批判じゃないよリスペクトだよ

2025年03月13日



古谷経衡の
『シニア右翼 日本の中高年はなぜ右傾化するのか』
を読んでみましたー。


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(※書影は該当書より引用)


以前に好著『ネット右翼の終わり』について取り上げたエントリは↓コチラ。


【保守派が斬る!『ネット右翼の終わり』】
https://wsogmm.livedoor.blog/archives/10240926.html



『シニア右翼』の内容をざっくり要約すると…

◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯
ウヨいシニアが多いっすな。
それは何故かというと…
彼らはネットが発達しまくってから参入したので、「ネットはデマ上等のアングラな世界」だとわかってない。
同じ事は若い世代にも言える(ウトロ放火犯とか黒瀬深とか)。

戦後民主主義を「ふわっ」としか受け止めていないのでYouTube動画一発でヤラレちゃう。
そもそもこの国全体が「なぜあの戦争に突き進んじゃったのか」を総括してないしね。

ネット右翼とは「保守文化人の言説を繰り返してるだけの奴ら」。

本来の保守とはバーク的な漸進主義(「改革は急進的にじゃなくてちょっとずつな!」という考え方)なだけで、特定の党派や政策の支持とは無関係。

【※ブログ主による註】
一部、超はしょります。
ここで日本が戦争につき進んだ経緯についての概観が入ったり。

戦後は復興を急ぐあまり、一度は追放されたはずの旧体制の要人を復帰させちゃったため、彼らを批判できなくなってしまった。

シニア右翼と同世代のシニア左翼がおかしくならないのは、民主主義的自意識を育てあげた成果。
左翼にこそ未来がある。
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯

…と、内容は良い感じ。
そして最後で突然の左翼へのラブレター。
ココもうちょっと詳しく見るとですね、本書は↓こう締めくくられています。

p.286
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 私は現在革新とかリベラルと見なされている政治勢力や、与党であっても個々人の見識ある政治家にはその可能性をわずかに見出している。こういった政党の比例代表における絶対得票数は、日本において真に民主主義的自意識を持った人々が必ずしも死滅していないことを示しているからだ。この勢力を護持し、さらに発展させていくことがシニア右翼に対抗する重要な「拠点」「砦」となりうるのかもしれない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


イチャラブ。愛が重い。

ネットはもともとアングラな世界で、『うそはうそであると見抜ける人でないと(ネットを使うのは)難しい
というのが常識だったのにねぇ、という話は『ネット右翼の終わり』でもしてましたね。

ネット右翼の定義は以前よりシンプル&辛辣になってる模様。

保守の定義については「それなら私も保守というコトになりますけど」って感じ。
まぁバークの言う保守主義は
「ヒトは愚かやし、改革とか計算通りにはいかへんて。歴史の中で使えるコトが証明されてきた、既存のシステムをちょこっとずつ改良していく方がええて」
的なモノ。
コレ、悲観的な私には刺さりまくりなんですけどね。

先ほどの要約紹介ではさっくり割愛しちゃった、歴史を駆け足で説明した部分は、個人的には「ほどよく簡潔に、ほどよく詳しく」概説されてていい感じ。
この辺はあんま詳しくないので勉強になったです。


ついでにちょっと問題点についても触れておくと…

コレはまぁ内容ではなくあくまで表現の仕方の問題なのですが…
さっくり読める前提の新書の割に、無理して難解な言葉を使ってみるも同じ単語に頼りすぎてたり、間違ってたりがちょっと目に付く感じ。

私は読書好きだし、語彙も貧しいとは言えない筈、くらいの自負はあるつもりですが…
「瀰漫」って言葉知らんし、それ以前に読むことすらできひんよ!?
調べてみたら「びまん」でした。
「気分・風潮などが広がり、はびこること」的な意味だそうです。
コレがやたらあちこちに出てくるという。
難解な単語を何度も使い回すと「自分の実力以上に無理して背伸びしてる感」瀰漫しちゃうので避けた方がよろしいのでは。

そしてその割に、文脈的には明らかに「焦眉」と書くべきトコを「愁眉」としている部分が少なくとも2箇所に。(p.57とp.285)

まぁ謎に読みにくいのも『ネット右翼の終わり』と同様。


ちなみに私は読みやすさ優先。
うっかり凝った言い回しで一文が5行くらいに渡っちゃうと、後から3分割にして平易な言葉遣いに書き直したりしてます。
あとスタイリッシュな文体とかは捨て、決まりきった言い回しを多用することで執筆カロリーを抑えてみたり。
長文が多いので、読む側の読書カロリーも低めにしとかないと誰も読まないし。
その分、ひとつでも多くのエントリをアップすることを目指していますので、その辺のあれやこれやは平にご容赦を〜。
…それでも読む気が起きない文体&長文になっててすみません!



あと内容についてなのですが…

戦後民主主義の受け止め方とか戦争への総括とかのご高説はごもっともで、私も深く感銘を受けました。

でもそういうのと関係なく、YouTubeから反ワクとか陰謀論にハマるシニアってめちゃいるじゃないですか。
なので、ソレだけではなく、別の理由もあるよね〜、と思いました(小並感)。


私が小遣いで買った初めての雑誌、それは月刊『ムー』で私は11歳でした。
オカルト知識の味は甘くてクリーミーで、こんな素晴らしい知識を分け与えて貰える私は、きっと特別な存在なのだと感じました。


小学生にしてムー民(月刊『ムー』の読者)やってる痛い子。
オカルトDD (どれでも大好き) で箱推しだったので、ムーに載ってる情報は全てガチ信じ。
なぜならオカルトは科学と同じで、すごい秘密を教えてくれたからです。
知識の高みから全てを見下ろす知的興奮は、科学と等質のものでした。

しかもオカルトや陰謀論は「世界創世の秘密」(やや重言)とか「世界を支配する権力者の真相」とか科学よりどぎつくて、ソコがケミカルな駄菓子のように子供心にメガヒット。
心のベロが人工着色料で真っ赤っかに。

「人類は月に行ってない」と「アポロは月の裏でUFOを見た」とか、相互に矛盾するやつあるやん、と気付いたのは後年です。

やっぱね、非科学的な信念や陰謀論ってキモチイイんですよ。
なのでハマる人の気持ちはめらっさもらっさ分かります。
その辺の陰謀論自体が持つ危険性へのフォローもあると良かったかも。

とはいえ基本的に良書なので、皆さん機会があれば是非。






(00:07)

2022年07月29日


昔は無茶苦茶な性知識がまかり通っていました。
「コーラで洗えば大丈夫」とかね。
近年の性教育本はかゆいところに手が届く作りで、子供たちが陥りがちな「誤解」を解くために様々な知識が与えられます。
よく見かけるのはこんな感じ。


【Q.】 
「オナニーのしすぎでバカになったり、性器が黒ずんだり大きさや形が変わったりしませんか?」 
   ↓ 
【A.】 
「オナニーによるリスクは何ひとつありません。 
外的刺激で性器が変色したり変形することはありえません」 



【Q.】 
「僕のペニスは小さすぎるのでは?」 
   ↓ 
【A.】 
「自分のペニスは上から見るせいでは? 
ペニスは7cmあれば性交可能です。 
巨根神話は嘘、女性はサイズを気にしないし、大きすぎても痛いだけ。 
大きさよりも二人の気持ちが大事」 



【Q.】 
「生理中ならセックスしても妊娠しない?」 
   ↓ 
【A.】 
「生理中でも妊娠はありえます。 
安全な日などありません」 


【Q.】 
「膣外射精で避妊できる?」 
   ↓ 
【A.】 
「カウパー腺液にも微量の精子が含まれているため、膣外射精では避妊はできません」 


「子供が変なコンプレックスに悩まない様に」
「避妊はしっかりと」
という教育理念は素晴らしい。
…でもこれらは本当に正しいのでしょうか?


男性のオナニーは刺激が強いやり方や性交時とかけ離れたやり方を続けると、性交に支障が出るリスクが指摘されています。
また、継続的・反復的な力や刺激によって皮膚に変色や変形がもたらされることはよくあるのでは…?

月経中でも性交が刺激になって排卵する、というネコちゃんシステムな主張もあります。
しかし交尾排卵については生物系トンデモの女王・竹内久美子がヒトにもあると主張してるのですが、ソースは挙げずこの人はソースがある時は鬼の首取った勢いで掲げるのに。
また、子宮内膜が剥落して排出されている月経中の性交で受精や着床が可能とは思えず、次の排卵期まで精子が生き残れるとも思えません。
カウパー腺液に含まれる精子はあまりに微量で妊娠に十分とは言えないという説もあるし。


なのに性教育の場では子供たちの不安を解消するために過度に「大丈夫」を連発したり、妊娠を避けるためにリスクを強調しすぎてはいないですかね…?
勿論、子供の気持ちに配慮したり、レアケースまで考慮して予防原則の観点から妊娠のリスクを強調して性教育を行うこと自体にはそれなりに意味があるとは思います。
しかしこれらは本当に科学的根拠に基づいているのか、というと何だか怪しげ。
エビデンスがあるなら示してほしいものです。


巨根神話にしてもそうです。
ヒトのペニスは並外れて大きい【註】とされますが、性的二形(雌雄の違い)のある部位は性淘汰によって発達する筈…
つまり少なくともヒトが進化してきた時代においては、「女性がよりペニスの大きい男性を好んできた」というのは避けがたい結論なのです・゚・(つД`)・゚・ 



よくあるタイプの間違いに、事実命題から価値命題を引き出してしまう「自然主義的誤謬」(ヒュームの法則)があります。
「天然素材は自然だから良い」とかがそうですね。
「自然である」という事実から「良い」という価値観は導けません。
また「自然だから良い」の対偶を取ると「不自然だから悪い」となりますが、それだとチーズケーキもスマホもコンドームもウォシュレットも、近代医療や文明社会だって不自然だからダメってことに…。

この逆で、価値観から事実を引き出してしまう「道徳的誤謬」というのもあります。
「この世界には慈愛に満ちた神がいるべきだ。だから神はいる」とか、「男女は平等であるべきだ。だから男女に能力差などある筈がない」とかがそうですね。

被害者叩きの原因となる『公正世界仮説』もコレの一種です。
「善人は報われ、悪人は罰せられるべきだ」という価値観から「この世界はその様な仕組みである」という間違った事実を導き出してしまい、「不幸が起きたのはその人に非があったからだ」と被害者叩きをしてしまう訳ですね。

この性教育の「気にしなくて大丈夫」「避妊はしっかり」が事実を超えて行き過ぎてるのも道徳主義的誤謬に思えてなりません。



ところで…
懐疑主義者が主にUFOだの超能力だのといったメジャーなオカルトと戦ってる間に、割と盲点になってた自然派の中で無茶なトンデモが台頭してきちゃいました。
しかし近年になってその辺りを批判する人がようやく現れ、山田ノジル『呪われ女子に、なっていませんか? 本当は恐ろしい子宮系スピリチュアル』や雨宮純『あなたを陰謀論者にする言葉』といった好著が出版されたり。

後者については↓ココで扱っています。

『あなたを陰謀論者にしないための言葉』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/14365830.html


そして最近このジャンルにもう一冊、素晴らしい本が加わりました。
12人の専門家が書いた

『新生児科・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』

です。


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子育て界隈も自然派からのスピリチュアルや反ワクチンなどが入り込みやすい危険な領域…
そこで子育てに悩む人たちの不安に寄り添い、わかりやすく科学的見解を説明した良書です。

自然派ママの間で流行中の「発熱時には頭にキャベツを被せる」のは医学的にどうのか、まで載ってる〜!
こういう本を読んでて痛感するのですが、医療関係者って反ワクとかについてのゴールが「トンデモを批判すること」ではなく、「患者に適切な医療を届けること」なんよね

そのため、批判には必ずしも熱心でなかったり共存を図ろうとするところはやや歯痒いのですがトンデモさんを見捨てることなく柔らかい態度で説得し続ける姿勢には本当に頭が下がるです。



…という訳でこの本、本当に素晴らしいのですが、ちょっとだけ気になる点が。

本書は母性神話を否定しています。

「母親なんだから子供を愛さねば、という偏見の押し付けよくない。父親も母親も子を愛せるし、父親も母親も子を愛せないこともある」みたいな話は政治的には確かにその通りだと思います。


しかし哺乳類は雌が妊娠出産と授乳を行う一方で、一般に雄は殆ど子育てに参加しません。

ヒトはその例外的な存在です。

そのヒトにしても、かつての進化適応環境(EEA)に於いて母親なしでの育児は極めて困難だったでしょうが、父親抜きでの育児はしばしばあったことでしょう。


女性は年に1人産むのがせいぜいですが、男性はパートナーを増やせばほぼ無尽蔵に子供を持てます。

そのためより多くの子孫を残すために男性はあちこちに種をばら撒きたがり、女性は頭打ちがあるので数より質に拘って相手を慎重に見定めようとする傾向にあります(ベイトマンの原理)。


ということは正妻でないのに妊娠した女性も多く、男性が逃げて完全ワンオペで育児をした女性や、充分な資源を回してもらえなかった女性が相当数いたことでしょう。

つまり母親による育児は必須ですが、父親による育児は必須ではなかった訳ですね(※これは「どうであるべきか」という価値観ではなく、「どうであったか」という事実について語ってるだけですよ?)。


この様な状況で、女性と男性が全く同じだけ子供を愛する様に進化してきたと考えるのはちょっと無理がないですか…?

母親は子供に対して父親よりも強い愛情を持つ進化的動機がある様に思えます。


実際、ちょろりとぐぐっただけでもこんな論文出てくるし。


【J-Stage】

『周産期におけるオキシトシン値の変化と 母親役割獲得過程の関連』

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhas/15/1/15_42/_pdf/-char/ja



母性神話を解体するのは良いのですが、なんかこの辺、価値観から事実を導いちゃった道徳主義的誤謬では

とちょっぴり思ってみたり。













【註:ヒトのペニスは並外れて大きい】 

ヒトのペニスは動物界でも並外れて大きいと言われており、ウマでさえ体躯と比較すればヒトよりごく控えめとする文献もありますが… 
ウマは体躯を考慮に入れても大きく思えるし、イヌはヒトよりずっと小さい割にペニスは大きくないですか…? しかも亀頭球が膨らむし。
あとカメのヘミペニスがどう見ても圧倒的に巨大な件。

結局のところ、ヒトのペニスは「大型類人猿の中では」巨大、ということに過ぎないのでは? 
それが「動物界一」などと語られるあたりが「巨根は誇らしい」という巨根神話の表れである様に思えたり。 


(01:21)

2022年03月30日


…さて、前回ワカシムという名が出たのでちょっとその辺の話を。 

その前に。 
ここしばらく、私自身が尊敬してやまない人々に結構、弓曳いちゃってる訳ですが、コレほんとに本意じゃないのよ。 
でもね、科学と懐疑主義の自浄作用として、あるいは記録として、誰かがやらなきゃダメな訳ですよ。 
とは言え、そもそも私みたいに知性に限界がめちゃめちゃある人間がこんなことするの、無理あるし。 
かといって本当に知的な人にこんなことにリソースを割いていただくのも何だし。 
私としても無理してやってることなので、「こいつレベル低っ!」と思われる向きは、もっと知的レベルの合う場を探した方が賢明かと。 
発表してる以上 責任は取りますが、あまり高度なことを期待されても困っちゃう。 

で、ワカシムという人なのですが、いろいろ書きづらいのです… 
何しろご本人のサイトから何からほぼ消えてて、記憶に頼らないと仕方のない部分が多く、ソースが示せないんですよね…でも頑張る。 

ASIOS公式サイトの「メンバー情報」によれば↓こう。 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
若島利和(Wakashima, Toshikazu/客員) 
ASIOS創立時副会長。2009年から客員に移行。個人サイト「懐疑論者の祈り」を運営。2011年に重篤な若年性脳梗塞で入院後、奇跡的なレベルで回復したが半隠居中。現在、一般社団法人超常現象情報研究センターの事務局長を務め、超常現象とされる主張の信頼度を査定し、国内外の関連情報を収集整理している。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

…ということで、大病をされたのですね。 
サイト『懐疑論者の祈り』も消滅してしまいました。 
mixiもやっておられましたが、今は廃墟状態です。 

そのmixi、時々拝読していたのですが、ある時、急に 
「日本は韓国にやられまくってます! これは妻とも話し合った結論です」 
みたいなことを書き出され… 
その時は、まぁネトウヨさんみたいなのではなく、単に韓国の政策を批判したものかと思っていたのですが… 

前回もふれた「ながぴぃ」こと長澤裕は↓こう指摘しています。 


【Skeptic's Wiki】 
『「ながぴい」こと長澤裕による「ASIOS」の項』
http://sp-file.qee.jp/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?page=ASIOS 

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若島利和氏は「一般社団法人潜在科学研究所」事務局長の肩書きで、「幸福の科学」が出版する「ザ・リバティ」2014年10月号において、「健全な懐疑派は強引な否定論に批判的」というタイトルのインタビューに応じている。 
また、「懐疑論者の祈り」のサイトには以下のような懐疑論とどういう関係があるのかよくわからない内容のコンテンツもある。 
「フジテレビ韓国偏向問題抗議及び周知デモの実態と正当性」 平成23年12月10日 ワカシム(HN)以下15名, 懐疑論者の祈り 
このうち特に「添付⑥:抗議資料『フジテレビドラマに散見される反日演出』」というのは、懐疑論とは本来相容れない内容だと思う。 

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…「フジの偏向ガ―!」ですか…わりとわりかしですね~… 

で、mixi絡みで奥様の話が出たので触れておくと、この方もASIOSメンバーです。 
ASIOS公式サイトの「メンバー情報」によれば↓こう。 

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若島美穂(Wakashima, Miho/客員) 
Webサイト「気になる資料室」の元運営者。旧名・那須野。2008年12月に若島利和と結婚。多忙につき2009年4月より客員に移行した。一般社団法人超常現象情報研究センター会員。
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この方は「NAZOO」名義で『気になる資料室』というサイトを運営されていましたが…こちらも今はありません。 
そしてこのサイト、めちゃめちゃ面白かった! 
特に様々なオーパーツの正体を暴くページはそのまま出版していただきたいレベルで、失われたのは本当に痛手。 
さらに「ミイラ船 良栄丸」「ソニー・ビーン一家」などの奇談も充実。 
特に「タイタニック号とオリンピック号のすり替え説」はここで初めて知りましたが、あまりにも都市伝説っぽい話なのでにわかには信じられず、当時ぐぐってみたけど何も見つからなかった覚えがあります。 
このサイトが日本で最初の情報だったのでしょう。 

しかし結局のところ、タイタニック号すり替え説は根拠となる「二隻は窓の数が違う」という情報がガセでした。 
どちらの船も途中で窓の数が変更されたため、窓が少ない時期と多い時期があった様です。 
またソニー・ビーンの方も、実在を証明する書類の類が見つからないという謎… 
結構やらかしてますね。 

『気になる資料室』はリンク切れになりましたが、分室だけ残ってました。 

【気になる資料室 〔分室〕 職員のサボリ部屋】 
http://nazoo.blog18.fc2.com/ 

そしてワカシムの『懐疑論者の祈り』も一部が↓ミラーで残ってました。 


【懐疑論者の祈り】(ミラーサイト) 
https://geolog.mydns.jp/www.geocities.co.jp/wakashimu/ 



ながぴぃが指摘した部分は↓ココ。 


【懐疑論者の祈り】 
[フジテレビ韓国偏向問題抗議及び周知デモの実態と正当性 
添付⑥:抗議資料『フジテレビドラマに散見される反日演出』]

上記リンク先からは入れませんが、下記URLから入れる模様。

https://geolog.mydns.jp/www.geocities.co.jp/wakashimu/hoki06.html 

そしてココ↓によると… 


【懐疑論者の祈り】 
『プロフィール』 
https://geolog.mydns.jp/www.geocities.co.jp/wakashimu/prof/prof.html 

…職業犯罪者という異例の出自。 


ちなみにASIOSは原田実や故・志水一夫もリサーチ会員です。
原田実については以前に扱いました。 


【ありとあらゆる全般的ぐちゃぐちゃ】
『原田実の微妙なポジション』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/12835457.html



志水一夫は「夜帆」という名でmixiをやっておられましたな。
優れた著作から懐疑主義者だと思っていたのですが、亡くなられた時の山本弘のコメントで実はビリーバー側の人物であったことを知りました。 
まぁどの様な信念を持っていようが、事実と根拠に基き論理的に考え、不適切な仮説をちゃんと排除できるなら文句はないです。 
志水一夫はそういう人物だったし、そういう意味では懐疑主義者であったと思います。 

…が、原田実・志水一夫は素晴らしい仕事をしていながら、元「つくる会」会員なんだよなぁ…。 
二人ともビリーバー出身という異例の経歴だし。 
そしてワカシムも異例の経歴に嫌韓という極右属性…この界隈、何かあんのか…? 



全方向に喧嘩を売り過ぎたのでちょっとフォロー。 



志水一夫はカメラを「キャメラ」、キャスターを「アンカーマン」と表記するなど、言葉に神経質な人でした。 
それが女性アイドルや女優の名を表記する時は「○○さん♡」とか書いてて、おたくへの同属嫌悪でぞわっとしたものです。

…が、その辺はガチガチの科学主義&左寄り、という、志水一夫の対極にいる山本弘も同様で、トンデモさんを嘲笑する時に
「ぎゃはははは!」とか書いてるのにぞわぞわ。 
まぁネット用語とか多用してる私も誰かに同じ目で見られてるんだろうけど。 

あ、フォローのつもりで余計に敵を増やしてしまいましたかね? 
でも山本弘への尊敬の念はガチですよ! 
この方もご病気されてるので、これまで様々な作品で楽しませていただいたお礼に、一万円くらいなら余裕でカンパしたい…
どっかで課金できないんですかね? 
ご本人は覚えておられないでしょうが、某イベントの打ち上げで一緒に無料の素麺(通称フリーソーメン)を食べたり、隣の席で一つ皿の料理をつつき合った仲だし。 
あの時は「うわぁ、コレ実質ディードリットと間接キスやんけ!」とどちゃくそ興奮しましたよ!(←クソバカ) 


政治が絡む問題は難しいものです。 
先ほど触れた原田実に関する日記を読んでいただければ分かる様に、ともに超有能な懐疑主義者である山本弘と原田実の間でも、南京事件については意見が一致しません。 
価値観が人それぞれなのは当然としても、事実を巡ってすら一致しないのです。 
歴史修正主義者やトンデモさんは引き分け狙いで両論併記に持ち込もうとするため、本来はこういう扱いはしたくないのですが、山本弘と原田実のどっちが正しいにせよ、片方は間違ってる訳です。 
名うての懐疑主義者と言えども、イデオロギーの影響は拭い難いものなのですね。 
払拭しきれないまでも、せめてそのことには我々は自覚的になるべきでしょう。 



【オマケ】 

『懐疑主義者の祈り』ロゴ部。 
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…うわぁ。 
単なる差し色かと思いきや、よく見たら日の丸やん。 

さすが懐疑主義にイデオロギーを持ち込んでいる、と指摘されるだけのことはありますね! 



(05:47)

2022年01月12日


ここしばらく、全体的には良いが時々「?」となる話をぶっこんでくるNHK『ヒューマニエンス』や『ダークサイドミステリー』、非常に有益な著作を書く原田実の微妙なスタンスなど、「全体的には素晴らしいが細部については疑問の残るアレコレ」について書いてきた。 

今回はその流れで、私が以前から絶賛してきた優れた生物系科学ライター、北村雄一の『ダイオウイカvsマッコウクジラ 図説・深海の怪物たち』について取り上げる。 

まずこの書籍、ありえないほど面白い。 
そもそも北村雄一といえば深海ブームの遥か前から優れた深海魚本を出していた人物である。 
だがこの本、タイトルこそ深海生物本だが、内容的には(著者も自認する様に)1/3ほどはシーサーペントを扱ったUMA本… 
UMA本と言っても勿論、ムーあたりから出てる本の様な素っ頓狂な内容ではなく、その正体として挙げられているのは懐疑主義系UMAファンならお馴染みの面々。 
だが新味がないかと言えばさにあらず。 
それらの生物について、マニアにも知られていない様な驚愕の事実の数々が載っていて、読みながら何度も呻き、のけぞった。 
めちゃめちゃ面白い! 
もうね、私の駄文なんて読む暇あったらコレ買って下さい、マジで。 

しかもリュウグウノツカイに関する記述を求め、古代ギリシャ・ローマ時代の文献まで渉猟する博覧強記っぷり! 
生物系ライターには生物には詳しくても進化論はあまり理解していない人も少なくないが、この人は進化論系の著作も多く、大安心。 
ちなみに深海本のフリしたUMA本、と書いたが、この人の『恐竜と遊ぼう―博物館で恐竜を100倍楽しむ方法』という本は児童書かつ恐竜本のフリしたほぼティラノサウルス本であり(ついでに言うと後年、実際に『ティラノサウルス全百科』というティラノオンリー本も出している)、さらに言えば子供に分岐分類学について教える本であった。 

さらに絵が超絶上手い! 
おそろしく正確であるだけでなく、「何故このアングルで描いた…?」という挑戦的な構図。 
個人的にはこの人の絵、古生物の復元画家として有名なダグ・ヘンダーソンやグレゴリー・ポールと並ぶ味わい深さがあると思っている。 

…という訳で私はこの人を心の底から尊敬している。 
だから今回のエントリは批判めいた話というよりは、オタ特有の「気に入ってるから細部が気になってついケチを付けてしまう」という歪んだ愛情表現だと受け取っていただきたい。 


私はこの人の著作は殆ど揃えている筈だが、その中でも出色の出来なのが本書。 
そんな好著だが、最後のシーラカンスの章で急に「ん?」となる部分が出てくる。 
要約すればこうだ。 

世間では、ダーウィンが「強いものが生き残るのではない、生き残るのは変化するものだ」と言った、という伝説がまかり通っているが、そういう事実はない。 
これは小泉首相が所信表明演説で述べたことで広がり、最近も自民党がこれを誤引用し改憲を正当化しようとして炎上した。 
だがシーラカンスは殆ど変化せずにきた、「生きた化石」であり、この表現が間違いであることは明白。 
研究者がダーウィンの政治利用に怒るのには理由がある。 
かつて左派のマルクス主義者や、右派の今西錦司を持ち上げたナショナリズムがダーウィンを利用し暴れまくったからだ。 
だがそれだけでは腑に落ちないだろう。 
皆さんがこう思うのは、おそらく人間がずるを見抜く力を持つせいだ。 
研究者はどうして決して景気を活性化しようとは言わないのか? 
研究者は決まった額の給料を保証されているので、不景気になった方が実質の価値が増えて有利になる。 
不景気になるほど有利になる人たちは景気を悪くしようとせっせと努力する。 
これはアダムスミスが2世紀前に指摘したことだ。 
私は自民党が正しいとか、研究者が正しいとか、そうしたことに興味はない。 
物事は機械的な仕組みで決まる。 
景気が良くなる方が良い人が多数派なので社会はその方向に行くだろう 
景気が良くなると研究費は微増するが研究者の資産価値は下落するので彼らは文句だけ言うだろう。 
以上、政治と科学の対立を語り、政治にも利はあることも示してきた。 


…ということなのだが… 


いや、マルクス主義者や今西錦司は反ダーウィニズム、もしくは非ダーウィニズムでしょ… 
ダーウィニズムを捻じ曲げて利用した訳ではなく、むしろ批判してた側。 
ダーウィニズムを受け入れた上で利用してたのは悪名高い社会ダーウィニズムや優生学では? 
この辺の下り、めちゃめちゃディスっててスゲー感情的。 
締めの部分に至っては 

『20世紀とはマルクス主義者や今西謹二たちがかように荒れ狂い、学問体系に巨大な傷を残した時代であり、知的に劣ったくだらない100年でもあった。』 

とまで言ってるし。 
ついでに言っておくとこの本、これまでのこの人の文章とやや違って、まるで口述筆記したみたいに砕けた表現が多い。 
それがやや硬質な常体の文に置かれているので、怒りや諦観・自嘲といった感情が強調されがちな気がする。 
まぁより一般人向けに伝わりやすい文体を模索した結果なのかもしれないが… 
ただでさえこれまでになかった政治経済の話をしている中でこの語調なので、何やら心配してしまう。 

あと小泉総理の発言については、これまた要約すると 


小泉総理は 
「ダーウィンは生き残るものは変化に対応できるものだという考えを示したと『言われています』」 
とわざわざ断りを入れてるからセーフ! 
これってこう解釈したよ、っていう注意喚起の表明だから嘘じゃない。 
個人の意見を嘘という人はいない。 


…的なコト言って免罪。 
いや、『言われています』というのは「伝聞ですよ」もしくは「一般的にこうだとされてますよ」程度の意味ちゃうん? 
言うほど『解釈』や『個人の意見』か? 
こんなん関西人の「知らんけど」と同じで、とりあえずソレ付けたら責任逃れできるってモンちゃうやろ… 

あと、研究者が景気を活性化しようとは言わないのはそれが一般に研究者の仕事ではないからでは? 
そんなん政治家や経済学者(つまりそれを目的・専門とした研究者)の仕事やろ…。 

あと研究者というのは、その非凡な知性を科学的真実の追及に使おうと考えた人たちな訳ですよ。 
勿論、彼らも聖人君子ではなく個々に利己的な訳だけど、それは通常、科学上の業績争いとか、せいぜいそれを利用した地位や権力の追及、そして時に学問上の不正といった形で出てくるのが普通では… 
研究者が「俺の資産価値のために景気を悪くしよう」と画策するとは思えないっす。 

そもそも研究者にとって、研究費の獲得は自分の食い扶持と同じく切実な問題なんじゃ…。 
あと不景気になると一件あたりの研究費が減るだけでなく、研究者のポスト自体が削減されて大ピンチにならないですか? 

その辺あやふやなのに、 
「研究者がダーウィン利用に怒るのはダーウィンが利用され続けてきたから。 
だがそれだけでは腑に落ちないのは、おそらく人間がずるを見抜く力を持つせい。 
研究者側にはもうひとつ、経済的な理由がある」 
みたいな進化心理学(心理学とダーウィニズムを融合させたもの)っぽい説明を与えちゃうと、ダーウィニズムを利用してるのは果たしてどっちだか、わからなくなってくるよね…。 

…普通、サイエンス系の人ならこういう時は「前もって何が役立つかわからないからこそ基礎科学に投資すべきだ」とか言うもんじゃないの…? 
ましてや進化論系の人なんだから、「ある遺伝子は一見すると病気の原因に見えるが、特定の環境では生存に役立つ」みたいな話すればいいじゃん。 
鎌型赤血球症遺伝子はマラリア耐性を持たせるとか、糖尿病の原因遺伝子が低栄養な環境では生存上有利だとか。 
遺伝子には多様性があった方がカタストロフに強い、みたいなもんで、研究にも多様性がある方が実りが多いでしょ…。 
実際、本書にも「知能を下げてでも省エネにした方が有利な環境もありうる」みたいな話がバッチリ載ってるし。 


なんか急に経済学に傾いた説明が始まって面喰らったが、思えばこの本、「まえがき」からして何故か経済学の話から始まってたんよな… 

そして振り返れば、最終章のひとつ前にあるオウムガイの章から予兆はあった。 
バージェス・モンスターのひとつであるネクトカリスを頭足類とするトンデモ論文が鵜呑みにされて報道されたことについて、科学ライターのギャラが低いので科学記事に正確さを求められても困る、みたいな話が載っている。 
そしてそこから「新自由主義のせいで不景気が常態化→金を失くした出版界は事実を報道する力を無くした」的な話を展開。 
そこでは新自由主義について『その性質上、一部の成功者が自分たちの資産価値を増大させるために不景気を常態化させてしまう』とある。 
あ~なるほど、その「一部の成功者」に科学者をあてはめちゃった訳ね…。 

まぁギャラについてはプロのライターとして苦労されたと思うので、こういう捨て鉢な気持ちになっちゃうのは理解できます。 
不景気でただでさえ多くはないギャラが下がったのも事実なのだろう。 
ホントにね、こういう有能な人こそ報われるべきなんですよ! 

ただ、科学記事ってホントに科学の素養のない人が担当してることって昔からザラにあるじゃないですか。 
むしろレベルの低かったこの業界を底上げしてきた功労者が故・金子隆一や北村雄一、その周辺の人たちだと思ってたのだが…違うの? 



…という訳で、名著なのに急な政治的発言にびっくりして色々書いちゃいましたが、私の溢れるラブも伝わってるといいなぁ…。 
あ、別に科学に絡めた政治的発言がダメってんじゃないんですよ? 
そんなんドーキンスもグールドもしょっちゅうやってるし、私ももう嫌になるくらいやってます。 
ピーター・シンガーの『現実的な左翼に進化する』に至っては「やれ!」って感じだし。 

ただ、疑問が湧いちゃう発言だったってだけです。 
まぁこういうことはちょこちょこあって、私に人生レベルで影響を与えた『徳の起源―他人をおもいやる遺伝子』(著者はドーキンスのツレでもあるマット・リドレー)は逆に、最後の最後に急に特に根拠も示さずに新自由主義を称揚してきて、たじろいだです。 




【オマケ】 

本書には懐疑主義者にはお馴染みの「人は見たいものしか見ない」的なフレーズが出てくる。 
だがその言葉は著者にもあてはまる気がしてならない。 

例えば↓コレは本書に収められたダイダロス号(昔はよく「ディーダラス号」と表記されていた)の遭遇したシーサーペントとその正体の図。 

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その元の図。 

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こちらはよく見ると頭の形が微妙に違い、エラのあたりがウナギの様につるりとしているが、北村雄一の改写版ではエラが張って、イカのひれにちょっぴり寄せてるよーな… 
この元の図は改写されて何バージョンかある様だが、形はどれもさほど変わらない。 

あと↓こちらはオパビニアの復元史(拾い物)。 


1:化石そのままな感じ。
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2:まぁ普通の生物っぽく復元してみました、って感じ。 目は左右一対で、顔の先端にあるノズルの先端は左右に開く。左右から伸びたものが中央で融合した跡が正中線上に描かれている。 

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3:目は5つ、ノズルの先端は上下に開くという奇妙な姿に。最も有名な図でもある。復元図を発表したら爆笑で学会が一時中断した、というエピソードがあるのはおそらくこの図。 
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4・5:ノズル先端が上下開きなのか左右開きか図では判りにくい…が、最近の研究では左右開きらしい。
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…で、興味深いのは二枚目だ。 
3枚目の有名な図を知っていると、いかにも奇想天外な動物を常識に沿って解釈した、つまらない復元に見える。 
だが結果的に、この図はかなり良いところを突いている。 

バージェス頁岩動物群にはよくあることだが、研究が進むにつれ、オパビニアも当初思われていたほど奇妙でも孤立してもいないことがわかってきたのである。 
あのノズルはどうも左右開きで、左右から伸びて融合しているらしい。 
しかもオパビニアにも脚があったという説もある(論争中)。 

ちなみに私も昔から、左右に張り出したヒレ・斜め上を向いた3対の尾ビレ・発達した複眼と頭部の触手などがアノマロカリスと共通してるよね~、と思っていた。 
あと大型のマンボウにはやけにデコッパチで形の異なるものがいるとも思っていたら、後にそれがマンボウとは別種のウシマンボウに分類されてびっくりした。 
素人考えも時には当たるものらしい(ちゃんと研究した訳でも先に発表した訳でもないので無価値だが)。 

ともあれ、2枚目は「ノズルは左右融合で先端は左右開き、脚がある」という点で以外にも先進的だったらしい。 
もっとも、ノズル融合部分の線は化石からは見つかっていない様だ。 
という訳で、2枚目の図にあるあの線は「コレは左右のものが一体化して出来てるに違いない」という思いが生んだ、見えちゃいけない「幻の線」でもある。 
願望が見せた、ルネ・ブロンロの「N線」やダレンパティウスの「精子の皮膜を脱いで出てくる小人」みたいなもんか… 

一方、こちらは北村雄一による復元図。 

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…「幻の線」、あるやん! 
(上図は『ドラえもんのびっくり古代モンスター』、下図は北村雄一の公式サイトより。それぞれ部分) 

あ、復元図をある程度推測で描くのは仕方のないことなので、別に責めるつもりはありません。 
ただ「オパビニア、先祖返りしてるやん!」と思っていたく感動しただけなのです…。 

あと↑この下図(着彩されてる方)のオパビニアは見慣れないので奇妙に感じますが、よく見ると逆に自然で説得力が…!
流石ですね。 

ちなみに海洋堂の食玩『チョコラザウルス』のアノマロカリスは「よく見かける復元図って生物として不自然じゃね? 自然になる様にシャコに寄せたろ!」という造形スタッフの自由過ぎる解釈でアレンジされてるのですが… (色もモロにモンハナシャコだし)
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(画像は拾いもの)
…コレ言うほど自然か? 





(07:33)

2022年01月11日


前回のエントリで「懐疑主義者にはリベラルが多いかと思ってたら最近はそうでもなかった」という話をしたので、その具体例。

「優れた懐疑主義者でありつつ右派・歴史修正主義寄り」として真っ先に思い浮かぶこの人について。 


まず最初に言っておくが、私はこの人の仕事を心の底から尊敬している。 
著作も随分読んだが、どれも素晴らしかった。 

今回のエントリは批判のために書いた訳ではなく、この複雑怪奇で捉えどころのない人物を何とか捉えようとあがいた過程の、備忘録の様なものだと思っていただきたい。 


まずWikipeddiaを見てみよう。 


Wikipedia:原田実 
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E7%94%B0%E5%AE%9F_(%E4%BD%9C%E5%AE%B6) 


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略歴 
広島市中区出身。修道高等学校を経て[1]、1983年(昭和58年)に龍谷大学文学部仏教学科卒業(文学士)。1984年(昭和59年)から3年半、オカルト系出版社八幡書店に勤務、古史古伝・霊学書籍の広告を担当した。また、伊集院卿のペンネームで雑誌『ムー』に記事を執筆。 

その後広島大学研究生を経て、1991年(平成3年) - 1993年(平成5年)に昭和薬科大学文化史研究室にて、古田武彦の下で助手を務める(最初の1年は事務助手(副手))[2]。 

1995年(平成7年)パシフィック・ウエスタン大学博士課程修了(Ph.D.)。なお、パシフィック・ウエスタン大学は非認可の学校で判決によって閉鎖された(ディプロマミル)。『ゼンボウ』1996(平成8年)9月号には、史学博士とある。 

元「市民の古代研究会」代表(2001年(平成13年)-2002年(平成14年))。と学会およびASIOS[3]の会員でもある。『トンデモ本の逆襲』(1996年刊行)のあとがきには「自分の著作を送ってきた読者」の一人として書名『幻想の津軽王国』と共に紹介されているため、その後の入会と思われがちだが[誰によって?]実際の入会は1994年(平成6年)である。雑誌『ゼンボウ(全貌社刊)』[4]、『正論』[4]、『新潮45』[4]、『季刊邪馬台国』[4]などに寄稿している。また、シャーロキアンでもある[要出典]。 
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その経歴をオカルト・トンデモ寄りの側面からまとめると、 

・オカルト系出版社に勤務 
・『ムー』に執筆 
・古田武彦の助手で「市民の古代研究会」代表 
・ディプロマミル出身 

となる。 

ちなみに古田武彦とはトンデモな偽書『東日流外三郡誌』を擁護していた研究者、「市民の古代研究会」はその影響下にある団体である。 
ただし、原田実はその後 袂を分かち、『東日流外三郡誌』を偽書としている。 
斉藤光政の名著『戦後最大の偽書事件「東日流外三郡誌」』にも偽書であることを暴くための調査に原田実が加わっていることが克明に描かれているが、原田実自身の偽書を扱った著作ではそのあたりへの言及は少ない。 

ディプロマミルというのはお金で学位を買える非認定大学のことで、「学位商法」とも呼ばれる。 
日本では「特許大学」という名で学位っぽいものを販売していた企業がそれに近い。 

まぁ私も小学生の頃はムー民だったし、高校生の頃は竹内久美子やウィルソン・ブライアン・キィを信じてたので別にどうこう言うつもりはないです。 


歴史修正主義寄りの側面では… 
•雑誌『ゼンボウ』『正論』『新潮45』に寄稿 
•Wikipediaには載っていないが「新しい歴史教科書をつくる会」元会員 



Twitterのプロフは↓こんな感じ。 

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原田 実@gishigaku 
偽史・偽書の研究をしています。 ビリーバー的関心からいわゆる古史古伝と関わり始めたのがきっかけで、それからかれこれ40年以上もたってしまいました。 現在の主なテーマは「江戸しぐさ」 
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そしてTwitterには↓こんな発言が。 

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原田 実@gishigaku·2012年9月10日 
原田実=歴史修正主義者説にも一応根拠はあって以前『正論』『ゼンボウ』によく論考を書いていたことと「南京大虐殺」の証拠とされる資料のいくつかについて内容を批判したことがあげられる 

返信 
原田 実@gishigaku·2012年9月10日 
返信先: @Rin_Subaruさん 
1998年1月17日開催の「新しい歴史教科書を作る会シンポジウム」で「古代史ブームの中の新説・異説・珍説」 という報告をしています 
http://www8.ocn.ne.jp/~douji/gyouseki.htm 
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原田 実@gishigaku 
と学会で「歴史修正主義者」といえば、志水さんと私が元「新しい歴史教科書をつくる会」会員。で、私は日本「南京」学会の会員だったりする。 
午前11:43 · 2012年6月29日·Twitter Web Client 
3件のリツイート 1件の引用ツイート 3件のいいね 
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ワールドワイドウェブ@worldwideweb01·2016年6月10日 
返信先: @gishigakuさん 
つまり、一定レベルの非があったというところまでは共通認識として語れるって事ですよね。今回噛みついてた方の仰り様と実際の原田さんの見解は結構違う感じがします。 

原田 実@gishigaku·2016年6月10日 
「南京」は90年代のブームで肯定か否定かの二分論という図式ができてしまった上、それぞれに政治的思惑がからんでいたのでいかなる発言もその枠で解釈されがちなのです。 

@worldwideweb01 
返信 
ワールドワイドウェブ@worldwideweb01·2016年6月10日 
返信先: @gishigakuさん 
日中共同研究で両国の研究者が一定の非があったところまでは共通見解と出来るところまでは検証なり議論は尽くしていて、日本政府もそこまでは認めざるを得ないところ位までは来ている。あとは、程度問題の認識のギャップだと思うのですが、そこを超越する極論にしたがる人達が… 
―――――――――――― 


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原田 実 
@gishigaku 
返信先: 
@gishigaku 
さん 
「"偽書"としての南京大虐殺」は『新潮45』2003年11月号掲載でした。その他の南京事件関連論考としては、「南京大虐殺・元大本営海軍参謀の偽証」『月刊日本』2002年4月号、「捏造された“何もかも軍隊が悪い”偽史」『新潮45』2006年4月号があります。 
@dogu_fm 
午後1:19 · 2015年2月15日·Twitter Web Client 
―――――――――――― 


…この『新潮45』2003年11月号掲載「"偽書"としての南京大虐殺」は読んでみたいのだが、残念ながら入手できなかった。
だがネット上には↓こんなログが残っている。 



『読まれ方おられますか? - 思考錯誤』 
http://pipponan.fc2web.com/oldshiko_07/oldshi_07_13yo.htm 


…簡単に言うと、左翼系掲示板に本人が降臨、なんだかんだあったものの、(少なくとも表面的には)双方それなりに礼儀をわきまえた議論をした様だ。 
原田実も歴史修正主義寄りとは言っても勿論『まぼろし派』等ではなく、その規模や詳細について異論を唱えているだけの、やや穏健な立場らしい。 

なお、そこで原田実が↓こんな発言をしているのが興味深い。

―――――――――――― 
ちなみに南京問題について山本会長と私の見解は違いますし、さらにいえば会員間でもまず意見の一致は見ないでしょうが、お互いそれで角突き合わせるような大人気ないことはいたしません 
―――――――――――― 

―――――――――――― 
ちなみに、と学会での南京問題の扱いについては下記日記の11月16日付での言及がかなり実情に近いものと思われます。
 http://www.tobunken.com/diary/diary.html 
―――――――――――― 


…その日記というのが↓コレ。 


裏モノ日記 2003年11月16日 
http://www.tobunken.com/diary/diary20031116000000.html 


――――――――――――― 
 落ち合って、井泉の方へ。見学団長のK川さん(博物館職員)、I矢さん、昨日一緒だったTくんなど、総勢9人。二階の座敷に上がって、生ビールとカニサラダ、串カツで乾杯。コンピューターばなし、と学会ばなしで雑談。『神は沈黙せず』は面白いけれど、また会長の悪いクセで小林よしのりシンパを刺激するようなことを中で書 いているので叩かれるであろう、というような話。某氏曰く 
「大体、南京大虐殺完全肯定派っていうのはと学会の中でも会長くらいで、少数派なんですけどねえ」 
――――――――――――― 



…ところが原田実が得意とする江戸しぐさ批判は、願望と現実を混同した歴史修正主義系トンデモの鮮やかな例として取り上げられ、しばしば南京事件と並置されるのだ。 

例えば↓コレ。 


『文教大学オープンユニバーシティー教養講座 あやしい「科学」の見分け方 その2』 
http://221.186.87.228/~masa/lecture/2016/slide161122.pdf 



↑上記は長島雅裕(文教大学教育学部)による講座用のスライドPDF。 
なかなかに良く出来ている。 
『歴史修正主義~「江戸しぐさ」から南京事件まで~』という章があり、『おすすめの本』には原田実の江戸しぐさ本2冊が挙げられている。 



原田実の著作には触れられていないが、↓ココも江戸しぐさと南京事件を並置して歴史修正主義を批判している。 


「江戸しぐさ」と歴史修正主義|神戸金左衛門 
https://note.com/kanbe67/n/n5a020104dc56 




江戸しぐさ批判の功労者である原田実が、南京事件については歴史修正主義寄りであることはなかなかに微妙… 



ところが原田実は江戸しぐさ系著書では当時の安倍政権界隈が教育に及ぼす影響について何度も警鐘を鳴らしている。 
特に『オカルト化する日本の教育 ─江戸しぐさと親学にひそむナショナリズム』はそのあたりを主軸に据えており、タイトルの時点でナショナリズム批判っぽい。 


しかし原田実は自分の過去を隠そうとしたりはしないが、現在のスタンスについてあまり語ることもしない。 
その立ち位置は何とも微妙で、上手く捉えることが難しい。 
あまり党派性に捉われない人にも見えるが、その割に『つくる会』とはいくら何でも振り切れすぎやろ…。 





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