2023年12月10日
KADOKAWAから出る予定だった書籍
『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』
の発売がキャンセルになりました。


原題は『Irreversible Damage: The Transgender Craze Seducing our Daughters』(取り返しのつかないダメージ:娘たちを誘惑するトランスジェンダーの流行)。
「幼少期に性別違和がなかった少女たちが、思春期に突然“性転換”する奇妙なブーム。学校、インフルエンサー、セラピスト、医療、政府までもが推進し、異論を唱えれば医学・科学界の国際的権威さえキャンセルされ失職。これは日本の近未来?」
といった内容紹介がされていた模様。
本書は発売前から「差別本」とされ、LGBT擁護派からは出版の中止を祝う声が。
一方、反LGBT派からは
「表現の自由はどこへ」
「焚書やんけ」
的な反応が。
まぁこのトランスジェンダーをめぐる問題はいろいろややこしいんですよね…
女性の権利を標榜するフェミニズムの中に
「トランス女性は女性の聖域である女性用トイレや浴場に入ってこないで」
「トランス女性は男性です」
といった意見があるのですが…
フェミニズムとLGBTはともに弱い立場に置かれている訳で、本来なら共闘すべき立場なのでは。
どっちもザックリ言えばリベラル同士やろ…
「表現の自由」にしたって今は何故か保守派に乗っ取られ、差別を正当化する具にされてる感がありますが、本来はリベラル的言説ですよね。
90年代の筒井康隆断筆事件とか、「差別はあかんやろ」vs「表現の自由やろ」でリベラルな主張同士だったし。
ていうか当時、保守は息してなかったですよな。
そんなリベラル同士が分断されていくの勿体無い。
そして反LGBT側の
「LGBTを認めると『心は女です!』と言い張るオッサンが女湯に入ってくる様になるぞ!」
という主張。
いや、そういうオッサンが出現したとしても、ソレは「シス男性による性犯罪」でLGBTとは関係ないやん…
え、「LGBTへの配慮のせいで性犯罪が起きることに変わりはない」?
じゃあ税務署を装った還付金詐欺が横行したら、税務署が悪いんですか?
あとそれはLGBTのせいというより、「LGBTへの配慮を利用すれば性犯罪し放題」と喧伝してきた反LGBT派のせいでは…?
一方、LGBT擁護派は女湯オッサンについて
「そんな訳ないやん」
「根も葉もないデマ」
等と言ってきましたが…
欧米ではそれに近い事件が実際に起きてる訳で。
これは「性自認がそのまま認められる」というガバガバさのせいなので、検査とか厳重な手続きとか専門機関による認定とか何らかの対策はした方が良いと思います。
でないとそこがアキレス腱となり、反LGBT派に正当性と絶好の口実を与えてしまうのでは。
あとこういった問題にツッコむと、リベラル論客であってもヘイター扱いされ、石もて追われるというキャンセル・カルチャーの問題。
この『あのトラ』もドーキンスが賞賛しているのですが…


ああっ、ドーキンスがヘイター扱いされてるー!?
…いや、ものごっつリベラルだよ!
昔からLGBT擁護してたやん。
ドーキンスはリベラルだけど、左右関係なくおかしいところはおかしいと言う人で、「空気を読まない」のが良いところ。
日本で言うとロマン優光みたいな感じでしょうか。
おかげでキャンセル・カルチャーの犠牲となり、もちろんキャンカル批判に余念なし。
近年では
◉『大衆の狂気 ジェンダー 人種 アイデンティティ』
◉『「社会正義」はいつも正しい 人種、ジェンダー、アイデンティティにまつわる捏造のすべて』
といった本を推薦してます。
「うわぁ、もろヘイト本やんけ!」
とお思いになるかもしれませんが、目を通してみると「マイノリティーの権利はちゃんと擁護しつつ、行き過ぎについては批判」という内容で、「リベラルによる健全な自浄作用」って感じ。
ただし、それが「行き過ぎ批判のフリしてマイノリティーの権利を根底から否定する」差別的な人々に利用されるリスクはあるよねー。
実際、『このトラ』擁護派の面々を見ると…
◉【森奈津子】




…普段、左翼を「プロ市民」だの何だの言ってた側が、都合次第で急に『我々市民は』と言い出す、いつものやつ。
◉【我那覇真子】

◉【ナザレンコ・アンドリー】

◉【竹内久美子】

竹内久美子については↓こんなツイートも。


…KADOKAWAサイドがわざわざゲラを渡したのはしくじりムーブだったのでは。
◉【ろくでなし子】

リベラル文化人ながら『ぱよぱよちーん』、引いては『パヨク』という謎フレーズの普及に手を貸したろくでなし子。
この人は自分の女性器アート作品を排除されてきたので、まぁこう言いたくなる気持ちは分からなくもありません。
でもこの人の作品、現代アートの文脈に乗っかれてない気がするんですけど。
…という「いつメン」。
こういうのは学界にもあって、例えばハーンスタイン&マレイの『ベルカーブ:アメリカ生活における知能と階級構造』という本は、主にリベラルな人々から「人種差別的である」との激しい非難を受けてきました。
しかしそうでもないという話もあり…
【山形浩生の「経済のトリセツ」】
[ハーンスタイン&マレイ『ベルカーブ:アメリカ生活における知能と階級構造』(1994)]
https://cruel.hatenablog.com/entry/20140629/1404049834
【[渡辺千賀]テクノロジー・ベンチャー・シリコンバレーの暮らし】
『ベルカーブはトンデモ本ではありません』
https://chikawatanabe.com/2009/01/15/bellcurve/
…↑ここで語られている『ベルカーブ』を批判したグールドの『人間の測りまちがいー差別の歴史ー』は、差別が科学を歪めてきた歴史について語った良書なのですが、この様に行き過ぎとの批判もあります。
「人種は公平に扱われるべきなのだから、人種間の差などある筈がない」
といった主張は、「どうであるべきか」(価値命題)から「どうであるか」(事実命題)を引き出してしまうという『道徳主義の誤謬』に陥っている様に見えます。
ちなみにグールドのライバルであるドーキンスは「人種間に違いはあるけど、だからといって扱いを変えるべきではない」という立場。
なお、グールドは人の政治的バイアスを指摘しておきながら、自分もバイアスに弱かった訳ですが、それを指摘されて「イデオロギーの影響を受けない者がどこにいる」的な返しをしてたり。素敵。
グールドは欠点もあったけど、彼の仕事は世界を改善することに資するものだったと思います。
大事なのは無謬であることではなく、着実な改善。
「無謬でなきゃダメー!」というのは『ニルヴァーナ誤謬』というやつ。
…という訳で、リベラル側が差別に敏感になるあまりやらかしたきらいはあるのですが、差別者がこれらの研究を自分たちに都合良く利用してきたこともまた確か。
Wikipedia『科学的人種主義』の項はこう結ばれてます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
米国人類遺伝学会(ASHG)による2018年の声明は、"遺伝的多様性の価値を否定し、白人至上主義のインチキな主張を補強するために、信用できない、あるいは歪曲された遺伝概念を利用するグループの復活 "に警鐘を鳴らした。ASHGはこれを「人種差別イデオロギーを助長するための遺伝学の悪用」と非難し、白人至上主義者の主張の根拠となっているいくつかの事実誤認を強調した。この声明は、遺伝学が「人間を生物学的に異なるサブカテゴリーに分けることはできないことを証明している」と断言し、「"人種純潔 "という概念が科学的に無意味であることを暴露している」と述べている。
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実際、日本でも…
『ベルカーブ』同様に差別的だとされたJ.フィリップ・ラシュトンの『人種 進化 行動』という本の訳者は、蔵琢也・蔵研也の兄弟。
蔵琢也は著書のタイトルが
『美人を愛した遺伝子たち いい女を好きなのは僕らのせいじゃない』
とか、
『天皇の遺伝子 男にしか伝わらない神武天皇のY染色体』
とか、完全に芸風が竹内久美子とカブってる人です。
ていうか、京都大学の日高敏隆研究室で竹内久美子の後輩だったらしいし。さもありなん。
【PRESIDENT Online】
『「美人は性格が悪い」という話は本当か』
https://president.jp/articles/amp/15225?page=2
ちなみにこのお方、八木秀次にわざわざ自分から連絡を取って「Y染色体論の考え方は正しい」的なお墨付きを与えた模様。
さらに「新しい歴史教科書をつくる会」から分裂した「日本教育再生機構」(理事長は八木秀次)の発起人の一人だったり。
【西東京日記 IN はてな】
『これが安倍晋三のブレーンかよ…』
https://morningrain.hatenablog.com/entry/20060902
↑他の発起人のラインナップも面白いので是非。
村上和雄とかいて「あ〜やっぱり!」感。
…そんな怪しげな人物が、簡単に差別に転用できそうな本にわざわざ関わるの、何で?
『あのトラ』の方も妙な人物が妙なムーブをしないか、注意して動向を見守りたいと思います。
【オマケ】
↓『サウスパーク』で性転換したギャリソン先生と同衾するドーキンス

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この記事へのコメント
1. Posted by あ 2023年12月10日 03:53
この本への批判はデータの取り扱いにおける恣意性とかも大きいみたいだよ
あと差別的な点としては親や環境のせいで性的マイノリティになるみたいな論調のよう
それから元々の出版社がトンデモ右派的な本ばかり出してるって
あと差別的な点としては親や環境のせいで性的マイノリティになるみたいな論調のよう
それから元々の出版社がトンデモ右派的な本ばかり出してるって








