2023年11月16日


『なぜモテ』その⑤



竹内久美子の新刊
『なぜモテるのか、さっぱりわからない男がやたらモテるわけ 動物行動学で語る男と女”』
に迫るシリーズ5回目。


IMG_6305


今回はお得意のレイプ絡みの発言について。
こういう話題になると竹内久美子はことさらに常識に逆張りしまくってトンチキなことを書き散らす悪癖があります。
私の様なウォッチャーにとってはまさに極上のトロの部分(「本来は捨てられる部位」という意味でも)。

竹内久美子は本書でこう書いています。

(p.125)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 最近ではレイプについての動物行動学的研究を紹介し、持論を述べただけで、こんな人は保守とは呼べないとまで言われた。レイプとはひたすら女が犠牲者であり、非難されるべきは男だということらしい。しかし動物行動学を学ぶと、こと繁殖戦略に関しては、あらゆる点で女の方が男よりも勝っている。その理由は女の方が一回の繁殖にかける時間とエネルギーが男よりもはるかに大きいからなのだが、ともかくレイプだけで完全に男に負けているとは考えられないのである。
こういう攻撃の仕方をする輩は初めに批判ありきで、いくら説得しても無駄だと思うので放置しているが、学問を妨害する勢力として厄介だ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

…動物行動学を少しでもかじったなら、
こと繁殖戦略に関しては、あらゆる点で女の方が男よりも勝っている
なんていう過度に単純化された捉え方になる筈がないと思いますが…。
メスが有利な傾向があるのは確かですが、オスもメスもそれぞれに多彩な繁殖戦略を生み出し、一筋縄ではいかない多様性を持つのが動物というもの。
ヒトもまたその例外ではありません。

オスがしばしばレイプという強行手段に訴えることから、「オスが独自の繁殖戦略でメスの有利性を覆そうとする」ことは明白なのでは…。
もちろんメスがそれに対抗する戦略を編み出すこともありますが、「メスが常に勝つ」と一概には言えないでしょう。


さらにこんな発言も。

(p.135)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 「レイプ」と言うと、そんなの犯罪以外の何ものでもない、女性は深く傷つき、一生立ち直れなくなるというのが一般論だと思う。
 実際、若い頃の私はレイプされることを何よりも恐れ、もし自分が被害にあったのなら、死を選ぶか、一生立ち直れないだろうと考えていた。レイプに対する恐れは、質的にも量的にも普通の恐怖とは全く違うものだったのだ。
 ところが三十代後半くらいから少し感覚が違ってくるようになった。
 自分はなぜ、あれほどまでにレイプを恐れていたのだろう?
 レイプされたとしても、妊娠しなければよいだけの話ではないか。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

レイプされたとしても、妊娠しなければよいだけ
というパワーワード。
コレは他著にも登場するので他のエントリでも批判したし、Twitterでプチ炎上もしてました。


そしてロバート・ライト『モラル・アニマル』(竹内久美子が翻訳)を↓紹介。

(p.136)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ライトによると、レイプでメスが抵抗するのは、それでもレイプをやり遂げられるオスかどうかを試しているのだという。もし抵抗しないとすると、相手がどんなオスかどうかがわからない。しかし抵抗してみて、それでもやり遂げられるのなら、その遺伝子を取り入れることに価値がある。息子を産めば、父親譲りのレイプをやり遂げられる性質を持っていて、やはり、またレイプをやり遂げ、子孫を残すことができるのである。抵抗してみせるのは、腕のよいレイプ犯かどうかを見極めるためだと、ライトは言う。
 とすれば、レイプに対する異常なまでの恐怖感は、抵抗するためのものかもしれないのだ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

さらにチバースらの研究を紹介。
これはおおむね以下の様なものです。

◉様々な性的画像を見せられた男性は、男女や女性同士のセックス、女性のオナニー…つまりは「女性の裸」が写っていれば「興奮した」と申告するし、実際に興奮する。
◉一方、女性はあらゆる組み合わせに「興奮しない」と回答するが、実際にはその全てに興奮する。
男女・男性同士・女性同士のセックス、男性のオナニー、女性のオナニー…さらにはボノボ(ピグミーチンパンジー)の交尾にまで。

(男女それぞれのオナニー画像については本書では触れられてませんが、カシルタ・ジェタらの『性の進化論: 女性のオルガスムは、なぜ霊長類にだけ発達したか?』という本にチバースらの研究の詳細が載っています)

そこから竹内久美子は↓こう語ります。


(p.138)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 チバースらは、これぞレイプ対策であると言う。レイプにおいてはどんな男がやってくるかわからない。しかし1番大切なのは自分の体、特に膣を傷つけさせないよう防御することだ。よって、どんな相手がセックスしている場面を見ても性的に興奮し、膣が濡れるよう進化したのだという。
にわかにはついていけない理論だが、私自身、女のヌードを見ても若干興奮することを不思議に思っていたので、なるほど、そういうことかもしれないと納得した次第だ。
レイプに関して、女はただの被害者にとどまらず、転んでもただでは起きないと言うところまで進化していると見るべきだろう。そもそも男と女が加害者被害者という単純な関係にあるとは、少なくとも動物行動学を学んだ者には、到底考えられないのである。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

そして「AV配信の視聴者は4割が女性」というデータを紹介し、↓こう書きます。


(p.140)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 なるほど、やはりそうであったか!
 そもそも女は、性的なことに関心がないと長らく言われてきたが、それは大嘘である。アンケート等ではうまくごまかしてきたが、このように公にはバレない形であるなら女は本性をあらわにするのである。
 そしてもう一つ、女が隠してきた本性が現れたと思うのは、配信されるAVで女に人気なジャンルの1つがレイプものであるということだ。
 レイプとは広く動物に見られる現象で、調べれば調べるほど、単にメス(女)が性的な被害に遭っているのではないことがわかってくる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

…女性の性欲という、あって当たり前のモノに対して何故か上から目線で大上段から
大嘘
うまくごまかしてきた
バレない形であるなら
本性をあらわに
と語る様子は偏見丸出しのミソジニーおじさんそのもの。
コレが女性の、しかも固定観念に縛られない語り口を得意とする人物が紡ぐ文章とはとても思えません。
さすが山形浩生に「女のオヤジ」と喝破されただけのことはありますね。
典型的な名誉男性


その後はいつもの「交尾排卵」の話。
相変わらず安易にヒトにも交尾排卵があることになってるけど、根拠レス


さらに毎度お馴染み、トンデモさんであるベイカーの研究を紹介。
トンデモさんはトンデモさんに引かれあう!
そして竹内久美子はこう書きます。

(p.142)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ともあれ、女がレイプで抵抗するのは、それでもレイプを成し遂げられる男かどうかを見定めるためだ。抵抗しなかったら、相手がどんな男が判別できない。抵抗しても成し遂げられる男であるときのみ、その男の子供を産んでやる。もし息子が生まれれば、その子は父親譲りのレイプの腕前の持ち主であり、巧みなレイプによって自分の意思をよく残してくれるだろう。
こういうルートで女は自分の遺伝子を残すこともあるのだ━━。
私がここにもう一つ付け加えるとしたら、女は最初からレイプを望んでいるわけではない。しかし、もしそういう状況になった場合には次善の策として抵抗する。そして、できるだけレイプをうまく成し遂げられる男を選ぼうとしているのではないかということだ。
 ライトとベイカーの考えを知った私は単行本の原稿の中で紹介したが、編集者からはこう言われた。
 紹介するのは良いが、賛同するべきではない。たとえ本当のことであっても、地球が動いていると言ってはダメです━━と。
 そこでレイプの件は全面的な書き直しを命ぜられ、「地球が動いていない」かのような立場に立ったが、案の定、「レイプの部分だけ歯切れが悪い」と書評されてしまったのである。
ともかく、配信をダウンロードする女性に人気なのがレイプものであると言う情報を得た私は、やはりレイプとは女が被害者という単純な構図ではないと言う確信を得た。
ただの被害者が好んでレイプものを見るだろうか? 見るのもおぞましいものをわざわざお金を払ってダウンロードするだろうか?
 女は無意識のうちにレイプの研究をするため、AVを見るのかもしれない。
 レイプの時に男はどう振る舞うのか? 片や女はどう対処するのだろう? そして、どうすればレイプにおいて自分が優位に立つことができるのだろうか、と。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


またコレか…
竹内久美子は他著でも同様の発言をしており、以下のエントリで私はこう批判しています。


『竹内久美子さん、「7歳少女をレイプして妊娠させるのは繁殖戦略」と生産性を認定』


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ロビン・ベイカーはトンデモなのですが、「レイプ受け入れは女性側の繁殖戦略」的な発言そのものは生物学的にはアリです。 
しかしそれはあくまで特殊な文脈での話。 それは「レイプに抵抗しきれなかった女性が結果的により多くの子孫を残すことになった」という意味であって、「女性が意識的にレイプによる妊娠を望んだ」という意味ではありません。
 一般向けの本ではそこの区別を再三に渡り警告するものなのですが、竹内久美子はそれしな~い。 もはや「わざと混乱させてんのか!?」ってレベル。
 あるいはご本人も区別がついてないのかも…
普通にコレを「特殊な文脈」として読める一般人はいないでしょコレ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

今回は『無意識のうちに』とはしながらも、結局は明らかに進化的動機の擬人的表現ではなく、女性の個人的な動機として
女は無意識のうちにレイプの研究をするため、AVを見るのかもしれない。
 レイプの時に男はどう振る舞うのか? 片や女はどう対処するのだろう? そして、どうすればレイプにおいて自分が優位に立つことができるのだろうか、と
って書いてるよね。
前より混同が悪化してはる〜!
わざとでないなら理解不足だし、わざとならあまりにも悪質
今回のは「そういう意味で書いたのではない、説明不足だった」という逃げも効かない、完全にアウト案件


あと
ただの被害者が好んでレイプものを見るだろうか? 見るのもおぞましいものをわざわざお金を払ってダウンロードするだろうか?
って言うけど、我々は見るのもおぞましいホラー映画をわざわざお金を払ってダウンロードしたり、好んで見ることがありますよな。

我々には、ホラー映画とかジェットコースターとか、「安全が保証された状態でなら、シャレにならん危険を味わってみてぇ」というスリルに対する欲望があるのです。


あとポルノ業界では母子モノのエロコンテンツは大人気。
まぁ現在の最大派閥は熟女モノとも言われてますしね。
弱者男性がバブみを求めるせいなのかと思いきや、メインターゲットがトラック野郎あたり、というワイルドめな雑誌でも母子相姦モノが8割なものがあったり。
普遍性の高さが窺い知れますね。
しかしユーザーの多くは実際に自分のおかんとの性的関係を望んでる訳ちゃうやろ…
こういうのはあくまでイメージを消費するセクシャルファンタジー。


そもそも竹内久美子は数ページ前に、
(女性は)『どんな相手がセックスしている場面を見ても性的に興奮し、膣が濡れるよう進化した
というチバースの説に納得してたやん…
女性がそういった性的可塑性を持ち合わせているのなら、セクシャルファンタジーとしてのレイプものを好み、興奮するとしても別に不思議はないでしょ。
 
 
 
実際、レイプや暴力は女性に進化的な爪痕を残しています。

例えば男性が暴力的な傾向を持つのは、ひとつには「女性がその様な男性を好んだから」でしょう。
実際、ワルな男性は女性にモテます。
特に中学高校くらいだとそれが顕著でしたよね。ヤンキー文化。
この進化的傾向についてはフェミニズム系の本にも載ってる物があるくらいです。


あと「ストックホルム症候群」ってあるじゃないですか。
銀行強盗とかが人質を取って立て籠ったりした場合に、被害者が加害者に強い共感を覚え、時には事件後も長年に渡る交流を続けたりする、というやつ。
一見奇妙な現象ですが…

ヒトが進化してきた環境に於いては、「敵の部族にさらわれて、その後は敵地で生活をする」という状況はザラにあったことでしょう。
その時、どんな人が生き残りやすいかというと…
それは相手に従順で、新生活にもすぐに慣れる様な性格の人物でしょう。

特に女性は貴重な資源として扱われ、殺されはしないものの、敵の子を産み育てさせられることが多かった筈です。
チンギス・カンの妻ボルテも一時は敵に囚われて強制結婚させられ、その後に産んだ長男は強姦によるものでは、と疑われた様ですし。

その結果、女性は男性より加害者になつきやすい傾向にある模様。
この誘拐した相手との絆を指す『キャプチャー・ボンド』という言葉まであったり。



…といった具合なので、わざわざ進化的動機と個人的動機を混同させて、
できるだけレイプをうまく成し遂げられる男を選ぼうとしている
とか、
どうすればレイプにおいて自分が優位に立つことができるのだろうか
とか書く必要、全然ない。

大体、
レイプされたとしても、妊娠しなければよいだけの話ではないか
と言ってた筈の人が
抵抗しても成し遂げられる男であるときのみ、その男の子供を産んでやる
ってどういうことやねん。

その辺りは
女は最初からレイプを望んでいるわけではない。しかし、もしそういう状況になった場合には次善の策として抵抗する。そして、できるだけレイプをうまく成し遂げられる男を選ぼうとしているのではないか
という形で正当化されてる訳ですが…

いや、嫌なら抵抗するのは当たり前でしょ。
つまり「抵抗」はそういう「プランB」なしでも充分に説明できちゃう訳ですね。
よりシンプルな説明が可能なのに、わざわざややこしい説明を導入する理由って何かあります…?

ただでさえややこしい自然に、余分なもん導入して余計ややこししてどないすんねん。
「単純な説明で済む時に、複雑な説明を持ち込んではならない」という経験則『オッカムの剃刀』をご存じないんでしょうか?

竹内久美子がそこまでして余計な説明を増やす理由って、結局「面白おかしい話をでっちあげてウケを取りたいから」くらいしか見当たらないよね。
他におありでしたら是非教えていただきたいものです。










※『オッカムの剃刀』については以下のエントリを参照。

トンデモ・陰謀論・ネトウヨさん等に陥らないための「思考の道具箱」





(00:00)

コメントする

名前
 
  絵文字