2023年12月
2023年12月27日
以前にもお伝えした、KADOKAWAが差別本を出版しようとして取りやめたとされる件について。
私は
「そもそも原書は差別本やトンデモ本ではないかも。でも邦訳版を出そうとしてるKADOKAWAはヤバいのでは」
というスタンス↓なのですが…
[話題の『あのトラ』は差別本ではないかも。でも擁護派にはお馴染みの面々がびっちびち]
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/23212114.html
その後、コレに関してこんなネット記事が。
【すごい一体感速報】
『カドカワ、ヘイトデマ本翻訳出版に向け原稿ゲラ刷りをナザレンコや竹内久美子に「左翼の出版妨害起きる予定だから助太刀よろ」と送ってた』
http://sugosoku.blog102.fc2.com/blog-entry-4921.html
↑ココで「KADOKAWAが用意周到に工作してた割にあっさり出版中止にした理由」について、いろいろ語られています。
「何でや?」
と悩む人。
「何か狙いがあるのでは?」
と深読みする人。
「会社の上層部と現場では意見が違ってたんやろ」
と考える人。
私は過剰に意味付けして深読みするのは陰謀論まっしぐらでデンジャラスだと思っているので、もちろん最後の「上層部と現場で意見違ってた説」を熱く支持。
こんなん、似たよーな例が前からあったよね!
1995年の「マルコポーロ事件」を覚えておられるでしょうか?
これは文藝春秋の雑誌『マルコポーロ』が
《戦後世界史最大のタブー。ナチ『ガス室』はなかった。》
という歴史修正主義まるだしな記事を載せて問題になった、というもの。
編集部は撤回・謝罪を拒否しましたが結局、社長・編集長は解任、雑誌は自主廃刊に。
現場と上層部の乖離が目立ちますね。
なお、この時のマルコポーロ編集長が現『月刊Hanada』編集長の花田紀凱。
ちなみに『月刊Hanada』を立ち上げる前は『月刊Will』の編集長でした。
ネトウヨ雑誌作りすぎ。
なので『Hanada』はある意味、『Will』以上に『Will』な雑誌。表紙も赤の縁取りがそっくりだし。
つまり『Will』と『Hanada』は味覇と創味シャンタン的な関係な訳ですね。
さらにこのお方、マルコポーロ事件以降、一時は角川書店(つまりは渦中のKADOKAWAの本丸)にいたというオマケ付き。
そしてまだ記憶に新しい、『新潮45』の休刊。
こちらは『新潮45』2018年8月号に杉田水脈が寄稿した《「LGBT」支援の度が過ぎる》という記事が炎上。
しかし編集部は無反省で、続いて2018年10月号に《そんなにおかしいか『杉田水脈』論文》なる特別企画を掲載。
しかし『新潮45』は休刊(事実上の廃刊)に。
社長は
「あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現が見受けられた」
という談話を発表しています。
これまた現場と上層部の乖離が激しめ。
この様に上層部の冷静な判断が止めるまで、現場が暴走しちゃうという出版界の同じ轍を踏んでるのが今回のKADOKAWAな訳ですね。
ついでに言及しておくとこのKADOKAWA、企業風土がなかなかにトンデモ。
2022年に当時社長だった角川歴彦が五輪絡みの贈賄容疑で逮捕されたのは記憶に新しいところですよね。
そしてこの角川歴彦の兄であり、KADOKAWAの前身である角川書店の社長だった角川春樹は、コカイン密輸で逮捕されてたり。
兄弟仲良く犯罪者。いや、実際は不仲なんだけど。
しかし春樹の方はそれ以上に「俺が巨大地震を止めた」等の発言がアレすぎ。
【TOCANA】
[「8月25日に来る予定だった巨大地震」を止めた男・角川春樹インタビュー! 新作映画『みをつくし料理帖』とコロナ予言を語る!]
https://tocana.jp/2020/10/post_173290_entry.html/amp
Wikipedia「角川春樹」のページには「エピソード」とは別に「伝説」という項まである始末。
そこには…
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・3歳のころから何回も、夥しい数の赤い点滅や葉巻型のUFOの大編隊と宇宙人を見たと主張していて、自身が宇宙を飛び回る意識もあるという。
・自称、超能力者で未来予知能力を持つらしく、35歳で海を漂流してるときに神通力に気付いたといい、モンゴルに行ったときには数十年ぶりに雨(雪)を降らせている。
・訪れた先の旅館では天狗の封印を解いて、居合わせた仲居が天狗を見たと発言。
(中略)
・たまに太陽が2つ出ているのを見ることがあり、関東大震災を止めたのも自分だと言う。
・海に沈んだ戦艦大和は潜った瞬間に自身が初めて発見したと話す。
・武田信玄、天武天皇、神武天皇、ヤマトタケルなどの生まれ変わりを自認しており、チンギス・ハーンだけは他人に指摘されて気付き、その記憶だけは無いという。
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…といったブッ飛びエピソードが並んでいたり。
コカインよりヤバめの何かが脳内で出てないですかコレ。
…とか書いてる時に、私が最も信用する論客・ロマン優光が今回の件についてコラムを発表してるのを発見。
【実話BUNKAオンライン】
[『あの子もトランスジェンダーになった』発売中止騒動を考える:ロマン優光連載269]
https://bunkaonline.jp/archives/3197
この人は常に冷静なので、
『インタビューや複数の否定派・擁護派双方によるレビューに目を通し、著者の考えなどはある程度把握しているつもりだが本文未読のため内容に触れることはしない』
と、現時点で『あのトラ』の中身についてどうこう言うことは避けてますね。
ついでに言えば、日本最大のリベラル系ブログであろう『脱「愛国カルト」のススメ』も同様で、
『読んでいないし専門家でないのでこの本の是非をここで述べることはできないが』
としています↓。
【脱「愛国カルト」のススメ】
『被害者に寄り添う振りをする加害者のおぞましさ@nipponichi8「LGBT活動家は暴力的な人間」「波風立てずに生きたいLGBTの人たちは被害者」』
https://datsuaikokukarutonosusume.blog.jp/archives/1082573366.html
ロマン優光の話に戻すと、前述のコラムには
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今回の発売中止の主な原因は外部からの抗議にあるというより、KADOKAWAの内部の都合にあったのではないだろうか。
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とあり、「上層部と現場の乖離」説と整合的。
さらにKADOKAWAの動きとして、
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また、竹内久美子氏やナザレンコ・アンドリー氏、百田尚樹氏、三枝玄太郎氏といった反LGBTQの傾向が見られる人物、日本の宗教右派の思想と親和性の高い人物に本書のゲラを送っている。
ナザレンコ氏や三枝氏のポストを信じるなら、妨害が予想されるので応援してほしい、というメッセージがあったという。
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ともあります。
やっぱりKADOKAWAやらかしてるくさい。
さらに↓こんな記述も。
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この本の原書は「Regnery Publishing」という出版社から発売されている。長い伝統を持つ、保守的な思想を支持する出版社だ。
自著の序文で文鮮明と統一教会への信仰を宣言する熱心な統一教会の信者であるジャナサン・ウェルズによる反進化論本。トランプ支持者であり、20年の米大統領選挙の結果に不正があった疑いがあると主張した共和党のジョシュ・ホーリー上院議員の本。元ワシントンタイムズ(統一教会系の出版社で記事の内容の真実性や人種偏見などの偏向がよく問題とされる)記者による文鮮明脱税事件の擁護本。反共主義者、キリスト教右派や白人至上主義者の著作。どこか特定の「保守」派閥や団体とベッタリというわけでもなく、共通する保守的な価値観があれば何でも連帯するような姿勢で、アメリカを腐敗させる「左翼」的なものと戦うという信念のもと、こうした傾向の本を長年に渡って出版してきた老舗の保守系出版社である。
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…まぁ私もよく
「この本出してるの、ネトウヨ御用達の出版社やんけ」
とか
「トンデモ本の雄・徳間書店」
とか言っちゃいますが…
こういうのは「良き指標」にはなりますが、「根拠」にはならないですよね。
それは「何を言ったか」ではなく「誰が言ったか」だけを問題にしてしまってる訳で。
良書なのにキャンセル・カルチャーによってリベラル系出版社からは軒並み断られ、仕方なく保守系出版社から出すしかなかったのかもしれないし。
実際、創造論やニセ医学批判をしている懐疑主義系の人がトンデモ系の出版社から本を出すことだってある訳で↓。
【NATROMのブログ】
『メタモル出版から本を出したわけ』
https://natrom.hatenablog.com/entry/20140610/p1
あととんでもなく凄い科学者たちが集まって書いた「サイエンス・マスターズ」シリーズの邦訳を出した草思社が、いつの間にかオカルト本のたま出版の事実上の子会社である文芸社のさらに子会社になってたり。
出版業界にはいろいろあるのです。
【たけみたの脱社会学日記】
『草思社「サイエンス・マスターズ」目録リスト一覧』
https://takemita.hatenadiary.org/entry/00051228/p1
『あのトラ』が日本でネトウヨさん達に利用されてる様に、本国でも極右に利用されてるんじゃねーの?
この論点については、前回の『あのトラ』エントリへのコメントでいち早くご教授下さった方がおられました。
厚く御礼申し上げます。
誠にありがとうございました。
↓あさんから頂いたコメント全文
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この本への批判はデータの取り扱いにおける恣意性とかも大きいみたいだよ
あと差別的な点としては親や環境のせいで性的マイノリティになるみたいな論調のよう
それから元々の出版社がトンデモ右派的な本ばかり出してるって
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↑
『親や環境のせいで性的マイノリティになる』
については…
おそらくこの本は性的マイノリティ自体ではなく、周囲の影響で「私は性的マイノリティなんだ」と信じ込み、不可逆的な性転換に進んでしまって後悔しちゃう子供たちの問題に焦点を当ててるっぽいので、その辺を指して『環境のせい』と言ってるのかも。
データの恣意性については読んでみないと何とも分からないので今は保留で〜。
まぁどこぞのネトウヨ系出版社が鳴り物入りで出しはりますやろ。
(00:09)
2023年12月25日
平素は当ブログをご愛顧いただきまして誠になんちゃらかんちゃらー。
皆様のお陰をもちまして、このブログもいつの間にやたら3万ヒット超え。
バズってるサイトから見れば微々たる数字ではありますが、私にとっては望外です。
あとTwitterでエゴサーチしたら↓こんなん見つけました。

↑ ネトウヨさんに認知いただくとは光栄です。
やっとこのレベルまで昇り詰めたかぁ…
そして国籍透視ならぬ職業透視。
生保もらってたのか私…知らなかったー、エッセンシャルワーカーだと思ってたー。
そう、昨年は高等遊民(ジョブレス)として有り余る時間を利用し、2日に1度はブログ更新してた私ですが、ここ1年ほどはワーキングプアとして過ごしており、週に1度の更新もままならぬー。
という訳で、せっかくいただいたコメントへの返信がなかなかできず…
とにかく時間がないので、新規エントリを書くことにリソースを集中させていただいております。
そして気まずさのあまり、返信どころかコメント承認すらせずに1年近く経ち、40件を超えるコメントを溜め込むことに。
すみませんすみません!
別に皆様から頂いたコメントが気に喰わないとかでは全然ないのです。
ただもう時間不足と私の怠慢が招いた気まずさスパイラル。
という訳で今後はコメントは頂き次第すぐ反映させていただく様に努力いたします(自分の怠惰さを熟知してるので確約はしないという)。
これまでに溜め込んだコメントはまとめて承認しておきます。
返信はなかなかできませんが、タイミングが合えばできるだけ頑張りたい所存。
トンデモさんやネトウヨさんからの書き込みも特に禁止はしていません。
実際、昨年以前にいただいたコメントで未承認のものは、いわゆる「変態糞親父コピペ」等を大量に貼り付けてきた人のもののみです。コレはあまりにも意味が無かったので…。
と言っても、アレなコメントの承認は差別や中傷への同意や黙認ではなく、「自ら恥を晒したいならどうぞ」的な意味ですのでよろしくです。
(00:36)
2023年12月12日
2023年12月10日
KADOKAWAから出る予定だった書籍
『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』
の発売がキャンセルになりました。


原題は『Irreversible Damage: The Transgender Craze Seducing our Daughters』(取り返しのつかないダメージ:娘たちを誘惑するトランスジェンダーの流行)。
「幼少期に性別違和がなかった少女たちが、思春期に突然“性転換”する奇妙なブーム。学校、インフルエンサー、セラピスト、医療、政府までもが推進し、異論を唱えれば医学・科学界の国際的権威さえキャンセルされ失職。これは日本の近未来?」
といった内容紹介がされていた模様。
本書は発売前から「差別本」とされ、LGBT擁護派からは出版の中止を祝う声が。
一方、反LGBT派からは
「表現の自由はどこへ」
「焚書やんけ」
的な反応が。
まぁこのトランスジェンダーをめぐる問題はいろいろややこしいんですよね…
女性の権利を標榜するフェミニズムの中に
「トランス女性は女性の聖域である女性用トイレや浴場に入ってこないで」
「トランス女性は男性です」
といった意見があるのですが…
フェミニズムとLGBTはともに弱い立場に置かれている訳で、本来なら共闘すべき立場なのでは。
どっちもザックリ言えばリベラル同士やろ…
「表現の自由」にしたって今は何故か保守派に乗っ取られ、差別を正当化する具にされてる感がありますが、本来はリベラル的言説ですよね。
90年代の筒井康隆断筆事件とか、「差別はあかんやろ」vs「表現の自由やろ」でリベラルな主張同士だったし。
ていうか当時、保守は息してなかったですよな。
そんなリベラル同士が分断されていくの勿体無い。
そして反LGBT側の
「LGBTを認めると『心は女です!』と言い張るオッサンが女湯に入ってくる様になるぞ!」
という主張。
いや、そういうオッサンが出現したとしても、ソレは「シス男性による性犯罪」でLGBTとは関係ないやん…
え、「LGBTへの配慮のせいで性犯罪が起きることに変わりはない」?
じゃあ税務署を装った還付金詐欺が横行したら、税務署が悪いんですか?
あとそれはLGBTのせいというより、「LGBTへの配慮を利用すれば性犯罪し放題」と喧伝してきた反LGBT派のせいでは…?
一方、LGBT擁護派は女湯オッサンについて
「そんな訳ないやん」
「根も葉もないデマ」
等と言ってきましたが…
欧米ではそれに近い事件が実際に起きてる訳で。
これは「性自認がそのまま認められる」というガバガバさのせいなので、検査とか厳重な手続きとか専門機関による認定とか何らかの対策はした方が良いと思います。
でないとそこがアキレス腱となり、反LGBT派に正当性と絶好の口実を与えてしまうのでは。
あとこういった問題にツッコむと、リベラル論客であってもヘイター扱いされ、石もて追われるというキャンセル・カルチャーの問題。
この『あのトラ』もドーキンスが賞賛しているのですが…


ああっ、ドーキンスがヘイター扱いされてるー!?
…いや、ものごっつリベラルだよ!
昔からLGBT擁護してたやん。
ドーキンスはリベラルだけど、左右関係なくおかしいところはおかしいと言う人で、「空気を読まない」のが良いところ。
日本で言うとロマン優光みたいな感じでしょうか。
おかげでキャンセル・カルチャーの犠牲となり、もちろんキャンカル批判に余念なし。
近年では
◉『大衆の狂気 ジェンダー 人種 アイデンティティ』
◉『「社会正義」はいつも正しい 人種、ジェンダー、アイデンティティにまつわる捏造のすべて』
といった本を推薦してます。
「うわぁ、もろヘイト本やんけ!」
とお思いになるかもしれませんが、目を通してみると「マイノリティーの権利はちゃんと擁護しつつ、行き過ぎについては批判」という内容で、「リベラルによる健全な自浄作用」って感じ。
ただし、それが「行き過ぎ批判のフリしてマイノリティーの権利を根底から否定する」差別的な人々に利用されるリスクはあるよねー。
実際、『このトラ』擁護派の面々を見ると…
◉【森奈津子】




…普段、左翼を「プロ市民」だの何だの言ってた側が、都合次第で急に『我々市民は』と言い出す、いつものやつ。
◉【我那覇真子】

◉【ナザレンコ・アンドリー】

◉【竹内久美子】

竹内久美子については↓こんなツイートも。


…KADOKAWAサイドがわざわざゲラを渡したのはしくじりムーブだったのでは。
◉【ろくでなし子】

リベラル文化人ながら『ぱよぱよちーん』、引いては『パヨク』という謎フレーズの普及に手を貸したろくでなし子。
この人は自分の女性器アート作品を排除されてきたので、まぁこう言いたくなる気持ちは分からなくもありません。
でもこの人の作品、現代アートの文脈に乗っかれてない気がするんですけど。
…という「いつメン」。
こういうのは学界にもあって、例えばハーンスタイン&マレイの『ベルカーブ:アメリカ生活における知能と階級構造』という本は、主にリベラルな人々から「人種差別的である」との激しい非難を受けてきました。
しかしそうでもないという話もあり…
【山形浩生の「経済のトリセツ」】
[ハーンスタイン&マレイ『ベルカーブ:アメリカ生活における知能と階級構造』(1994)]
https://cruel.hatenablog.com/entry/20140629/1404049834
【[渡辺千賀]テクノロジー・ベンチャー・シリコンバレーの暮らし】
『ベルカーブはトンデモ本ではありません』
https://chikawatanabe.com/2009/01/15/bellcurve/
…↑ここで語られている『ベルカーブ』を批判したグールドの『人間の測りまちがいー差別の歴史ー』は、差別が科学を歪めてきた歴史について語った良書なのですが、この様に行き過ぎとの批判もあります。
「人種は公平に扱われるべきなのだから、人種間の差などある筈がない」
といった主張は、「どうであるべきか」(価値命題)から「どうであるか」(事実命題)を引き出してしまうという『道徳主義の誤謬』に陥っている様に見えます。
ちなみにグールドのライバルであるドーキンスは「人種間に違いはあるけど、だからといって扱いを変えるべきではない」という立場。
なお、グールドは人の政治的バイアスを指摘しておきながら、自分もバイアスに弱かった訳ですが、それを指摘されて「イデオロギーの影響を受けない者がどこにいる」的な返しをしてたり。素敵。
グールドは欠点もあったけど、彼の仕事は世界を改善することに資するものだったと思います。
大事なのは無謬であることではなく、着実な改善。
「無謬でなきゃダメー!」というのは『ニルヴァーナ誤謬』というやつ。
…という訳で、リベラル側が差別に敏感になるあまりやらかしたきらいはあるのですが、差別者がこれらの研究を自分たちに都合良く利用してきたこともまた確か。
Wikipedia『科学的人種主義』の項はこう結ばれてます。
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米国人類遺伝学会(ASHG)による2018年の声明は、"遺伝的多様性の価値を否定し、白人至上主義のインチキな主張を補強するために、信用できない、あるいは歪曲された遺伝概念を利用するグループの復活 "に警鐘を鳴らした。ASHGはこれを「人種差別イデオロギーを助長するための遺伝学の悪用」と非難し、白人至上主義者の主張の根拠となっているいくつかの事実誤認を強調した。この声明は、遺伝学が「人間を生物学的に異なるサブカテゴリーに分けることはできないことを証明している」と断言し、「"人種純潔 "という概念が科学的に無意味であることを暴露している」と述べている。
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実際、日本でも…
『ベルカーブ』同様に差別的だとされたJ.フィリップ・ラシュトンの『人種 進化 行動』という本の訳者は、蔵琢也・蔵研也の兄弟。
蔵琢也は著書のタイトルが
『美人を愛した遺伝子たち いい女を好きなのは僕らのせいじゃない』
とか、
『天皇の遺伝子 男にしか伝わらない神武天皇のY染色体』
とか、完全に芸風が竹内久美子とカブってる人です。
ていうか、京都大学の日高敏隆研究室で竹内久美子の後輩だったらしいし。さもありなん。
【PRESIDENT Online】
『「美人は性格が悪い」という話は本当か』
https://president.jp/articles/amp/15225?page=2
ちなみにこのお方、八木秀次にわざわざ自分から連絡を取って「Y染色体論の考え方は正しい」的なお墨付きを与えた模様。
さらに「新しい歴史教科書をつくる会」から分裂した「日本教育再生機構」(理事長は八木秀次)の発起人の一人だったり。
【西東京日記 IN はてな】
『これが安倍晋三のブレーンかよ…』
https://morningrain.hatenablog.com/entry/20060902
↑他の発起人のラインナップも面白いので是非。
村上和雄とかいて「あ〜やっぱり!」感。
…そんな怪しげな人物が、簡単に差別に転用できそうな本にわざわざ関わるの、何で?
『あのトラ』の方も妙な人物が妙なムーブをしないか、注意して動向を見守りたいと思います。
【オマケ】
↓『サウスパーク』で性転換したギャリソン先生と同衾するドーキンス

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