2021年05月07日


「睾丸が小さいと日本型リベラルになりやすい」でおなじみの僕らのアイドル、竹内久美子がまたやらかしてます。 


今回の舞台はネトウヨさん御用達の月刊誌『WILL』2020年2月号。 
『科学的にも正しく尊い「男系男子」』なる記事で百地章と対談してます。 
内容的にはよくある「Y染色体ガ―!」のやつ。 


竹内久美子についてはココ↓を参照。 

2021年3月3日のエントリ
トンデモさん・ミーツ・ネトウヨさん ーもともとアレな竹内久美子さん、余計にアレになるー
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/9321696.html




Y染色体云々について詳しいことはココを参照↓ 

2021年3月4日のエントリ
【コンス鑑定士】竹田恒泰先生が解く! 万世一系のひみつ
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/9322067.html



2021年5月1日のエントリ
「Y染色体ガー!」の人をまだ見かける件 
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/9844608.html




…が、もう一度別の語り口でY染色体論について触れておきましょう。 

「天皇は万世一系の~」と言ったところで、ゲノムは毎世代、半分ずつ入れ替わっていきます。 
10世代も過ぎれば元の0.1%しか残っていません。 
「創業時から継ぎ足して作られた秘伝のタレ」は実際には数年で当初の物質は1分子も入ってないじゃん、みたいな話ですよね。 
つまり生物的には「万世一系」には何の意味もないことになります。※ 

それじゃ困る、なんとか万世一系に意味を持たせたい、と思った人が捻り出した言い訳がY染色体論です。 
Y染色体は男系のみに伝わり、しかも対になるX染色体と基本的には組み変えなしで丸ごと遺伝します。 
つまりY染色体だけは万世一系だったという訳です。 

ではこれで万世一系が正当化できるんでしょーか? 
ヒトの持つ染色体の大半は常染色体です。 
23対ある染色体のうち22対が常染色体。 
残り1対が性染色体で、Y染色体はその片方。 
全ての染色体の中でも最小で、殆ど機能を持っていません(X染色体との進化的軍拡競争に敗れたため)。 

ゲノムは「テセウスの船」です。 
テセウス王の乗った船をその後も残し、老朽化した部材を入れ替え続けた結果、全ての部材が入れ替わった時…それは果たして「テセウス王の乗った船」と言えるのでしょうか? 

いずれ全てが入れ替わります。 
Y染色体はその僅かな例外です。 

例えば、戦国時代から現存していたお城の天守が失火で焼失したとします。 
数年後に天守が再建されたとしても、これはもはや「現存天守」とは呼べませんよね? 
それを 
「いや、柱が一本だけ燃え残ってたからそれ以外の部分を再建してもこれはあくまで由緒正しき『現存天守』だ」 
と言い張るのってどうなの…? 

Y染色体論の人たちがこんなものを持ち出すのは、それしか持ち出せるものがないからです。 
Y染色体上に何か皇統を正当化するすごい遺伝子情報が載っていると考える理由はありません。 
しかし、もしそんなものが連綿と伝わっているとするなら、それはY染色体にしか存在できる「隙間」がないので、Y染色体を持ち出しているだけのこと。 

これは一種の『隙間の神』でしょう。 
『隙間の神』とは、科学が発達して神の存在できる余地がどんどん狭まっているのに「まだ科学の力が及んでいない領域に神がおわすのだ」と強弁する宗教信者の主張のことです。 

そして論理が倒立しています。 
つまり「Y染色体で説明できるから大丈夫」ではなく、「もはやY染色体しかすがるものがない」状態なのです。 
「お金ならあるからまかせなさい! 実は宝くじで3億円が…」と豪語していた人の話が、よくよく聞いたら「財産が底をついたから最後の3000円で宝くじを買ったんだ。まだ当選した訳じゃないけど、俺は3億当てるつもりだから」だった、みたいな感じ。 



…という訳で、根っこからガタガタのY染色体論ですが、くみっふぃーはそれをどうエクストリーム擁護するのでしょうか。 
早速見ていきましょう。 


Y染色体についての簡単な解説の後、くみっきーは福岡伸一(青山学院大学教授)批判を始めます。 
福岡伸一はY以外の全ゲノムが大事、として「男系・女系の区別は無意味」と言ってるそうです。 

ちなみにこの福岡伸一は…なんていうか全体論者的な人物で、「還元論だけでは説明できないんじゃよー」みたいなことを言う割に、じゃあ全体論で何が説明できるのかというとその辺は曖昧という、「スティーヴン・ジェイ・グールド日本版」みたいな人という印象。 
まぁ「ホリスティック医学」とかの全体論めいた主張とか、現代ダーウィニズムを批判して「構造主義生物学ガ―!」と吠えてる池田清彦とか、あの辺って「掘っても結局何も出てこない」気がするよね…個人的にはそれと同じフォルダにしまってます。 


…が、この人、発言はソツがないというか、間違ってはいないんですよ。 
見事に正統的な説明をしてくる。 
ただ「全体論者の筈のあなたがその還元的説明を持ち出す…?」とは思いますが… 
竹内久美子なんかよりははるかに正確。 

では「全ゲノムが大事」という、これまた正統派なツッコミにくみっふぃーがどう返すかというと… 


『そんなことは全くありません』 


…これだけです。 
全くもって根拠不明…! 
こんなん、10年以上前にglobeのマーク・パンサーがマルチ商法に手を出して、そこの公式サイトで 

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Q.なんで?だってマルチレベルマーケティングということはマルチ商法なんでしょ? 

A.違うよ。全然違うよ。 

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って言ってたのと同レベルやん… 


ちなみにくみっふぃーの『そんなことは全くありません』発言の後は 

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百地 竹内さんの指摘で重要な点は「科学的説明などまったくなかった時代に、先人たちは直感的に見抜いてしまった。あらゆる手段を講じ、男系による皇統の継承を護った。この事実が重要で、その歴史は今になって我々が放棄することなど、あってはならない――これですよね。 
竹内 はい。その当時はY染色体と言う科学的根拠など解明されていないし、理解できるはずもありません。にもかかわらず――何故かわからないけれども、男系の大切さを感じて護り続けてきたのです。 

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…と続いてます。 
ね、全く説明してないでしょ? 

そしてY染色体知らなかったのに何故か男系を守ってきた、って認めちゃうんだ…? 
そしてその割に本郷和人(東京大学教授)が皇統が男系のみで続いたのは「結果やん」と言ってることに対して「おかしいやろ」と反論。 

では何故男系が守られてきたのでしょう? 
ざっくりまとめると、 


百地「多くの国で王朝は男系」 

竹内「母系社会は少ない。戦争の時に男性同士が血縁関係の方が結束力を高められるからでは?」 


…ということだそうです。 


それは男性間の血縁度の問題で、Y染色体の維持とは関係ないですよね…? 
じゃあ男系社会が仮に血縁度の高い男性を共闘させるための適応の結果だったとしても、Y染色体の維持はその付随的な「結果」に過ぎないんじゃないでしょーか? 

また、仮に男系が存続に有利だったとしても、今後も有利とは思えません。 
現代日本において象徴に過ぎない天皇が血縁によって皇室男性と共闘しなければならない事態ってナニ…? 
これをわざわざ維持する理由って何ですか? 

さらに仮に男系社会なりY染色体なりの維持が有利だったとしても、その「事実」から今後の天皇もそうすべきだという「価値観」は導き出せません。 
それは事実命題から価値命題を引き出す「自然主義的誤謬」だからです。 

なんか…何重に間違えてんのよ、って感じ。 

あと自然主義的誤謬はタイトルでもやらかしてます。 
『科学的にも正しく尊い「男系男子」』って…政治的な「正しさ」や「尊さ」という価値命題は科学からは出てきません。 
(仮に「科学的」は「尊い」にはかかっていないのだ、という苦しい言い訳をしたところで「正しく」にかかっていることは否めませんよね?) 
科学などの事実と合致することは最低限の条件であって別段誇ることではありませんが、Y染色体論はそれすら満たしていません。 

そもそも竹内久美子は『浮気人類進化論』とか書いている人ですよ? 
浮気が人類に深く根付いた行動なら、避妊もDNA鑑定もない時代に100代以上も系図通りの血統が維持されていると素朴に考える方がどうかしてませんかね? 


さらにトンデモ対談は続きます。 

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百地 (中略)中国や韓国あたりが策謀してイケメン男子を近づけて、皇室に入り込むなんてことも考えておかないと(笑)。 

竹内『彼らはそういう策謀に長けています。最初は日本人のフリをしつつ近づいてくる。途中で正体を明かし、「どうだ、日本は我が国のものだ」と。 

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…なんやコレ。 
こんなありえないシナリオを妄想して悦に入るて… 
この人たち、K-NTR(韓国寝取られ。ネトウヨさん的な世界観に基づき、韓国人に寝取られたり支配される屈辱を楽しむマゾヒスティックなセクシャルファンタジー。一部で流行中)の気でもあんのか…? 
「陰謀論は実行の困難さの割に動機がよくわからない」の法則発動。 



さらにくみっふぃーにはこんな発言↓も。 

『竹田恒泰さんはわざと暴れん坊ぶりを発揮しておられますが、どうしても隠し切れない、育ちの良さや長く続いた家柄に特有の、「個」よりも「家」を尊重する様な雰囲気をお持ちです』 

…おやおや。 
進化する時間などない筈のヒトの行動まで「遺伝子の戦略」で説明し、ドーキンスを絶賛して日本に(間違った形で)広めた功労者である筈の竹内久美子が、「個」よりも「家」を尊重する話をするとは…いつから群淘汰支持者になったのやら。 

あと剥き出しでヘイトスピーチ全開の竹田恒泰を「暴れん坊」の一言で免罪するのって、昔は完全に犯罪者だった人が「俺も若い頃はヤンチャだったよ」の一言で全てを片付ける的な無神経さがあるよね。 


ついでに対談相手の百地は記事の最後の方で「最近は週刊誌に論調の変化が」みたいなことを言ってるのですが、その内容が「どこそこの雑誌が俺の意見を載せた!」とか「どこそこの雑誌に取り上げられた男系男子派は3人、女系賛成派は2人…明らかに賛成派の方が押され気味」とか、話が町内会のおじさんの自慢話レベルでちょっと可愛いです。 






【オマケ】 


竹内久美子がこんなことをTwitterでつぶやいてます。 
2020年1月5日のツイートより。

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竹内久美子@takeuchikumiffy 
ヴィーガンの人たち、どうするの? 

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そしてこんな記事↓を紹介…。 


【植物、感情を持っていることが実証される…】 
https://snjpn.net/archives/174159



内容はこんな↓ 

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植物、感情を持っていることが実証される… 
2020-01-05 

ストレスを受けた植物は「超音波の悲鳴」を上げていると研究で判明 

▼記事によると… 

・人間はイライラしたり怒ったりした時に叫び声を上げることがありますが、イスラエル・テルアビブ大学の研究チームが行った実験から、「植物もストレスにさらされた際に超音波の悲鳴を上げている」ことが判明しました。 

Plants emit informative airborne sounds under stress | bioRxiv https://www.biorxiv.org/content/10.1101/507590v4


Plants 'Scream' in the Face of Stress | Live Science 
https://www.livescience.com/plants-squeal-when-stressed.html2020年01月04日 09時00分00秒 
https://gigazine.net/news/20200104-plants-scream-face-of-stress/――――――――――――――――――――――――


これに対してあにまるえしっくすさんがこう反論。 


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あにまるえしっくす@animal_ethics_v 1月8日 
【植物、感情を持っていることが実証される…】 

「ストレス応答として超音波を発する」という報告を「感情を持っている」と紹介するのはもはや「飛躍」ではなく「捏造」に近いと思いますが、それよりも、「実証」という言葉をタイトルに使う記事をこうも軽々しく拡散することに驚きです、竹内さん。 

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…私は別に驚かないですけどね。 
だって竹内久美子だし。 

それにしても「植物に意思がある」て…『バクスター効果』(植物が嘘発見器に反応するという主張)の再来やん。 
とっくに否定されたトンデモと同様の主張には少しは慎重になろうとは…思わんのやろなぁ…。 
竹内久美子やもんなぁ…。








【オマケ:対談相手の百地章について】

百地章は右翼によくある、新宗教『生長の家』系の学生運動を経て日本会議、というルートを辿っています。
日本会議事務総長の椛島有三やトンデモ教育論『親学』の高橋史郎と同じやんけ!

Wikipedia「百地章」の経歴によれば↓こんな。

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静岡大学では「生長の家学生会全国総連合」で民族派学生運動に関与[9][10]全日本学生文化会議の結成にも関与し第1回大会「日本の文化と伝統を護る学生の集い」を運営した。安倍晋三のブレーンの一人[10]2012年自由民主党総裁選挙の際は、「安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」発起人に名を連ねた[11]

日本会議の政策委員を歴任[12]谷口雅春先生を学ぶ会機関誌「谷口雅春先生を学ぶ」の編集人なども務めた[13]「21世紀の日本と憲法」有識者懇談会(民間憲法臨調)事務局長[14]

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(23:47)

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