古谷経衡の
『シニア右翼 日本の中高年はなぜ右傾化するのか』
を読んでみましたー。


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(※書影は該当書より引用)


以前に好著『ネット右翼の終わり』について取り上げたエントリは↓コチラ。


【保守派が斬る!『ネット右翼の終わり』】
https://wsogmm.livedoor.blog/archives/10240926.html



『シニア右翼』の内容をざっくり要約すると…

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ウヨいシニアが多いっすな。
それは何故かというと…
彼らはネットが発達しまくってから参入したので、「ネットはデマ上等のアングラな世界」だとわかってない。
同じ事は若い世代にも言える(ウトロ放火犯とか黒瀬深とか)。

戦後民主主義を「ふわっ」としか受け止めていないのでYouTube動画一発でヤラレちゃう。
そもそもこの国全体が「なぜあの戦争に突き進んじゃったのか」を総括してないしね。

ネット右翼とは「保守文化人の言説を繰り返してるだけの奴ら」。

本来の保守とはバーク的な漸進主義(「改革は急進的にじゃなくてちょっとずつな!」という考え方)なだけで、特定の党派や政策の支持とは無関係。

【※ブログ主による註】
一部、超はしょります。
ここで日本が戦争につき進んだ経緯についての概観が入ったり。

戦後は復興を急ぐあまり、一度は追放されたはずの旧体制の要人を復帰させちゃったため、彼らを批判できなくなってしまった。

シニア右翼と同世代のシニア左翼がおかしくならないのは、民主主義的自意識を育てあげた成果。
左翼にこそ未来がある。
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…と、内容は良い感じ。
そして最後で突然の左翼へのラブレター。
ココもうちょっと詳しく見るとですね、本書は↓こう締めくくられています。

p.286
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 私は現在革新とかリベラルと見なされている政治勢力や、与党であっても個々人の見識ある政治家にはその可能性をわずかに見出している。こういった政党の比例代表における絶対得票数は、日本において真に民主主義的自意識を持った人々が必ずしも死滅していないことを示しているからだ。この勢力を護持し、さらに発展させていくことがシニア右翼に対抗する重要な「拠点」「砦」となりうるのかもしれない。
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イチャラブ。愛が重い。

ネットはもともとアングラな世界で、『うそはうそであると見抜ける人でないと(ネットを使うのは)難しい
というのが常識だったのにねぇ、という話は『ネット右翼の終わり』でもしてましたね。

ネット右翼の定義は以前よりシンプル&辛辣になってる模様。

保守の定義については「それなら私も保守というコトになりますけど」って感じ。
まぁバークの言う保守主義は
「ヒトは愚かやし、改革とか計算通りにはいかへんて。歴史の中で使えるコトが証明されてきた、既存のシステムをちょこっとずつ改良していく方がええて」
的なモノ。
コレ、悲観的な私には刺さりまくりなんですけどね。

先ほどの要約紹介ではさっくり割愛しちゃった、歴史を駆け足で説明した部分は、個人的には「ほどよく簡潔に、ほどよく詳しく」概説されてていい感じ。
この辺はあんま詳しくないので勉強になったです。


ついでにちょっと問題点についても触れておくと…

コレはまぁ内容ではなくあくまで表現の仕方の問題なのですが…
さっくり読める前提の新書の割に、無理して難解な言葉を使ってみるも同じ単語に頼りすぎてたり、間違ってたりがちょっと目に付く感じ。

私は読書好きだし、語彙も貧しいとは言えない筈、くらいの自負はあるつもりですが…
「瀰漫」って言葉知らんし、それ以前に読むことすらできひんよ!?
調べてみたら「びまん」でした。
「気分・風潮などが広がり、はびこること」的な意味だそうです。
コレがやたらあちこちに出てくるという。
難解な単語を何度も使い回すと「自分の実力以上に無理して背伸びしてる感」瀰漫しちゃうので避けた方がよろしいのでは。

そしてその割に、文脈的には明らかに「焦眉」と書くべきトコを「愁眉」としている部分が少なくとも2箇所に。(p.57とp.285)

まぁ謎に読みにくいのも『ネット右翼の終わり』と同様。


ちなみに私は読みやすさ優先。
うっかり凝った言い回しで一文が5行くらいに渡っちゃうと、後から3分割にして平易な言葉遣いに書き直したりしてます。
あとスタイリッシュな文体とかは捨て、決まりきった言い回しを多用することで執筆カロリーを抑えてみたり。
長文が多いので、読む側の読書カロリーも低めにしとかないと誰も読まないし。
その分、ひとつでも多くのエントリをアップすることを目指していますので、その辺のあれやこれやは平にご容赦を〜。
…それでも読む気が起きない文体&長文になっててすみません!



あと内容についてなのですが…

戦後民主主義の受け止め方とか戦争への総括とかのご高説はごもっともで、私も深く感銘を受けました。

でもそういうのと関係なく、YouTubeから反ワクとか陰謀論にハマるシニアってめちゃいるじゃないですか。
なので、ソレだけではなく、別の理由もあるよね〜、と思いました(小並感)。


私が小遣いで買った初めての雑誌、それは月刊『ムー』で私は11歳でした。
オカルト知識の味は甘くてクリーミーで、こんな素晴らしい知識を分け与えて貰える私は、きっと特別な存在なのだと感じました。


小学生にしてムー民(月刊『ムー』の読者)やってる痛い子。
オカルトDD (どれでも大好き) で箱推しだったので、ムーに載ってる情報は全てガチ信じ。
なぜならオカルトは科学と同じで、すごい秘密を教えてくれたからです。
知識の高みから全てを見下ろす知的興奮は、科学と等質のものでした。

しかもオカルトや陰謀論は「世界創世の秘密」(やや重言)とか「世界を支配する権力者の真相」とか科学よりどぎつくて、ソコがケミカルな駄菓子のように子供心にメガヒット。
心のベロが人工着色料で真っ赤っかに。

「人類は月に行ってない」と「アポロは月の裏でUFOを見た」とか、相互に矛盾するやつあるやん、と気付いたのは後年です。

やっぱね、非科学的な信念や陰謀論ってキモチイイんですよ。
なのでハマる人の気持ちはめらっさもらっさ分かります。
その辺の陰謀論自体が持つ危険性へのフォローもあると良かったかも。

とはいえ基本的に良書なので、皆さん機会があれば是非。