『絶望に効く薬ーONE ON ONEー』という漫画がありまして。
漫画家の山田玲司がいろんな著名人にインタビューし、その人生について語ってもらって最後に一言「希望の言葉」を引き出す、という構成。
その中に竹内久美子や千葉麗子がゲストになってる回があることをキャッチしたので、入手してみました。
チバレイは2005年刊の5巻、竹内久美子は2006年刊の7巻に載ってます。
(※画像は『絶望に効く薬ーONE ON ONEー』5巻より引用)
(※画像は『絶望に効く薬ーONE ON ONEー』7巻より引用)
お二人がまるで悟りでも開いたかの様に描かれてて素敵〜(素で敵)。
チバレイはネトウヨ仲間である加藤清隆にセクハラされちゃってた人ですね。応援してるぞがんばれ。
かつては「ゲームやパソコンに詳しくコスプレもしちゃう」というサブカルチャー系アイドルの嚆矢としてオタクにバカウケ。
政治的には当初は左寄りで反原発運動に関わってましたが、突如としてネトウヨ化しちゃいます。
「左出身の右」というのは「右出身の左」である雨宮処凛と対照的。
そしてチバレイ、「パヨク」という言葉の成立に深く関わってるんよな。
【ハンJ速報】
『ネトウヨ「パヨクの語源は千葉麗子が左翼活動家時代に付き合ってた男が言った「ぱよぱよちーん」から来てるんですよw」俺「お、おう」』
https://nanyade.livedoor.blog/archives/30703392.html
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16 :番組の途中ですがアフィサイトへの\(^o^)/です :2021/08/15(日) 00:03:11.22 ID:I1zB5R450.net
反レイシスト運動やってたIT関連の久保田というオッサンが昔、千葉麗子と付き合ってたんだけど、その時に千葉のことを「ぱよちん」とか呼んだり
「おはぱよー」とか声をかけてたわけ。馬鹿ップル会話てとこな。
千葉麗子は当時は左派運動や反原発運動に関わってた
で、千葉とオッサンはその後別れたわけだがそれが理由かはわからんが、千葉は紆余曲折あってその後、ウヨ側に鞍替えした。
ここまでの経緯でまずネトウヨは「一方的に千葉が好意をよせられてた」というデマを流しているで注意な。
しかし、実際には、別れ話で千葉がおっさんの実家におしかけたりしている。千葉がストーキングしてたんだよ。
また、大人の恋愛で自由ではあるけど、一応、オッサンと千葉は不倫関係だった。
で、時は流れ、はすみとしこって言う幸福の科学関係者のレイシストのイラストレーターが、シリア難民差別の作品を公開したんだけど
それなりに騒動になったんだよ
これに、「いいね」をしてる人達の情報を、反レイシスト側がまとめる運動をしてた。
で、そん時に、その反レイシスト側に、千葉と付き合ってたオッサンもいた。
で千葉がそのオッサンの個人情報を私怨もあって漏らした。で、当然のようにウヨ側が報復で、そのオッサンの個人攻撃を徹底的に始めた。
そこから、そのオッサンの過去の「はずかしい、馬鹿っプル語」を揶揄して
ネトウヨ側が「ぱよぱよちーん」と連呼を始めた
で、ネトウヨは「ぱよぱよちーん」と「サヨク」をくっつけて「パヨク」て言葉を作って左派側や、反レイシスト側を「パヨク」と呼びだした
ほんとにアホらしいけど「アホみたいですよ」と言ってもウヨ側は「効いてる!効いてる!」とかで続けてるわけだ
まぁ案の定、世の中で表舞台では広まらないけどな
ハセカラ語みたいな、「単なるネット苛めの言葉」だからね
(後略)
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左翼に対する謎の蔑称「パヨク」、震源地はチバレイの痴話喧嘩やないか!
この件はネトウヨさん側の見解でもチバレイが絡んでいる点ではおおむね一致。
【ピクシブ百科事典】
『ぱよぱよちーん』
https://dic.pixiv.net/a/ぱよぱよち〜ん
それにしても何故くみっふぃーやチバレイなんぞがゲストに選ばれたのやら。
まず第一の理由としては、山田玲司・竹内久美子・千葉麗子、全員メンがヘルになったことがあること。
そもそもこの連載自体、メンタルいわした山田玲司が復活するために、絶望のドン底から這い上がった人や、逆に飄々と生きている人たちに「希望の言葉」を聞いて周る、みたいなコンセプトだし。
くみっふぃーとチバレイは「メンヘル乗り越えた枠」な訳ですね。他に大槻ケンヂとかもこの枠で登場。
そしてこのコンセプトからも分かる通り、この連載は単なるインタビューではなく、山田玲司の個性が強く打ち出されています。
まぁタイトルも『絶望に効く薬ーONE ON ONEー』なので、インタビュアーは舞台の黒子役ではなく、ゲストと本気でぶつかり合う主役なのです。
で、くみっふぃー&チバレイ起用の謎、この山田玲司の側を深掘りすることで割と理解できる様になるのですよね…
私、昔は結構な山田玲司ファンだったし。
『絶薬』も3巻くらいまではリアタイで買ってたり。
ただいろんな人へのインタビュー集なので、「是非読んでみたい!」と思えるゲストは1冊につきせいぜい1人か2人くらいしかおらず、あとは「…誰?」という感じになってしまうので、何となくフェードアウトしちゃいましたが。
山田玲司の代表作は90年代に連載していた『Bバージン』。
いやもうホントに、この作品がなかったら私なんて一生DTでしたよ。
今も精神的にはDTのままですが…僕は精神的DT貴族に属するッ!(魔少年DT)。
だって『Bバージン』、非モテの生物オタが一念発起して自分を改造し、意中の女性と付き合うまでの話やで?
しかも女性の心理や口説き方まで解説されてるし、それでいて女性を単なる獲物やターゲットとして捉えてる訳でもなく純愛を貫くし。
作者の山田玲司は生物好きが高じてグリーンピースを絶賛したり、温暖化問題を扱った本を書いたりと割と政治的な人物。
チバレイ回の載ってる5巻では辻元清美にもインタビューしてます。
環境問題に興味があってリベラル寄りなのは良いのですが…
作品もそうなんですが、この人、冷静に分析とかしてるけど根が熱血なんですよね。
それ自体はむしろ美点なんですが、やっぱ最後には精神とかを優先させちゃうので、スピリチュアル系に弱い一面も。
で、作中でガイア理論がどうのこうのと言い出したりもしてたり。
ガイア理論というのはですね、ジェイムズ・ラヴロックという人が言い出した、
「地球って温度やら一定に保たれてるやん?
コレって生物みたいじゃね?
もしかして地球って生き物なんじゃね?」
というおもしろ仮説。
ガイアというのはギリシャ神話に出てくる地母神の名前です。
アニメ『六神合体ゴッドマーズ』にガイヤーというロボがいましたが、これもガイアの表記揺れでしょう。
他のロボもいろんな神話に出てくる神から名を採ってるし。呉越同舟。
コイツは男性的デザインでしたが、ガイアは本来、女神です。
まぁ大地を司る神は大体そうよね。
胸を強調したアニメ絵ポスターが「性的搾取だ」としてちょいちょい炎上しますが、『のうりん』だけは許したれよ、農業に地母神的な巨乳キャラが出てくるのは仕方なくないですか?
ただし温泉娘、テメーはだめだ。
そしてガイア理論が浸透するにつれて何やら妙な誤解が広がり、ガイアはスピリチュアルめいた人たちの玩具に。
「もし巨大隕石が衝突しようとしても、ガイアがそれを許さないだろう」
みたいなコト言い出す人まで現れちゃいました。
どう許さないのかガイア。
地球パンチで砕くのか、地球がひゅるっと身をかわして避けるのか。妖星ゴラス。
このガイア仮説をめちゃ批判してたのがおなじみドーキンス先生です。
そもそもドーキンスは「生態学」を表すエコロジーという言葉が「ちきゅうにやさしい」みたいに扱われるのにおかんむり。
なのでそっちの方のエコロジーを嫌味で「ポップ・エコロジー」(大衆的なエコロジー)と呼んだりしてたのですね。
そしてその筋から
「じゃあお前はポップ・エソロジスト(大衆的な動物行動学者)やんけ」
と嫌味で言い返されてみたり。
あんたら子供か?
そういや竹内久美子も山田玲司に「ポップスター」と呼ばれてましたね(冒頭で引用したコマを参照)。俗流スター。
そしてポップ・エコロジーの教祖に祭り上げられたラヴロックとの間で
ド「星は繁殖せーへんから生物ちゃうやろ」
ラ「ほーう、ほなお婆ちゃんは生物ちゃうねんな?」
みたいな泥試合。
お互い大人気なさすぎやろ。
まぁドーキンスは「自然選択を通じた進化」で全てを説明する人なので、生物の様に複雑なものが説明もなくにょいにょい生えてくるというガイア仮説を嫌うのも理解できます。
「自然選択がはたらく」とは平たく言えば「繁殖率に差がある」ということ。
星は自身のコピーを作らないので繁殖率もクソもなく、自然選択が働かないですからね…。
ただしラヴロック自身はポップ・エコロジーからは距離を置いてたり、ドーキンスの『利己的な遺伝子』を好意的に評価してたり、という一面も。
また、ラヴロックは「デイジー・ワールド」という仮想的な例で、どの様にして惑星が「温度を保つ」といった生物の様な恒常性を獲得するかの説明モデルを提出してはいます。
コレはどういうものかと言うと…
デイジー(ヒナギク)に覆われた惑星を想像してみましょう。
さらに「気温が上がり過ぎると、デイジーは白い花を咲かす」と仮定します。
すると太陽光線が多い時は白いデイジーが増えて光線を反射させ、惑星の温度は上がり過ぎずに一定を保つ…という訳ですね。
しかしよく考えるとコレはちょっとおかしい気が。
そもそもこのデイジーは何故暑いと白くなるのでしょうか?
例えば「太陽光線を反射させることで自分が暑くなるのを防ぐため」だとしたら…
ソレは地球の温度調節のためではなく、自分自身のためにやってるだけです。
だったら惑星の温度を下げるのはデイジーの目的ではなく、単なる副産物ということになります。
たまたまの副産物なら、むしろ環境に対してダメージを与えることだって同様にありえるのでは…
実際、酸素がそうです。
現在の我々は酸素がないと生きられませんが、もともとは酸素は生物にとって猛毒でした。
そこへ新登場したシアノバクテリアが光合成の副産物として毒性物質である酸素を環境中に撒き散らしたおし、おかげで多くの生物が絶滅。
そんな中、逆に酸素を利用する生物が現れて、その子孫が我々という訳。
(※画像は
https://x.com/boketejp/status/992962155103309825?s=46
より引用)
そうではなく、「デイジーは自分は得しないのに惑星全体のために白くなるのだ」とするなら…
わざわざ白くなるには何らかのコストが発生する筈です。
それを行うことは惑星全体のために行う「利他行動」ですね。
では白くなる「利他的なデイジー」の中に、白くならない「利己的なデイジー」が現れたとしたら…?
利己的デイジーはコストを支払わない分、利他的デイジーより有利となってびちびち増え、「白くなるデイジーの惑星」はやがて「白くならないデイジーの惑星」に変わってしまいます。
コレは当ブログではお馴染みの「群選択」の問題点と同じですね。
『「国益を考えろ!」←は?』
https://wsogmm.livedoor.blog/archives/18477246.html
そうなるとそもそもこの惑星が一旦は「白くなるデイジー」に覆われた理由も怪しくなってきます。
群選択では、自己犠牲を厭わない「利他的な個体の群」はわがままな「利己的な個体の群」より有利だから選択されたのだ、と説明します(このロジックには先述の欠点があることに留意)。
じゃあこの惑星は、利己的なデイジーに覆われた惑星との間の繁殖競争に勝って進化したんか、という話になり、ここでドーキンスの「星は繁殖しねぇだろ」という指摘が効いてきます。
という訳で、デイジー・ワールドという都合の良い仮想的な例を持ち出したところで、ガイア仮説はやはりおかしい、ということにしかならんのよ。
このガイア仮説、今は割と忘れられてますが、80年代〜90年代には結構さわがれたものです。
あの名作漫画『寄生獣』は、作中にドーキンスの「利己的な遺伝子」は登場しちゃうわ、パラサイトたちは徹底して利己的だわで、そっち系の話だと思われがち…
しかし、あのパラサイトって作品の冒頭で
『地球上の誰かがふと思った』
『人間の数が半分になったらいくつの森が焼かれずにすむだろうか……』
『地球上の誰かがふと思った』
『人間の数が100分の1になったらたれ流される毒も100分の1になるのだろうか…』
『誰かがふと思った』
『生物(みんな)の未来を守らねば…』
という理由でいきなり誕生してるんですよね…。
この
「地球全体のバランスを取るための仕組みが存在する」
「バランスを取るためのその仕組みがどうやって出来たのかは全く説明しない」
というあたりはむしろ完全にガイア理論なんよな。
ついでに言えば、『寄生獣』のパラサイト…
革新的なアイデアだと思われがちですが、実は
「人間や犬を襲って同化し、外見上は見分けがつかない」
「寄生された人間は会話などもでき、行動から見破ることも難しい」
「いきなり変形して頭がばっくり割れたり触手とか出す」
「体のごく一部を本体から切り離すことで見破ることができる」
など映画『遊星からの物体X』(ジョン・カーペンターによるリメイク版)に激似。
話を戻しまして。
山田玲司は『Bバージン』の後、『ドルフィン・ブレイン』という作品を描いています。
これはイルカの脳を移植された少年が地球環境を破壊する巨悪と戦う物語なのですが…
コレって公害や開発で棲家を追われた妖怪がよくやるムーブよね。
あと後発ですが映画『アバター』も
「原住民の肉体(アバター)を手に入れたおっさんが環境破壊する企業と戦う」
というストーリーでそっくし。よくあるテーマ。
またしても脱線しとくと、『アバター』って惑星パンドラの原住民・ナヴィのデザインが完全に「ライオン + ネイティブ・アメリカン」ですよな。
ライオンは一般に「誇り高く、余計な殺しはしないぐう聖な野獣」というイメージ。
実際は子殺し行動とかしちゃうけど。
そしてネイティブ・アメリカンも「太古からの知恵を受け継ぎ、無駄な殺しはせず、自然と調和して生きるスピリチュアルでぐう聖な民」として無駄に持ち上げられがち。
しかし実際は狩猟民が獲物を狩りすぎないのはそうする能力がないからに過ぎず、ライフルとか与えるとばんばん狩りたおす、というデータもあったり。
こういう
「彼らは文明を知らず野蛮ではあるが、高潔である」
といった、西洋人が押し付けるステロタイプな幻想を「ノーブル・サベージ」(高貴な野蛮人)と呼びます。
映画『プレデター』も意匠がネイティブ・アメリカンで、獲物に対して礼節と敬意をもって挑む、といったあたりがノーブル・サベージ。
超近代兵器で一方的に殺戮し、負けそうになると核兵器みたいなんで相手もろとも自爆するけど。
あと現代日本におけるオタクに優しいギャル説話や雨の中で子猫を拾うヤンキー譚もこの「高貴な野蛮人」妄想の系譜上に連なる話よね。ギャル地蔵。
そして話を戻して『アバター』、よく考えると「白人男性が未開の惑星で原住民を率いる」という、あられもない白人酋長ものでもあったり。
ディズニーの『ターザン』はご時世に配慮して原住民が一切出てきませんでしたが、そのかわり「ターザンがゴリラの群を率いる」という驚愕のオチで、「やっぱ白人男性は優秀だからあらゆる集団でリーダーになるべきなんだよ!」という傲慢さが垣間見えるよーな。
またしても話を戻しまして。
『ドルフィン・ブレイン』、「イルカの脳が云々」というあたりが非常に香ばしい。
イルカ業界は何かとスピリチュアル臭がえぐいのです。
というのも昔、ジョン.C.リリーという学者がいてですね。
この人はカウンターカルチャー、ニューエイジ、サイケデリック・ムーブメントなどに影響を与えた人物。ヒッピーが好きそうなモン全部のせ。
で、リリーさんは変性意識状態、要するにラリパッパな時の精神について探求してたのですね。
その流れで感覚遮断タンク(アイソレーションタンク)を開発しちゃったことでも有名。
つっても成年向けかつ男性向けの同人誌業界で今、大人気の感覚遮断とは無関係。
そちらの方は「下半身を地面に埋められて感覚も遮断されてるので何も感じず、本人は軽口叩いたりしてるけど、こっそり下半身を苗床にされて魔物の子供をポコポコ産まされてる」みたいなシチュエーションの特殊性癖を指す用語です。
こんなん知ってる人はアレなので近付かない様に(インクルーディング私)。
詳しく知りたい、とか新しい扉を開きたい、という向きはpixiv(R18)で「感覚遮断」で検索してみて下さい。
リリーさんが開発した方の感覚遮断タンクは体温と同じ温度の塩水に満たされた密閉タンクに入って浮かび、視覚・聴覚・温度感覚・重力感覚を遮断することで気持ちようなれまっせ〜、というもの。
80年代に日本でも一瞬流行りかけました。
まぁ当時はバブル期で、お金のかかった面白体験なら何でもアリだったし。
90年頃に梅田のサウナに残ってるという情報を得て行ってみたのですが、既に廃止されてて経験できませんでした。残念。
しかし感覚遮断タンクの概念は
◉「タンクで気持ちよくなってたら先祖返りしてサルになっちゃいましたー」という驚愕のオチがトンデモな映画『アルタード・ステイツ』
◉『銀河英雄伝説』に登場する、1時間睡眠で8時間分の回復力を誇る「タンクベッド」
◉液体で満たされた閉鎖空間に浮かぶ、という胎内回帰的イメージを引用した『新世紀エヴァンゲリオン』のエントリープラグ
◉貴志祐介の小説『ISOLA』
など、リアタイ当時(重言)から後々までさんざん擦り倒されることに。
ついでに言うと、貴志祐介のホラー小説『天使の囀り』はドーキンスの「延長された表現型」という概念を取り入れており、実際に起きてもおかしくないくらい考証がちゃんとしててお薦め。
で、リリーさんはこの感覚遮断タンク(精神と時の部屋)で遊んでるうちに「ワイは水棲動物や!」となって、お仲間であるイルカを研究。
イルカにLSDキメさせたりしてました。
ご本人も当時は合法だったLSDやケタミンでガンギマリ。
「ケタミン摂取量世界一」とか言われちゃうほどブリブリに…変性意識状態を探求する手段が直接的すぎる。
ついでに言えばケタ(ceta)は「クジラ」という意味で、例えば「鯨類」は「Cetacea」なので
「もしかしてケタミンってクジラと関係ある?
リリーが開発したとか?」
と思ったのですが、調べてみたらケタミンの綴りは「Ketamine」なので無関係でしたー。
で、イルカと言えば懐かしのメガドライブに『エコー・ザ・ドルフィン』というゲームがありまして。
コレはそれまでの様な点数制を廃し、とにかく自由に大海原を泳ぎ回れるゲームとして喧伝されたのですが…
確かに点数はないけど体力ゲージと酸素ゲージはきっちりあり、サメはともかくクラゲに触れただけでもダメージを喰らったり、ちょこちょこ海上に浮上しないと酸欠で死ぬ、というシビアな世界。さすが洋ゲーやで!
おまけに海の大半はダンジョンかイゼルローン回廊みたいな狭い通路で、自由度めちゃ低いやん…
しかしグラフィックは良かったという。
ちょっぴりおサイケ。
(※上2点の画像は
http://vc.sega.jp/vc_ecco/
より引用)
で、この「エコー・ザ・ドルフィン」、「エコー」というのは主人公(自機)のイルカの名前なのですが…
スペルは「ECHO」(反響)だと思うじゃないですか。
イルカはエコーロケーション(反響定位)、つまり超音波の反射でものを「見て」るし。
しかし実際の綴りは「ECCO」なんですよね。
コレはどういう意味かと言うと…
例のジョン・C・リリー先生がですね、LSDがっちょりキメながら感覚遮断タンクで感覚遮断ライフを楽しんでいたところ、地球暗号統制局(E.C.C.O.)というトコロからの電波を脳直でキャッチしてしまい。
完全に科学の向こう側に行ってしまっておられる〜!
その影響を受けたこのイルカゲーム、時空を超えて恐竜時代に旅したり、宇宙生物と戦って地球を救ったりの超展開。
明らかにイルカには荷が重すぎることやらせてるんですよね。過重労働。
こういうトコにもイルカ・オカルティズムの影響が濃厚に感じられます。
そしてラスボスの宇宙生物「ヴォルテックス・クイーン」のご尊顔が↓コチラ。
(※画像は
https://eccothedolphin.fandom.com/wiki/Vortex_Queen
より引用)
H.R.ギーガーの絵と、シロアリやハチなど真社会性(一部のメンバーだけが繁殖を行う)の昆虫を足しっぱなしにしたよーなデザイン。
まぁ「クイーン」言うてしもてますし。
ギーガーデザインの代表作、映画『エイリアン』に登場する宇宙生物(ゼノモーフ)も2作目で真社会性であることにされてたし。
1作目のゼノモーフは完全生物なので単体で繁殖可能で、もともとは生きたまま捕まえた犠牲者を手でコネコネして卵に変える設定でした。
カットされたシーンにちょろりとそれを匂わせるトコがあります(ディレクターズカット版で復活)。
しかしよく考えるとコレちょっと変ですよな。
真社会性昆虫は「コロニーを守るためなら死んでも構わん!」という究極の自己犠牲へいちゃらな、利他行動の代表格やん。
ジャンプ漫画で仲間が死ぬシーンにありそうな熱い展開。
そもそも繁殖という生物としての最重要事項を他者に譲るとか凄すぎる。
なぜそんなコトが可能かというと、繁殖しない個体も結局は繁殖個体を通じて自らの遺伝子を残すことが出来るからです。
特に膜翅目(ハチ)では特殊な遺伝様式により、働きバチと女王の血縁度(遺伝子共有率)がめらっさ高くなってるし。
コロニーの存続は繁殖個体の存続であり、ひいては自らの遺伝子の存続なのですね。
この様にコロニーや繁殖個体と未来を共有してるから、働きバチは死をも恐れず仲間のために頑張るのです。運命共同体。
この「未来の共有」は重要で、我々の日常でもよく見られます。
明日も顔を合わせると思うから嫌な上司にもへーこらしますよね。社畜精神。
その一方でもう会う機会がないと思えば別の高校に行った親友のゲームソフトを借りパクしちゃう…(※私はしてませんよ?)
「次の取引がある見込みの薄い場所」、例えば観光地の土産屋、お祭りの屋台、メルカリなどではボッタクリや詐欺が横行しますよね。
そんなこんなで真社会性昆虫は仲間に厚く、またハチやその仲間であるアリなどは伝統的に勤勉の象徴とされてきました。アリtoキリギリス(解散済)。
なのに何でこんなに悪役?
真社会性昆虫は「自己犠牲を行い他者を助ける利他行動…その一見矛盾した行動の謎を解くための鍵」とされ、ドーキンスらが属する社会生物学において盛んに研究されています。
ココでちょいと深読みすると、この「イルカ vs シロアリもどき」という構図は「ラヴロックを勝手に教祖に祭り上げたイルカ大好きスピリチュアル派」vs「論理でゴリゴリ押し通すドーキンス派」の象徴っぽく見えるんですよね…
ラヴロック vs ドーキンスの不毛な戦い、ラウンド2の場外乱闘。
なのでイルカは
「優しく賢い、宇宙とつながるスピリチュアルな存在」
的なものごっつい位置づけなのに対して、シロアリもどきは
「冷たい遺伝子の論理に支配された、心を持たないロボットの様なキモいヤツら」
的イメージで描かれてるのでは。
つまりこのゲームにおける「イルカ vs 真社会性昆虫」という構図は、「ガイアやイルカをこよなく愛する、スピリチュアルで善なる人たち」vs「全てを遺伝子の論理で解き明かそうとする邪悪な科学者たち」というイメージの押し付け、と読み替えることもできる気がしちゃうんですよねー。
まぁおそらく過度な深読みに過ぎないでしょうが。
こういう80年代に流行したニューサイエンスからのスピ臭が漫画に混入しちゃったのは今なおアニメが作り続けられるヒット作『攻殻機動隊』もそう。
英語タイトルの『GHOST IN THE SHELL』自体がニューサイエンス番長・アーサー・ケストラーが書いた『機械の中の幽霊』(The Ghost in the Machine)のもじりだし。
ちなみに『攻殻機動隊ARAISE』をやってた頃、劇場で『GHOST IN THE MACHINE』なるガジェットが販売されてました。
コレはテーマ曲やら3曲が入ったブッダマシーン(唱佛機。簡易な音楽再生機で、本来はお経を流すためのもの)。
このネーミング、おそらくは「GHOST IN THE SHELL」の入った「BUDDHA MACHINE」ということで『GHOST IN THE MACHINE』と名付けられていたのですが…
名前が先祖返りしてるよ!
元ネタのタイトルだよソレ。
そして原作版には同じくケストラーの「ホロン」の話が出てきたり。
コレは個と全体の有機的調和がうんたらかんたらどがちゃがどがちゃがのやつ。
クライマックスの
『さらなる上部構造にシフトする時だ』
とかむっさソレっぽい。
攻殻機動隊、そもそも「機械と人間を接続しちゃう」というサイバネティック自体がニューサイエンスの皆様が興味しんしん丸なテーマ。
しかもコンピュータ大好きっ子な割に結局は「魂」(ゴースト)とかいう、文字通りスピリチュアルなモン導入しちゃってるし。
しろまさは攻殻機動隊の後、『仙術超攻殻ORION』という作品も発表してるのですが、コレがまた東洋神秘主義まんちこちんでして。
おまけにこちらの連載誌はその名も「コミックガイア」。
この時点でもう…!
で、山田玲司は間違いなく「ガイアやイルカが大好きなスピ寄り」の側にいる人物。
そういったスピ傾向はその後さらに強まり、野球に風水を取り入れた『アガペイズ』というトガりまくった漫画を描いてみたり。
主人公がゲイという、時代を先取りした作品でもありましたが…
風水もなんかややこしい体系があるけど、結局は占いの一種でオカルトやないですか。
まぁ山田玲司がハマるのも分からなくはない感じ。
タイトルになってる「アガペイズ」というのは作品に登場する、風水を自在に操る東洋の超能力集団。
風水と言っても「黄色い財布でお金持ちに♡」みたいなやつではなく、人をも殺せるパワーを持った、『中国道教のガイア・テクノロジー』とされてます。割とイミフ。
そしてほらまた出たよガイア。どこにでも出るG。
道教というのは禅に影響を与えたなんじゃもんじゃで、東洋神秘主義のご本山みたいなものです。
なお、「東洋の超能力」で何でも解決しちゃうというストーリーには結構な歴史が。
推理小説の世界には「ノックスの十戒」という、コレやったらしばくぞ的ルールがあり、「探偵自身が犯人、というのは勘弁な!」とか「手がかりの後出しはご法度」とか色々あるのですが…
その5番目は
『主要人物として「中国人」を登場させてはならない』
というもの。
コレは「ノックスの十戒」の発表当時(1928年)は
「中国人? 怪しげな妖術とか使いそう!」
というイメージがあって、そんなんアリにしたら推理小説成り立たへんわ、という意味でタブーになった模様。
東洋には神秘的なチカラがあると思われていたのですね。
さらに『アガペイズ』には「雨野渦女」(あめのうずめ)というヒロインや「抱尼」(だきに)というマドンナが登場。
アメノウズメは日本神話の「天の岩戸」伝説で性器を「くぱぁ」してストリップショーしてた人ですね。
時代が下るとおかめ(おたふく)となり、何故か醜女の代表選手に。
抱尼はダーキニーから。
ダーキニーはインドの魔女で、後にヒンズー教や仏教に取り込まれてます。
仏教だと荼枳尼天(だきにてん)。
隙あらば東洋神秘思想を無理くりねじ込んでくるやん…
しかしどっちも親が我が子に付ける名前としてはなんだかアレ。
さらにタイトルにある「アガペー」という言葉、完全に無私の「神の愛」という意味で、人間には不可能な夢想的なやつ。
環境問題、イルカオカルティズム、東洋神秘思想、愛による救済…
山田玲司、遅れてきたヒッピーなの〜?
そしてヒッピー文化を代表するスローガンと言えば、ティモシー・リアリーの有名な『ターンオン・チューンイン・ドロップアウト』(スイッチを入れ、波長を合わせ、脱落しろ)。
山田玲司は『非属の才能』という本も書いており、学校や会社といったお仕着せの共同体に無理に属することはないよという、まさにドロップアウトを推奨した内容だったり。
まぁ私も集団行動は苦手さんですが。好きな人同士で組になれぬ。
こうして山田玲司の精神的バックボーンを理解すると、何故この連載にチバレイや竹内久美子が呼ばれたのか何となく見えてきます。
チバレイはヨガに傾倒する、ヒッピームーブメントとスピリチュアリズム、東洋神秘主義の同士。
そらぁタマシイが共振(というか狂信)して呼びあったりもしようというもの。
(※上3点の画像は『絶望に効く薬ーONE ON ONEー』5巻より引用)
↑むちゃんぽどうでもいい偶然の一致に無駄な意味を与えちゃう山田玲司。スピ系の面目躍如。
竹内久美子の起用は逆に、山田玲司が対極的な生き方をしていたせいでろくろく理解していない社会生物学を、俗流にして分かりやすく教えてくれるから。
さすがポップ(俗流)スター。
まぁ竹内久美子の言うことはデタラメもいいトコなんですが、そちらに疎い山田玲司は気付きません。
あとチバレイが取り上げられたのはネトウヨさんへの転向前なんですよね。
今のチバレイを山田玲司はどう思ってるのか。
(※画像は『絶望に効く薬ーONE ON ONEー』5巻より引用)
『自分と同じ苦しみを持ってる人のお手伝い』をしようとしていた心優しきチバレイが、
(※画像は
https://x.com/osumashi_maru/status/1208469261024284672?s=46
より引用)
(画像は
https://x.com/monadpride/status/1207244009497694213?s=46
より引用)
同じ女性である伊藤詩織を笑いものにして大爆笑してるねんで?
そんなチバレイが後々、自分も性被害に遭うことになるという伏線回収。
なお2016年の時点では山田玲司と親交があった模様。
【logmi Business】
『「秋葉原の盗聴機が好きで…」 オタクなアイドルの元祖・千葉麗子のヒストリー』
https://logmi.jp/knowledge_culture/culture/121975
この年、チバレイは『さよならパヨク』『くたばれパヨク』の2冊を矢継ぎ早に出してます。
出版社は青林堂…
ああ、サブカル系アイドルやもんねぇ!
めっちゃお似合いですわ。【※註】
そしてデビュー当時からのトンデモはさておくとしても、近年急激に極右化し、Jアノン・ジャニアノン・暇アノンと陰謀論総舐めになっちゃった竹内久美子を今、山田玲司はどう捉えているのか…。
ソレはソレとして、『絶薬』では竹内久美子がトンデモになった理由がちゃんと語られてて興味深いです。
「嘘ついてもOK、むしろ科学の徒ならガンガン嘘つかなきゃ!」
という使命感からあんな大惨事に。
そして竹内久美子はなぜ学界総出で批判されても一切気にかけることなくトンデモを垂れ流し続けるのか、その答もココに載ってました。
インタビュアーを締めくくる、竹内久美子の「希望の言葉」は…
(※上2点の画像は『絶望に効く薬ーONE ON ONEー』7巻より引用)
いや聞けよ!
「ディープステートガー!」とかはすぐ聞く癖に。
まぁ師匠の日高敏隆も結構アレなのですが、それはちょっと脇へ置いといて。
偉大な学者が
「常識にとらわれるな」
みたいなコト言うとすぐにトンデモさんたちが
「非常識なら任せとけ!」
とウォーミングアップを始めますが…
アレは勿論
「基礎をちゃんと習得した上でソレを崩していけ」
的なコトであって、
竹内久美子みたいに脈絡のない思いつきを実証抜きでさも事実であるかの様に書き散らすコトは「常識にとらわれない、自由な発想」でも何でもないですからね!
【付記】
今回も脱線激しめですみません! 日勤教育。
まぁ当ブログは脱線が本論まであるので今後もこんな感じかと。
「また脱線かよ!」と怒るより、「今度はどんな方向に話が行くんやろ?」とわくわくするミステリートレイン方式でお楽しみ下さい。
あるいはストーリーと全く関係のない雑談を延々とするタランティーノ映画だとでも思って。
オランダじゃフライドポテトにマヨネーズを付けるらしいで!
マジか、ケチャップちゃうんか?(パルプフィクション)
どっちも付けんでええやろ…
↑こういうのが蛇足ですね、すみません!
(※画像は
https://www.francetvinfo.fr/culture/arts-expos/photographie/lillusionniste-joan-fontcuberta-investit-la-mep_3341897.html
より引用)
【※註:青林堂】
青林堂はサブカル出版社として漫画誌『ガロ』に代表されるサブカル本を精力的に出していましたが、会社の体制が変わり急にネトウヨ系出版社に方向転換。
近年はスピリチュアル本で糊口をしのいでいる模様。
最近の刊行物は↓こんな。
(※画像は青林堂公式サイト内にある
https://www.garo.co.jp/archives/category/books
より引用)
…うわぁ。
なお、サブカル出版社時代の編集者は丸ごと青林堂工藝社という別会社に移籍して、今もサブカル本を出し続けてます。
コメント
コメント一覧 (4)
センセイのエヴァ評が凄くて、
「ミサトさんや使徒サキエルが肩パット入れてるのはヒデ(庵野秀明をそう呼んでる)のバブル期ボディコンギャルへの執着」
「エヴァが使徒を喰ってるシーンはバブル期のOLが深夜にカツ丼ムシャムシャ喰ってたのを思い出す」
とか、面白いこと言ってました
wsogmm
がしました
いやあ、Bバージンはよかったですね。
ほかの左翼小児病的な作品も、痛々しく見ながらも、嫌いじゃなかった。
絶薬は、私も3巻くらいまで。1巻の最初の話以外は、流してました。、
これからも日本一の竹内久美子批判サイトとして
ご活躍を期待しております。
wsogmm
がしました