2023年03月
2023年03月28日
最近、Twitterに「家族が陰謀論でおかしくなった」系のアカウントが急増している。
皆さんそれぞれ、情報収集したり、グチる場にしたり、同じ境遇の人とつながったり。
実を言うと私にも陰謀論にハマった従姉がいたので、その話を書く。
出来過ぎててネタっぽく思うかもしれないが実話だ。
従姉のK子ねぇとは昔から仲が良くて、彼女は私にとっては姉の様な存在だった。
歳は10ほどお姉さん。
細身で美人で、話が面白くてよくモテる。
K子ねぇの家は裕福で、彼女は若い頃から海外によく行き、外国人との交流も多かった。
20年ほど前だろうか、K子ねぇの父(私の義理の伯父)に癌が見つかった。
最悪の癌で進行がおそろしく早く、それからたったの3ヶ月で亡くなった。
それからというもの、一家は健康にやたら気遣う様になった。
それ自体は良いことだ。
だが人の好いK子ねぇの母(私の伯母)は当時まだ一般には浸透していなかったマイナスイオンの座布団を売るマルチに引っかかり、「健康に良いから」と親戚中に送りつけた。
ネットで調べてみたら、そのマルチの元締めは以前にもアコギな商売をして問題を起こした人物だった。
それを伯母に忠告すると、伯母は元締めのところに直接乗り込み、それは本当かと詰め寄った。
元締めはあっさり旧悪を認め、今は反省して社会貢献のためにコレを売っているのだ、と涙ながらに訴えたらしい。
伯母はコロリと丸め込まれ、「こんなに良い人はいない」と信じることにしたという…全然ダメじゃん。
そんな伯母とK子ねぇは東日本大震災以降、「放射脳」になった。
一緒に食事してると、2人とも椎茸を残す。
放射性物質が蓄積してるからだという。
うちの親戚はおおむね左翼だ。
というのは、私の母が親戚中に
「女に教育はいらん。女が大学なんぞに行くとアカになる」
と言われたのを振り切って大学に行き、きっちり左翼になって帰ってきて、親戚中をオルグったからだ。
そんな訳でK子ねぇも若い頃から強火の左翼だった。
だから「放射脳」になるのはまぁわからなくはない。
右翼は全方向でデマに弱いが、左翼も健康デマには弱いものだ。
K子ねぇはいつも最新のニュースについて海外の友人と語り、
「外国人の友達は皆◯◯って言ってるよ」
と言うのが口癖で、その内容も「どこそこの国の抑圧的政策が許せない」といったリベラルなものだった。
それがいつからか変質していった。
「アポロは月に行ってない」
「ユダヤ資本ガー!」
「HAARPガー!」
などと陰謀論を語り、マスコミを否定して「ネットde真実」に目覚め、トランプ支持に回るというゴールデンコース。
K子ねぇは知的なのに決定的に生活力に欠けていた。
朝が弱いのでまともにお勤め出来ず、家が裕福なのも手伝って、のらりくらりと働かずに暮らす、という高等遊民。
家庭に収まる堅実な奥さまタイプではなく、蠱惑的な愛人タイプなので、2回結婚したが2回とも破綻。
暇してるのでちょくちょく昼間にウチに電話をかけてくる。
それをたまたま仕事が休みの私が取ると、陰謀論トーク1時間コースに突入。
だがやがて私も忙しくてなかなか家に帰れなくなり、いつしか電話で話す機会も減っていった。
そして数年後…
突然に伯母から連絡が来た。
K子ねぇが末期癌だという。
もともと何年も前から胸にしこりがあったらしい(その時は良性だったのだろう)。
それが大きくなってきたので医療機関を受診したが、「放射脳」なのでX線検査を嫌がり、おまけに医者がカルテに書いてることを横からチラ見してブチギレ。
そこには「放射線恐怖症」「顔つき悪い」と書かれていたという。
K子ねぇは顔のことまでディスられたと思ったらしいのだが…
医師の使う「顔つき悪い」は「腫瘍が悪性っぽい」的な意味なんですけど。
そんなこんなでK子ねぇは近代医療に不審を抱き、代替療法のみで治そうとしたらしい。
勿論それで好転する筈もなく、ついには拝み屋まで頼ったという。
そして結局、手遅れになってから近代医療に泣きつくという、スティーブ・ジョブズの轍を踏んでやがった。
その頃にはもはや立つこともできなくなってたという。
ねぇ、バカなの? 死ぬの?
…本当に死ぬんだよ。
非合理的な判断は簡単に人を殺す。
最期に逢いに行きたかったが、「病気で変わり果てた顔を見せたくない」というあちらの意向でお見舞いには行けなかった。
亡くなる直前にうちの母だけ呼ばれたが、自宅療養してるK子ねぇの介護ベッドの横には、200万円したという謎の代替医療機器が置いてあったという。
結局は乳癌の一種で、腫瘍が体表に露出する「花咲癌」だったらしい。
葬儀で対面したK子ねぇのご遺体は別人のようにやせ細り、腫瘍のせいだろう、死んだヤドカリの匂いがした。
花咲癌なのに代替医療に頼って死亡、って小林麻央と同じやん…。
あまりのやりきれなさに、涙は一滴も出なかった。
葬儀の席で
「故人に最後の言葉をおかけ下さい。聴覚は最期まで保たれ、今なら確実に聴こえると言われています」
という謎アナウンスが流れる。
いや、臨死体験した人から「耳は聞こえてた」という報告はあるけどさ…
腐敗防止のドライアイスで凍りかけてるご遺体には無理っしょ。
死者とは二度と話せない。
だからこそ、代替医療や陰謀論などの非合理的アイデアに身を任せ、命を奪われる様なことがあってはならないのだ。
だがそれらは私の様に強火の批判者のすぐ傍にまで容易に入り込む。
そして大事な人を奪っていく。
私はそれらを絶対に許さない。
まぁこの件が無くても許さないけど。
葬儀にはK子ねぇの彼氏も来ていた。
長らく付き合ってる、Sというイギリス人。
伯母はSに乞われて2000万円ほど貸してるらしい…さすが富裕層。
だがSは返済を求められても「今はレートが悪いから」とずるずる先延ばし…
ようやく払う素振りを見せたかと思うと、今度は「雇ってる弁護士が来日したけど、書類を忘れてきた」とかありえないことを言い出す。
「宿題はやったけど持ってくるのを忘れました」と主張する小学生かよ。
それでも伯母はSを疑っていない様だ。
…この人、チョロ過ぎん…?
この大変に怪しいSの仕事はよく分からない…が、昔は戦闘機に乗っていたと自称している。
イギリス空軍のトーネードに乗ってたという。
女性から金を引っ張っていく自称戦闘機乗り…ほぼクヒオ大佐やん。
(23:54)
2023年03月12日
ネトウヨさんが次々と繰り出してくる珍妙な主張のうち、よく見かけるものとそれへの反論をいろいろまとめ中。
今回はヘイトスピーチ関連のものを集めてみました。
「他にこんなのもあるぜ」とかあったら追加するのでお寄せ下さ~い(と言いつつ、対応は遅れ気味)。
●「表現の自由だ」
↓
・「差別する自由」などというものはない。
あなたには行動の自由があるが、だからといって自由に人を殴りつけて良い訳ではない。
『私の拳を素早く動かす自由はあなたの顎の近くでは制限されなければならない』 ーウィリアム・O・ダグラス最高裁判所判事
・ヘイトスピーチしておいて表現の自由に訴えるのは、市民プールで放尿しておきながら「私には自由を行使する権利がある、プールから追い出すのは人権侵害」と言い立てる様なもの。話はまず小便垂れ流すのをやめてから。
・基本的に何を書いてもOKな中、「差別はダメ」というたったひとつのルールを守るのがそんなに難しいの?
・本来は自由を求めるのは左翼的言説で、公序良俗や安寧秩序を乱す自由の履き違えを批判するのが右翼的言説。
「都合次第で左翼的言説に訴えるが使い方を間違える」というネトウヨさん平常運転。
●「『私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る』というヴォルテールの言葉を知らないのか?」
↓
・それは泥棒が「『罪を憎んで人を憎まず』って言うでしょ?」とか言ってる様なもの。
周囲が言うならともかく、ヘイトスピーチしてる側が自分で言う言葉ではない。
超絶おまゆう。
・自由とは「他者の自由を侵害しない」範囲でのもの。
「差別的な主張をする権利」などというものはない。
・寛容な社会を作りたいのなら、不寛容に対しては不寛容でなくてはならない。
・ついでに言えばその言葉はヴォルテール自身が言った訳ではない(名言の類にはありがち)。
●「『多様性を認めない』という意見も多様性のひとつ」「『差別する』という意見を差別するな」
↓
・矛盾を突いたつもりなのだろうが、「多様性を肯定する者が多様性を否定する意見を受け入れる」ことは矛盾しているし、「多様性を認めない者が多様性に訴える」のも矛盾している。
そちらの矛盾はどうするおつもりで?
・そもそも「多様性を認めない意見」を「多様性」の内側に入れるところがおかしい。両者は包摂関係ではなく対立関係にある。
●「ただの事実」「本当のことを言って何が悪い」
↓
・ネトウヨさんの主張はしばしばデマを含んでおり、まず「本当に事実か」の検証が必要。
・そもそもヘイトスピーチや政治的主張とは一種の価値命題であり、事実命題ではない。
●「差別されるのにはそれだけの理由がある」「自業自得」
↓
・なんですかその「いじめられる側にも問題がある」的な主張は。
・じゃあネトウヨさんが批判されるのにもそれだけの理由があるんですね?
●「差別ではなく区別 」
↓
・なんですかその「事故ではなく事象です」的な言い換えは。
・差別発言をしていながらコレを持ち出す人が大変多く、そういう人には「あなたの場合は区別ではなく差別ですよね?」ってなる。
『私は差別と黒人が嫌いだ』というアメリカンジョークを地でいく自己言及ギャグですか?
もしくは「唱えれば無罪になる便利な呪文」だと勘違いしてませんか?
●「差別差別言う奴こそが差別者」
↓
・ …という言説自体が「差別」と言ってる訳だから、これも差別なんよね?
なんですかその「アホって言うもんがアホ」とか言い出して「じゃあ『アホっていう言うもんがアホ』って言うもんがアホ」と切り返されて瞬殺される小学生みたいなやりとりは。
・そんなん言い出したらあらゆる「差別の指摘」自体が「差別」ということになり、差別せずに差別を指摘することは不可能になる。
こういう原理的に覆す方法のない、つまり「反証可能性のない」主張は議論の俎上には載せらず、ただ棄却されるだけ。
●「これが差別だと理解できるのは差別心があるから」
↓
・「差別だと認識する」ことと「差別する」ことは全く別。
・じゃあ「『バカ』と言われて怒るのは自分でもバカだと思ってるから。よってあらゆる罵倒はセーフ」っていうことになるよね?
●「『ヘイトスピーチ』は口封じのために左翼が貼り付けてくるレッテルに過ぎない」
↓
・ヘイトスピーチは世界的に規制が進んでおり、それにはそうされるだけの十分な理由がある。
・日本では永久機関による特許は通らない。
それはどれほど巧妙に作ろうが永久機関は必ず自然法則(熱力学第一法則)に反しており、まともに動かないことがわかっているから。
それと同じで、どれだけ奇妙な論理を持ち出して正当化しようと「自分では選べない属性」に基づいて差別を行い、「個人への批判」を「集団全体への故ない憎しみ」に拡大してしまっている時点でヘイトスピーチは必ず間違っている。
だから「何を言っても良いけど、自分で選べない属性に基づく差別だけはナシな!」となったんですが。
●「向こうもやってる」
↓
・相手もやってるからといって自分もして良いことにはならない。
「みんながやってたらやっていい」と子供に教えたりします?
「みんながしてるからといって自分だけ悪くないことにはなりません」って幼稚園で習わなかったの?
・「確かに我々が悪かった。だが向こうも同じことをしているのにあっちはお咎めなしなのはダブスタでは」と言うのならまだ理解できる。だがネトウヨさんの「向こうもやってる」は大抵の場合、「向こうもやってるんだからこっちもやって構わない」という自己正当化で、「相殺法」という誤謬なんだよなぁ…。
「こっちも悪かった、今後はやめる。でもそっちもやめろ」とか言ってるネトウヨさん見たことある?
・「相手がやってるならこっちもやって良い」とするなら、日本人へのヘイトスピーチも正当化されることになりますが?
・そもそも「向こうもしてる」という主張自体が誤解に基づいていることが多い。
例えば次の様な主張がそう。
「政権批判はヘイトスピーチだ」「米軍基地批判はヘイトスピーチだ」「『ネトウヨ』と呼ぶのはヘイトスピーチだ」「『日本死ね』はヘイトスピーチだ」
→これらについては後述。
・日本で目にする民族差別的なヘイトスピーチは殆どが日本人から外国人に対するものであって、その逆ではない(ネトウヨさんが曲解して勝手にヘイトスピーチ認定しているのはたまに見るけど)。
それらが国内で批判されたり規制されるのは当然のこと。
日本へのヘイトスピーチが行われているのはおおむね外国であり、それらを規制すべきなのは当地の社会。
それを批判するのは自由だが、憎しみの対象を無駄に広げておかしな批判の仕方をすればそりゃ問題視されて当然。
あ、でもネトウヨさんの論理では「海外から批判するのは内政干渉」なんじゃなかったっけ?
・外国で日本に対してヘイトスピーチしてる人は直接には法で裁けない。
だったら「ヘイトスピーチはダメ」という国際的な世論を育ててその国で禁止される様にするしかない。
率先してヘイトスピーチを行うことはその足を引っ張るだけ。
・そもそも何故「悪いのは韓国」とか「中国」という風に国を単位に考えたがるのか?
反日活動をやってるのは「韓国人」や「中国人」全体ではなく、一部の人。
しかもそういう人は大抵 韓国の「クッポン」や中国の「憤青」などどこの国にもいる過激な国粋主義者でつまりは「向こう版のネトウヨさん」…いわばネトウヨさんのお仲間。
悪いのは特定の国ではなく、「どこの国にもいるヘイトスピーカー」。
どこの国にいようがヘイトスピーカーは批判されるべきであり、日本で目につくのはネトウヨさんだから批判されている。
ただそれだけのこと。
・例えばどこかの中学生が集団で他校の子をリンチしてたら止めるでしょ。
「いや、先に手を出したのはこいつらの学校なんすよ。隣町では俺らの仲間がこいつらにボコボコにされてて…」と言われて「だったら仕方ないよね、じゃあ続けて」という大人なんていないでしょ。
普通は止める筈。
そもそもこれは「A中学とB中学の抗争」ではないよね。
どっちの中学にも血の気の多いのがいて、似た者同士でやりあってるだけ。
で、両校の一般生徒から見れば「どっちの学校であれ暴力的な生徒は迷惑よね」という話でしかない。
同様に、ヘイトスピーチの問題は「日本と韓国・中国の罵り合い」ではないでしょ。
こんなん「どちらの国にも血の気の多い国粋主義的なのがいて、似た者同士でやりあってるだけ」で、両国の一般国民から見れば「どっちの国であれ、過激な自称愛国者は迷惑よね」という話でしかないやん…。
日本にヘイトスピーチしてくる人たちのことを批判したいなら、同じ土俵に乗って同じくらい汚れた手を振り上げても説得力に欠けるのでは?
・悪いのは「民族」など自分では選べない属性に基づく集団ではなく、やりたくてヘイトスピーチしてる個人やその集まり(クラスタ)。
似た者同士の内輪の揉め事を勝手に民族間の対立に昇格させて、どこの国にも多くいるヘイトスピーチなどしない人々を巻き込むのはやめてほしいんですけど。
●「政権批判はヘイトスピーチだ」
●「米軍基地批判はヘイトスピーチだ」
●「ネトウヨと呼ぶのはヘイトスピーチだ」
●「『日本死ね』はヘイトスピーチだ」
↓
・ヘイトスピーチとは自分で選べない属性による差別のこと。首相や米軍人やネトウヨさんは自分で選択してなっているので、ヘイトスピーチにはあたらない。
・批判=ヘイトスピーチだと思っているネトウヨさんが多い様だが、批判自体はヘイトスピーチではない。
・基地に関してはそもそも米国が差別する側・日本が差別される側。ヘイトスピーチとは差別する側がされる側に対して行うものであり、逆ではない。
ある白人が気軽に「黒人め!」と罵るのと、ある黒人が長年差別を受け続けた果てに「白人め!」と叫ぶのは同じではない。
・仮に『ネトウヨ』という言葉が差別だとしても、ネトウヨさんは自身が差別を行っているのだから自らも差別されることを容認すべきなのでは?
・「チョン滅びろ」は問題なくて「ネトウヨ」はヘイトスピーチ? 何だそりゃ?
・『日本死ね』は文脈から言えば「国内から上がった国政批判の声」であり、特定の集団なり個人なりの死を願っている訳ではない。
内集団への批判はヘイトスピーチではない。
黒人が自分たちを「ニガー」と呼ぶのは問題ないし、ダブスタでもない。
●「犯人はきっと外国人だ、日本人はそんなことはしない」
↓
・それは日本人の天使化・外国人の悪魔化。
日本人にも良い人もいれば悪い人もいるし、外国人にも良い人もいれば悪い人もいる。
世界は曖昧で複雑なのがデフォ。
自分が過度に単純化した世界観しか理解できないからといって、それを世界の方に押し付けるのはやめていただきたいものです。
・「犯人は日本人でない」の根拠が「何故なら日本人はそんなことしないからだ」というのはあらかじめ前提に結論を組み込んだ論点先取であり、「犯人は日本人ではないから日本人ではない」と言ってるだけの同義反復。
(23:58)