2022年09月
2022年09月29日
前回扱った『件』(クダン)の話を続行。
『件(クダン)の噂』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/16462705.html
要約するとこんな感じだ。
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2012年5月22日、著者は教育実習中に中学生から「今日、地震が起きるって本当ですか?」という質問を受ける。
事情を聞くと、予言をした子供の噂が流れているのだという。
『障害のある子供が生まれ、3.11ぐーらぐらとうたっていた。それから、間もなく東日本大地震が起きた。その子は次に5.22ぐーちゃぐちゃという歌をうたうようになった』
この手の噂が流行しているらしく、ぐぐってみると類話がいくつも見つかった。
例えばこういったものだ。
『店長が言ってたんだけど、障害ある子どもが3.11よりも前に「311ゆらゆら~」って歌ってたんだって。で、そのあとその子が歌った通り地震きて、で、今その子が「522ぐちゃぐちゃ~」って歌ってるんだって。で、その子だけじゃなくて他の子も言ってるらしい。こわいよ5/22』
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
この手の話は私も目にしたことがあった。
だがよくあるつまらない噂だと思い、完全にスル―していた。
だがこの著者はこの様に指摘する。
『「くだん」の名も、いくつかの要素も抜け落ちてはいるが、件と似た構造を持った流言飛語であることは一目瞭然だ』
…確かに、「異常誕生譚」「必ず成就する予言」という部分は全く同じだ。
それに、牛面人身タイプの「件」の目撃は空襲直後に集中していた。
カタストロフの直後にまたも瓦礫の上に表れた「件」。
人々が願望や恐怖を「噂」に仮託して囁き続ける限り、その眷属は何度でも現れる。
著者はこう締めくくる。
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摺り物、剥製などを媒体に噂にされた妖怪「くだん」。これからはどのような媒体が登場するのだろうか。その時、何を言っているかはわからないが、また「くだん」の如き妖怪は現れると予言をしておく。
―—仍て件の如し。
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ちなみにこの「件」をめぐるコラムのタイトルは『「くだん」が何を言っているかわからない件』である。
これは勿論、ネットやラノベで流行したスタイルをパロディー化したものだ。
コラム内の小見出しも『「くだん」が現在でも人気の件について』など、同じスタイルを踏襲している。
という訳で私もパロディーでこの話を締めくくろう。
『この「クダン」が、最後の一匹だとは思えない。もし人々の噂が続けて囁かれるとしたら、あの「クダン」の同類が、また、日本のどこかへあらわれてくるかも知れない・・・』
…ダメだ、おっさんだから使い尽くされたネタしか思いつかない。

【オマケ】
震災後のこの手の噂についてぐぐってみるとこんなまとめが。
【地震】5月22日が危ない?【予知】
http://matome.naver.jp/odai/2133522812018131501
(現在はサービス終了によりリンク切れ)
内容はかなりメチャクチャ。
例えばこんなのだ。
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5月22日に大地震が起こるらしい
1 :M7.74(埼玉県) 2012/03/19(月) 21:31:23.46 ID:BIu01G/e0
とある養護施設で、東日本大震災が来る以前に生徒達が、「さんいちいちゆ~らゆら」と歌っていたらしい。
勿論、職場の人間は気にしてはいなかったが、その後、東北震災があってから気づいたらしい。そして今度は「ご~に~にぐ~らぐら」と歌っているみたいなんだ。
5月22日はスカイツリーの完成日。
本当に怖いのは、サバス症候群の天才的なところ。
サバス症候群は健常人にあるのに、病気のため欠けている脳の領域を使っているので、物凄く、ある部位だけ発達すること。
果たして5月22日に何かあるのか。
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サバス症候群て…そらサヴァンやろ。
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ごく親しい人からの情報です。 その人が直接、その子供から聞いた話です。
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というのも都市伝説の定番。
FOF(フレンド・オブ・フレンド)と言って、「関係者に直接聞いた本当の話です!」とか主張してても実際に調査するとその「関係者」は「実は私じゃなくて私に教えてくれた人が関係者」とか言いだし、どこまで調査してもその連続で、いつの間にか手繰り寄せた糸は途切れ、結局本当の「関係者」には辿り着かない。
あと
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アメリカのちきゅうのクルーが、見学会に来たおばちゃんと仲良くなって
そっと教えてくれた話しってる?
「5月頃に大きな地震が来るから海沿いに近寄っちゃダメだよ」って話
ここスレ見て思い出した。
探せば出てくるかも!先月どっかで見たよ。
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とか、
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2ch情報ですけど、掘削船ちきゅうの外国人クルーが今年か来年の5月頃東南海で地震があるとか書いていたのを思い出しました。
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とか、地球深部探査船「ちきゅう」の名が出てくるのは人工地震陰謀論の絡みだろう。
(00:03)
2022年09月26日
都市伝説が好きだ。
人面犬だの、口裂け女だのといった個別の物語そのものは他愛もないものばかりでツッコミどころ満載である。
しかし、誰も物語の改変をはっきりとは意図していないにも関わらず、【註1】人から人へと伝播していくに従ってより洗練されていくという、都市伝説が成立する過程には驚異を覚える。
今の様にネットが発達する以前、都市伝説は主に子供たちの口伝えで広がっていくものだった。
テレビや雑誌などのメディアが取り上げないにも関わらず、それは水面下で静かに、しかし速やかに浸透していく。
大人の知らない間に。
だがそこには目的を持って意図的に組織された有機的なネットワークがあるわけではない。
あるのは局所的な人間関係の膨大な連なりだけなのだ。
盲目的でありながら、「小さなコピーミス」と「より怖いバージョンの選択」を繰り返すことで多種多様な物語を生み出す様子は生物の進化にも似ている。
そう、都市伝説はより恐怖を与える魅力的な物語になることでより多くの人に語られ、「人々の脳に自らのコピーを刻み込む」という機能を獲得したミーム(文化的な自己複製子)なのだ。
そしてその様々な物語が実はいくつかの類型的なパターンに集約されていくという、「多様性と普遍性」は神話や説話の構造の様でもある。
私は個々の話よりむしろこの構造や方向性を持たない貪欲なエネルギーの奔流、盲目性に惹かれるのだろう。
そこにはまるで巨大な太古の遺跡を一人ぼっちで歩きまわる様な、畏怖と困惑と好奇心がないまぜになった知的興奮がある。
その流れの中にあって個人的に妙にひっかかり、たまたま目にとまる度に頭の片隅にしまいこんでストックしていた話がある。
それを簡単にまとめてみたい。
なお、私のリサーチ能力はあまり高くないので、不正確だったりもっときちんと元を辿れる部分も多いと思う。
それらに詳しい方がおられたらご教授いただければ幸いである。
『件』(クダン)という妖怪をご存知だろうか。
稀に牛が人の顔を持った仔牛を産むことがあるという。
これが件だ。
件は人語を解し、予言(凶事が多い)をしてすぐに死ぬ。
その予言は必ず当たるという。

人の顔を持つ牛なので「件」と書き、その予言が間違いなく的中するところから、確実なことを指して「よって件のごとし」という言い回しが生まれた、とも言う。
もっとも、これは後付けの様だ。
件にはいくつかのバリエーションがある。
先に挙げたのは最も標準的なものだ。
他に雌雄一対で産まれ、雄が凶兆を告げ、雌がその回避法を教える、というもの。
人面牛身ではなく、ミノタウルスの様な牛面人身のもの。
「娘が山に棲む獣に孕まされるとその獣の特徴を備えた子を産む。これを件と呼ぶ」という地方もあるらしい。
最後の例は一般的な「件」像から離れて見えるが、半人半獣というモチーフや畸形に対する恐怖は共通している。
都市伝説について語るのに何故「妖怪」などというカビ臭いシロモノを持ち出すのか、と思われるかもしれない。
だが「件」は終戦前後まで目撃談が続く稀有な妖怪であり、【註2】しかもその本質そのものが「噂の伝播」と切っても切れない、優れて近代的かつ都市伝説的な存在なのだ。
件という妖怪は江戸時代に成立したと思われる。
初期には「麒麟」や「白沢」の様に突如として現れる瑞獣として、豊作をもたらす存在だったらしい。
その姿を描いた図は護符としての力があるとされ、厄除けの絵が流行した。
件に関する最初の記録は1827年のもので、「クダベ」という人面の怪物が「これから数年間疫病が流行し多くの犠牲者が出る。しかし自分の姿を描き写し絵図を見れば、その者は難を逃れる」と予言した、という。
それがやがて「牛から産まれ、凶事を予言する」という不気味な存在へと変わっていく。
明治から昭和初期までは温泉街などに件の剥製と称する見世物がかかるくらいメジャーな存在であった様だ。
だがその存在は一度忘れられた。
件を再び有名にしたのは小松左京の小説であろう。
まず前段として、氏の作品に『牛の首』という短編がある。
これは「『牛の首』という怖ろしい話があるのだが、怖ろしすぎて誰も知らない」というストーリー。【註3】
肩すかしの効いたオチである。
そして『牛の首』から数年後、氏は今度こそ本当に、牛の首を扱った作品を発表する。
タイトルは『くだんのはは』。
普通に捉えれば「九段の母」、つまり九段の靖国神社に通う母親という意味で、「息子が戦死した母親」のことである。
…と見せかけて、氏は「件の母」の物語を書いてみせた。
戦時中、芦屋(兵庫にある高級住宅街)に座敷牢に閉じ込められた牛面人身の娘がいた。
それを目撃した主人公に生まれた娘もまた牛面で…というストーリーである。
そんなんただの小説やんけー、と侮るなかれ。
実はこの話、実際に芦屋近辺に流れた噂を基に書かれたものなのだ。
第二次世界大戦中には件をめぐる話は西日本に広く見られたという。
どこそこに「件」が生まれてもうすぐ戦争は終わると言った、とか、おはぎを食えば空襲を免れると予言した、といった噂が人々の口に上った。
昭和の時代に妖怪とは随分アナクロな感もあるが、当時の社会は現在の様に情報化されておらず、また戦時中で言論統制・報道管制が敷かれていたため、人々は正確な情報を得る手段も発信する場もなかった。
そんな状況の中で民衆は自らの願望を件の予言に仮託して囁きあったのだろう。
特高警察は流言蜚語を危険視し民衆の間に飛び交う噂を調査していた。
そのため、それらの記録に「件」をめぐる噂の実態が残ることとなった。
終戦直前から直後にかけては西宮などの兵庫県下での噂が急増する。
この時の「件」の特徴は牛面人身であることで、「牛の首がついた着物姿の娘」とされ、「空襲の焼け跡に牛女がいた」とか「牛女が動物の死骸を貪っていた」という目撃談がしきりに囁かれた。
小松左京の「くだんのはは」もこの時の噂を基にしているのだろう。
近代までその命脈を保ち続けた妖怪、「件」。
だが戦後65年、流石にその噂は絶えて久しい。
変わりに人々の口に上るのは様々な都市伝説だ。
都市伝説は常に生産され続けている。
新たなメディアが生まれる度に、そこにも現れる。
SNSも例外ではない。
日本初のSNS・mixiからも、その流行期に「ヨシムジさん」「地獄●●●」【註4】などの新たな伝説が生まれた。
そんな都市伝説に触れたくてmixiの「都市伝説」コミュに入っていたのだが、ある日こんな書き込みを発見した。
「六甲の牛女について詳しく知っている方、教えて下さい」
調べたところ、「六甲・牛女」は主に走り屋の間で囁かれる都市伝説で、人面牛身・着物姿の女が凄まじい速さで走り、追いかけてくるのだという。
「いわれは何も説明されておらず、訳がわからないがとにかくインパクトのある女が追いかけてくる」という意味では「100キロばばぁ」に連なる系譜の怪異であろう。
だがその姿は明らかに終戦前後に兵庫で目撃されたという「件」そのもの。
六甲もまた兵庫県の地名だ。
都市伝説…自己複製にこれほど都合の良いメディアがあるだろうか?
「件」はそもそもその登場からして「自らの絵図を写せ」と説き、自己複製を図る「コピー・ミー・コード」であった。
いわばチェーンメールである。
終戦前後、それは人々の願望を拾い上げ、拡大再生産するための「装置」として機能する。
そして21世紀。
現代のフォークロアたる「都市伝説」の中を、「件」は今も姿を変え、疾走し続ける。
時代は変わっても、変わることなく囁かれ、紡ぎ続けられる物語の中に。
あるいは、それを嬉々として語る人々の心の闇に。
奴は潜み続けるに違いない。
スーパーのチーズ売場によく潜んでいる「件」。

【オマケ】
「件」は一部の人々の想像力を妙に刺激する様で、近年になってからメディアで扱われることが多くなってきた。
私のアンテナに引っかかってきたものだけでこれだけある。
●とり・みき 漫画『件のアレ』『パシパエーの宴』
『件のアレ』は件についての調査をわかりやすくまとめたコミックエッセイ。
●岩井志摩子 小説『依って件の如し』
岡山を舞台にした土着ホラー。
子供が目撃した件の正体は近親相姦中の母と兄。
●大塚英志 漫画『八雲百怪』
牛面人身タイプと人面牛身タイプが両方登場。
●熊倉隆敏 漫画『もっけ』
女子高で件の絵姿をラッキーアイテムとして所持することが流行る、というエピソードがある
●真倉翔 漫画『地獄先生ぬ~べ~』
珍しいパターンの件。
鳥の雛の畸形として誕生・雄が凶事を、雌が回避法を告げてすぐに死ぬ。
●雑誌『幻想文学』56号 特集「くだん、ミノタウロス、牛妖伝説」
めちゃめちゃ濃い大特集。
●映画『妖怪大戦争』
冒頭で件が誕生・予言をするシーンがある。
●ゲーム『せがれいじり』
主人公の乗り物が件。
【註1:誰も改変を意図していない】
「ちょっぴり効果的にしてやろう」「少しオチを変えてやろう」という意図はあっても、最終的に到達する洗練は誰も最初からは意図していないのではないだろうか。
【註2:目撃が続く稀有な妖怪】
河童など現在も目撃例が続く妖怪もいるが、もともとのメジャーさがまるで違う。
また人間には「小さいおっさん」などの荒唐無稽なものを見たり聞いたりするのを好む奇妙な癖がある様だ。
河童は真面目な怪談の担い手としてではなく、こちらの「奇談系」に分類される様に思われる。
一方、「件」には荒唐無稽さと妙なリアリティーが同居している。
【註3:「牛の首」のオチ】
話の筋が落語めいているのでそのへんに元ネタがあるのかと思い検索してみたがよく判らず。
それっぽい話が出てくることは出てくるのだが、むしろ小松左京の作品を落語化した様に思える。
何より、古典落語界からの情報が全く見つからない。
【註4:mixi上の都市伝説】
『ヨシムジさん』
https://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=56999&page=1&id=9665460
そんな都市伝説に触れたくてmixiの「都市伝説」コミュに入っていたのだが、ある日こんな書き込みを発見した。
「六甲の牛女について詳しく知っている方、教えて下さい」
調べたところ、「六甲・牛女」は主に走り屋の間で囁かれる都市伝説で、人面牛身・着物姿の女が凄まじい速さで走り、追いかけてくるのだという。
「いわれは何も説明されておらず、訳がわからないがとにかくインパクトのある女が追いかけてくる」という意味では「100キロばばぁ」に連なる系譜の怪異であろう。
だがその姿は明らかに終戦前後に兵庫で目撃されたという「件」そのもの。
六甲もまた兵庫県の地名だ。
都市伝説…自己複製にこれほど都合の良いメディアがあるだろうか?
「件」はそもそもその登場からして「自らの絵図を写せ」と説き、自己複製を図る「コピー・ミー・コード」であった。
いわばチェーンメールである。
終戦前後、それは人々の願望を拾い上げ、拡大再生産するための「装置」として機能する。
そして21世紀。
現代のフォークロアたる「都市伝説」の中を、「件」は今も姿を変え、疾走し続ける。
時代は変わっても、変わることなく囁かれ、紡ぎ続けられる物語の中に。
あるいは、それを嬉々として語る人々の心の闇に。
奴は潜み続けるに違いない。
スーパーのチーズ売場によく潜んでいる「件」。

【オマケ】
「件」は一部の人々の想像力を妙に刺激する様で、近年になってからメディアで扱われることが多くなってきた。
私のアンテナに引っかかってきたものだけでこれだけある。
●とり・みき 漫画『件のアレ』『パシパエーの宴』
『件のアレ』は件についての調査をわかりやすくまとめたコミックエッセイ。
●岩井志摩子 小説『依って件の如し』
岡山を舞台にした土着ホラー。
子供が目撃した件の正体は近親相姦中の母と兄。
●大塚英志 漫画『八雲百怪』
牛面人身タイプと人面牛身タイプが両方登場。
●熊倉隆敏 漫画『もっけ』
女子高で件の絵姿をラッキーアイテムとして所持することが流行る、というエピソードがある
●真倉翔 漫画『地獄先生ぬ~べ~』
珍しいパターンの件。
鳥の雛の畸形として誕生・雄が凶事を、雌が回避法を告げてすぐに死ぬ。
●雑誌『幻想文学』56号 特集「くだん、ミノタウロス、牛妖伝説」
めちゃめちゃ濃い大特集。
●映画『妖怪大戦争』
冒頭で件が誕生・予言をするシーンがある。
●ゲーム『せがれいじり』
主人公の乗り物が件。
【註1:誰も改変を意図していない】
「ちょっぴり効果的にしてやろう」「少しオチを変えてやろう」という意図はあっても、最終的に到達する洗練は誰も最初からは意図していないのではないだろうか。
【註2:目撃が続く稀有な妖怪】
河童など現在も目撃例が続く妖怪もいるが、もともとのメジャーさがまるで違う。
また人間には「小さいおっさん」などの荒唐無稽なものを見たり聞いたりするのを好む奇妙な癖がある様だ。
河童は真面目な怪談の担い手としてではなく、こちらの「奇談系」に分類される様に思われる。
一方、「件」には荒唐無稽さと妙なリアリティーが同居している。
【註3:「牛の首」のオチ】
話の筋が落語めいているのでそのへんに元ネタがあるのかと思い検索してみたがよく判らず。
それっぽい話が出てくることは出てくるのだが、むしろ小松左京の作品を落語化した様に思える。
何より、古典落語界からの情報が全く見つからない。
【註4:mixi上の都市伝説】
『ヨシムジさん』
https://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=56999&page=1&id=9665460
(00:00)
2022年09月24日
エリザベス女王の国葬が行われましたね。
安倍元首相の国葬に反対のリベラルの中には、両者を対比させてエリザベス女王を持ち上げる向きもありますが…
そもそもリベラルが「君主制」という前時代の遺物におもねる必要、ある…?
私は自国の君主制にも否定的な立場。
「他国ならOK」とかなる訳ないですし。
『天皇階下(原文ママ)の偉大さが分かりません。』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/15496306.html
イギリスの王室に関しては、ハリー・ポッター俳優のダニエル・ラドクリフがめちゃ良いコト言ってます。
『君主制の意義が分からない。もちろん強い愛国心を抱いているし、英国民であることは大きな誇りだ。だけど君主制がこの国の問題を象徴していると思う。王室が間違ったことをしているわけじゃないけど、階級制度が好きになれない』
さらにラドクリフは無神論者。
『僕は信仰は持たない。僕は無神論者だ。そして、宗教が立法に影響を与えようとしたときは、戦闘的な無神論者にもなるよ。』
セクマイの権利擁護もしてます。
『同性愛を支持するのに、ゲイである必要はない。 一人の人間でさえあれば、それでいいんだ。』
ちなみにハーマイオニー役のエマ・ワトソンはフェミニスト。
(さらにヴィーガンという話もありますが、イマイチはっきりせず…)
一方、ハリポタ原作者のJ・K・ローリングは2020年にした発言が「トランス差別だ」と炎上しました。
エマ・ワトソンはこのローリングの発言に反対、ラドクリフら何人かの出演者もそれに続きました。
問題の発言とは…
ローリングは『月経のある人のためCOVID-19後にこれまでより平等な世界を作る』という記事について、
『月経のある人? そういう意味の言葉が、かつてあったんじゃない? 思い出すの、誰か助けて。ウンベンだっけ? ウインプン? ウーマド?』
とツイート。
これが「ウーマンという言葉はトランスジェンダー女性コミでしょ! それを否定するのはトランス差別!」と炎上したのですね。
そういえば最近、性教育の本を読んでたら「子宮のある人」という表現が出てきましたが、コレも同様の配慮なのでしょう。
調べてみたら、↓こんな事件も。
【EXCITEニュース】
『SHELLY、トークライブでの「子宮のある人」発言が物議 「一周回って差別的な呼び方」指摘の声も』
https://www.excite.co.jp/news/article/Real_Live_200117754/
しかしローリングは謝罪も撤回もせず、
『もし性別がリアルではないなら、同性同士が引かれることだってない。もし性別がリアルじゃないなら、これまで世界中の女性たちが生きてきた現実が消し去られてしまう。私はトランスジェンダーの人たちのことも知っているし、大好きだけど、性別の概念を取り除いてしまうのは、多くの人たちが自分の人生について有意義に議論をする可能性を奪ってしまう。真実を語るのは悪意ではない』
と発言。
さらに同年、「This WiTCH DOESN’T BURN(この魔女は燃えない)」とプリントされたTシャツ画像付きで『時には、Tシャツが話しかけてくれることがある』とツイート。
そこにTシャツ販売サイト「Wild Womyn Workshop」もリンクされていたのですが…
そのサイトを立ち上げたのは、レズビアンでフェミニストのアンジェラ・C・ワイルド。
「クィア政治やトランスジェンダー主義」などの「男性の利益を優先するあらゆる性差別的な政治やシステムに反対」するレズビアン権利団体『Get The L Out』の創設者だそうです。
しかもそのサイトでは「トランス女性は男性です(TransWomen are Men)」「あんたの代名詞なんか知るか(F*ck Your Pronouns)」「トランス男性は私のシスター(Transmen are my sisters)」と書かれたバッジも販売。
あ~…コレあれや。
フェミニズムとLGBTが対立する、日本でもよく見る図式。
まぁどっちも一枚岩ではないし、特にフェミニズムはガチ勢から「ツイフェミ」までいろいろある上、ガチ勢も「一人一派」なのでいろいろご意見はあるとは思うのですが…
結局どっちもリベラル同士なんだし、もうちょっと仲良く出来ないモンですかね…?
私が昔ちょこっとのぞいたマイノリティー団体は、LGBTもフェミニズムもオタクも社会的弱者のお仲間として協働してましたけどね~…。
今やTwitterではツイフェミとLGBT・オタクは犬猿の仲…
ちなみにその団体で「男性が男性らしさを強要されない権利」を求める「メンズリブ運動」を知り、感銘を受けたりもしたのですが…
数年前に「メンズリブ」を検索したら、ミソジニー団体が「メンズリブ」という言葉を乗っ取り、女叩きを正当化するのに使ってました。
ダメだこりゃ。
という訳でローリングとキャストたちの意見の不一致については、まぁローリングの意見も分からなくはありません。
『月経のある人』『子宮のある人』と呼んだところで、月経や子宮のないシス女性もいる訳ですし。
でも『私はトランスジェンダーの人たちのことも知っているし、大好きだけど』ってのはI have black friends論法っぽく聞こえちゃうよね〜…。
同じフェミニズムでも、LGBTと融和的なワトソンの立場の方が排他的なローリングより好ましい気が…。
まぁハリポタつながりの人同士、仲良くやっていただきたいものです。
ただし松岡佑子、テメーはダメだ。
松岡佑子はハリポタ邦訳を出版する静山社の社長にして翻訳者。
この人はローリングの信頼も厚く、さらに弱小出版社が熱意だけを武器に大ヒット作の翻訳を手掛ける様になったいきさつは美談となっていますが…
住民票だけスイスに移して税金逃れしたり、ファンをボランティアでやりがい搾取したりと、レッサーパンダ並みに腹が黒そう。
…とかハリポタ絡みでいろいろ書きましたが、私は1冊も読んでないし、映画も観てません。
USJにハリポタエリアが出来たあたりで、コレを楽しむために映画くらいは押さえておくか~! と、レンタルで1作目を借りたのですが…全くハマれず。
特にゼロ年代初頭のCG技術で描かれたクィディッチの草っ原とか今の時代に見てらんない!
しかしその後、人がやたら増えたUSJに行くこともないので全然だいじょうぶ~。
【オマケ】
「ドーキンスとエマ・ワトソンがそっくりだ!」という画像が出回りましたが、コレはフォトショで寄せただけみたいです。

《ソース》
【BBC NEWS JAPAN】
『ハリポタ作者、トランスジェンダーめぐる発言で物議 映画出演者も批判』
https://www.bbc.com/japanese/53003426.amp
【FRONTROW】
《『ハリポタ』作者がまたも物議、トランス差別グッズを販売するサイトを宣伝》
https://front-row.jp/_ct/17395042
(00:55)
2022年09月22日
芸人のキックが人の怪談をパクったと問題になっていますね。
【日刊スポーツ】
『「エンタの神様」で活躍のキックが怪談話を無許可で全パクリ?「著作権侵害の恐れ」番組配信停止』
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202209140001086.html
それに対し作家の小原猛が、
『先程録画したメーテレの番組を見ました。名前からジュールクニチから全部パクリでした。パクリでなければ『沖縄の怖い話』(TOブックス)のそのまんま朗読でした。『超ムーの世界R』シーズン222のサイキック芸人キック氏の話。私は許諾もなにもしておりません。週明けに弁護士と協議の上、正式に訴えることにしました。2018年の放送らしいですが、それにしても丸っとパクっています』
『もう一度言いますが、私は許諾も出しておりません。主人公の名前から何からそのままでいい逃れなど出来ません。あまりにもひどすぎるので、この場を借りてサイキック芸人キック氏には正式に抗議します』
とツイートしたことから問題に発展したものです。
番組も書籍も確認していないので何とも言えませんが、どうもキックがやらかしたっぽい。
しかし怪談というものは通常、「実話」という体で語られるものなのでは…
まぁ仮にノンフィクションであっても著作権は発生するし、法的には作家さんの主張が正しいのかもしれませんが…
実話として発表したのなら、それが「本当にあった話なんですが…」と巷間で語られ、都市伝説となって一人歩きし、やがて何らかの形で別の怪談師の耳に入って(商業的に)語られる様になるのは、普通にありえることなのでは…
この小原猛なる作家、『琉球ニライ大学』に「先生」として経歴が載っています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
小原猛
Takeshi Kohara
1968年京都生まれ。琉球の怪談実話を集めた「琉球怪談」(ボーダーインク)でデビュー。得意フィールドは怪談、妖怪、ウタキなど。他の著書に「鳥肌 ゾーン」シリーズ(ポプラ社)、「男たちの怪談百物語」(共著/メディアファクトリー)、「おきなわ妖怪さんぽ」(ボーダーインク)など
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
…やはり『琉球怪談』は実話怪談という体裁。
他の著作も『鳥肌 ゾーン』とか『男たちの怪談百物語』とか、民俗学的な意義から採話・記録したというより、普通に怪談集っぽいタイトル。
コミック版も発見。
【ビッグコミックBROS.】
『琉球怪談』
https://bigcomicbros.net/webwork/6492/
うん、普通に怪談ですね。
なお、この小原猛が「先生」を務める『琉球ニライ大学』は学校ではありません。
『琉球ニライ大学』の「理念」によれば…
https://www.niraidai.net/about/about_niradai.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「琉球ニライ大学」は、学校教育法上で定められた正規の大学ではありません。琉球列島の島々、そして島に点在する地域=「シマ」全域をキャンパスと見なして、子どもから大人まで、広く一般市民に対して「学び」の機会を提供し、地域密着型の「学びのネットワーク」を創出することを目的としたプロジェクトです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
…だそうです。
まぁキックがあまりに「そのまんま」のあらびき芸だったんで逆鱗に触れたんでしょうが、こういう胡散臭い業界に身を置くなら、この手のリスクは付き物。
コレ、自称超能力者が別の超能力者に「アイツ、俺の考えついたトリックをパクって超能力披露してるやんけ!」と怒ってるみたいなモンじゃねーの?
もしホンモノの超能力なら、他人が同じ能力を発揮したからって怒る筋合いないやん。
となると元の怪談が実話かどうかも怪しく見えてくるよね~…。
なんかJKと援助交際しようとしてお金だけ持ち逃げされた男が警察に駆け込んだ事件を思い出してしまいました。
そうでなくても怪談にはツッコみどころが多すぎます。
「後で写真を現像してみたらね、こっちを睨んでる女の顔がアップで写ってたんですよ…」みたいなやつ多いけど、ソレはまず写真がないと話にならへんやん…。
あと幽霊ってなんで恨めしそうなやつばっかりなんですか?
他の情動は持ち合わせてないのか…?
逆に、ホルモン等の物質的基盤なしに恨みや復讐心といった情動や欲望が湧くもんなんですかね?
湧くなら、同じ仕組みで食欲や性欲や睡眠欲も湧きそうなものです。
恨みや未練がある者だけが出現できる仕組みなら、「あの世の実在をコッチに伝えたくて未練たらたらの科学者」とか「大爆笑のネタを思いついて、披露するまでは成仏できない芸人」の霊が出てきてもおかしくない筈なのに何故か出ません。
コッチを脅す気まんまんの霊の場合、もしコッチが幽霊に気付かなかったり途中で引き返しちゃったら、幽霊も肩すかし喰らったみたいな空気になるんでしょーか?
「夜中に学校の階段が1段増える」系の話もよくありますが、誰が、どのような方法で、何のためにしているのか全く不明で意味が分かりません。
まぁこの手の話は際限がなくなるのでこの辺で。
ところで私の妻はホラー映画好きなのですが、良作を見分ける選球眼がありません。
なのでたまたまCMで見かけただけの明らかにハズレ臭いB級ホラーを観たがるので困ります。
しかも大抵オカルトホラー。
アレってオバケの能力が不明で、「どうすれば倒せるか」とかの条件が作り手の盛り付け次第だからなぁ…
という訳で妥協点として、弱点のはっきりしたゾンビものを観ることになりがち。
ゾンビは私も嫌いではないのですが…ハズレ率が異常に高い!
まぁゾンビものは顔色わるめにメイクして「う~あ~」言ってりゃ撮れるので、世界中のお金のないボンクラ映画人が作っちゃうんよね…
そのせいで粗製乱造。
そんな2人ですが、お化け屋敷に入るとgkbrの私が妻の後ろに隠れ、グイグイ前に押し出すので毎回怒られます。
「別に怖くはないけど押されると腹立つ」そうです。
怖くないのに何故ホラー好きなのか…
ところで昔の怪談ってオチが弱いですよね。
なんか不思議なことが起きるだけで終わったりする。
例えば有名な『本所七不思議』。
七不思議といいつつ、バージョンによって話がちがうのでいっぱいあるのですが…。
【置行掘(おいてけぼり)】
夕方、お堀で釣りを終えて帰ろうとすると「置いてけ〜」という声がする
【送り提灯】
夜道に提灯の灯りが見えるが近づくと消える
【送り拍子木】
夜道に拍子木の音が聞こえるが誰もいない
【灯無蕎麦(あかりなしそば)】
夜に蕎麦の屋台が出ているが主人がおらず、灯りも消えている
【足洗屋敷(あしあらいやしき)】
旗本の屋敷で毎晩、毛むくじゃらの巨大な足が天井を突き破って降り、洗ってやらないと暴れる
【片葉の葦】
お堀の葦は片側にしか葉が付かない。ここで女性が片手片足を切り落とされて殺され、お堀に沈められて以降のことだという
【落葉なき椎】
ある屋敷の椎の木は落葉を一枚も落とさない
【狸囃子】
深夜に笛や太鼓のお囃子が聞こえる
【津軽の太鼓】
弘前藩・津軽越中守の屋敷にある火の見櫓には、板木ではなく太鼓がぶら下げられている。なぜかは誰も知らない
…弱い。
話が弱すぎるよ〜…。
日本初の説話集、『日本霊異記』も酷い。
ホラーな話が多いのですが、仏教説話としての色彩が濃いせいか、ちょっと僧侶を軽んじただけで想像を絶する酷い目に遭うなど話のバランス悪すぎです。
ホラー系以外だと、息子を愛してしまった母親が今際のきわに「生まれ変わって結ばれる」ことを誓う…という話があるのですが、この母の誓いがフェラチオしながら発せられるという、驚愕の展開があったり。
そういう方向では意表を突いてくるんだなぁ…。
なお、母親は隣家の娘に生まれ変わって息子と結婚。
ばぶみ溢れる遥か年下の娘…我々日本人の性愛センスはこの頃から突出してますね。
昔の怪談にもよく出来たオチはあるのですが、そういうのは逆に現在まで語り継がれて、都市伝説へと形を変えてたりするのです。
「今度は落とさないでね」系の都市伝説は『六部殺し』あるいは『こんな晩』と呼ばれる古典的な怪談の焼き直しだったり。
という訳で、
「昔の怪談はオチが弱い。オチがどれも凝ってたり捻ってあったりするのは近代になってから」
だと思ってたのですが…
ホラー好きな妻がYouTubeで怪談系動画を流しながら眠るので、なんとなく私も聞く羽目に。
その結果分かったのですが、現代においてもオチが効いてる怪談なんてごく一部で、今でも大半は「ただ奇妙なだけ」なんですよ…
ほぼどれも「…そんな話です…」とかで締めくくる怪談師までいる始末。
それ、オチの無いトークをする若手芸人と同じやん。
(00:22)
2022年09月20日
知人の子供さんが小学生の頃に「おもくろい」という言葉を使ってるのを耳にしてびっくりしたことがあります。
「面白い」の白を逆の黒に言い換えただけの他愛ない言葉遊びですが…
それ十返舎一九の『東海道中膝栗毛』、いわゆる「弥次さん喜多さん」「弥次喜多道中記」に出てくる由緒正しい江戸っ子ギャグやで!?
ちなみに意味も逆に取って「面白くない」の意で使われる場合もあります。
あと子供の頃に「バビ語」って使いませんでした?
例えば「ひみつ」が「ひびみびつぶ」になるやつ。
各音の後にバ行の同じ母音の音を挿入し、法則を知ってる人にだけ理解できる様にする一種の暗号遊びですね。
アレは「入れ詞」(いれことば)・「挟み詞」(はさみことば)・「唐言」(からことば)等とも呼ばれ、元は遊里の隠語でやはり江戸時代からある言葉遊びです。
海外にも「ピッグ・ラテン」という似た遊びがある模様。
ドラマ『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』でも「子供の頃に誰もが使っていた暗号で女子2人が内緒話する」というシーンに出てきました。
日本語吹替版では暗号部分はバビ語になり、この暗号を「ウビドゥビ」と呼んでいました…が、「ウビドゥビ」でぐぐっても何も出てこない。
翻訳担当者の周囲ではそう呼ばれてたんでしょうか。
私の住んでいた地域ではバビ語を「バビロン語」と呼んでました。
「バビロン語」「唐言」「ピッグ・ラテン」と、外国語っぽい名前が付けられがちなのが興味深い。
バビロンはバベルと関連付けられる地名で、聖書では「神が言葉を乱し、各部族がお互いに分からない言葉を使うことになった元凶の地」なので、暗号名にはピッタリですね。
しかし森昌子がTV番組「金曜プレミアム『訂正させてください』」(2019年3月19日フジテレビ系放送)で「アレ作ったのは私たち花の中三トリオ」とか言い出してて仰天。
いや江戸時代からあるし。
しかし現在、Wikipediaもこのエピソードを伝聞形式とはいえ検証抜きで載せてるため、「江戸時代からあるが森昌子が作ったという」的な、奇妙な記述になってたり。
この様に、現在流通している言葉に古くて意外な起源があったりするのはよくあります。
都市伝説「六甲の牛女」は、遡ると江戸時代から続く妖怪「件」(クダン)の伝承につながってたり。
怪談の定番「乗客が消えるタクシー幽霊」の話なんて西洋では乗合馬車の頃から語られています。
都市伝説「ダルマ女」の前半によく置かれる「若い女性がブティックの試着室に入ると鏡が回転してさらわれる」というエピソードは、1969年フランス発祥の「オルレアンの噂」という有名なデマが元ネタ。
その根底には「ユダヤ人が経営する店なんかで買物すると何されるか分かったもんじゃない」というゼノフォビア(外国人嫌い)とユダヤ人差別があります。
反ユダヤ主義に基づくデマはいろいろあります。
ドイツでは14世紀から「ユダヤ人が井戸に毒を流す」という噂がありました(Well poisoning)。
「特定の民族が井戸に毒」系デマとしては関東大震災時の朝鮮人虐殺につながった噂とそっくりですね。
ネトウヨさんにはいまだにコレを信じてる人が沢山います。
近年では大災害の度に「井戸に毒」系デマが流れますが、これは「ガチ勢」「悪意ある捏造」「パロディー」「ネトウヨさんへの釣り」がないまぜになっててややこしい…しかし「ガチ勢」「悪意ある捏造」はネトウヨさんが中心になって発信・拡散しているのは確かです。
また「ユダヤ人が子供をさらい、血を抜く」「その血を口にする」系のデマは『血の中傷』と呼ばれ、古代から連綿と続いてるのですが…
コレの系譜としてアメリカでは「悪魔崇拝者が子供に悪魔的儀式虐待を行なっている」という陰謀論が根強くあります。
一時「退行催眠などで失われた記憶を取り戻す」みたいなのがブームになり、そういうのにハマった人たちがうっかり取り戻しちゃった記憶というのがしばしば「うちの親は悪魔崇拝者で、私は儀式として性的虐待をされた」だったのですね。
あと「UFOにさらわれて宇宙人に身体検査された」とか。
どっちに転んでも裸にされる模様。
そういう流れで史上最大の冤罪事件・マクマーティン保育園裁判とか起きちゃいます。
…が、懲りずに現在でもコレの類話は語られています。
Qアノンやその前身となったピザゲートでの「子供たちが誘拐監禁されている」「ヒラリーや民主党の奴らが性的虐待を行っている」「子供の脳からアドレノクロムを抽出してドラッグや若返り薬として使っている」系の話がそうですね。
そうでなくとも極右の言うことは国を問わず、奇妙に共通しています。
最近、気付いた例をいくつか挙げると…
映画『否定と肯定』でも描かれた、「ガス室はなかった」と主張する歴史修正主義者デイヴィッド・アーヴィングは「ホロコーストは補償金目当てのでっち上げ」的な主張をしています。
慰安婦問題でのネトウヨさんの主張そっくりですね。
デマゴーグであるアレックス・ジョーンズが運営する陰謀論サイト『インフォウォーズ』は『イスラム諸国からの移民がフィンランドにおけるほとんどの性犯罪を引き起こしている』と主張。【※註1】
ネトウヨさんの「在日朝鮮人が日本におけるほとんどの性犯罪を引き起こしている」とそっくりです。
極右サイト『ブライトバート・ニュース』スティーブ・バノンは次回の大統領選の選挙管理スタッフにトランプ派を送り込もうと画策してる様ですが、その1人は『我が国を取り戻す』と言ってました。
どっかで聞いたフレーズ。
なお、バノンはトランプに首席補佐官の座から追い出された後、欧州で極右団体を結束させようと画策するも失敗した模様。【※註2】
そりゃそうだ、各国の愛国主義者をまとめるのは「一匹狼親睦会」を作る様なもんだもんね…
おかげで極右ポピュラリズムはあちこちで元気いっぱいだけど、横の連帯を欠くせいで文化的にはリベラリズムが世界に浸透してたり。
あと日米ネトウヨさんの主張があちこち似てる件については以下のエントリを参照。
想像以上に同じコト言ってます。
『アメリカ版ネトウヨさん、日本のネトウヨさんとそっくりな主張をしてしまう』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/15454473.html
【※註1】
ソースは『人は簡単には騙されない 嘘と信用の認知科学』
【※註2】
ソースは『町山智浩のアメリカの今を知るTV In Association With CNN』2022年9月8日放送「トランプ氏を大統領にした男スティーブ・バノン氏② 欧州で理想国家を目指す!?」。
この回はCNNの特集番組「スティーブ・バノン:決裂すれば倒れる」(『STEVE BANNON DIVIDED WE FALL』)を紹介・解説したもの。
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