トンデモとまでは言いません

2021年06月16日


2017年に朝日新聞の「経済成長は永遠なのか『この200年、むしろ例外』」という記事が物議を醸した(1月4日付)。
この騒ぎは「何を言ったか」より「誰が言ったか」だけが問題にされた気がするが、それはさておき。 





北海道大学の進化生物学者・長谷川英祐助教授は著書『縮む世界でどう生き延びるか?』でこの様な指摘を行った。 


遺存種(シーラカンス等のいわゆる「生きている化石」)は局所的で安定した環境、つまりは「縮む世界」に生きることで長く存続することに成功している。 
永遠の成長はありえない以上、ヒトもそろそろ「縮む世界」で生きていくことを考えた方が良いのでは…? 


本書は生物学者らしくあまり政治的な話には深入りせず、価値命題には口を出さない様にしていて好感が持てる。 
また長谷川助教授の本はどれも素晴らしく面白く、私が国内では最も注目する研究者である。 



そんな長谷川英祐助教授だが、ちょうどその頃、NHKの『サイエンスZERO』で「徹底解説!科学の“未解決問題” ダーウィンの進化論に異議あり!?」と題し、とてつもなく大きな風呂敷をひろげていてびっくり(2016年12月25日放送)。
まぁNHKは進化論系にやらかしが多いからなぁ… 

内容的にはこんな感じ。 

・働かないアリや托卵する鳥など、自然界には非効率としか思えない現象があり、これらはダーウィン進化論では説明できない。 
・実はさらに上位に「永続性の原理」とでも呼べる別の原理が働いているのではないか? 
・38億年一度も滅びなかった生物だけが生き残る。重要なのは永続性。 
・一見、無駄に見える性質は「永続性」によく合ってるので進化してきた 
・永続性の原理を満たす範囲ではダーウィンの進化論が通用する 


…え~と。 
まず私には「働かないアリ」や「托卵する鳥」がダーウィニズムに反している様には全く思えないのですが…? 

あと「一見無駄に見える性質がある」というのは「別のレベルでの最適化の結果、不完全化が起きる」とか、「永続性を持つ生物だけが生き残る」というのは「種淘汰」とか、ダーウィニズムの側でもすでに説明を組み込んでいて特に問題がない気が。 

まぁ断続平衡説も「ダーウィニズムに対するちょっとした註釈」に過ぎないのに、当初はあたかもアンチダーウィニズムの様に喧伝されてたしね~…。 





(23:22)