだ。

人面犬だの、口裂け女だのといった個別の物語そのものは他愛もないものばかりでツッコミどころ満載である。
しかし、誰も物語の改変をはっきりとは意図していないにも関わらず、【註1】人から人へと伝播していくに従ってより洗練されていくという、都市伝説が成立する過程には驚異を覚える。

今の様にネットが発達する以前、都市伝説は主に子供たちの口伝えで広がっていくものだった。
テレビや雑誌などのメディアが取り上げないにも関わらず、それは水面下で静かに、しかし速やかに浸透していく。
大人の知らない間に。
だがそこには目的を持って意図的に組織された有機的なネットワークがあるわけではない。
あるのは局所的な人間関係の膨大な連なりだけなのだ。

盲目的でありながら、「小さなコピーミス」と「より怖いバージョンの選択」を繰り返すことで多種多様な物語を生み出す様子は生物の進化にも似ている。
そう、都市伝説はより恐怖を与える魅力的な物語になることでより多くの人に語られ、「人々の脳に自らのコピーを刻み込む」という機能を獲得したミーム(文化的な自己複製子)なのだ。

そしてその様々な物語が実はいくつかの類型的なパターンに集約されていくという、「多様性と普遍性」は神話や説話の構造の様でもある。

私は個々の話よりむしろこの構造や方向性を持たない貪欲なエネルギーの奔流、盲目性に惹かれるのだろう。
そこにはまるで巨大な太古の遺跡を一人ぼっちで歩きまわる様な、畏怖と困惑と好奇心がないまぜになった知的興奮がある。



その流れの中にあって個人的に妙にひっかかり、たまたま目にとまる度に頭の片隅にしまいこんでストックしていた話がある。
それを簡単にまとめてみたい。
なお、私のリサーチ能力はあまり高くないので、不正確だったりもっときちんと元を辿れる部分も多いと思う。
それらに詳しい方がおられたらご教授いただければ幸いである。





『件』(クダン)という妖怪をご存知だろうか。


稀に牛が人の顔を持った仔牛を産むことがあるという。
これが件だ。
件は人語を解し、予言(凶事が多い)をしてすぐに死ぬ。
その予言は必ず当たるという。

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人の顔を持つ牛なので「件」と書き、その予言が間違いなく的中するところから、確実なことを指して「よって件のごとし」という言い回しが生まれた、とも言う。
もっとも、これは後付けの様だ。


件にはいくつかのバリエーションがある。
先に挙げたのは最も標準的なものだ。
他に雌雄一対で産まれ、雄が凶兆を告げ、雌がその回避法を教える、というもの。
人面牛身ではなく、ミノタウルスの様な牛面人身のもの。
「娘が山に棲む獣に孕まされるとその獣の特徴を備えた子を産む。これを件と呼ぶ」という地方もあるらしい。
最後の例は一般的な「件」像から離れて見えるが、半人半獣というモチーフや畸形に対する恐怖は共通している。


都市伝説について語るのに何故「妖怪」などというカビ臭いシロモノを持ち出すのか、と思われるかもしれない。
だが「件」は終戦前後まで目撃談が続く稀有な妖怪であり、【註2】しかもその本質そのものが「噂の伝播」と切っても切れない、優れて近代的かつ都市伝説的な存在なのだ。


件という妖怪は江戸時代に成立したと思われる。
初期には「麒麟」や「白沢」の様に突如として現れる瑞獣として、豊作をもたらす存在だったらしい。
その姿を描いた図は護符としての力があるとされ、厄除けの絵が流行した。
件に関する最初の記録は1827年のもので、「クダベ」という人面の怪物が「これから数年間疫病が流行し多くの犠牲者が出る。しかし自分の姿を描き写し絵図を見れば、その者は難を逃れる」と予言した、という。

それがやがて「牛から産まれ、凶事を予言する」という不気味な存在へと変わっていく。
明治から昭和初期までは温泉街などに件の剥製と称する見世物がかかるくらいメジャーな存在であった様だ。
だがその存在は一度忘れられた。
件を再び有名にしたのは小松左京の小説であろう。

まず前段として、氏の作品に『牛の首』という短編がある。
これは「『牛の首』という怖ろしい話があるのだが、怖ろしすぎて誰も知らない」というストーリー。【註3】
肩すかしの効いたオチである。


そして『牛の首』から数年後、氏は今度こそ本当に、牛の首を扱った作品を発表する。
タイトルは『くだんのはは』。

普通に捉えれば「九段の母」、つまり九段の靖国神社に通う母親という意味で、「息子が戦死した母親」のことである。
…と見せかけて、氏は「件の母」の物語を書いてみせた。

戦時中、芦屋(兵庫にある高級住宅街)に座敷牢に閉じ込められた牛面人身の娘がいた。
それを目撃した主人公に生まれた娘もまた牛面で…というストーリーである。

そんなんただの小説やんけー、と侮るなかれ。
実はこの話、実際に芦屋近辺に流れた噂を基に書かれたものなのだ。


第二次世界大戦中には件をめぐる話は西日本に広く見られたという。
どこそこに「件」が生まれてもうすぐ戦争は終わると言った、とか、おはぎを食えば空襲を免れると予言した、といった噂が人々の口に上った。

昭和の時代に妖怪とは随分アナクロな感もあるが、当時の社会は現在の様に情報化されておらず、また戦時中で言論統制・報道管制が敷かれていたため、人々は正確な情報を得る手段も発信する場もなかった。
そんな状況の中で民衆は自らの願望を件の予言に仮託して囁きあったのだろう。
特高警察は流言蜚語を危険視し民衆の間に飛び交う噂を調査していた。
そのため、それらの記録に「件」をめぐる噂の実態が残ることとなった。


終戦直前から直後にかけては西宮などの兵庫県下での噂が急増する。
この時の「件」の特徴は牛面人身であることで、「牛の首がついた着物姿の娘」とされ、「空襲の焼け跡に牛女がいた」とか「牛女が動物の死骸を貪っていた」という目撃談がしきりに囁かれた。
小松左京の「くだんのはは」もこの時の噂を基にしているのだろう。


近代までその命脈を保ち続けた妖怪、「件」。
だが戦後65年、流石にその噂は絶えて久しい。
変わりに人々の口に上るのは様々な都市伝説だ。

都市伝説は常に生産され続けている。
新たなメディアが生まれる度に、そこにも現れる。
SNSも例外ではない。
日本初のSNS・mixiからも、その流行期に「ヨシムジさん」「地獄●●●」【註4】などの新たな伝説が生まれた。

そんな都市伝説に触れたくてmixiの「都市伝説」コミュに入っていたのだが、ある日こんな書き込みを発見した。


六甲の牛女について詳しく知っている方、教えて下さい



調べたところ、「六甲・牛女」は主に走り屋の間で囁かれる都市伝説で、人面牛身・着物姿の女が凄まじい速さで走り、追いかけてくるのだという。
「いわれは何も説明されておらず、訳がわからないがとにかくインパクトのある女が追いかけてくる」という意味では「100キロばばぁ」に連なる系譜の怪異であろう。

だがその姿は明らかに終戦前後に兵庫で目撃されたという「件」そのもの。
六甲もまた兵庫県の地名だ。

都市伝説…自己複製にこれほど都合の良いメディアがあるだろうか?



「件」はそもそもその登場からして「自らの絵図を写せ」と説き、自己複製を図る「コピー・ミー・コード」であった。
いわばチェーンメールである。

終戦前後、それは人々の願望を拾い上げ、拡大再生産するための「装置」として機能する。

そして21世紀。
現代のフォークロアたる「都市伝説」の中を、「件」は今も姿を変え、疾走し続ける。



時代は変わっても、変わることなく囁かれ、紡ぎ続けられる物語の中に。
あるいは、それを嬉々として語る人々の心の闇に。

奴は潜み続けるに違いない。







スーパーのチーズ売場によく潜んでいる「件」。

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【オマケ】

「件」は一部の人々の想像力を妙に刺激する様で、近年になってからメディアで扱われることが多くなってきた。
私のアンテナに引っかかってきたものだけでこれだけある。

●とり・みき 漫画『件のアレ』『パシパエーの宴』
『件のアレ』は件についての調査をわかりやすくまとめたコミックエッセイ。

●岩井志摩子 小説『依って件の如し』
岡山を舞台にした土着ホラー。
子供が目撃した件の正体は近親相姦中の母と兄。

●大塚英志 漫画『八雲百怪』
牛面人身タイプと人面牛身タイプが両方登場。

●熊倉隆敏 漫画『もっけ』
女子高で件の絵姿をラッキーアイテムとして所持することが流行る、というエピソードがある

●真倉翔 漫画『地獄先生ぬ~べ~』
珍しいパターンの件。
鳥の雛の畸形として誕生・雄が凶事を、雌が回避法を告げてすぐに死ぬ。

●雑誌『幻想文学』56号 特集「くだん、ミノタウロス、牛妖伝説」
めちゃめちゃ濃い大特集。

●映画『妖怪大戦争』
冒頭で件が誕生・予言をするシーンがある。

●ゲーム『せがれいじり』
主人公の乗り物が件。





【註1:誰も改変を意図していない】

「ちょっぴり効果的にしてやろう」「少しオチを変えてやろう」という意図はあっても、最終的に到達する洗練は誰も最初からは意図していないのではないだろうか。



【註2:目撃が続く稀有な妖怪】

河童など現在も目撃例が続く妖怪もいるが、もともとのメジャーさがまるで違う。
また人間には「小さいおっさん」などの荒唐無稽なものを見たり聞いたりするのを好む奇妙な癖がある様だ。
河童は真面目な怪談の担い手としてではなく、こちらの「奇談系」に分類される様に思われる。
一方、「件」には荒唐無稽さと妙なリアリティーが同居している。



【註3:「牛の首」のオチ】

話の筋が落語めいているのでそのへんに元ネタがあるのかと思い検索してみたがよく判らず。
それっぽい話が出てくることは出てくるのだが、むしろ小松左京の作品を落語化した様に思える。
何より、古典落語界からの情報が全く見つからない。


【註4:mixi上の都市伝説】

『ヨシムジさん』
https://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=56999&page=1&id=9665460


(00:00)

2022年09月22日



芸人のキックが人の怪談をパクったと問題になっていますね。

【日刊スポーツ】
『「エンタの神様」で活躍のキックが怪談話を無許可で全パクリ?「著作権侵害の恐れ」番組配信停止』

https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202209140001086.html

まとめると、オカルト業界にも喰い込んでる芸人・キックがTV番組『超ムーの世界R』にて怪談話を紹介。
それに対し作家の小原猛が、

『先程録画したメーテレの番組を見ました。名前からジュールクニチから全部パクリでした。パクリでなければ『沖縄の怖い話』(TOブックス)のそのまんま朗読でした。『超ムーの世界R』シーズン222のサイキック芸人キック氏の話。私は許諾もなにもしておりません。週明けに弁護士と協議の上、正式に訴えることにしました。2018年の放送らしいですが、それにしても丸っとパクっています』

『もう一度言いますが、私は許諾も出しておりません。主人公の名前から何からそのままでいい逃れなど出来ません。あまりにもひどすぎるので、この場を借りてサイキック芸人キック氏には正式に抗議します』


とツイートしたことから問題に発展したものです。
番組も書籍も確認していないので何とも言えませんが、どうもキックがやらかしたっぽい。

しかし怪談というものは通常、「実話」という体で語られるものなのでは…
まぁ仮にノンフィクションであっても著作権は発生するし、法的には作家さんの主張が正しいのかもしれませんが…
実話として発表したのなら、それが「本当にあった話なんですが…」と巷間で語られ、都市伝説となって一人歩きし、やがて何らかの形で別の怪談師の耳に入って(商業的に)語られる様になるのは、普通にありえることなのでは…


この小原猛なる作家、『琉球ニライ大学』に「先生」として経歴が載っています。


それによると…

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小原猛
Takeshi Kohara

1968年京都生まれ。琉球の怪談実話を集めた「琉球怪談」(ボーダーインク)でデビュー。得意フィールドは怪談、妖怪、ウタキなど。他の著書に「鳥肌 ゾーン」シリーズ(ポプラ社)、「男たちの怪談百物語」(共著/メディアファクトリー)、「おきなわ妖怪さんぽ」(ボーダーインク)など

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…やはり『琉球怪談』は実話怪談という体裁。
他の著作も『鳥肌 ゾーン』とか『男たちの怪談百物語』とか、民俗学的な意義から採話・記録したというより、普通に怪談集っぽいタイトル。
コミック版も発見。

【ビッグコミックBROS.】
『琉球怪談』

https://bigcomicbros.net/webwork/6492/ 

うん、普通に怪談ですね。

なお、この小原猛が「先生」を務める『琉球ニライ大学』は学校ではありません。
『琉球ニライ大学』の「理念」によれば…
https://www.niraidai.net/about/about_niradai.html
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「琉球ニライ大学」は、学校教育法上で定められた正規の大学ではありません。琉球列島の島々、そして島に点在する地域=「シマ」全域をキャンパスと見なして、子どもから大人まで、広く一般市民に対して「学び」の機会を提供し、地域密着型の「学びのネットワーク」を創出することを目的としたプロジェクトです。
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…だそうです。

まぁキックがあまりに「そのまんま」のあらびき芸だったんで逆鱗に触れたんでしょうが、こういう胡散臭い業界に身を置くなら、この手のリスクは付き物。

コレ、自称超能力者が別の超能力者に「アイツ、俺の考えついたトリックをパクって超能力披露してるやんけ!」と怒ってるみたいなモンじゃねーの?
もしホンモノの超能力なら、他人が同じ能力を発揮したからって怒る筋合いないやん。
となると元の怪談が実話かどうかも怪しく見えてくるよね~…。

なんかJKと援助交際しようとしてお金だけ持ち逃げされた男が警察に駆け込んだ事件を思い出してしまいました。



そうでなくても怪談にはツッコみどころが多すぎます。

「後で写真を現像してみたらね、こっちを睨んでる女の顔がアップで写ってたんですよ…」みたいなやつ多いけど、ソレはまず写真がないと話にならへんやん…。

あと幽霊ってなんで恨めしそうなやつばっかりなんですか?
他の情動は持ち合わせてないのか…?
逆に、ホルモン等の物質的基盤なしに恨みや復讐心といった情動や欲望が湧くもんなんですかね?
湧くなら、同じ仕組みで食欲や性欲や睡眠欲も湧きそうなものです。

恨みや未練がある者だけが出現できる仕組みなら、「あの世の実在をコッチに伝えたくて未練たらたらの科学者」とか「大爆笑のネタを思いついて、披露するまでは成仏できない芸人」の霊が出てきてもおかしくない筈なのに何故か出ません。 

コッチを脅す気まんまんの霊の場合、もしコッチが幽霊に気付かなかったり途中で引き返しちゃったら、幽霊も肩すかし喰らったみたいな空気になるんでしょーか?

「夜中に学校の階段が1段増える」系の話もよくありますが、誰が、どのような方法で、何のためにしているのか全く不明で意味が分かりません。

まぁこの手の話は際限がなくなるのでこの辺で。


ところで私の妻はホラー映画好きなのですが、良作を見分ける選球眼がありません。
なのでたまたまCMで見かけただけの明らかにハズレ臭いB級ホラーを観たがるので困ります。

しかも大抵オカルトホラー。
アレってオバケの能力が不明で、「どうすれば倒せるか」とかの条件が作り手の盛り付け次第だからなぁ…


という訳で妥協点として、弱点のはっきりしたゾンビものを観ることになりがち。
ゾンビは私も嫌いではないのですが…ハズレ率が異常に高い!
まぁゾンビものは顔色わるめにメイクして「う~あ~」言ってりゃ撮れるので、世界中のお金のないボンクラ映画人が作っちゃうんよね…
そのせいで粗製乱造。

そんな2人ですが、お化け屋敷に入るとgkbrの私が妻の後ろに隠れ、グイグイ前に押し出すので毎回怒られます。
「別に怖くはないけど押されると腹立つ」そうです。
怖くないのに何故ホラー好きなのか…


ところで昔の怪談ってオチが弱いですよね。
なんか不思議なことが起きるだけで終わったりする。

例えば有名な『本所七不思議』。
七不思議といいつつ、バージョンによって話がちがうのでいっぱいあるのですが…。

【置行掘(おいてけぼり)】
夕方、お堀で釣りを終えて帰ろうとすると「置いてけ〜」という声がする

【送り提灯】
夜道に提灯の灯りが見えるが近づくと消える

【送り拍子木】
夜道に拍子木の音が聞こえるが誰もいない

【灯無蕎麦(あかりなしそば)】
夜に蕎麦の屋台が出ているが主人がおらず、灯りも消えている

【足洗屋敷(あしあらいやしき)】
旗本の屋敷で毎晩、毛むくじゃらの巨大な足が天井を突き破って降り、洗ってやらないと暴れる

【片葉の葦】
お堀の葦は片側にしか葉が付かない。ここで女性が片手片足を切り落とされて殺され、お堀に沈められて以降のことだという

【落葉なき椎】
ある屋敷の椎の木は落葉を一枚も落とさない

【狸囃子】
深夜に笛や太鼓のお囃子が聞こえる

【津軽の太鼓】
弘前藩・津軽越中守の屋敷にある火の見櫓には、板木ではなく太鼓がぶら下げられている。なぜかは誰も知らない


…弱い。
話が弱すぎるよ〜…。


日本初の説話集、『日本霊異記』も酷い。
ホラーな話が多いのですが、仏教説話としての色彩が濃いせいか、ちょっと僧侶を軽んじただけで想像を絶する酷い目に遭うなど話のバランス悪すぎです。
ホラー系以外だと、息子を愛してしまった母親が今際のきわに「生まれ変わって結ばれる」ことを誓う…という話があるのですが、この母の誓いがフェラチオしながら発せられるという、驚愕の展開があったり。
そういう方向では意表を突いてくるんだなぁ…。
なお、母親は隣家の娘に生まれ変わって息子と結婚。
ばぶみ溢れる遥か年下の娘…我々日本人の性愛センスはこの頃から突出してますね。

昔の怪談にもよく出来たオチはあるのですが、そういうのは逆に現在まで語り継がれて、都市伝説へと形を変えてたりするのです。
「今度は落とさないでね」系の都市伝説は『六部殺し』あるいは『こんな晩』と呼ばれる古典的な怪談の焼き直しだったり。


という訳で、
「昔の怪談はオチが弱い。オチがどれも凝ってたり捻ってあったりするのは近代になってから」
だと思ってたのですが…

ホラー好きな妻がYouTubeで怪談系動画を流しながら眠るので、なんとなく私も聞く羽目に。
その結果分かったのですが、現代においてもオチが効いてる怪談なんてごく一部で、今でも大半は「ただ奇妙なだけ」なんですよ…

ほぼどれも「…そんな話です…」とかで締めくくる怪談師までいる始末。
それ、オチの無いトークをする若手芸人と同じやん。






(00:22)