『なぜモテ』その④




竹内久美子の新刊
『なぜモテるのか、さっぱりわからない男がやたらモテるわけ　動物行動学で語る“男と女”』
に迫るシリーズ4回目。

ジャニーズ問題について
「ジャニーさんが少年に性犯罪をしていた証拠はない、司法を通せ！
これは左翼の陰謀だ！」
的な主張をよく見かけますね。


Twitter(現X)で「ジャニーズ　司法　左翼」で検索するとこういうのがわらわら出てきます。
画像はその一部。

















…そう主張するからには当然、この人たちは「左翼の陰謀」の証拠を提出し、司法を通してるんですよね…？
と思いきや、誰も通してない模様。
ナニそのダブスタ。

しかしこの論法、以前からネトウヨさんたちが頻繁に使ってました。
もりかけのあたりで
「あんたらは裁判官じゃない」
とか、
「決められるのは裁判所だけ」

『なぜモテ』その③



竹内久美子の新刊
『なぜモテるのか、さっぱりわからない男がやたらモテるわけ　動物行動学で語る“男と女”』
に迫るシリーズ3回目。




今回取り上げるのは、竹内久美子がタモリの発言を基に書いた↓この部分。長めの引用になりますが…

(p.47)
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　タモリさんの子供時代には、お妾さんの子というのがクラスに1人ぐらいいた。その子(女の子)たちが、その他の女の子たちとは明らかに一線を画すくらいに色っぽかったと言うのである。つまり、お妾さんの子には女の子が多く、しかも女として非常に魅力的であると言うことだ。
　この観察結果には、実に様々な動物行動学的な要素が含まれていると思う。
　そもそも本妻さんとお妾さんでは、子の性比に違いがあって当然と思われる。本妻さんは夫からの投資(食料など生活一般だけでなく、教育なども)を十分に引き出せる立場にある。
　まずは、その意味で男の子を産むべきだ。男の子は大きく生まれ、大きく育つことで将来の繁殖に有利になる。高い教育を受けさせることなども繁殖に有利になる。
　そしてもう一つには、夫はお妾さんを持つことができるほど、財力があり、お金を儲ける才能もあり、社会的にも高い地位にある。だから単にそれらを譲り受けると言う意味でも、そういう才能を受け継ぐと言う意味でも男の子を産むべきだ。
　この件については、アメリカの歴代大統領の記録やヨーロッパの「紳士録」を利用することで地位の高い男には息子が多いことを示した研究がある。
　方やお妾さんはどうだろうか。
　本妻さんほどには子への投資を望めないだろう。となれば、投資の大小が将来の繁殖に響かない女の子を産むべきだ。女の子は体が小さいことや高い教育を受けていないことなどが繁殖に影響を及ぼさない。父親の社会的地位の高さも、財力のあるなしも、お金儲けの才能も繁殖と言う意味では、ほとんど関係ない。女の子で繁殖の成否(ここで言うのは単なる子の数ではなく、子が社会階層をいかに登っていくかに重点をおくこととする)にもっとも関わってくるのは美貌だろう。
　つまり、ここでお妾さんという母の立場が効力を発揮する。お妾さんとなるのは、普通の女よりもハードルが高い。美貌はもちろんのこと、色気、なんとはなしの雰囲気、物事に対し“粋”であること……などだ。
　もし子がこれらを受け継いだとすると、息子よりも娘を産む方がその子の将来の繁殖にとって断然有利なのである。その娘は自身の女としての溢れんばかりの魅力により、財力があり、社会的地位が高く、お金儲けがうまいなど、様々な才能を持つ男の妻となり、まず社会の階層を上がる。そして財力と能力を受け継いだ息子を得るのだ。しかも息子は母譲りの美男であることが多く、鬼に金棒のモテ方をするだろう。
　タモリさんが見抜いた、お妾さんの子には女の子が多く、普通の子よりも段違いに美しいとか色っぽいというのは、こういうことなのではないだろうか。
　ちなみに鳥のオオヨシキリでは、ここで論じたことが証明されている。ライバルオスとの戦いに勝って大きな縄張りを構え、十分な食料を確保することができたオス、あるいは声の良さやさえずりの複雑さと言う魅力によってメスを引きつけたオスは、第二、第三の妻を得ることがある。
　その場合、女はどういう性比で子を産むのだろう。ある調査では本妻の子の五八%、お妾さんの子の四八%がオスであった。「そんなに違わないじゃないか」と思われるかもしれないが、十分に大きな違いなのである。
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…お手本の様な竹内久美子構文ですね。


まず「お妾さん」の出現は中世以降なので、動物行動学で読み解く…つまり進化の産物と考えるには、圧倒的に時間が足りません。
それに性比がそんなに簡単に変更できるなら、メスを欲しがる畜産業界に革命が起きる筈なのですが…
長年にわたる畜産家の努力にも関わらず、ウシの性比をメスに傾ける様な突然変異は起きてないんだよなぁ。
コレが

◉【竹内久美子　七つの大罪 ①】
「ごく最近の事象なのに進化論を持ち出して説明する」

です。


さらにお妾さんというのは進化よりはむしろ文化の影響を色濃く受けていることも無視。
これは

◉【竹内久美子　七つの大罪 ②】
「文化で説明できることも進化論で説明する」

ですね。
あとタモリ、言うほど「お妾さんの子は女の子が多い」と主張してますかね？

『タモリさんの子供時代には、お妾さんの子というのがクラスに1人ぐらいいた。その子(女の子)たちが、その他の女の子たちとは明らかに一線を画すくらいに色っぽかったと言うのである。つまり、お妾さんの子には女の子が多く、しかも女として非常に魅力的であると言うことだ。』

…「つまり」も何も、タモリの発言部分からその様なことは全く読み取れないんですが。
まぁコレはタモリ発言の正確な引用って訳でもないし、竹内久美子が意図を正確に伝えられていないだけかもしれません。
実際、竹内久美子は相当な悪文だし。

ついでに言うと、本書は連載されたものの寄せ集めなので話がややブツ切りになっており、同じ説明が何度も出てきたり、説明不足のまま話を進めてだいぶ後になってから説明する、といった構成の甘さが目立ちます。
出版時に手を入れて推敲してないんですかね？


まぁタモリが「お妾さんの子は娘が多い」という類いの発言をしていたとしても…
そもそもの根拠が「タモリの思い出話オンリー」って何やねん…ガバガバすぎやろ。


オオヨシキリの話では

『ある調査では本妻の子の五八%、お妾さんの子の四八%がオスであった。「そんなに違わないじゃないか」と思われるかもしれないが、十分に大きな違いなのである』

と、研究者が数%の違いを検出し、それが大きな違いであることを強調していますが…
それに対して自分はと言えば、芸能人の記憶に基づくぼんやりした印象を絶対化。
こんなん並べて恥ずかしくないんか…？

あとお妾さんの子ってクラスに1人とかいますかね？
お妾さんの成立は先述の通り中世。
江戸時代にはお妾さんを持てるのは高級武士か豪商くらいでした。
当時、武士は7%、町人は5%しかいません。
お妾さんを持てるのはその中で多めに見積もっても数十人に1人では。
人口比で言うと数百人〜数千人に1人もいれば良い方でしょう。
一方、「クラスに1人」は団塊の世代のギュウ詰め60人学級と仮定しても「60軒に一軒はお妾さん宅」ということになります。
近代以降に多少は比率が変わったとしても、そんなにはおらんやろ。
竹内久美子はしきりに
「生物学では1%いれば何か意味があると考える」
と言うのですが、お妾さんって1%もいますかね？

さらに竹内久美子は「LGBTは2%くらいいるから生物学的に意味がある」というのを根拠にLGBTを認めているのですが…
それって、もしLGBTに生物学的な意味がなかったら支持しないってコトやん。

あと、もし犯罪者が1%以上いて、それが生物学的に意味があるなら犯罪も容認するんですかね…？
「生物学的に意味がある」のと「政治的に意味がある」のとは全くの別モノやろ…
そもそも「どうであるか」という事実命題から「どうであるべきか」という価値命題を引き出すことはできません。
それは「ヒュームの法則」に違反しています(自然主義的誤謬)。

よって、LGBTの権利は生物学によって裏打ちされる必要はありません。
これが

◉【竹内久美子　七つの大罪③】
「事実と価値感を区別しない」

です。
あとリベラルってどこの国でも何割かはいるし、日本でもリベラル系野党の支持率は合計で10%くらいあるのに、竹内久美子って「リベラルには生物学的に意味がある」とは一切言わないよね。なんで？
これが

◉【竹内久美子　七つの大罪 ④】
「政治姿勢が偏りすぎ」

です。この人、

「とにかくリベラルは敵」
なんだよなぁ…
そして
「常識や良識に反することが大好きな割に、何故か保守派」。
いや、保守派なだけなら別に良いのですが、
「陰謀論を軒並み信じてるネトウヨさん」
なのが大問題。


それはともかくとして、元の話に戻すと…

『方やお妾さんはどうだろうか。
　本妻さんほどには子への投資を望めないだろう。となれば、投資の大小が将来の繁殖に響かない女の子を産むべきだ。女の子は体が小さいことや高い教育を受けていないことなどが繁殖に影響を及ぼさない。父親の社会的地位の高さも、財力のあるなしも、お金儲けの才能も繁殖と言う意味では、ほとんど関係ない。女の子で繁殖の成否(ここで言うのは単なる子の数ではなく、子が社会階層をいかに登っていくかに重点をおくこととする)にもっとも関わってくるのは美貌だろう』

のあたりもヤバい。
オスは多くのメスと交尾すればするほど、子の数が増えます。
そのかわりにあぶれて全く子を残せないリスクもあるという、ハイリスク・ハイリターンなギャンブラー。
一方、メスはモテても産める子の数は殆ど増えないので、オスほど交尾に熱心ではなく、かわりにオスの質を追求する傾向にあります。
いわば堅実な投資家。
結果、適応度(子孫の数)は
「モテるオス > モテるメス ≧ モテないメス > モテないオス」
が基本となります。
つまり厚遇される本妻も、それほど『子への投資を望めない』お妾さんも、子供の数はあまり変わりません。
それだと「子供の数」(適応度)で全てを測る進化論の俎上には乗せられないため、
『ここで言うのは単なる子の数ではなく、子が社会階層をいかに登っていくかに重点をおくこととする』
という一文を滑り込ませて、話を「子供の数」から「社会階層」へとすり替えざるを得なかった模様。
「多くの子供を産めば勝ち」という進化論の絶対的なゴールポストを豪快に動かしてしもとる〜！


そして最大の問題点。

『その娘は自身の女としての溢れんばかりの魅力により、財力があり、社会的地位が高く、お金儲けがうまいなど、様々な才能を持つ男の妻となり、まず社会の階層を上がる』

…お妾さんの娘は、母親みたいにお妾さんになるんじゃなくて、本妻になるんかい！？
それだとお妾さんは一代限りなので累積的な進化が起きひんやん…
これもう進化論をベースにした動物行動学と何の関係もないやろ。

この２つ、

◉【竹内久美子　七つの大罪 ⑤】
「進化論の基本が解ってない」

ですね。
さらに

『ちなみに鳥のオオヨシキリでは、ここで論じたことが証明されている』

の部分…全然証明されてねぇよ！
そもそもオオヨシキリのは
「何十万年もかけて自然選択によって進化した性質」
で、竹内久美子のお妾さん話は
「せいぜい数百年の間に、文化的影響を受けて成立した生き方」
の話。
全然ちゃうやん。

それに、オオヨシキリの『オスは縄張り内で最も繁殖の進んだ巣にのみ、給餌を行う』(Wikipediaより)ため、第二・第三の妻の適応度(生殖年齢まで育つ子の数)は本妻に比べて相当低くなるでしょう。

そんなん「ヒトのお妾さんの社会的成功度」と一緒にできませんて。

というかコレ『ここで論じたことが証明されている』のではなく、オオヨシキリの研究から思いついてヒトに無理やり当て嵌めただけなんじゃネーノ？
だったら話が逆なのでは…。

なのに『論じたことが証明されている』などという強い表現に出る…
コレが

◉【竹内久美子　七つの大罪⑥】
「推測&飛躍から始まった話が、いつの間にか断定調」

です。

そして性比は、例えばオスに傾くとメス不足になって、今度はメスを多めに産む個体が有利になります。
メスに傾くと逆の現象が起き、常に少数派が有利になって、性比はおおむね1:1に保たれるのですね。
しかし先述の通り、適応度は
「モテるオス > モテるメス ≧ モテないメス > モテないオス」
なので、もし自分の息子が高確率で「モテるオス」に育つ見込みがあるなら、オスを多めに産むべきではあります。

そう考えると、オオヨシキリやら歴代大統領やら紳士録やらの話からうかがえるのは、
「動物は時に、『自分が強い立場にいる場合にはオスを、不利な立場にいる場合にはメスを多めに産む』という条件付き戦略を採る」
というコトなのでは…

その方がより包括的かつシンプルな説明なのに、「お妾さんの娘は〜」などという面白話に終始する…
コレが竹内久美子の最大の悪癖である

◉【竹内久美子　七つの大罪⑦】
「大きい話を卑小化しちゃう」

です。
この人、
「我々の行動の多くは自由意志ではなく、遺伝子の影響を受けている」
という話を
「男の浮気は遺伝子のせい！」
とか、とかく卑近でセンセーショナルなエロ話にしちゃうよな。

Twitter(現X)上に「テキサスおっ母さん」という有名なリベラルアカウントがありまして。
コレは勿論、ネトウヨさんが大好きな「テキサス親父」をパロディー化した名前ですね。


で、2023年4月に陸上自衛隊のヘリが行方不明になる事件がありました。
それに対してこのテキサスおっ母さんが


『どうせネトウヨが「中国に撃墜されたのだ！」とか言い出すに100ウヨ😓にしても全員無事であってほしいね・・・』


と発言。
そこに何故か絡んできた石井孝明。
その後どうなったか、即堕ち4コマをご覧下さい。






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即ブロ。

そして何かが「ある/ない」の話をしてるのに、『統計学では1、2例では有意と判定できない』って…
じゃあ「白いカラスがいる」ことを証明したい場合、2羽見つけてもまだ「いるとは言えない」んですかね…？
ツチノコは何匹捕まえたら統計的に有意になるんでしょうか？
学歴のある石井孝明さんに是非ともご教授いただきたいものです。

そもそも「ある/ない」という、1か0でバチっと決まるシンプルな話に、なぜ大規模な数や確率論を扱う統計学なんか持ち出すのか…

相手を勝手に無職&低学歴認定しといて、自らのアレっぷりを披露しちゃうのとか一番カッコ悪いやつ。





そんな石井孝明さんですが、最近ネトウヨさんサイト『モナニュース』で話題になってました。


【モナニュース】
『【話題】中東系の男たちがビルを違法解体、通報殺到して工事中止に…石井孝明「世論が、外国人悪質業者に反撃しました。正義は勝つ。久々に心地よい」』
https://mona-news.com/archives/91327206.html

…『例の民族が制裁受けても仕方なし』とか言って心地よくなっておられます。

『久々に心地よい』だそうですが、いらんことで恥かいたりした後だったので心地よく過ごせるのも久々だったんでしょーか。




ちなみにこの石井孝明がどういう人物か、Wikipediaを覗いてみると…

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/石井孝明_(ジャーナリスト)
「批判・不祥事」の章がやけに長いですね。
あと池田信夫の『アゴラ研究所』に執筆したり、『Will』に頻繁に寄稿してる時点でいろいろお察し。



さらに『脱「愛国カルト」のススメ』でも何度も取り上げられてる常連さんだったり。

https://datsuaikokukarutonosusume.blog.jp/tag/石井孝明