2025年09月26日



パオロ・マッツァリーノの『論より実践のクリティカルシンキング 思考の憑きもの』という本を読みましたー。


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(※↑上の画像は当該書籍より引用)


パオロ・マッツァリーノについては↓以前のエントリでも取り上げてます。


『謎のイタリア人パオロ・マッツァリーノさんのブログ、面白い』
https://wsogmm.livedoor.blog/archives/23831878.html



今回の本のタイトルにある「クリティカル・シンキング」(批判的思考)とは、要するに「根拠を厳しく追求した上でないと採用せぇへんで!」というコト。
なので根拠ガバガバのトンデモを批判する懐疑主義とは親和性が高い…というかおおむね一緒。
実際、疑似科学批判で有名な菊池聡が何冊ものクリシン本に関わってたりするし。


近年、「右でも左でもない、普通の日本人です!」と自称してる人は大体ネトウヨさんですが…
パオロ・マッツァリーノはペンネームこそイタリア風ですが、本来の意味での「右でも左でもない、普通の日本人」。
でも普通の日本人なら「やや左寄り」がデフォだし、特にインテリはそうなりがち。
マッつぁんもご多分に漏れず、実質リベラル。

そらクリティカル・シンキングを標榜してる人が政治的トンデモさんであるネトウヨとか支持する筈もなく。
本書も「反日」「憑き物保守」の批判にそれぞれ一章を充ててますが、コレは勿論ネトウヨさんのコトです。

ただし、ご本人は
「保守と対立するのは革新であって、リベラルちゃうやろ。
保存かつリベラル、もありうるやろ」

という立場。

マッつぁん的にはリベラルとは、
◉客観的な事実に基づき
◉価値観の違う人とも議論できて
◉どの様な立場も万能でないと認め、間違いは認めて改められる人
◉要するにクリティカル・シンキング(批判的思考)ができる人

のことだそうです。


…コレ書いてる間にちょうどXで↓こんなの発見。


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↑引用元の動画付きは↓こちら。


https://x.com/masirito22/status/1970834224455524556



さすがリベラル・デモクラティック・パーティの総裁やで!
まぁ世間が極右化してるせいで、タカ派の右翼が相対的に穏健な中道に見えちゃうのはどうか、とも思いますが。


ちなみにこの「革新とリベラルは違う」にちょい似たものとして、
「右翼と保守は違う」
「左翼とリベラルは違う」

みたいな主張ってちょこちょこ見るよね。
まぁ大事なコトなのかもしれませんが、私は特に区別してません。

ちなみにそういうの言い出す人たちって、しばしば
「そんな基本的な区別すら付いてないのか」
とか上から目線でちょいムカッツなのですが、それはさておき。

「ではどう違うのか? それぞれの言葉の定義は?」
ってなると…
スゲー個人的というか、普遍性のない定義だったりしがちよね。
居酒屋談義における「『愛』と『恋』の違いは何か」とかと同じで、その人の勝手なイメージに基づいた独自解釈。
「『恋』は利己的だけど、『愛』は相手を思いやるものなんだよ!」
…そんなんソイツのさじ加減ひとつやん…

なのでうっかり
「なるほど、では私も今後はその定義にしたがい、右翼と保守を区別しますね」
とかやっちゃうと、皆さんにその個性的すぎる定義を押し付けることになっちゃう。
ポピュラリティーに欠けちゃいますよね。
なので、最大公約数的に「右翼=保守」「左翼=リベラル」でやらしてもうてますー。

マッつぁんの区別は納得できるし不快感もないのですが、そういう事情で私は今後もわりとそのまま。
もしマッつぁん流の区別が必要になった時は、
「普段はあまり区別してませんが、厳密に言えば…」
とかその場で書けば済むことです。


で、この本、いつも通り面白かったのですが、特にびっくりしたのが竹田恒徳について結構な紙幅を割いてること。
この人は竹田恒泰の祖父にあたるのですが、ぐう聖だった模様。
そして先ほどのリベラルの話を蒸し返すと、この人こそが「リベラル保守」だったというのですね。
要約すると↓こんな感じ。


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竹田恒徳は「スポーツの宮様」と呼ばれ、日本オリンピック委員会(JOC)の委員長を務めはりました。

そして自身は日の丸大好きっ子なのに、
「オリンピックは個人を表彰するのが筋なのに、国旗やら国歌やら持ち出して、国威発揚の場になってもうてるやん。
もう国旗や国歌は廃止しようぜ!
国際オリンピック委員会の委員も半分以上は廃止派やし、もうすぐなくなるやろ
!」
とか言ってた模様。

コレはこの人だけが勝手に言ってた訳ではなく、50年代から80年頃まではそういう運動が実際にあって、実現一歩手前まで肉薄してたのですね。


さらに竹田恒徳、晩年は旧陸軍将校の親睦組織「偕行社」の会長に。
竹田恒徳が在任中の1984年、会報『偕行』は南京事件の検証記事を一年に渡って掲載します。

編集部の加登川幸太郎は事件当時、陸軍大学校の学生の身。
その学生の耳にすら大規模な不法行為の噂が入っており、当然、軍上層部も知っていた、と。
戦争経験者が高齢化する中で、検証するなら今しかない、と連載を決めた模様。
連載では不法行為による殺害数は1万3000人とされ、『中国人民に深く詫びるしかない。まことに相すまぬ、むごいことであった』と結ばれています。

さらに1989年、偕行社は連載に加筆し、南京事件の史料・証言を集大成した『南京戦史』を刊行。
こちらでは犠牲者数は3万人に。
中国側の主張する20万人も、まぼろし派の主張も、どちらもおかしい、と美化も卑下もせずに現実の戦争に向かい合った元軍人たちの結論がこれです。

竹田恒徳はこの連載にも単行本にも関わっておらず、コメントもしていませんが、会長職にあったのでこれらを許可してはいる筈。

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一方、↓お孫さんの最近の発言。

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↓添付画像①

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↓添付画像②

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お祖父ちゃんもお孫さんも「中国側の主張はおかしいやろ」という点では同じなのですが、恒徳の方が「日本は何万人かは殺してる」に力点があるのに対し、恒泰は「中国のデマガー」が力点。

おまけに自身はまぼろし派でもない癖に、まぼろし派の櫻井よし子を援護射撃。
しかも「30万人」という数字は櫻井よしこもラサール石井も出してないのに、竹田恒泰が外から勝手に持ち込んでるやん…

まぁネトウヨさんといえども「南京事件はなかった」という過激な否認主義の『まぼろし派』はごく一部…
普通は事件そのものは認めざるを得ないため、日本では誰も支持してない30万人という数字を持ち出して、相対的に矮小化を図るのがネトウヨさんの平常運転ですけどね。
誰も言ってない主張をやすやすと打ち倒して「勝ったどー!」とアピールする藁人形論法。



マッつぁんは「理性と知性のおかげで世界は平和になってきた」とします。
ちなみにこの辺を根拠付けるデータの集大成としてスティーブン・ピンカーの『暴力の人類史』を挙げてはります。スゲェちゃんとしてるー!

一方、保守は「理性と知性を疑うのが保守」とか言いがち、と指摘するマッつぁん。
まぁ保守の理論的源流であるバークもそんな感じのコト言ってたよね。
しかしマッつぁんはおおむね↓こんなコトを考えます。


「いや、左翼だって別に『理性と知性は万能なんじゃよー!』とか言ってなくね?
それらには限界がある、なんて皆知ってるやん。
そんなん別に保守の専有物ちゃうで。
『保守だけが分かるんや』って言うなら、保守は理性や知性は疑う癖に、保守の万能性は疑わない、ってコトになりますやんか?
理性や知性は万能じゃないけど、充分に役立つやろ」



確かにー!
そして保守については↓こう言います。


「過激な保守はごく一部で、ほとんどは穏健。
そして保守は『考えなくていい』。
コレは悪口ではなく、それこそが保守最大のメリットなんよ。
ファッションでもトラッドな格好しとけば無難やん?
これまで通りにするだけだから、ラクで便利で無難。大成功もないけど大失敗もない、それが保守。
毎回いろいろ考えることの大変やん?
だから老人は保守化するんよ」



なるほどー!
この辺は私がずっと繰り返してきた、

「保守は基本的にヒューリスティック、つまり節約的な思考で大雑把な答を導き出すのが得意。
それはヒトが進化してきた、熟慮する暇もなく捕食者や敵部族に襲われる環境で生き延びるには役に立つやり方だった。
だが現代はそうではなく、熟慮する時間はたっぷりある」

「左翼は啓蒙主義を受け継いでるので、理性や論理を重んじる」

という話とも整合的ですね。

さらにマッつぁんは言います(大意)。


「新しい画期的な何かを発明するのは革新の人。
保守は新しいものをリスクと捉え、採用しない。
こなれて無難になったとこで採用する。
無難な次善の策を採用し続ければ大失敗はしないので、コレはやり方としては有効。
でも『考えずにそこそこ正しい』に慣れると、自分の正しさを絶対化して押し付けるようになるから気ィつけなはれや!」



ちなみにマッつぁんは元々は保守的な人間だったので、メリットもデメリットもめためた分かるそうです。
やっぱ今は革新側やん。


そんなこんなで竹田恒徳はぐう聖でしたが、その息子の竹田恆和はというと…
日本オリンピック委員会の委員長を10期も務めてはるー!
世襲の宮家を失ったので、JOC会長を世襲制にしはったんですかね…?
そして贈賄容疑


さらにその息子の竹田恒泰はというと…
裁判所認定差別主義者にしてコンス鑑定士。
政治・経済・下半身と、縦横無尽にスキャンダル
ひいひい祖父ちゃんは明治天皇だったのに、なんか時代を下るにつれ劣化が激しすぎないですか…?

まぁいくら天皇の玄孫でも、常染色体は毎世代、半分に薄まっちゃいますからね…
明治天皇の遺伝子、竹田恒泰には1/16しか受け継がれてないんだよなぁ…。
約6%…消費税分にすら届いてない。

これでは天皇がどんなスーパー遺伝子を持ってても、子孫には伝わらないですよね。
でもそれだと「歴代天皇に伝わるすごい何か」なんて一切無い、ってコトになってしまい、天皇の威光が失せてしまいます。
そこで竹田恒泰は
「Y染色体や! Y染色体だけは薄まることなく男系で伝わるから、Y染色体にすごい何かが乗ってるんや!」
という、根拠ゼロ・願望100の話を信じてはるのですが…

竹田恒泰は「明治天皇のの曾孫」なので、明治天皇のY染色体は受け継いでませんね。
残念!
そらぁ竹田恒泰自身のロジックにしたがえば、いろいろ劣化しても仕方ないっすね〜…。
だって肝心なのは不滅のY染色体だけらしいし。





(※画像は特記がなければXの各当該アカウントより引用)




(03:47)

この記事へのコメント

1. Posted by 习   2025年09月26日 12:14
世界はアメリカに変わり中国が世界のリーダーであると確信しています
2. Posted by 生まれた時から平民   2025年09月26日 15:51
竹田恒泰の祖父ってぐう聖なん?731部隊の参謀やなかったっけ?

ちなみに、なぜかとばされているひいおじいさんについてのWikipediaの記述:
井口嶺の戦いですぐ隣を進んでいた伯爵南部利祥騎兵中尉(奥州南部家第42代当主)が敵弾に当たり戦死したという挿話を伝えているが、実際には南部中尉が戦死した3月4日には[竹田宮恒久]王は日本に帰国しており、ありえない話である

べつに世代ごとに劣化したわけでもなく昔から平気でデマを流してたんやね
3. Posted by ランゲニック   2025年09月28日 08:38
恒泰氏の子は女の子一人しかいないので竹田家本流の劣化?は止まるかもしれないが、恒泰氏にいとこがいて竹田姓なのでそこからまたリスタートする可能性も。
4. Posted by ヤーストレプ   2025年09月28日 18:16
新しい画期的な何かを発明するのは革新の人。
保守は新しいものをリスクと捉え、採用しない。
こなれて無難になったとこで採用する。
↑これも少し違う気がしますね。
確かに革新の方々は、新しい画期的なものを発明して世の中を便利に住みやすくしてくれます(女性やLGBTQや障害者の権利尊重、社会保障の充実など)が、保守右派はリスクとして捉えるのではなく、その恩恵にただ乗りしておきながら革新の方々が作り上げてきた様々な実績を盗んで自分のものとしてデマなプロパガンダを撒き散らして都合よく汚く採用するのです。
例えば女性のミニスカートなんかもそうですが、当初は女性の新しいファッションとして登場し、右派から様々な攻撃を受けてきたわけですが、今では女性に対する性的対象化を煽動するファッションに作り変えてしまい(これは表現の自由戦士やアンチフェミのようなエロ特化型保守のせいでもありますが)、結果的に女性差別の象徴になってしまったこととかもそうですね。
同じくフランスにおける政教分離も、当初はカトリックと政府の関係を断ち切るための、つまりは革新的な政策だったのですが、今では移民特にイスラム系の方々を差別するファシズムで国粋主義なイデオロギーに成り下がったのと同じですね。

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