2023年09月
2023年09月24日
2023年09月17日
『なぜモテ』その②
竹内久美子の新刊
『なぜモテるのか、さっぱりわからない男がやたらモテるわけ 動物行動学で語る“男と女”』
に迫るシリーズ2回目。

その①は↓こちら。
『竹内久美子さん「リベラルは飯マズ!」←は?』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/21503669.html
今回は書名にある
「なぜモテるのか、さっぱりわからない男がやたらモテるわけ」についての竹内久美子の珍説をご紹介。
まず竹内久美子はこうブチあげます。
p.37
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
女は匂いで男を選ぶ
恋愛とは相手の免疫の型を見抜く過程である。それは女が主導するもので、男はほとんど関係がない。
こんなことを言うと、なんとまぁ夢のないこと! 恋愛は人生で1番ロマンティックな出来事なのに竹内は水を差す気かと叱られそうだ。だが、どう考えてもそういう結論に至るのだから仕方がない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
この「恋愛とは相手の免疫の形を見抜く過程」という主張は数ページ後でも繰り返されます。
p.42
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
夢がない話で申し訳ないのだが、恋愛とは所詮は相手の免疫の型を探る過程。私は恋愛についてロマンティックな形容がなされればなされるほど、嘘くさいな、どこかごまかしているなと疑ってしまう。逆に、このような身も蓋もない説明をされると、納得し、安心してしまうのだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
はーそうですか。
ちなみに他著によれば、竹内久美子は若い頃からリベラルに対しても同様の胡散臭さを感じていたそうですが…
ロマンティシズムとかリベラリズムとかに対してはこういう中二病的な逆張りに出る割に、それ以上にドグマティックな保守主義や天皇制については何故か熱狂的に支持、という謎。
そして話は何故か「林家正蔵はモテる」という話に。
p.43
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
そのモテ方は尋常ではないという。
言われてみると確かにそうだ。傍から見ている限りではモテ要素が見つからない。落語家なので話は得意なはずだが、テレビなどで披露されるフリートークも、そう上手とは思えない。女が捧腹絶倒するほどでもないのだ。
このように、どこがそんなにモテるのかわからないのに、やたらめったらモテる男がいる……。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
…ディスり過ぎやろ。
まぁ私も正蔵(元・こぶ平)のことは特に好きだとも才気溢れるとも思ってはいませんが…
それでも正蔵は喋りのプロだし、一応は古典芸能の名家に生まれて若くして真打になったサラブレッドでしょ。
おまけにめちゃめちゃマメらしい。
財産・名誉・地位・話術・マメさ、と女性の好む性質を持ち合わせ、しかも女性関係に奔放でも許されがちな世界に生きている…
別にモテてもおかしくはないやん。【註1】
しかし竹内久美子は正蔵のモテの秘密をこう読み解きます。
p.43
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
私が思いつくのは、彼は極めて珍しいHLA(ヒト白血球抗原)の型を持っているのではないかということだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
…どういうことかと言うとですね。
有名な実験で「男子学生たちが着たTシャツの匂いを女子学生たちに嗅がせたら、誰の匂いを好むか」というのがあるのです。
ところが結果はバラバラで、特定の匂いが好まれる訳ではありませんでした。
実は女子学生たちはそれぞれ、「自分と異なる免疫の型を持つ男子学生の匂いを好んでいた」のですね。
自分に近い免疫の型を持つ男性と結ばれると、子供の免疫の型に多様性が生まれない。
多様な病原体に抵抗するために、女性は「自分と似てない免疫の型を持つ男性」の匂いを好むのではないか…
この実験はそう解釈されました。
竹内久美子はこの実験を持ち出し、正蔵のモテもまた免疫の型のせいだと結びつけているのですね。
どの女性から見ても型の異なる珍しい免疫の持ち主なのだろう、と。
しかしこの実験、別に「好みの男性の匂いは、嗅いだ女性がたちまち恋に落ちる惚れ薬の様なものだ」などと言ってる訳ではなく。
せいぜい「他の条件が同じなら、匂いで相手を選ぶ傾向があるかもね」程度の話に過ぎません。
それなのに「特殊な匂いでモテモテ」って…
感度3000倍になる薬とか、催眠アプリとか、薄い本に出てくるご都合主義アイテムと変わらへんやん…対魔忍。
しかも
「恋愛とは相手の免疫の形を見抜く過程」
とか言ってた癖に、別の箇所では
「恋愛とは相手の質を見極める過程」
と言ってます。
p.90
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
女は一回の繁殖にかかるエネルギーも大きければ、拘束時間も長い。よって、じっくりと相手の質を見極め、選ばなくてはならない。恋愛とは相手の質を見極める過程と考えることができ、それがために女の方が恋愛に重きを置くのである。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
この2つは全く異なります。
「相手の質を見極める」
というのは、体や行動を手がかりに相手の生存能力や繁殖能力の高さを見極める、ということ。
「アスリートやイケメンは遺伝的な質の高さの表れだからモテる」みたいなことです。
一方、
「相手の免疫の形を見抜く」
というのは「自分の免疫の型と違っていればそれでOK」ということ。
話が真逆ですね。
そして
「ハンサムにも有能にも見えない正蔵がモテるのは、免疫の型のせいに違いない。
レアな免疫の型を持ってるからモテるのだろう」
と、まぁまぁ失礼な想像を逞しくした訳ですが…
「正蔵の免疫の型はレアで、それ故にモテるのだ」という主張を支持する根拠は何一つ出てきません。
思いつきを根拠レスに言ってみただけ、といういつものやつ。
こんなんが書名にまでなっちゃうんだもんなぁ…。
しかも今回の主張とは真逆の
「恋愛とは相手の質を見極める過程」
というのは、竹内久美子がこれまで過剰に言い立ててきたこと。
例えば本書にはこうあります。
p.26
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
顔の良さや鍛えた体というのは、単に男としての魅力に留まるものではない。それは、免疫力や生殖能力の高さを物語るものなのだ。例えば、研究によって免疫力との相関が現れたのは、声の良さ、ルックスの良さ、筋肉質の体なのである。
さらに、顔の良さは精子の質と相関があることがわかっているし、筋肉質の体は男性ホルモンのテストステロンのレベルの高さを物語る。テストステロンは男性の魅力の全てにかかわっているから、声の良さ、顔の良さ、ルックスのよさにかかわる。もちろん精子の質や数など、生殖能力にもかかわる。
これらのことから声の良さ、顔の良さ、ルックスの良さ、筋肉質の体など、男としての魅力の全ての要素が、免疫力・生殖能力と渾然一体となって関係してくるのだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
…恋愛をオスとしての「質」だけで語り、その多くを免疫力の高さとテストステロンレベルの高さに還元する、という竹内久美子の平常運転。
勿論、ヒトの恋愛はこれほど単純ではありません。
動物行動学や進化心理学に裏打ちされた傾向は存在するにせよ、
「恋愛とは相手の免疫の形を見抜く過程」
だの
「恋愛とは相手の質を見極める過程」
だのといった言い方は明らかに単純化し過ぎ。
しかしヒトの恋愛ではなく、動物一般の生殖の話とするなら、
「相手の免疫の形を見抜く過程」
よりは
「相手の質を見極める過程」
の方がまだしも近い…
つまり「正蔵の免疫モテ」の話は無茶ですて!
しかし竹内久美子の無茶っぷりはこれだけではありません。
「正蔵モテ話」より前に、「コバナフルーツコウモリはフェラチオする」という研究を紹介してるのですが…
(※「MHC」「HLA」というのがやたら出てきますが、どちらも免疫の型のことで大体同じもの)
p.41
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
フェラチオ自体に費やされる時間は微々たるものなので、交尾時間の全体がフェラチオの作用によって伸びたということになる。メスがオスを「励ました」結果、オスが頑張れたのである。
このように交尾時間を延長することによって、メスはどのような利益を得るのだろう。
まずは交尾時間を長くすることで、受精率を高められるし、その間はオスを独占できる。またフェラチオで唾液をペニスに塗りつけると殺菌効果がある。確かにそうなのだが、それに加えて、ペニスを舐めることで相手のMHCの型をチェックすることができるのだ。舐めるというのは相手の匂いを嗅ぐのと同じ効果があるだろう。もし、あまり良い匂いでなかったら、MHCの型の重なりが多いと判断し、交尾を中断することも可能だ。
こうしてみると、人間のフェラチオも相手のHLAの型の重なりが多いかどうかを判断する過程だと考えてもいいと思う。フェラチオは前戯の間に行われることが多いと思うが、もし、あまり良い匂いでなかったら、女はがっかりして行為を中断してしまうだろう。しかし、それでいいのである。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
コウモリのフェラチオは「受精率の上昇」「殺菌効果」「免疫の型の判定」に役立ち、ヒトのフェラチオも「免疫の型の判定」では…
と、比較的ありえそうな話から飛躍した話までが並んでますが…
ココで竹内久美子の良くないところが大爆発。
どこまでが元の論文にある考察で、どこからが竹内久美子の主張なのかよく分からないですよね…
「受精率の上昇」はともかく、「殺菌効果」のあたりからもう怪しい。
フェラチオって殺菌効果より感染症リスクの方が高くないですか?
ましてや「免疫の型の判定」まで研究者が言及していたとは考えにくいのでは…
まともな研究者なら実際にMHCの型と交尾時間に相関があるか、データも取らずにいきなり言い出さないでしょ。
意図的なのか、素なのか、この人はこういうことをよくやります。
先ほどのTシャツ実験の話の後でも、
「女性はHLCの型の重なりが多いと性的に満足せず、オルガスムスが減って排卵期のセックスを拒否する」
的な話が断定調で書かれています(p.40あたり)。
…が、ソースは不明。
しかも「排卵期のセックスを拒否」とか言うけど、あんた他著では「ヒトにも交尾排卵がある」、つまり「セックスが刺激になって排卵が起こる」と主張してましたやんか?
さらに竹内久美子はこう書いてます。
p.45
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
こういう風に新しい型が現れると病原体に対して極めて有利であり、メスが非常に好むと言うステップがあるためだろう、HLAの型は調べれば調べるほど、次々に新しい型が発見されるのである。
その一方で、メジャーな型というのも結構あって、それが意味するところはよくわからない。何らかの病原体に対して強いということかもしれない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
…マイナーな型がおもくそあるなら、正蔵がソレ持ってたからって劇的にはモテへんやろ。
メジャーな型にも「特定の病原体に強い」とかのメリットがあるなら、珍しい型だけが選り好みされへんやろ。
いろいろ破綻しすぎでは…?
そして竹内久美子は「良い匂いでモテモテ」な人物を挙げるのですが、それは誰かと言うと…
『源氏物語』の薫。
え、フィクションしか例がないの!?【註2】
進化論は「自然選択だけ」とか「遺伝子の利己性だけ」で多くを説明しており、そのシャープな切れ味の良さが癖になっちゃうのはよく解ります。
そもそも科学には「この超複雑な世界を、シンプルな原理に落とし込んで理解しようとする試み」という面があります。
しかし同時に研究者はその適用範囲の限界もよくわきまえているもの。
何でも「相手の質を見極める」だけとか、「相手の免疫の形を見抜く」だけで説明するのは、この複雑な世界を過度に単純化する、乱暴な行為では…
まぁ「右翼イデオロギーは世界の複雑さを最小化するので、低いメンタル能力の人々を惹き付ける」という説もあるし、こういった行為は保守派にはありがちですけどね。
『「保守のIQはリベラルより78%高い」←は?』
そりゃ例えば、「犯罪は加害者だけの問題ではなく、生育歴や社会状況などの背景情報を加味した上で云々かんぬん」
というリベラルな主張よりも、
「うるせぇ、ゴチャゴチャ言ってんじゃねーよ!
とにかくやらかしたソイツが悪いに決まってんだろーが」
今回は書名にある
「なぜモテるのか、さっぱりわからない男がやたらモテるわけ」についての竹内久美子の珍説をご紹介。
まず竹内久美子はこうブチあげます。
p.37
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
女は匂いで男を選ぶ
恋愛とは相手の免疫の型を見抜く過程である。それは女が主導するもので、男はほとんど関係がない。
こんなことを言うと、なんとまぁ夢のないこと! 恋愛は人生で1番ロマンティックな出来事なのに竹内は水を差す気かと叱られそうだ。だが、どう考えてもそういう結論に至るのだから仕方がない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
この「恋愛とは相手の免疫の形を見抜く過程」という主張は数ページ後でも繰り返されます。
p.42
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
夢がない話で申し訳ないのだが、恋愛とは所詮は相手の免疫の型を探る過程。私は恋愛についてロマンティックな形容がなされればなされるほど、嘘くさいな、どこかごまかしているなと疑ってしまう。逆に、このような身も蓋もない説明をされると、納得し、安心してしまうのだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
はーそうですか。
ちなみに他著によれば、竹内久美子は若い頃からリベラルに対しても同様の胡散臭さを感じていたそうですが…
ロマンティシズムとかリベラリズムとかに対してはこういう中二病的な逆張りに出る割に、それ以上にドグマティックな保守主義や天皇制については何故か熱狂的に支持、という謎。
そして話は何故か「林家正蔵はモテる」という話に。
p.43
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
そのモテ方は尋常ではないという。
言われてみると確かにそうだ。傍から見ている限りではモテ要素が見つからない。落語家なので話は得意なはずだが、テレビなどで披露されるフリートークも、そう上手とは思えない。女が捧腹絶倒するほどでもないのだ。
このように、どこがそんなにモテるのかわからないのに、やたらめったらモテる男がいる……。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
…ディスり過ぎやろ。
まぁ私も正蔵(元・こぶ平)のことは特に好きだとも才気溢れるとも思ってはいませんが…
それでも正蔵は喋りのプロだし、一応は古典芸能の名家に生まれて若くして真打になったサラブレッドでしょ。
おまけにめちゃめちゃマメらしい。
財産・名誉・地位・話術・マメさ、と女性の好む性質を持ち合わせ、しかも女性関係に奔放でも許されがちな世界に生きている…
別にモテてもおかしくはないやん。【註1】
しかし竹内久美子は正蔵のモテの秘密をこう読み解きます。
p.43
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
私が思いつくのは、彼は極めて珍しいHLA(ヒト白血球抗原)の型を持っているのではないかということだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
…どういうことかと言うとですね。
有名な実験で「男子学生たちが着たTシャツの匂いを女子学生たちに嗅がせたら、誰の匂いを好むか」というのがあるのです。
ところが結果はバラバラで、特定の匂いが好まれる訳ではありませんでした。
実は女子学生たちはそれぞれ、「自分と異なる免疫の型を持つ男子学生の匂いを好んでいた」のですね。
自分に近い免疫の型を持つ男性と結ばれると、子供の免疫の型に多様性が生まれない。
多様な病原体に抵抗するために、女性は「自分と似てない免疫の型を持つ男性」の匂いを好むのではないか…
この実験はそう解釈されました。
竹内久美子はこの実験を持ち出し、正蔵のモテもまた免疫の型のせいだと結びつけているのですね。
どの女性から見ても型の異なる珍しい免疫の持ち主なのだろう、と。
しかしこの実験、別に「好みの男性の匂いは、嗅いだ女性がたちまち恋に落ちる惚れ薬の様なものだ」などと言ってる訳ではなく。
せいぜい「他の条件が同じなら、匂いで相手を選ぶ傾向があるかもね」程度の話に過ぎません。
それなのに「特殊な匂いでモテモテ」って…
感度3000倍になる薬とか、催眠アプリとか、薄い本に出てくるご都合主義アイテムと変わらへんやん…対魔忍。
しかも
「恋愛とは相手の免疫の形を見抜く過程」
とか言ってた癖に、別の箇所では
「恋愛とは相手の質を見極める過程」
と言ってます。
p.90
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
女は一回の繁殖にかかるエネルギーも大きければ、拘束時間も長い。よって、じっくりと相手の質を見極め、選ばなくてはならない。恋愛とは相手の質を見極める過程と考えることができ、それがために女の方が恋愛に重きを置くのである。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
この2つは全く異なります。
「相手の質を見極める」
というのは、体や行動を手がかりに相手の生存能力や繁殖能力の高さを見極める、ということ。
「アスリートやイケメンは遺伝的な質の高さの表れだからモテる」みたいなことです。
一方、
「相手の免疫の形を見抜く」
というのは「自分の免疫の型と違っていればそれでOK」ということ。
話が真逆ですね。
そして
「ハンサムにも有能にも見えない正蔵がモテるのは、免疫の型のせいに違いない。
レアな免疫の型を持ってるからモテるのだろう」
と、まぁまぁ失礼な想像を逞しくした訳ですが…
「正蔵の免疫の型はレアで、それ故にモテるのだ」という主張を支持する根拠は何一つ出てきません。
思いつきを根拠レスに言ってみただけ、といういつものやつ。
こんなんが書名にまでなっちゃうんだもんなぁ…。
しかも今回の主張とは真逆の
「恋愛とは相手の質を見極める過程」
というのは、竹内久美子がこれまで過剰に言い立ててきたこと。
例えば本書にはこうあります。
p.26
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
顔の良さや鍛えた体というのは、単に男としての魅力に留まるものではない。それは、免疫力や生殖能力の高さを物語るものなのだ。例えば、研究によって免疫力との相関が現れたのは、声の良さ、ルックスの良さ、筋肉質の体なのである。
さらに、顔の良さは精子の質と相関があることがわかっているし、筋肉質の体は男性ホルモンのテストステロンのレベルの高さを物語る。テストステロンは男性の魅力の全てにかかわっているから、声の良さ、顔の良さ、ルックスのよさにかかわる。もちろん精子の質や数など、生殖能力にもかかわる。
これらのことから声の良さ、顔の良さ、ルックスの良さ、筋肉質の体など、男としての魅力の全ての要素が、免疫力・生殖能力と渾然一体となって関係してくるのだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
…恋愛をオスとしての「質」だけで語り、その多くを免疫力の高さとテストステロンレベルの高さに還元する、という竹内久美子の平常運転。
勿論、ヒトの恋愛はこれほど単純ではありません。
動物行動学や進化心理学に裏打ちされた傾向は存在するにせよ、
「恋愛とは相手の免疫の形を見抜く過程」
だの
「恋愛とは相手の質を見極める過程」
だのといった言い方は明らかに単純化し過ぎ。
しかしヒトの恋愛ではなく、動物一般の生殖の話とするなら、
「相手の免疫の形を見抜く過程」
よりは
「相手の質を見極める過程」
の方がまだしも近い…
つまり「正蔵の免疫モテ」の話は無茶ですて!
しかし竹内久美子の無茶っぷりはこれだけではありません。
「正蔵モテ話」より前に、「コバナフルーツコウモリはフェラチオする」という研究を紹介してるのですが…
(※「MHC」「HLA」というのがやたら出てきますが、どちらも免疫の型のことで大体同じもの)
p.41
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
フェラチオ自体に費やされる時間は微々たるものなので、交尾時間の全体がフェラチオの作用によって伸びたということになる。メスがオスを「励ました」結果、オスが頑張れたのである。
このように交尾時間を延長することによって、メスはどのような利益を得るのだろう。
まずは交尾時間を長くすることで、受精率を高められるし、その間はオスを独占できる。またフェラチオで唾液をペニスに塗りつけると殺菌効果がある。確かにそうなのだが、それに加えて、ペニスを舐めることで相手のMHCの型をチェックすることができるのだ。舐めるというのは相手の匂いを嗅ぐのと同じ効果があるだろう。もし、あまり良い匂いでなかったら、MHCの型の重なりが多いと判断し、交尾を中断することも可能だ。
こうしてみると、人間のフェラチオも相手のHLAの型の重なりが多いかどうかを判断する過程だと考えてもいいと思う。フェラチオは前戯の間に行われることが多いと思うが、もし、あまり良い匂いでなかったら、女はがっかりして行為を中断してしまうだろう。しかし、それでいいのである。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
コウモリのフェラチオは「受精率の上昇」「殺菌効果」「免疫の型の判定」に役立ち、ヒトのフェラチオも「免疫の型の判定」では…
と、比較的ありえそうな話から飛躍した話までが並んでますが…
ココで竹内久美子の良くないところが大爆発。
どこまでが元の論文にある考察で、どこからが竹内久美子の主張なのかよく分からないですよね…
「受精率の上昇」はともかく、「殺菌効果」のあたりからもう怪しい。
フェラチオって殺菌効果より感染症リスクの方が高くないですか?
ましてや「免疫の型の判定」まで研究者が言及していたとは考えにくいのでは…
まともな研究者なら実際にMHCの型と交尾時間に相関があるか、データも取らずにいきなり言い出さないでしょ。
意図的なのか、素なのか、この人はこういうことをよくやります。
先ほどのTシャツ実験の話の後でも、
「女性はHLCの型の重なりが多いと性的に満足せず、オルガスムスが減って排卵期のセックスを拒否する」
的な話が断定調で書かれています(p.40あたり)。
…が、ソースは不明。
しかも「排卵期のセックスを拒否」とか言うけど、あんた他著では「ヒトにも交尾排卵がある」、つまり「セックスが刺激になって排卵が起こる」と主張してましたやんか?
さらに竹内久美子はこう書いてます。
p.45
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
こういう風に新しい型が現れると病原体に対して極めて有利であり、メスが非常に好むと言うステップがあるためだろう、HLAの型は調べれば調べるほど、次々に新しい型が発見されるのである。
その一方で、メジャーな型というのも結構あって、それが意味するところはよくわからない。何らかの病原体に対して強いということかもしれない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
…マイナーな型がおもくそあるなら、正蔵がソレ持ってたからって劇的にはモテへんやろ。
メジャーな型にも「特定の病原体に強い」とかのメリットがあるなら、珍しい型だけが選り好みされへんやろ。
いろいろ破綻しすぎでは…?
そして竹内久美子は「良い匂いでモテモテ」な人物を挙げるのですが、それは誰かと言うと…
『源氏物語』の薫。
え、フィクションしか例がないの!?【註2】
進化論は「自然選択だけ」とか「遺伝子の利己性だけ」で多くを説明しており、そのシャープな切れ味の良さが癖になっちゃうのはよく解ります。
そもそも科学には「この超複雑な世界を、シンプルな原理に落とし込んで理解しようとする試み」という面があります。
しかし同時に研究者はその適用範囲の限界もよくわきまえているもの。
何でも「相手の質を見極める」だけとか、「相手の免疫の形を見抜く」だけで説明するのは、この複雑な世界を過度に単純化する、乱暴な行為では…
まぁ「右翼イデオロギーは世界の複雑さを最小化するので、低いメンタル能力の人々を惹き付ける」という説もあるし、こういった行為は保守派にはありがちですけどね。
『「保守のIQはリベラルより78%高い」←は?』
そりゃ例えば、
というリベラルな主張よりも、
「うるせぇ、ゴチャゴチャ言ってんじゃねーよ!
とにかくやらかしたソイツが悪いに決まってんだろーが」
という保守の世界観の方がシンプルで飛びつくと楽ちんですわな。
【註1:別にモテてもおかしくはない】
ちなみに若い女性が金持ちの老人と結婚するとしばしば「どうせ金目当てやろ」などと揶揄されますが、アレは実際に性的魅力を感じているパターンもおおいにあると思うです。
男性は高齢化しても生殖能力はあまり衰えず、地位はむしろ高まる傾向にあるし。
女性は財産そのものよりも、それを稼ぐ「能力」に惚れるのだ、と考えれば、財産は能力の「指標」に過ぎないのかもしれません。
「そんなトコに惚れるもんかね…?」と思うかもしれませんが、男性だって「女性の胸部にある脂肪の塊に簡単に心を奪われる」という何とも奇妙な性質を持ちがちな訳で。
ヒトがちょっと意外な特質に惹かれることはままあることなのでは…
【註2:フィクションしか例がない】
『源氏物語』同様、フィクションかつエロで良いなら私も「ええ匂いの男性モテモテ譚」を挙げられるです。
トー・クンの官能小説『義母』(フランス書院)がそう。
(23:57)
2023年09月06日
夕刊フジに↓こんな記事が。
https://www.zakzak.co.jp/article/20230905-UYMJ466Y3JOMBBJEEIFVGLRTAU
百田新党に妨害工作?偽アカウント続出 立民に迫るXフォロワー数16万超 「アンチの工作垢」に注意呼びかけも
2023/9/5 11:37
ベストセラー作家の百田尚樹氏と、ジャーナリストの有本香氏らが関わる保守新党「百田新党(仮称)」の公式X(旧ツイッター)はフォロワーを増やしている。一方で、よく似た名称や画像を使ったアカウントも複数登場している。
1日にXアカウントを開設した百田新党のフォロワー数は5日朝時点で約16万3000まで増え、立憲民主党の公式アカウントの約18万8000に迫っている。
正式な党名発表は来月の予定だが、「フォロワーが20万を超えたら、有本さんに内緒でこっそり発表します」とも投稿している。
注目度が高まるなか、Xで検索すると「百田新党」の名前を使ったアカウントが複数存在している。中には百田新党の公式アカウントと同様に、夕刊フジの紙面をアイコンの画像に使ったものもある。
一般に人気のアカウントにはフォロワー数稼ぎなどを目的とした偽アカウントが出てくることは多いが、ユーザーを誤認させるという問題もある。
百田新党のフォロワーは、投稿で「工作アカウントが増えてる」「アンチの工作垢(アカウント)」と注意を呼びかけ、これを百田新党の公式アカウントがリポスト(再投稿)している。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
人気者に偽アカウントが出てくることは普通にあるあるなのにも関わらず、百田新党公式垢が「工作員ガー!」という陰謀論&被害妄想的な投稿をリポストしている。
しきりに百田新党を援護射撃する夕刊フジですが、そのフジですら、それを暗に認めたカタチ。
いかにも百田尚樹・有本香コンビらしい、期待通りのスタートにワクワクが止まりませんね!
百田新党の今後に注目です。
(23:55)
2023年09月03日
ネトウヨさんサイト『Share News Japan』に↓こんなのが。
【Share News Japan】
『中国政府、自国民の塩買い占めに「韓国人のマネをするな」「我々は韓国人よりも理性的だ」』
https://sn-jp.com/archives/136206
内容は『朝鮮日報』の記事を紹介したもの。
◉『人型汚物同士で潰しあってくれ』
◉『笑わせてくれる
特亜は皆一緒』
◉『朝鮮人より上でも全然意味ないぞ。
あいつらの下はGぐらいだし。』
◉『もはや大して変わらんわw
中国人、韓国人も地球上に必要のない人型というだけの下等生物の代名詞ですからw
ついでに朝鮮人もなw』
◉『支那畜が理性とか笑わせんなw』
といったあられもないヘイトスピーチの洪水。
現時点で100件近くのコメントのうち、中国の発言を咎めたものはわずか1件、それも「パヨクはそれを批判しないのか」という文脈。
あとはおおむね、中国人に理性を認めないもの。
しかしこの買い占め・買いだめという問題、理性があったところで解決しない…というか、理性があるからこそ解決しないんだよなぁ…
そういう意味では中国の発言は間違っているのですが、ネトウヨさんたちのご意見にソレを指摘するものは見当たりません。
それにどこの国であれ、政府が「買い占めは止められません、理性は役に立ちません」とも言えないでしょ。
ではなぜこの問題で理性が役に立たないかを解説していきましょう。
例えば、100軒の酪農家から成る村に共有の牧草地があったとします。
村人は誰でも自由に自分の牛を放牧することが出来るとしましょう。
しかしあまりにも多くの牛が放たれると牧草は新芽にいたるまで食べ尽くされ、回復不能になってしまいます。
したがって牛の数は限界まで増やすべきではありません。
そのことは全ての村人が理解できます。
でももしあと一頭自分の牛を増やし、それによって共有地全体の価値が低下しても、100軒の共有地なので自分に跳ね返ってくるダメージは全体の1/100に過ぎないですよね。
一方で、牛を増やしたことによる増収は全て自分のものとなるでしょう。
であれば、牛をあと1頭増やすのが得策です。
しかし全員が牛を増やすと共有地には100頭の牛が増えることになり、破壊的なダメージがもたらされます。
そのことは誰もが認識しているのですが、自分だけが牛を増やすことを控えたところで事態は解決しません。
それは牛を増やすエゴイストを得させるだけです。
もしあなたが村全体のために牛を増やさなかったら、その隙に隣人がさらに一頭を追加するでしょう。
こうして村人全員が事態の悪化を理性的に認識し、牛の数を抑制する必要を感じていながら、誰もが牛を増やすことをやめられません。
この様に、自由にアクセスできる共有資源は枯渇を招くのです。
これを「コモンズ(共有地)の悲劇」と呼びます。
この悲劇を回避する方法は2つしかありません。
アクセス制限か私有化です。
前者は「牛は一軒に10頭まで」といったルールを作ったり、放牧できる時刻や期間を限定する、といった形で過剰な利用を抑制する方法です。【註1】
後者は例えば「共有地を100等分して私有地制にする」といったやり方。
私有化してしまえば、牧草地の過剰利用によるデメリットも全て自分が引き受けることになるため、村人は牛の数と牧草地のコンディションが最良のバランスとなる様に、利用を抑制するはずです。
それはつまり、誰もが「自由に」利用できる「共有資源」である限り、この悲劇は不可避のものだということ。
オープンアクセスの資源を管理する際には常にこの問題がつきまといます。
トイレットペーパーやマスクなど、物資が品薄になるたびに問題化する「買いだめ」もそのひとつに思えます。
無料ではないとはいえ、誰でも買える価格の商品はオープンアクセスと見なして良いでしょう。
目の前の商品を購入すれば、自分は安心を手に入れられます。
自分だけが購入を抑制しても、どうせ他の誰かに買われるんだし。【註2】
この場合、解決策としての「私有化」は無理(そもそも商品を私有化するための手段が「共有地の悲劇」と化しているので)。
「お一人様2個まで」といった形での軽いアクセス制限はできますが、抜け穴が多く、根本的な解決ではありません。
誰もがよくないことと知りつつも、買い控えできない…。
「私はそんなことしない」と思う人もいるでしょう。
でも本当にそうでしょうか?
「誰よ買いだめしてるバカは」と思いつつ、いざ入荷してたら買ってしまわないですか?
知人に品薄の商品を分けてあげたこと、あるいは知人から分けてもらったことはないでしょうか?
それは一見、善意に満ちた行為に見えますが、結局のところ特定の人々の間での占有であり、間接的に買いだめに加担してしまっているのではないでしょうか?
もし仮にそうだとしても私はあなたを責めたりしません。
いずれにせよ、「共有地の悲劇」から逃げる方法はないのですから。
渋滞に引っ掛かってイライラしている時、人は「渋滞を起こしてる誰か」に毒づくもの。
しかし自然渋滞の場合、渋滞に明確な先頭といったものはなく、責められるべき個人も存在しないものです。
むしろ巻き込まれている人自身も渋滞の一部であり、さらなる渋滞の原因となっていたり。
誰もが被害者であり、同時に少しずつ加害者なのです。
でも本人はそれに気付かない…
買いだめ問題もこれに似てます。
理性の力でなんとかできないのでしょうか?
残念ながら「共有地の悲劇」の悲劇性は、全員が理性的であっても回避できないところにあります。
おまけに現実は万人が理性的という訳ではありません。
こんなゲームを考えてみましょう。
100人の人間が無作為に実験室に集められます。
実験室には100の小部屋があり、被験者はそれぞれの個室に入ります。
部屋にはボタンがひとつあり、実験開始から10分間、誰もこのボタンを押さなければ全員が10万円もらえます。
しかしもし誰かがボタンを押した場合、最初に押した人にだけ1万円が与えられ、他の人は何ももらえません。
事前に、あるいは実験中に他の被験者と話をすることはできません。
もしあなたがこのゲームに参加するなら、どう行動すべきでしょうか?
「最初に押した人にだけ100万円」とかなら、裏切りの誘惑が発生しますよね。
しかしこの場合、裏切っても手に入るのはたったの1万円。
だったら全員が言外のうちにしめし合わせ、全員が10万円ずつ貰った方がどう考えてもお得。
…理性的な人なら誰もがそう考えるはずです。
しかし問題は「無作為に集められた100人」というところにあります。
100人もいれば、何人かは理性的でない人が混じってるものです。
彼らは深く考えてみることもせず、「とりあえずなんとなく」でボタンを押すでしょう。
誰も得しないのに。
そして理性的な人はそれを予想し、だし抜かれる前にだし抜くしかなくなります。
つまり、ゲームが始まった瞬間にボタンを押すしかないのです。
買いだめも同じ。
例え物資の不足がデマで、全員に必要分の供給があったとしても、デマを信じた人が買いだめにはしれば、結局のところ実際に品薄になります。
デマがそれを信じた人々によって現実化することは、有名な豊川信用金庫事件を見ても明らかですよね。
断っておきますが、私は「だから率先して買いだめをするべきだ」などと言うつもりはありません。
私は現実が「どうであるか」について語っているのであって、我々が「どうであるべきか」について語っているのではないのです。
もし人々の善意と倫理によって事態が打開されることになれば、その時こそ我々は理論の修正を迫られ、ヒトについての見方を改めなければならないでしょう。
是非ともそうあってほしいものです。
もしあなたがこのエントリに不快感を抱いたなら、人々には買いだめを抑制する力があるというのなら、事実を以ってそれを反証してほしい。
私は心の底からそれを願っています。
実は希望はあるのかもしれません。
東日本大震災の直後、職場で同僚のおばちゃんが
「なんで買いだめなんかするんやろなー」
とぼやいていたので、共有地の悲劇云々について説明し、買いだめは不可避であることを説明しようとしたのですが…
「議論はせぇへんで?
どうせ私の結論は変わらへんし」
と機先を制されてしまいました。
とりあえずその場は
「あなたの価値観に反対している訳でも議論がしたい訳でもない」
ことを説明しておきましたが…
なんちゅう愚直さ、頑迷さやねん。
事実に基づいた知識なしに、一体どうやって価値判断できるというのか…
と、驚かされました。
…しかし、もし全員が彼女の様であれば、問題は解決するのかもしれません。
かねてから倫理哲学者は、倫理哲学について考えたことのない市井の人々がしばしば非常に倫理的であることを指摘してきました。【註3】
道徳の起源に取り組めば取り組むほどに、そこには磐石の基盤などどこにもないことに気付かされます。
道徳の起源を探る行為それ自体が、道徳の足元を崩すものなのかもしれません。
真理に近づいていくと、その中心は空っぽなのかも…。
でも道徳をただ「それが道徳的であるから」という理由で受け入れる、シンプルでナイーヴな人にはそんな悩みは無縁です。【註4】
彼らはそれ故に強い。
ヒトの持つ愚直さこそが我々を救うのかもしれません。
とりわけシンプルマインドのネトウヨさんたちには、普通の日本人が民度の高さを発揮してこの問題を見事に解決する姿を、思う存分見せつけていただきたいものです。
【註1:アクセス制限】
これまでの漁業は「獲れるだけ獲る」といういささか乱暴なもので、多くの水産資源が底を尽くまで利用し尽されてきました。【註5】
休漁によって資源を回復させる必要があっても、「コモンズの悲劇」がそれを許さなかったからです。
近年になってようやく「獲る漁業」から「育てる漁業へ」の転換が叫ばれる様になり、様々な取り組みが行われる様になってきました。
貝などの移動力の低い水産資源は漁協などによる禁漁の申し合わせによってアクセス制限をかけやすい…
しかし回遊魚はある港が休漁しても他の港が出漁してしまえば、港間での「共有地の悲劇」を生むことになります。
しかし複数の港が共同で数年単位の禁漁に踏み切り、資源回復を成功させた例もいくつかあったり。
関係者間の調整は困難を極めたことが容易に想像できます。
にも関わらず、それをきちんと解決した人々がいる…
そういったプロジェクトが成功した、というニュースには思わず目頭が熱くなりますね。
【註2:買い置きの問題化】
買いだめの問題に比べれば、東日本大震災の時の様な節電の方はもう少しうまくいくでしょう。
節電中でも「必要があればいつでも使える」という安心感があるからです。
少なくとも人々の気が緩みだし、節電生活に嫌気がさすまでの間は。
【註3:人は意外に倫理的】
今回紹介した様な、ゲーム理論的な話は、「人々は自らの利得を最大化しようとする」ということが前提になっています。
倫理の力はそれを上回らないことが、暗黙のうちに仮定されてしまっている訳です。
これらの理論が発達してきた経済の世界では、「顧客へのサービスや社員の待遇を良くしたい」という経営者の倫理観が、利潤追求と自己の栄達への欲望を上回ることはほとんどなかったため、そういった仮定も有効だったのでしょう。
しかし最近では人々はそれほど理論通りには振舞わないことが注目され、利得ではなく感情によって動いてるのではないかという点に注目が集まっています。
【註4:道徳は道徳的だから受け入れるというナイーヴな人】
もちろん、「道徳は道徳的」というのは同義反復で何の説明にもなっていません。
「美味しいものは美味しい」というのと同じで、意味を成さないのです。
ちなみに「ナイーヴ」とは本来「素朴」という意味で、あまり誉めた表現ではありません。
「繊細」というニュアンスではないので注意。
【註5:水産資源の過剰利用】
過剰利用によって食用魚の多くは大型個体が減り、小型個体が繁殖する割合が増えるため、その遺伝子が受け継がれて全般的に小型化しつつある模様。
注釈に注釈を入れるのはアホっぽいので出来るだけ避けてきましたが、構成上こうなってしもたー。
(23:58)