NHK『BS世界のドキュメンタリー』で
「ハルマゲドンを待ち望んで 米国政治を動かす福音派」
というのが前後編に分けて放送されてましたー。
2023年のノルウェー、スウェーデン、ドイツ、フィンランドのTV局による共同制作。
キリスト教福音派は「聖書に書かれていることは全て文字通りの真実」としており、進化論を否定。
そういう人たちがアメリカにおよそ1億人もいて、共和党の太筋客となっているのです。
そのせいで共和党は中絶禁止・LGBT反対の立場なのですね。宗教的理由かよ。
その辺の絡みで長年、個人的に福音派の動きには注目していました。
例えば↓このエントリとか。
『空飛ぶスパゲッティ・モンスター、クトゥルー神話の怪物としか思えない』
https://wsogmm.livedoor.blog/archives/15709640.html
しかし一方でよく分からないことも。
なんでアメリカ、すぐイスラエルの肩持ってしまうん?(節子)
まぁリベラル派は「ユダヤ人差別よくない」という理由で親イスラエルになるのも分かる気がします。
でもトランプ政権までわざわざエルサレムにアメリカ大使館を移転させる等、何かと親イスラエル。
トランプを支持する福音派はキリスト教、イスラエルはユダヤ教…
どちらも旧約聖書を聖典とするアブラハム宗教ではありますが、同じトコの別派閥って一番揉めるやつやん。
日本で言うと創価学会と日蓮正宗がお互いに「邪教」と罵り合う、的な。
しかしこの番組ではその辺をスッキリ解説。
でも福音派がライバルである筈のイスラエルに肩入れする理由が想像以上の超トンデモでしたー。
【番組の要約】
※()内は筆者によるコメント
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福音派はアメリカ国民の1/4を占め、歴代の共和党から出た大統領は彼らの支持なしには当選できなかった。
福音派の多くはユダヤ人の国家ができた後に、最終戦争ハルマゲドンが起き、キリストが再び現れると信じている。
そのためユダヤ人の国家、すなわちイスラエルに肩入れする。
コレを「キリスト教シオニズム運動」と呼ぶ。
さらにキリスト教と現実の政治を結びつけるという考えが「キリスト教ナショナリズム」。
福音派の一部は、「神に選ばれたユダヤ人がエルサレムを全面的に支配すべき」と考えている。
そして最終戦争ハルマゲドンの後にキリストが再臨する、と本気で信じている。
実際、『イスラエルのためのキリスト教連合』という宗派まであり、彼らはアメリカとイスラエルの関係を強化することでハルマゲドンを引き起こし、キリストの千年王国が実現することを望んでいる。
彼らは世界が危険になっても「ハルマゲドンが近づいたー!」と喜ぶだろう。
彼らは恵まれない人のための地域ボランティアを熱心にやったりもする。
黙示録では再臨の際は「上のものは下に、下のものは上に」なるとされていているからだ。
彼らは再臨をかぶりつきで見たいから、という理由でボランティアに精を出しているのだ。(つまりエキシビジョンの入場チケットを手に入れるため。何とも不純〜!)
彼らの活動は米軍にも影響を及ぼしている。
米軍は長らくイスラエルに基地は絶対に置かない方針だったが、トランプが事実上の基地を作った。
もし攻撃されたら対応せねばならず、軍が戦争に引きずり込まれる危険性がある。
さらに従軍牧師に福音派が増えている。
牧師たちはシゴキで弱ってる新兵につけ込む様に指示されている。
軍隊内で布教活動をする団体は30以上に及ぶ。
しかも聖書や十字軍モチーフが軍の装備品やエンブレムに用いられている。
イスラム過激派やテロ組織に
「キリスト教が攻めてきた、戦闘員を集めたろ!」
という口実を与えてしまう。
最終戦争を待ち望んでいるのはイスラム教過激派とキリスト教福音派。
どちらも「自分たちとそれ以外」の戦いだと思っている。
福音派にとってコレは
「真のキリスト教徒とそれ以外」
「政治的見解の異なる全ての人たち」
との戦いなのだ。(分断が捗る)
福音派は平和ではなくハルマゲドンを待ち望んでいる。
イスラエルを支持するのは彼らが考える終末論のためで、イスラエルの人々の幸せのためではない。
(福音派にとってイスラエルは救済の対象ではなく、ゲームを有利に進めるための捨て駒に過ぎない)
仮にイランがイスラエルを核攻撃しても、福音派は
「やった、予言通りや! これで最終戦争、イエスの再臨、そして天国行きやー!」
となるだけ。
世界最強の軍事力、数千発の核を持つ米軍に福音派が手を伸ばしている。
彼らは政策のメリットやデメリット、パレスチナ人の人権問題等については語らない。
そしてトランプに助言もする。
実際、トランプはエルサレムにアメリカ大使館を移転した。
彼らにとってイエスは「気のいい大工のおっちゃん」ではない。
イエスは「右の頬を殴られたら左の頬を出せ」と言ったが、「私は平和ではなく剣城をもたらすためにやってきた」とか「剣が必要だから買え」とも言った、というのが彼らの言い分だ。(そして彼らは剣の話だけを重視して頬の話は都合よく無視する。イエスの言葉のうち、自分の信念に合致しないものは軽視しても良いらしい)
黙示録ではイエスは馬に跨り剣を持ち、神に背く者を処刑する。
剣は銃のことで、キリストはAR-15(アサルトライフル)を掲げているに違いない、と言う者もいる。
福音派が推した者が大統領になり、
福音派がその大統領にあれこれ吹き込む。
世界最強の軍隊と核を自由に動かせる大統領に。
これはイスラムの宗教国家とどう違うのか?
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…という訳で、福音派はハルマゲドンを起こすための起爆装置としてイスラエルを必要としてて、そのためにイスラエルに便宜を図ってる、というコトですね。
しかもその根拠は「聖書にそう書いてあるから」…
なんや「占い師がそう言ってたから」と変わらんレベルのあやふやさ。
そして福音派の目論見通りになった場合、それで起きるのは福音派1億人の救済だけで、残りの全世界約80億人は救われず地獄行き。
実際にはただ単に世界レベルの大戦によって恐ろしい犠牲が払われるだけですよね
こんな一部の人のための政策が許される訳ないやん。
しかもソレが実現するならともかく、全てが宗教的妄想という砂上の楼閣て。
「ハルマゲドンが来るの、待ちきれへんからこっちから起こしたろ!」
とか発想がオウムなんだよなぁ…
ちなみにオウムが大暴れした95年には↓こんな本が出てます。

(※↑書影はAmazonより引用)
さらにそれ以前、89年の時点で↓こんな本が!

(※↑書影は「日本の古本屋」より引用)
うわぁモロにこの問題を扱ってるやん!
あと番組内で、福音派の
「人間が和平のために努力しても無駄無駄無駄で、終末は神が来ると言ってるんだから来る」
みたいな主張が紹介されてたのですが…
ヒトの努力に意味がなく、神がそれほどまでに絶対的な存在なら…
福音派がイスラエルに肩入れしなくても、神は自力でちゃんとハルマゲドンを起こせるはずですよね?
神は無限の力を持っているのだから、ヒトの手など借りる必要は全くなく、ハルマゲドンのために福音派が努力する必要もないのでは…
結局、信者こそが神の全知全能&無限の力がどんなものか全然分かってないんじゃよー。
この問題については下記のエントリで扱っています。
『むしろ信者さんサイドの信仰心が足りてない件について』
https://wsogmm.livedoor.blog/archives/16422591.html
なお、番組では全米の福音派信者がバイクツーリングしながらカンザスに集結する様子を取材しているのですが…
密着取材していた牧師が時速90キロで走行中に失神し、事故って入院。
しかし何とか復帰し、「神のおかげ」言うてはりましたー。
えらい都合の良い解釈ですな。
そもそも事故自体が「このツーリングはやめとけ」という神からの警告、という風には解釈しないんですね…
そういうトコやぞ。
この番組、今のところ再放送予定はない様ですが、『BS世界のドキュメンタリー』で紹介された海外ドキュメンタリーはしばらくすると地上波の『ドキュランドへようこそ』枠で放送されたりするので、チェックしつつ待つが吉。
さて、アメリカの状況は理解できましたが、では我らが日本はどうなってるかというと…
『キリストの幕屋』というのがいますねぇ。
イスラエルに肩入れしつつ、『新しい歴史教科書をつくる会』(つくる会)、日本会議、『北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会』(救う会)、参政党…と、ウヨいトコ総舐めで接近してはります。
福音派とそっくりのやり口。
ちょうどXで↓こんなまとめを発見したのでご紹介。










↑このリンク先が↓コレ。
【note:ミルトス】
『「パレスチナ問題」を考える際に押さえておきたいポイント』
https://note.com/myrtos/n/nabbe2c4e3d4f
そしてやはりNHKの番組を観た人からの↓リプライが。

コメント
コメント一覧 (4)
はて、この理由で国民が最も嫌う戒厳令というタブー中のタブーをやらかし案の定大統領選挙で自党を大敗させたバカなYoutubeスピリチュアル中毒大統領がお隣の国にいましたな。
https://mainichi.jp/articles/20241223/k00/00m/030/041000c
日本といい韓国といいアメリカの影響下の国に右派にも宗教どもがシロアリのように食い込んでいるのかもしれない。
wsogmm
が
しました
今プロテスタントのほうが原理主義で反動なイメージがあるのはやはりプロテスタント国家のアメリカが超大国だからですかね。
wsogmm
が
しました