ちょっと旬を外した話題ですが、他サイト様がまとめてくれないのでウチでやるシリーズ。

Xで↓こんなん発見。
紀伊國屋が何やら謝罪 & 削除した模様…だけど、削除されてるのでなんの話やら。





…と思いきや、何があったか経緯が分かるスクショ↓が出回っており、何となく見えてきましたー。


↓出回ってるスクショ①



↓出回ってるスクショ②




…つまり、

◉新潮新書から『おどろきの「クルド人問題」』という本が出る
　　　↓
◉紀伊國屋がこの本をおすすめするポストを投稿
　　　↓
◉鶴ヶ島市議の福島めぐみが『ヘイト本を宣伝しないで』と投稿
　　　↓
◉コレを受けて紀伊國屋が謝罪&削除

という流れ。
もちろん、そこからの

◉ウヨちゃんが言論弾圧だの何だの言い出す

もあるよ！


ではそもそもこの本、どういった内容かというと…
↓朝日新聞系列の雑誌「AERA」が割と能天気に紹介してたり。


【AERA DIGITAL】
『「外国人は出ていけ！」と「ニホンジン、シネ！」の間に何があるのか？　埼玉県川口市に「住んで」みて、見えてきた真実とは』
https://dot.asahi.com/articles/-/263373

↑いや、「ニホンジン、シネ！」は結局、「病院に行け」と言ったのをウヨちゃんたちが空耳アワー的に「日本人死ね、と言った！」と言い立ててただけの、ウヨのから騒ぎだったじゃないですか。


一方、何故かあの産経新聞が福島めぐみ市議に質問し、その回答を掲載。
市議の意図がきちんと紹介されてたり。
お、おう…どうした産経！？


【産経新聞】
『「クルド人をことさらに危険視させる書籍はヘイト本」紀伊国屋抗議の福島氏コメント全文』
https://www.sankei.com/article/20250902-GIPIHXQVABFXPBJ4S763UTIPMA/


【産経新聞】
『「ヘイト本宣伝するな」市議指摘で紀伊国屋がクルド人問題書籍のX削除、双方の言い分は』
https://www.sankei.com/article/20250902-2SHKT53QKRB2PCZQFYDT6ZHV3I/

そして紀伊國屋の謝罪ポストに付いたリプライが↓こちら。
ウヨサヨ問わず呉越同舟、玉石混淆でお送りしまーす(表示順)。









↑この２つはちょっと寄り道して、その上のポストへのリプライ。

↓元のルートに復帰しまして。










↑福島めぐみの主張は「不快だから置くな」じゃなくて、「差別はあかんやろ」なんですが…
しかもソレ、この人の添付画像にも書いてあるんですけど(前掲)。


あと↓こんなポストも。










さて、ウヨちゃんたちの意見は煎じ詰めると

◉「言論弾圧だ！」
◉「異論があるなら議論しろよ」
◉「事実を指摘しただけ」
◉「企業へのヘイトだ！」
◉「誰が、どうやってヘイトの基準を決めるんだ？」

あたりに集約できそうですね。


◉「言論弾圧だ！」
　　　↓
え、抗議するのは自由やろ…
そしてソレを受けた書店が反省して謝罪・削除するのも自由やろ。
別に議員が権力を使って強制的に削除した訳ちゃうのに、ドコが言論弾圧…？

あとウヨちゃんかてしょっちゅう抗議やら不買運動やらやってるやん。
不買運動って「商売上、こんなんされたら困るやろ？　嫌なら俺らの言うこと聞けよな」っていう圧力ですよね？
抗議が言論弾圧になるなら、不買運動も言論弾圧ってコトにはならないの？
ウヨちゃんの主張って大体ダブスタよね。


◉「異論があるなら議論しろよ」
　　　↓
「寛容な社会であるためには、不寛容な意見を許してはならぬ」という『寛容のパラドックス』。
アレって不寛容な意見を排除しちゃう訳で、「議論しろよ」の真逆っぽいじゃないですか。
でもアレ唱えたカール・ポパーも
「ギリギリまで議論はせーよ」
言うてたり。

となると、
「ほら見ろ、不寛容な意見は排除しろ、とまで言ったポパーですら議論の大切さを訴えてんじゃねーか！
やっぱパヨクは頭おかしいわ」
とお思いかもしれませんが…
ポパーが想定してるのは「学者同士が議論のルールを守って健康な論争を行う」みたいなコトやろ。

当時はインターネットとか存在せず、そもそも議論のルールすら理解していない素人が乱入してくる、とかは想定されてないんだよなぁ…
その頃は今のように「正しいこと」より「とにかく注目を集めること」が評価につながるアテンション・エコノミーな世界ではなかったですよね。
双方の主張をじっくり検証するのではなく、その場で上手いコト言って相手を短くえぐった方が勝つレスバRTAフリースタイルダンジョンな世界でもなかったし。

今の世界では「議論による自浄作用」みたいなものには全く期待できませんが、その辺どうお考えなんですかね…？

あとそもそも「表現の自由」は左翼的言説やん。
「表現の自由」を大切にしてきたのは左翼。
「表現の自由」を差別の言い訳にしてきたのがウヨちゃん。
「表現の自由」はギリギリまで守られるべきですが、ソレは「差別し放題」という意味ではありません。
ていうか、
「何言っても良いけど、差別だけは勘弁な！」
という、たった一つのルールが何で守れないの…？

自由というのは無制限なものではなく、
「他者の権利を侵さない」
という範囲でのみ保証されるものです。
人の権利を踏みにじっておいて
「あ〜窮屈な世の中だ〜！　差別ひとつできやしない」
とかどんだけ甘えてんのよ？


「寛容のパラドックス」については以下のエントリを参照。


《保守「寛容のパラドックスは誤用！」←は？》
https://wsogmm.livedoor.blog/archives/14365962.html

アテンション・エコノミーについては以下のエントリを参照。


《ETV特集『フェイクとリアル〜川口 クルド人 真相〜』衝撃の内容←迫りすぎててそら消されるわ》
https://wsogmm.livedoor.blog/archives/27427955.html



◉「事実を指摘しただけ」
　　　↓
ウヨちゃんが持ち出す、差別の言い訳のド定番。
コレは大抵、

「◯◯人はこんな事件を起こした、コレは事実だ」
　　　↓
「したがって◯◯人は日本から叩き出すべきだ」

といった形を取ります。

が、①「そもそも事実ではない」こと多すぎ。

そして②「全体の傾向と個別の事例がゴッチャ」。
例えば世界中のあらゆる文化で殺人者は女性より男性が圧倒的に多いのですが…
だからといって
「どうせ今回の事件も男の仕業やろ」
とか
「犯人は男であるお前に違いない」
とか言っちゃうのは乱暴すぎっしょ。
ソレと同じで、例え事実だとしても特定の事件やら全般的な傾向やらから、ある個人について何か言うことはできひんやろ…

そして③「よく見ると『こうするべき』とかの価値判断を含んでて、全く『事実を指摘しただけ』ちゃうやん」。
この例で言うと『◯◯人は日本から叩き出すべき』という部分がそうですね。

まぁ左翼は啓蒙思想を受け継いでるので科学とか論理とかと親和性が高く、緻密な議論が得意なのですが…
右翼は伝統とか宗教とか根拠レスなもんと親和性が高い上、「最速でそこそこ使える答を出す節約思考」(ヒューリスティック)に特化してるので、話が粗いんよ…。


『「保守のIQはリベラルより78%高い←は？」』
https://wsogmm.livedoor.blog/archives/10239701.html


◉「企業へのヘイトだ！」

ウヨちゃんはヘイトだヘイトだ言われ続けてるので、機会あらば「そっちこそがヘイトだ！」でクロスカウンターを決めたがります。
でも企業は好きで起業したものなので、「自分で選べない属性による差別」であるヘイトスピーチには当たらへんよね…？

ヘイトスピーチの定義も調べずに「そっちこそがヘイトだ！」とかめくらめっぽうパンチを振り回しても、当たらないですよ？


◉「誰が、どうやってヘイトの基準を決めるんだ？」

コレって
「ヘイトの暴走を止める役目を誰が負い、そしてソイツの暴走を誰が止めるのか…？」
ってコトやろ？
それは「誰が見張りを見張るのか」という古典的な問題の一変種よね〜。
ラテン語だと「Quis custodiet ipsos custodes?」。
古代ローマ時代の詩人ユウェナリスが風刺詩に書いてます。
ヒーロー映画『ウォッチメン』のテーマにもなってるし。

あと「基準は？」というのは結局、
「セーフ/アウトをどこで線引きするのか」
ってコトですよね。

その2つは別にヘイトスピーチに固有の問題でも何でもなく、社会のあちこちに普通にあるやん。
ていうかウヨちゃんだって気に喰わないアレやコレやを熱心に批判してる訳で、じゃあ
「左翼を見張るウヨちゃんを誰が見張るのか」
とか
「ウヨちゃんはココまでだったら批判していいよ、という基準はどこなのか」
という、全く同じ問題を抱えてるのでは。

結局この問題、もはや「差別して何が悪い」とは言えなくなったウヨちゃんが
「でもでも、だったら暴走を見張る奴の暴走は？　判断の基準は？」
と必死でどこにでもある問題に訴えて、差別を正当化しようとしてるだけなんじゃ…？
しかしそんなコトしたって、「差別はダメ」というコトを認めざるを得なくなってる以上、無駄の無駄無駄。

そしてどこにでもある問題は考えても割としゃーない。
古代ローマ時代からある難題にいきなり答なんて出ますかいな。

例えば『ミュンヒハウゼンのトリレンマ』いうのがあってですね。
コレは
「どんなモンでも、根拠を問い続けていくと3パターンのどれかにハマって詰む」
というもの。
悪魔の2歳児みたいに何にでも「何で？　何で？」って聞いてみましょう。どちて坊や。

【パターン①】
「人間ってどうやって出来たの？」
「神様が作ったんだよ」
「じゃあその神様は誰が作ったの？」
「えーと…それはスーパー神様が…」
「じゃあそのスーパー神様は？」
「えーと…きっとハイパー神様が…」
という無限後退。

【パターン②】
「天国ってどこにあるの？」
「地獄の上だよ」
「じゃあ地獄はどこにあるの？」
「天国の下だよ」
「じゃあ天国は？」
「地獄の上さ」
と、根拠が同じところをクルクル回っちゃう循環論法。

【パターン③】
「ぼくはどうやって産まれたの？」
「ソレは気にしなくていいの！　とにかく産まれたの！」
と議論を打ち切る、ドグマの導入。

どんなものも、根拠を問い続けると必ずこの3パターンのどれかに陥ります。
ではこの世のあらゆる根拠は不完全で、このトリレンマを解決するまでは全く意味をなさないのかというと…別にそんなコトないやろ。

という訳で、そもそもこの手の問題をわざわざ持ち出す意味ないよね。
いたずらに必要のない議論を吹っかけてるだけやん。

まぁ結局、ウヨちゃんもあからさまに差別を正当化するのは無理筋だと薄々認め出してて、こんなんでアヤ付けるしかなくなってきてるんやろな、と。
ココまで追い詰めてこれたのはひとつの成果なのかも。



ちなみに新潮を批判した福島めぐみのプロフィールは↓こんな。









完全無所属、言うてはるだけあって、固定ポストも超党派。


一方、問題の本の著者はというと…
朝日の記事を読めば分かりますが、もともと自身の婚活体験を書籍にしてる、いわば体当たり系ライター。
産経の記事を見ると本の内容も問題山積みで、クルド人問題について事前にちゃんと勉強した形跡ないやん。
要するに「素人目線で見てみたよ」というのが売り。ゴーマニズム。
その手法、複雑な問題を扱うのには絶対向いてないやつやん…。


という訳で今回の話は終わり。
後は絶対に必要ない、ほぼ趣味的な話なので読まなくてもじょぶじょぶだいじょぶ〜。



【こっから余談】

「異論があるなら議論しろよ」の人は「良し悪しは読者が決めればいい」とも言うてはりましたな。

しかしそもそも書籍には、読む価値のあることが書いてなきゃダメでしょ。
間違っててもナンセンスでも何でもアリなら、ランダムな文字列でも出版したらええやん、いうコトになるのでは。

猿がでたらめにタイプライターを叩き続けたとしましょう。
充分な時間さえかければ、いつか猿は偶然の力によって、シェイクスピアの全作品を完コピでタイプするでしょう。
これは『無限の猿定理』として知られています。


【Wikipedia】
『無限の猿定理』

もちろん、猿がタイプする大半の書類はランダムにアルファベットが並んだ、無意味なノイズに過ぎません。

ではここに「このお猿のタイプが無意味かどうかはまず出版して、読者が決めれば良い」などという人が現れたら…？

この人が言ってるのはそういうコト、としか私には思えませんけどね…。


ちな『無限の猿定理』の成果↓。


【Gigazine】
『サルが長い時間キーボードを叩き続けるとシェイクスピアの作品を打ち出すという「無限の猿定理」』
https://gigazine.net/news/20081003_infinite_monkey_theorem/

もちろん、現実的には無理ですよ？


【Gigazine】『「サルがタイプライターを打ち続けても宇宙滅亡までにシェイクスピア作品を書けない」という研究結果』
https://gigazine.net/news/20241101-infinite-monkeys-theorem-shakespeare-typing/


ちなみに同様のアイデアとして、ホルへ・ルイス・ボルヘスの小説『バベルの図書館』が挙げられます。
コレはあらゆる組み合わせの文字列が書かれた本を収納した図書館が登場するやつ。
もちろんその蔵書の大半はランダムな文字列の並ぶノイズ。
しかしごくごく一部には意味のある文章で書かれた本もあります。
というか逆に、これまでに書かれたあらゆる文章が全て揃ってもいる訳で。
あなたが今読んでる、この文章もまた確実に「バベルの図書館」に並んでます。
英語版・ローマ字版・アスキーコード版などの形にはなるでしょうが。



ちなみにタイプライターを叩く猿は↓以下のコピペにも登場します。

「読者が決めればよい」というのは結局、その本をどう捉えるかは「人それぞれ」というコト。
そんなん言うてる件の人に、このコピペを捧げます。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「人それぞれだと思います。」 

　うわー、理解できん！ 
　この言葉の意味はなんだ？　矛盾してるよね？　どんな結論をも導けますよね？　自分の意見を他者に公表する手段であるところの掲示板で、意見表明という行為を否定するこの投稿の意図は？　コミュニケーションの無意味性を信じて全世界の掲示板およびメーリングリストの根絶をはかる情報テロリストですか？　断絶され孤立した自己が互いにつながることなく一つ一つの殻の中で完結し他者にその中身をさらすことのない静的な世界を目指していますか？　あらゆる主義主張は相対化され存在しうるすべての意見が同等の価値をもつゆえにタイプライターを打つ千万匹の猿の千万行の言葉すべてが同等でありいかなる言明もホワイトノイズの彼方に埋没して語ることに意味の失われた強い相対主義ですか？ 
　人様に聞いてもらうほどの考えはないけれど投稿はできるよという、外部メッセージのみを有する情報ですか？　私はその問題について語るべき意見をもたないがそれでもなおかつここに存在しているという自己存在の外世界に対する表明ですか？ 

　まあ、わかってんだけどね。ふ。つまり私はあなたの意見に納得できません、ということでござろう？　あなたの議論はどうも面白くありませんな、ということであらせられよう？
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なお↑このコピペ、いくら検索しても出てこなーい。
結局、昔書いた日記に残ってたのをサルベージしました。
2chのコピペなんてまとめサイトがいくつもあったし、全部どっかには保存されてるやろ、くらいに思ってましたが…全然そんなことなかったです。
やっぱネット上の情報はすぐ消えるから、まめに自分で保存せな！








【資料集】

画像は当該の各記事より引用。


【AERA DIGITAL】
『「外国人は出ていけ！」と「ニホンジン、シネ！」の間に何があるのか？　埼玉県川口市に「住んで」みて、見えてきた真実とは』
















【産経新聞】
『「クルド人をことさらに危険視させる書籍はヘイト本」紀伊国屋抗議の福島氏コメント全文』















【産経新聞】
『「ヘイト本宣伝するな」市議指摘で紀伊国屋がクルド人問題書籍のX削除、双方の言い分は』



















(※画像は特記がなければXの各当該アカウントより引用)