2023年02月
2023年02月25日
漫画・アニメ界のレジェンド・松本零士が逝去…。
私が子供の頃、お小遣いは週に100円だったので、毎週プラモ屋で宇宙戦艦ヤマトのメカコレを買ったものです。
松本零士、マジ尊敬してましたよ!
当時は「デザインしてたのは実質スタジオぬえ」とか知らなかったしなぁ…。
まぁ松本零士もその後、グレートヤマトとか大ヤマト零号とか素敵(素で敵)なアレンジを施す訳ですが。
【グレートヤマト】

【大ヤマト零号】

【サイズ比較】

そして松本零士のどこが偉大って、
「風呂敷広げてたたまない」
「情報を小出しにしてファンに考察させる」
「西洋文化から中二病っぽい言葉を流用する」
「別作品の世界同士につながりを持たせる」
「実は何も考えてないっぽい」
とか、後のエヴァンゲリオン商法的な手法全ての創始者である点でしょう。
まぁ庵野秀明もヤマトの大ファンだし。
ちなみにヤマトに原案・設定で参加した豊田有恒は『「宇宙戦艦ヤマト」の真実―いかに誕生し、進化したか』という本で、
「ヤマトは先の戦争をひきずってると朝日新聞に叩かれた、現場は誰もそんなこと考えてなかったのに!」
的におかんむり。
でも庵野秀明もコミックアンソロジー『宇宙戦艦ヤマト 遥かなる星イスカンダル』で、
「ヤマトは戦争と敗戦を経験した日本だからこそ生めた作品」
みたいなコト言ってて、がっちょり戦争の影響を認めてるのにそっちには噛みつかない模様。
なお、豊田有恒はSF界の巨人なのですが、昔は親韓だったのが嫌韓となり、近年はネトウヨ本を出してる残念な人物。
短編集『進化の鎮魂曲(レクイエム)』、すごく好きだったのに残念。
進化モノSFは結局「大いなる意思」とか「神」とかが出てきて進化を加速する、みたいな話が多いのですが、コレはちゃんと進化論に則ってて面白かったです。
それはさておき。
いつの間にか宇宙戦艦ヤマトシリーズに
『宇宙戦艦ヤマトNEXT スターブレイザーズΛ(ラムダ)』なる漫画が加わってまして。
3話までと最終2話が無料で読めるのでちょろりと目を通してみました。
https://comic.webnewtype.com/contents/starblazers/
これで「ジャケ買いして大失敗」はなくなりましたからね!
紙の見本誌は一冊ごとにお金もかかるけど、ネットなら頒布コストはほぼ無料…
おまけにネットだとゲームや動画が基本無料なので、その流れなんですかね…?
ともかく有難い。
おかげで無料で楽しんだ挙句に散々ディスれるという訳です。
(つまり批判する模様)
で、内容なのですが…
僕らの知ってるヤマトとは大分違います。
艦船は数隻しかなく、デザインや能力もバラバラ。
それが特殊能力を持った若者一人によって操縦される模様。
『鉄のラインバレル』とかのロボットものっぽいですよなこの辺。
ちなみに若者たちは7人チームで「トップネス」と呼ばれます。
ヤマト以外の艦は水上艦艇を模した形でもなく、敵は巨大な人型っぽい謎の存在…
つまり大規模な艦隊戦も、クルーをめぐる群像劇もなし…
えっソレはヤマトなの…?
あとヤマトだけは概ね水上艦艇を模してますが、波動砲は隠顕式…
シド・ミード版かよ!?
というかですね…
ストーリーに隠しきれないガイナックス臭が。
本作とエヴァ・トップ・トップ2との共通点を挙げるとですね…
【『新世紀エヴァンゲリオン』との共通点】
●秘密の多い主人公サイドの組織
●司令官は手を組んで座る無表情で無口なメガネのおっさん
●いきなり出撃させられる主人公の少年
●何かとんでもないものをコピーして兵器として使っている
●主人公の母親はプロジェクトの中で死亡
●母親とつながりのありそうな(人格を引きずった)謎の女性キャラ
●起動確率の低い特殊兵器
●特殊兵器を操縦できるのは特殊な才能を持つ子供だけ
●攻めてくるのは謎の敵
●敵のDNAが人類とほぼ一致
【『トップをねらえ!』との共通点】
●主人公の親はかつての歴史的大規模事故で亡くなっており、しかもその責任を負わされたため、主人公はそれをネタに後ろ指をさされる
●主人公たちが所属するのは「トップ◯◯」(トップ部隊)
●攻めてくるのは謎の敵
【『トップをねらえ2!』との共通点】
●主人公たちが所属するのは 「トップ◯ス」(トップレス)
●それぞれに違う能力を持つ個性的な特殊兵器たち
●起動確率の低い特殊兵器
●特殊兵器を操縦できるのは特殊な才能を持つ子供だけ
●攻めてくるのは謎の敵
●敵とトップ◯スは同質の力を持つ。トップ◯スが進化したものが敵?
…まぁよくあるネタだから責められないものもありますが…完全にアウトなやついっぱいあるやんけ!
なお、製作総指揮・著作総監修の西崎彰司(西崎義展の子息)が『発進にあたって』という巻頭言の中で
『 吾嬬君の繊細でスタイリッシュな絵は個人的にも気に入ってますが、今までヤマトを描いてきた線とは異なるものだと感じています。
また、生まれたばかりの物語がどこに着地するのか?果たしてどこまで共感していただけるのか?それも未だわかりません。私自身の評価は今は保留とし、読者の皆さんに委ねたい』
…と言ってるのですが…
コレ全く評価しとらんがな!
伝説的駄作として名高い実写映画『ドラゴンボール エボリューション』予告編の鳥山明によるコメントより酷くね?
ちなみにその時のコメントは↓コレ。
●脚本やキャラクター造りは原作者としては
「え?」って感じはありますが、監督さんや俳優の皆さん、スタッフなど、現場は超優秀な人達ばかりです。
ボクやファンの皆さんは別次元の『新ドラゴンボール』として鑑賞するのが正解かもしれません。
もしかしたら現場のパワーで大傑作になっているかもしれません。
おおいに期待しています!!
原作者 鳥山 明
…で、後のコメントが↓コレ。
●ハリウッド映画、実写版のドラゴンボールのとき、脚本があまりにも世界観や特徴をとらえておらず、さらにありきたりの面白いとは思えない内容だったので、注意をしたり、変更案を提示したりしたにもかかわらず、向こうは妙な自信があるようであまり聞き入れてもらえませんでした。
結局できあがったのは、案の定な出来のドラゴンボールともいえないような映画でした。
●『たぶんダメだろうな』と予想していたら本当にダメだった
なお、脚本家のコメントが↓コレ。
●いつかこの日が来ると思っていました。ドラゴンボール・エボリューションは、私の人生において非常に痛みを伴うポイントとなってしまいました。脚本家としてこの作品の名を連ね、世界的に罵られるのは、苦しくてたまりません。世界中から苦情メールが届き、心が砕けそうです。 私は何年も、この非難から気を逸らそうと努力しましたが、やはりこの日がやってきました。非常に多くのファンの皆さんに向けて、期待外れな結果に終わった事の全責任を負い、こうして文章に書き綴っています。 私は最善を尽くしました。でも、結局のところ、私はドラゴンボールを落としてしまったのです。
全てのドラゴンボール・ファンの皆さん、心からお詫び申し上げます。
…さて、散々ディスったので最後にちょっと感動したポイントを。
玉盛順一朗によるヤマト艦のメカデザインが↓コレ。

(画像は拾い物)
最初は「ナニコレ?」と思ったのですが…
実は松本零士にとってヤマトの理想のバランスは何もかも戦艦大和と同じ配置、という話があってですね。
(ソースは『西原理恵子の人生画力対決2』)
それ聞いた時は「え、全然ダメやん…御大、何も分かってNEEEEE!」と思ったものですが…
今回のヤマト艦、その松本零士の意向を押さえつつ、艦首は延長して全体のバランスを取ってる訳かぁ…
とか思ってたらデザイン的には段々許せる様に…
まぁこういうエピソードのおかげでデザインへの評価が変わることってあるよね…
ちなみにオタにはありがちなことですが、私も例に漏れず、スターウォーズのプリクエル(新三部作)、特にEP1がどうにも苦手でした。
特にメカが妙にぬるりと丸みを帯びたデザインなのが許せなくて。
いや、格好悪くはないんですよ?
でもコレ、スターウォーズか?
スターウォーズのメカと言えば「シンプルなシルエットにゴチャゴチャしたディテール、白におもくそ汚し塗装、側面に謎の隙間」がアイデンティティーじゃないの?
何故それをやらない?
おまけにまだしもSWらしさをとどめた、旧三部作を彷彿とさせるメカは「年代的に旧三部作より旧式」ってことで敢えてダサめのデザイン…
ルーカスってバカじゃねーの?
そしてルーカス抜きで作られたシークエル(続三部作)。
うって変わって出てくるメカはみんな大好き旧三部作を今風にアプデしたものばかり。
さいこうや!
皆が観たいのは結局、斬新すぎてSWから乖離したものではなく、古き良きSWらしさに満ちたもの。
新味なんてなくていい。
懐古厨で結構。
そう思ってました。
でもルーカスはEP7を
的に評してたんですよね…
うん、思い返せば確かに。
それほど好きにはなれないけど、「これまでになく都会な惑星」とか「ポッドレース」とか「トカゲの背中に乗って壁面を登る」とか、毎回新しいことをやってはいました。
ちなみにルーカスの構想では、シークエル(続三部作)は…
あらゆる生命の細胞内に共生し、フォース能力の源となる微生物ミディ=クロリアンをめぐる、絶対にウケそうにないものだったらしいです。
細胞内共生とはなかなか面白そうではありますが…
でも「精神の表れ」であり神秘的なものと思われていたフォース能力が、生まれつき決まってたり測定可能だったりしたことには批判の声が上がり、ミディ=クロリアンはすこぶる評判の悪い設定なんだけどね。
そしてわりと最近になって
「EP1のメカが丸いのは、スターウォーズより一世代前のSF映画に出てくる、レトロなロケットを意識したもの」
という話を知りました。
ああっ、わしらおたくはそういう「作品世界外の事情」を持ち込んだ説明に弱いんじゃよ~!
背後にある理由を深く知れた気がするからのう…。
例えて言うと
「ヱヴァQで主要キャラがネルフから大量に抜けてヴィレを作ったのは、スタッフがガイナックスを辞めてカラーを作ったことの暗喩」
みたいなやつ。
しかもEP1のメカは丸みを帯びながらも、レトロフューチャーそのままではないのです。
ちゃんと格好良い…!
レトロフューチャーを消化した上できちんとスターウォーズの世界観にすり合わせて来てたのか…。
そう思うと、あのデザインを急激に許せる様になってきました。
プリクエル自体も近年、再評価の動きがある模様。
漫画『木根さんの1人でキネマ』40本目「スター・ウォーズ回 エピソード6/4バカの帰還」(前後編)ではそのあたりの話が実に感動的に描かれてて、私も「あまりEP1の悪口は言わない様にしよう」と自重を誓ったほど。
白泉社の公式アプリ『マンガPark』で毎日8話ずつ無料で読めるので是非。
デザインはデザイン単体ではなく、それの置かれる文脈によって魅力が変わります。
はじめにデザインだけ見てピンとこなくても、スクリーンで大活躍する姿を観て好きになることは往々にしてあるよね。
という訳で、ヤマト艦のデザインは「プラモが出たら欲しい」とまでは言わないまでも許せる様になった私ですが…
「宇宙戦艦 オリジナル」とかでぐぐると、ヤマトの世界観を理解した上でデザインされた、「ガレージキットが出たら絶対買う」レベルの格好良い艦艇のファンアートが死ぬほど出てくるので困っちゃう。
【余談】
『銀河英雄伝説 Die Neue These』版のブリュンヒルトのプラモデルが発売されることになり、模型誌に見本作例が載ったりしてたので楽しみに待っていたのですが…発売日が延期された挙句、いつの間にか話も聞かなくなり。
調べてみたら、メーカーの『アクアマリン』が破産して発売中止になった模様。
同盟側の艦船もラインナップ予定だったのに…(呆然)
(00:02)
2023年02月05日
東京都知事・小池百合子と言えば横文字の多用ですよね。
ペダンティックなテクニカルタームがトゥーマッチ。
意識高い系のイキったビジネスマンみたいに乱発するやん…
小池百合子最大のレガシーは「レガシーという言葉を定着させたこと」でしょう。
中でも呆れたのは東京五輪・パラリンピックのバレーボール競技会場についての↓この発言。
『横浜案と並行して検討している有明は、ある意味パラダイム・シフト』
…本来『パラダイム・シフト』というのは、思考の枠組みが大きく変化することです。
有名な例だと天動説から地動説へ、とか創造論から進化論へ、とかの移行ですね。
つまり、
「地球は神が作りし世界の中心にあって動かず、天が地球の周りを回っとるに決まっとる!」
↓
「地球が太陽の周りを回ってて、地球は宇宙の中心でも何でもない辺境の地でしたー」
とか、
「精緻この上ない生き物たちはどのようにして存在する様になったのか…これらは神が綿密にデザインして作りたもうた被造物なのだ」
↓
「生き物はスゲー時間をかけて勝手に変化してた…神の力は不要でしたー」
といった、これまでの世界観が根底からひっくり返る様な劇的な変化を指す概念やで。
イベント会場の別案を用意しただけで使う様な言葉とちゃうやろ…。
このままだとちょっとしたアイデアも全部『コペルニクス的転回』とか『コロンブスの卵』とか言われそう。
「アサガオはコペ転!」みたいな感じで。
まぁ「パラダイム」という言葉の意味はどんどん軽くなっており…
ダイソーに行くと
「♪ハッピー プライス パラダイス~」
と脳天気な歌が流れてますが…
アレ、よく聞くと
「♪ハイパー プライム パラダイム」
をちょいちょい挟んできてて慄然。
https://m.youtube.com/watch?v=vYWr3s0ZhoI
(23:59)