2022年07月
2022年07月31日
「パリ万博の消えた貴婦人」の話をご存じでしょうか。
ぐぐると例えばこんな記述が出てきます。
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1889年のパリの街は活気に沸いていた。フランス革命100周年を記念する第4回万国博覧会が開催されていたのである。この日のために建造された高さ約312メートルのエッフェル塔を最大の呼び物に、博覧会への参加国は35カ国、5月から10月までの開催期間中の来場者は3,225万人。商店や宿泊施設にとっては絶好の稼ぎ時であった。
そんなパリの街を海外旅行中の一組の母娘が訪れた。二人はそれまでインドを訪問しており、パリに寄ったのは博覧会を見物するためであったが、母親は体調が優れないらしく、ホテルに着くや否や、病状はかなり深刻な様相を呈してきた。ホテル付の医者にも手に負えず、他の医師の応援が必要だという。しかし医師は容態の変化に備える必要があり、この場を離れるわけにはいかない。娘は自分で医者を探すべくホテルを飛び出した。
馬車の御者は事態を理解していないのか、それとも所詮他人事かと思っているのか、馬車の走りは精彩を欠いていた。のろのろとパリの街を右往左往し、ようやく頼りになりそうな医者を見つけてホテルに戻ったときには、既に数時間が経過していた。娘はホテルの従業員に母の具合を尋ねる。しかし彼は思わぬ言葉を口にした。
「お客様はお一人で宿泊されておりますが」
従業員が言うには、娘は一人で宿泊しているのであり、母親など連れてきていないのだという。そんな筈はないという彼女の訴えにも彼は首を傾げるばかり。一体何の冗談なのか。実際に母がいる部屋に行けばわかると、娘は従業員らを連れて自室に向かった。だが、扉を開けて彼女は愕然とする。壁紙や調度品……部屋の何から何までが異なっており、母親の姿は影も形もなかった。持っていた鍵と扉の鍵穴は一致する。部屋を間違えたわけではない。
母を診察した医者に聞けばわかるはずだと、娘はホテル付の医者をつかまえて問い質した。しかし彼もまた、「そのような方を診た覚えはありません」と、従業員同様に母親の存在を否定。娘はホテル中の人間に母の行方を尋ねたが、誰一人として母親の行方はおろか、そのような人が宿泊していた事実すら知らないと答えるばかりであった。
こうして母親の痕跡はパリから消えうせた。哀れな娘は気が狂い、精神病院に入れられたと伝えられている。
真相は次のようなものであった。母親はインドでペストにかかっており、ホテルに着いた直後に息を引き取っていたのである。だが万博の最中、このような事実が知れ渡ったら街中が混乱し、ホテルの営業は大打撃、パリの威信にも傷がつく。そこでホテルはパリ当局と共謀して、娘を外に出している間に母親を別の場所に隔離し、突貫工事で部屋を改装、関係者全員で口裏を合わせ、最初からそんな人物が存在しなかったかのように振舞ったのだった。
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…この話、私は幼少期から類話を何度も読んだことがあるのですが、時にはフィクションに織り込まれ、時には「実話である」と主張されることもあった様に思います。
でもそれらが何という本に載っていたのかは記憶の霧の中に消え失せ、そもそもそれらが本当に存在していたかすら定かでなくなってくるのです。
物語中の母親の様に。
にも関わらず、忘れた頃にまた類話として再登場…
この話は私の人生に何度もしつこく絡んでくる、正体不明の怪物の様なものです。
話の内容よりもむしろ存在自体に何やらモヤモヤした気分にさせられて、不安になるのです。
ネット時代に突入してからも何度か検索したのですが、ことの真相は解らないまま…
だったのが、ネットは年数が経つ程に情報量が増えていくため、数年後に検索しなおすと素晴らしい情報を得られることが。
現在では例えば下記のサイトで都市伝説であろうと結論付けられていて、出典にかなり近づくことができます。
冒頭に貼り付けた『パリ万博の消えた貴婦人』のエピソードもここから引用させていただきました。
http://roanoke.web.fc2.com/foreign/Vanishing_Hotel_Room.htm
…ああっ、どうやら私が幼少期に読んだのは『名探偵トリック作戦』の様ですね。
『MASTERキートン』、読んだ読んだ!
町山智浩の『トラウマ映画館』は多分、最近この話を思い出すきっかけになった本。
『フライトプラン』は未見だけど、あらすじ聞いて「なんか聞いたことのある話…」と思ったやつだー!
あ~スッキリした!
と、言いたいトコですが…
別のモヤモヤが発生。
『フライトプラン』って、最近そっくりの映画ってなかったでしたっけ?
「もう誰も信じられない」系の飛行機サスペンスで。
…調べてみたらそれはどうやら『フライト・ゲーム』の様です。
今度こそスッキリ。
…と思いきや、
「そういえば『ニューヨーク東8番街の奇跡』にもそっくりの映画がなかったっけ?
いや、『ジュブナイル』じゃなくて、洋画で。
なんか『ショートサーキット』と『WALL-E』程度には似てるやつで。
タイトルだけ似てる『34丁目の奇跡』とも別で」
とか完全にいらんコト考えてしまうモヤモヤ沼。
まぁそれは別にいいです。
それより先日、プチ『パリ万博の消えた貴婦人』体験をしてしまったんですよ。
閉店間際のスーパーで「総菜全品4割引き」の立札があったので「こりゃ安い」と思い、何点か購入したのですが…
レジで会計を済ませてレシートを見ると、2割しか引かれてない…
「アレ? 4割引きっていうのは私の見間違いかな?」と思って総菜売り場に戻ってみると…
さっきまであった筈の立札自体、影も形も無くなっているのです。
そんなバカなー!?
全ては私の勘違い?
いえ、そんな筈はありません。
そもそも値引きの立札自体が最初から無かったのなら、スーパー側がレジで2割引きする理由もありません。
何があったのかは解りませんが、何かがあったことだけは確実です。
閉店間際のスーパーで日常の全てが瓦解していくディック感覚を味わうという、恐怖体験でした。
ほらアレですよ、映画版『コンタクト』のラストで、録画はされてなかったけどテープは18時間分回ってた、的な。
そういえば『コンタクト』は合理主義者の主人公が自分自身が持ち出した「オッカムの剃刀」によって自らの経験を否定せざるを得なくなる話でしたね。
ところで先ほど紹介した二つ目のサイトには載っていませんが、手塚治虫の『きりひと賛歌』にもモロ同様のシチュエーションがあった筈。
…とか言いつつ、同書をめくってみても何故かどこにも該当シーンが見つからない、なんてコトもこの話の流れならありそうで怖いですが。
【付録】
上記で紹介したサイトが消えちゃった時に備えて内容を保存。
Unbroken Snow 世界の行方不明・失踪事件】
『パリ万博の消えた貴婦人と客室 (1889?)』
http://roanoke.web.fc2.com/foreign/Vanishing_Hotel_Room.htm
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パリ万博の消えた貴婦人と客室 (1889?)
1889年のパリの街は活気に沸いていた。フランス革命100周年を記念する第4回万国博覧会が開催されていたのである。この日のために建造された高さ約312メートルのエッフェル塔を最大の呼び物に、博覧会への参加国は35カ国、5月から10月までの開催期間中の来場者は3,225万人。商店や宿泊施設にとっては絶好の稼ぎ時であった。
そんなパリの街を海外旅行中の一組の母娘が訪れた。二人はそれまでインドを訪問しており、パリに寄ったのは博覧会を見物するためであったが、母親は体調が優れないらしく、ホテルに着くや否や、病状はかなり深刻な様相を呈してきた。ホテル付の医者にも手に負えず、他の医師の応援が必要だという。しかし医師は容態の変化に備える必要があり、この場を離れるわけにはいかない。娘は自分で医者を探すべくホテルを飛び出した。
馬車の御者は事態を理解していないのか、それとも所詮他人事かと思っているのか、馬車の走りは精彩を欠いていた。のろのろとパリの街を右往左往し、ようやく頼りになりそうな医者を見つけてホテルに戻ったときには、既に数時間が経過していた。娘はホテルの従業員に母の具合を尋ねる。しかし彼は思わぬ言葉を口にした。
「お客様はお一人で宿泊されておりますが」
従業員が言うには、娘は一人で宿泊しているのであり、母親など連れてきていないのだという。そんな筈はないという彼女の訴えにも彼は首を傾げるばかり。一体何の冗談なのか。実際に母がいる部屋に行けばわかると、娘は従業員らを連れて自室に向かった。だが、扉を開けて彼女は愕然とする。壁紙や調度品……部屋の何から何までが異なっており、母親の姿は影も形もなかった。持っていた鍵と扉の鍵穴は一致する。部屋を間違えたわけではない。
母を診察した医者に聞けばわかるはずだと、娘はホテル付の医者をつかまえて問い質した。しかし彼もまた、「そのような方を診た覚えはありません」と、従業員同様に母親の存在を否定。娘はホテル中の人間に母の行方を尋ねたが、誰一人として母親の行方はおろか、そのような人が宿泊していた事実すら知らないと答えるばかりであった。
こうして母親の痕跡はパリから消えうせた。哀れな娘は気が狂い、精神病院に入れられたと伝えられている。
真相は次のようなものであった。母親はインドでペストにかかっており、ホテルに着いた直後に息を引き取っていたのである。だが万博の最中、このような事実が知れ渡ったら街中が混乱し、ホテルの営業は大打撃、パリの威信にも傷がつく。そこでホテルはパリ当局と共謀して、娘を外に出している間に母親を別の場所に隔離し、突貫工事で部屋を改装、関係者全員で口裏を合わせ、最初からそんな人物が存在しなかったかのように振舞ったのだった。
【考察】
有名な都市伝説である。方々で語られている(注1)が事実ではない。
冷静に考えればこの話は無茶苦茶である。母親の存在を証明するのは何もホテルの記録ばかりではない。フランスの入港記録など証拠は他にいくらでもあるし、ホテルに入るまでにも相当多くの人に母娘は目撃されている筈だ。また、混乱を回避するのが企みの動機だとされているが、それなら娘に事情を説明したうえで騒ぎ立てないよう説得する方がよほど理にかなっている。ホテルの一室を改装し、口裏を合わせるという大掛かりな企みそれ自体、無駄に関係者を増やして騒ぎを大きくするばかりで本末転倒である。誰か一人真相を吐けば一巻の終わりだ。
荒唐無稽な話であるが、1889年という時代設定が、「この時代なら人権意識も薄そうだし、こんな無茶も通ったかもしれない」と思わせ、一定の信憑性を確保するに至っているのだろう。
とはいえ、話のアラばかり探したところで、言いがかりをつけているだけの感は否めない。以下でより実証的にこの話を考察してみたい。
■ 複数のパターン
上記概略では最も人口に膾炙している話のパターンを紹介したが、この話には細部の異なる複数のバリエーションが存在する。
(1)年代
1898年の第4回パリ万国博覧会時に起きた事件とされることが多いが、1900年の第5回パリ万国博覧会、1925年(同第6回)、1931年の植民地博覧会における事件とされることもある。
(2)ホテル
コンティネンタルホテル、クリヨンホテル等、ホテルの具体名が挙げられる場合もある。また、母娘の泊まった部屋について、部屋番号や壁紙の色といった具体的なディテールが描写されることもある。
(3)その後の展開
アメリカの外交官、あるいは娘の婚約者が真相を暴くという展開になることもある。
(以上は主としてベン・C・クロウ『アメリカの奇妙な話1 巨人ポール・バニヤン』(ちくま文庫)に拠った)
様々なバリエーションが存在するという事実は、元々の話が非常にあやふやである――つまり作り話であることを類推させるに足るものである。実話であればここまで細部が異なったりはしまい。また、どのパターンにおいても肝心の母娘の名前が明らかにされないあたりも、都市伝説の典型を示していると言えよう。
■ 出典
次に、この話の出典を探ってみたい。推理小説家エドワード・D・ホックの「革服の男の謎」という短編(『サム・ホーソーンの事件簿Ⅳ』(創元推理文庫、木村二郎訳)に収録)に、次のような記述がある。
待合室の本棚をあけて、アレグザンダー・ウルコットの『ローマが燃えるあいだ』というエッセイ集を選んだ。その中の「消えた貴婦人」というエッセイは、若いイギリス女性とその病弱な母親の伝説を扱っていた。その親子はインドからイギリスに戻る途中、1889年のパリ万国博覧会を訪れた。滞在していたホテルで母親が消えたが、従業員は母親の存在を否定した。2人の部屋には見覚えのない家具と壁紙があった。母親のいた形跡はまったくなかった。最後に、その母親がインドでかかったペストで急死したことを、イギリス大使館の若い男が突きとめた。パニックで旅行客がパリから逃げ出し、万国博覧会を台無しにするという事態をさけるために、みんなで沈黙を守ることが必要だったのだ。最後の脚注で、この話の出典は1889年のパリ万国博覧会開催中に発刊された《デトロイト・フリー・プレス紙》のコラムであると、ウルコットは書いていた。しかし、そのコラムの筆者は自分でその話を作りあげたのか、それとも、どこかで聞いたのか覚えてはいなかったらしい。
アレクサンダー・ウールコット(Alexander Woollcott 1887~1943)はチャップリンの「黄金狂時代」を激賞したことで知られる実在した評論家であり、『ローマが燃えるあいだ』(“While Rome Burns”1934)も彼の手による実在の著作である。「革服の男の謎」自体はあくまで小説であるが、ウールコットが1934年の時点で本件について触れているのはまず間違いあるまい。わざわざ実在の人物・作品に嘘を言わせるとは考えにくいからである。
ところが外国のこのサイトによれば、ウールコットが出典として挙げている「デトロイト・フリー・プレス」の記事は存在しないのだという。代わりに同サイトは、「消えた客室」に似た話が登場する最初期のものとして、Belloc Lowndesの“The End Of Honeymoon”(1913)、Lawrence Risingの、“Who Was Helena Cass”(1920)を挙げている。どれも小説である。
結局、どこまで辿ってもエッセイや小説ばかりで、確固たる資料が出てこない。恐らく、19世紀末ごろから「消えた客室」に似たような話がフォークロア的に語り継がれており、ウールコットやBelloc Lowndesがそれを題材に物を書いたのだろう。あるいは、Belloc Lowndesこそがこの話の生みの親なのかもしれない。このようにして一度活字になった話が、いつしか実話として語られるようになったのだろうと思われる。
■ 無の恐怖
殺人は畢竟、肉体を破壊し、特定の人物を物的に消失せしめる企てに過ぎない。だが、この話においてホテルが行おうとした企ては、特定の人物を物的に消失させるだけにとどまらず、その人物がこの世に存在した痕跡までもを消失させようというものであった。無論、こんなことは不可能である。そんな不可能事を力ずくで実現させようとしているところに、私はこの話の不気味さを感じてならない。
ある人物が失踪し、誰一人としてその人物の記憶を有さず、この世からその人物の記録が一切合財消え去ってしまったとすれば、それはもはや単なる無である。人を無に還そうという単なる殺人を超えた凶悪な意図、そして「存在」という最も本質的な要素が人工的に消去される恐怖が、この話の底には流れている。
(注1)
参考までに以下のサイトを挙げておく。
○ http://ryoshida.web.infoseek.co.jp/kaiki/32hahaoya.htm
○ http://elder.tea-nifty.com/blog/2006/10/post_f719.html
【参考文献等】
○ ベン・C・クロウ著 西崎憲監訳 『アメリカの奇妙な話1 巨人ポール・バニヤン』 筑摩書房<ちくま文庫>、2000
○ エドワード・D・ホック著 木村二郎訳 『サム・ホーソーンの事件簿Ⅳ』 東京創元社<創元推理文庫>、2007
○ Snopes.com http://www.snopes.com/horrors/ghosts/hotel.asp
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【エンターテイメント日誌】
『「バニー・レークは行方不明」と、パリ万博・消えた貴婦人の謎』
http://opera-ghost.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-846e.html
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「バニー・レークは行方不明」と、パリ万博・消えた貴婦人の謎
町山智浩(著)「トラウマ映画館」で紹介され、ずっと興味を持っていたオットー・プレミンジャー監督の映画「バニー・レークは行方不明」(1965)DVDが漸くレンタル開始となったので早速観た。
こういうプロットだ。
アメリカからロンドンにやって来たシングルマザーのアン・レークは引っ越し早々、4歳の娘バニーを保育園に送り届けるが、その数時間後に娘が行方不明になってしまう。半狂乱になって兄と行方を探すアン。しかし保育園のどこにも子供が存在したという痕跡がない。保育士の誰もバニーを見ていない。写真もない。捜査に乗り出した警部(ローレンス・オリヴィエ)は、消えた娘というのは彼女の妄想ではないかと疑い出す……。
なおイヴリン・パイパーが書いた原作小説(ハヤカワ・ポケット・ミステリ刊)は1957年の作品である。
僕には既視感(デジャヴ)があった。小学校2,3年生の頃に読んだ物語を彷彿とさせたのである。
おぼろげな記憶を頼りに、漸くその本を突き止めた。「名探偵トリック作戦」(藤原宰太郎、学習研究社、1974)のカラー巻頭漫画「消えた母の秘密」であった。
【問題編】
1889年フランス革命100周年を記念する万国博覧会が開催されていたパリの街を船で旅行中の一組の母娘が訪れた。二人はそれまでインドを訪問しており、パリに寄ったのは博覧会を見物するためであった。しかし母親の体調は優れず、ホテルの部屋で寝込んでしまう。ホテル付きの医者に診せるが彼の手には負えない。娘は自分で医者を探すべくホテルを飛び出した。
漸く頼りになりそうな医者を見つけてホテルに戻ったときには既に数時間が経過していた。娘はホテルの従業員に母の具合を尋ねる。しかし彼は思わぬ言葉を口にした。
「お客様はお一人で宿泊されていらっしゃいますが」
そんな筈はないという彼女の訴えに彼はただ首を傾げるのみ。部屋に行けばわかると、娘は従業員らを連れて自室に向かった。だが、扉を開けて彼女は愕然とする。 壁紙や調度品……部屋の何から何までが異なっており、母親の姿は影も形もなかった。彼女が持つ鍵と鍵穴は一致する。ルーム・ナンバーを間違えたわけではない。
娘は母を診察したホテル付きの医者を問い質した。しかし彼もまた、「そのような方を診た覚えはありません」と否定。彼女はホテル中の人々に尋ねたが、誰一人としてそのような人が宿泊していた事実は知らない。異国で一人ぼっちになった娘は途方に暮れるばかりであった。
【解決編】
真相は次のようなものであった。母親はインドでペストに罹っており、ホテルに着いた直後に息を引き取った。だが万博の最中このような事実が知れ渡ったらパリの街中が混乱し、ホテルの営業は大打撃を被る。そこでホテルはパリ当局と共謀して、娘が外出している間に母親を別の場所に隔離し、突貫工事で部屋を改装、関係者全員で口裏を合わせて最初からそんな人物が存在しなかったかのように振舞ったのだった。
これはベイジル・トムスンの短編集"Mr. Pepper, Investigator "(1925)の中の1篇「フレイザー夫人の消失」(新潮文庫「北村薫のミステリー館」収録)が原典だった。また直木賞を受賞した推理作家・北村薫によるとコオリン・マーキーの「空室」(【新青年】1934年4月号掲載)も同趣旨の物語であり、さらにそれらの大本を辿るとパリ万博で実際にあった話だという。しかしいくらなんでも実話とは信じ難いので、一種の都市伝説みたいなものなのだろう。はっきりと原作者が特定出来ないということ自体、ミステリアスである。
アメリカの評論家アレクサンダー・ウールコットはエッセイ「ローマが燃えるあいだ」(1934)で「消えた貴婦人」について触れ、この話の出典は1889年のパリ万国博覧会開催中に発刊されたデトロイト・フリー・プレス紙のコラムであると書いている。 しかしウールコットが出典として挙げている記事は、調べてみると実際には存在しないのだという。
「フレイザー夫人の消失」はアルフレッド・ヒッチコック監督の映画「バルカン超特急」(1938)やウィリアム・アイリッシュの短編小説「消えた花嫁」(1940)、ディクスン・カーのラジオ・ドラマ「B13号船室」(創元推理文庫「幽霊射手」収録)の元ネタにもなっている。
そして「バルカン超特急」や「バニー・レイクは行方不明」を参考にして、ジュリアン・ムーア主演の映画「フォーガットン」(2004)やジョディ・フォスター主演「フライトプラン」(2005)が相次いで製作された。
さらに漫画「MASTER キートン」(作:勝鹿北星/画:浦沢直樹)の「青い鳥消えた」というエピソードが「バニー・レイクは行方不明」に酷似している。
これだけ多数のヴァリエーション(パスティーシュ)を生むということは、やはりそれだけ魅力のある物語なのだろう。僕も幼少期に読んだ「消えた母の秘密」を未だに覚えているのだから強烈な印象を受けたわけで、正にトラウマと言って差し支えない。どうしてこれほどまでに惹かれるのだろう?じっくり考えてみた。
自分のことを周囲の誰も覚えてくれていないという恐怖。ーそれは自分の死後も何事もなかったように世界が続いていくことへの畏怖の念でもあるだろう。
自分が愛し、親しくしている人々が、実は単に自分の幻想だけの存在なのではないかという恐怖。フランソワ・オゾンの映画「まぼろし」やテリー・ギリアム監督「未来世紀ブラジル」のラストシーンを想い出して欲しい。
結局これらは、人間の実在の不確かさ、生きることの意味への不安にも繋がっているのだろう。
2015年9月 8日 (火)
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2022年07月29日
昔は無茶苦茶な性知識がまかり通っていました。
「コーラで洗えば大丈夫」とかね。
近年の性教育本はかゆいところに手が届く作りで、子供たちが陥りがちな「誤解」を解くために様々な知識が与えられます。
よく見かけるのはこんな感じ。
【Q.】
「オナニーのしすぎでバカになったり、性器が黒ずんだり大きさや形が変わったりしませんか?」
↓
【A.】
「オナニーによるリスクは何ひとつありません。
外的刺激で性器が変色したり変形することはありえません」
【Q.】
「僕のペニスは小さすぎるのでは?」
↓
【A.】
「自分のペニスは上から見るせいでは?
ペニスは7cmあれば性交可能です。
巨根神話は嘘、女性はサイズを気にしないし、大きすぎても痛いだけ。
大きさよりも二人の気持ちが大事」
【Q.】
「生理中ならセックスしても妊娠しない?」
↓
【A.】
「生理中でも妊娠はありえます。
安全な日などありません」
【Q.】
「膣外射精で避妊できる?」
↓
【A.】
「カウパー腺液にも微量の精子が含まれているため、膣外射精では避妊はできません」
「子供が変なコンプレックスに悩まない様に」
「避妊はしっかりと」
という教育理念は素晴らしい。
…でもこれらは本当に正しいのでしょうか?
男性のオナニーは刺激が強いやり方や性交時とかけ離れたやり方を続けると、性交に支障が出るリスクが指摘されています。
また、継続的・反復的な力や刺激によって皮膚に変色や変形がもたらされることはよくあるのでは…?
月経中でも性交が刺激になって排卵する、というネコちゃんシステムな主張もあります。
しかし交尾排卵については生物系トンデモの女王・竹内久美子がヒトにもあると主張してるのですが、ソースは挙げず…この人はソースがある時は鬼の首取った勢いで掲げるのに。
また、子宮内膜が剥落して排出されている月経中の性交で受精や着床が可能とは思えず、次の排卵期まで精子が生き残れるとも思えません。
カウパー腺液に含まれる精子はあまりに微量で妊娠に十分とは言えないという説もあるし。
なのに性教育の場では子供たちの不安を解消するために過度に「大丈夫」を連発したり、妊娠を避けるためにリスクを強調しすぎてはいないですかね…?
勿論、子供の気持ちに配慮したり、レアケースまで考慮して予防原則の観点から妊娠のリスクを強調して性教育を行うこと自体にはそれなりに意味があるとは思います。
しかしこれらは本当に科学的根拠に基づいているのか、というと何だか怪しげ。
エビデンスがあるなら示してほしいものです。
巨根神話にしてもそうです。
ヒトのペニスは並外れて大きい【註】とされますが、性的二形(雌雄の違い)のある部位は性淘汰によって発達する筈…
つまり少なくともヒトが進化してきた時代においては、「女性がよりペニスの大きい男性を好んできた」というのは避けがたい結論なのです・゚・(つД`)・゚・
よくあるタイプの間違いに、事実命題から価値命題を引き出してしまう「自然主義的誤謬」(ヒュームの法則)があります。
「天然素材は自然だから良い」とかがそうですね。
「自然である」という事実から「良い」という価値観は導けません。
また「自然だから良い」の対偶を取ると「不自然だから悪い」となりますが、それだとチーズケーキもスマホもコンドームもウォシュレットも、近代医療や文明社会だって不自然だからダメってことに…。
この逆で、価値観から事実を引き出してしまう「道徳的誤謬」というのもあります。
「この世界には慈愛に満ちた神がいるべきだ。だから神はいる」とか、「男女は平等であるべきだ。だから男女に能力差などある筈がない」とかがそうですね。
被害者叩きの原因となる『公正世界仮説』もコレの一種です。
「善人は報われ、悪人は罰せられるべきだ」という価値観から「この世界はその様な仕組みである」という間違った事実を導き出してしまい、「不幸が起きたのはその人に非があったからだ」と被害者叩きをしてしまう訳ですね。
この性教育の「気にしなくて大丈夫」「避妊はしっかり」が事実を超えて行き過ぎてるのも道徳主義的誤謬に思えてなりません。
ところで…
懐疑主義者が主にUFOだの超能力だのといったメジャーなオカルトと戦ってる間に、割と盲点になってた自然派の中で無茶なトンデモが台頭してきちゃいました。
しかし近年になってその辺りを批判する人がようやく現れ、山田ノジル『呪われ女子に、なっていませんか? 本当は恐ろしい子宮系スピリチュアル』や雨宮純『あなたを陰謀論者にする言葉』といった好著が出版されたり。
後者については↓ココで扱っています。
『あなたを陰謀論者にしないための言葉』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/14365830.html
そして最近このジャンルにもう一冊、素晴らしい本が加わりました。
12人の専門家が書いた
『新生児科・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』
です。
子育て界隈も自然派からのスピリチュアルや反ワクチンなどが入り込みやすい危険な領域…
そこで子育てに悩む人たちの不安に寄り添い、わかりやすく科学的見解を説明した良書です。
自然派ママの間で流行中の「発熱時には頭にキャベツを被せる」のは医学的にどうのか、まで載ってる〜!
こういう本を読んでて痛感するのですが、医療関係者って反ワクとかについてのゴールが「トンデモを批判すること」ではなく、「患者に適切な医療を届けること」なんよね…
そのため、批判には必ずしも熱心でなかったり共存を図ろうとするところはやや歯痒いのですが…トンデモさんを見捨てることなく柔らかい態度で説得し続ける姿勢には本当に頭が下がるです。
…という訳でこの本、本当に素晴らしいのですが、ちょっとだけ気になる点が。
本書は母性神話を否定しています。
「母親なんだから子供を愛さねば、という偏見の押し付けよくない。父親も母親も子を愛せるし、父親も母親も子を愛せないこともある」みたいな話は政治的には確かにその通りだと思います。
しかし哺乳類は雌が妊娠出産と授乳を行う一方で、一般に雄は殆ど子育てに参加しません。
ヒトはその例外的な存在です。
そのヒトにしても、かつての進化適応環境(EEA)に於いて母親なしでの育児は極めて困難だったでしょうが、父親抜きでの育児はしばしばあったことでしょう。
女性は年に1人産むのがせいぜいですが、男性はパートナーを増やせばほぼ無尽蔵に子供を持てます。
そのためより多くの子孫を残すために男性はあちこちに種をばら撒きたがり、女性は頭打ちがあるので数より質に拘って相手を慎重に見定めようとする傾向にあります(ベイトマンの原理)。
ということは正妻でないのに妊娠した女性も多く、男性が逃げて完全ワンオペで育児をした女性や、充分な資源を回してもらえなかった女性が相当数いたことでしょう。
つまり母親による育児は必須ですが、父親による育児は必須ではなかった訳ですね(※これは「どうであるべきか」という価値観ではなく、「どうであったか」という事実について語ってるだけですよ?)。
この様な状況で、女性と男性が全く同じだけ子供を愛する様に進化してきたと考えるのはちょっと無理がないですか…?
母親は子供に対して父親よりも強い愛情を持つ進化的動機がある様に思えます。
実際、ちょろりとぐぐっただけでもこんな論文出てくるし。
【J-Stage】
『周産期におけるオキシトシン値の変化と 母親役割獲得過程の関連』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhas/15/1/15_42/_pdf/-char/ja
母性神話を解体するのは良いのですが、なんかこの辺、価値観から事実を導いちゃった道徳主義的誤謬では…?
とちょっぴり思ってみたり。
【註:ヒトのペニスは並外れて大きい】
ヒトのペニスは動物界でも並外れて大きいと言われており、ウマでさえ体躯と比較すればヒトよりごく控えめとする文献もありますが…
ウマは体躯を考慮に入れても大きく思えるし、イヌはヒトよりずっと小さい割にペニスは大きくないですか…? しかも亀頭球が膨らむし。
あとカメのヘミペニスがどう見ても圧倒的に巨大な件。
結局のところ、ヒトのペニスは「大型類人猿の中では」巨大、ということに過ぎないのでは?
それが「動物界一」などと語られるあたりが「巨根は誇らしい」という巨根神話の表れである様に思えたり。
2022年07月27日
ADHD云々でまたも話題の木下優樹菜ですが…
ネット上には「木下優樹菜の本名は『朴優樹菜』」という噂がこの16年間絶えることなくあります。
よくタピオカ絡み等のスキャンダルに便乗し、「あんなことやらかしたユッキーナはやはり在日だった!」的にヘイトスピーチの具にされてますが…
実際のところ、この噂にはどの様な根拠があるのか?
今回はそれを見ていきたいと思います。
ネトウヨさんのアレな主張は大抵、根拠レス。
たまに「今回は証拠付きやで! ドヤァ!」と出してきても勘違いだったり。
例えば…
◉【高槻中一少女殺害事件】
容疑者と姓名・年齢が一致する人物が帰化した旨の載った官報が発見される
詳しくは以下で。
『高槻中一少女殺害事件と現代の魔女狩り「在日認定」』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/10080346.html#more
◉【在日特権の公的証明】
福岡の市議がブログで『在日特権の公的証明を発見』、在日特権は『証明された例はほとんどないのが実態』だが『根拠を発見』と自慢。
→え、根拠薄弱やったって認めてるやん…
で、その根拠とは…
誰でも「外国に扶養家族がいる」と申告すれば扶養控除を受けられる、というだけ。
しかも実際には被扶養者が多いのはフィリピンとブラジルでした。
なのに拡散、二次引用・三次引用で「在日特権を詳細に解説!」など 、より過激で断定調に…
コレについては以下を参照。
【保守派が斬る!『ネット右翼の終わり』】
では今回の「根拠」はというと…
「素人時代に雑誌のストリートスナップに『朴優樹菜』の名で載ってた」
これオンリー。【※註】
しかしその割に卒アル等でも「木下優樹菜」だし、「朴優樹菜」名義のものは他にはひとつもありません。
普通に誤植やろコレ。
本人の字も癖が強くて誤読されそうだし。

◉新聞の見出しで「早慶戦引分」が「早慶戦31分」に
◉つげ義春の漫画『ねじ式』で「✕✕クラゲ」が「メメクラゲ」に
◉『ゲーメスト』誌上で「ハンドルを右へ」が「インド人を右へ」に
◉『ゲーメスト』で「ザンギエフのスーパーラリアット」が「ザンギュラのスーパーウリアッ上」に
…といった類のやつ。
ヒトはすぐにこういったミスを犯すものです。
・チェーンレターで「不幸の手紙」が「棒の手紙」に
・「夕刊」が「タモリ」に見える
・アナウンサーが「旧中山道」を「いちにちじゅうやまみち」と読み間違い
…とかね。
その後、ユッキーナ本人が在日説を否定しましたが、もちろん噂は収束しません。
まぁ陰謀論者はすぐに(都合よく)裏読みするし、NASAが否定しようが政府が否定しようが一度疑ったら信じない、魔女狩りシステムですからね。‥
「『木下』は在日がよく使う通名」という主張もあります。
しかし通名とは差別を受けない様に社会に溶け込むために、日本人によくあるポピュラーな姓にするのが通例(民族的アイデンティティーを守るために敢えて分かりやすくする場合もありますが…)。
木下さんが皆在日なら木下藤吉郎こと豊臣秀吉も在日かよ。
(…とか書いたけど、ネトウヨさんは「だから朝鮮出兵したり大阪城を築いたのだ」とか言い出しそうでコワい)
ではデータを見てみましょう。
【人名力 著名人名の語源―The Etymology of Famous Person Names―】『在日コリア人の通名ランキング』
http://blog.livedoor.jp/namepower/archives/1313550.html
これは1980年とデータが古いのですが、姓の割合の変遷は比較的ゆっくりなので参考にはなるでしょう。
これによると木下姓は通名ランキング20位にありますが、木下姓全体でコリア系の占める割合は2.4%に過ぎません。
そりゃそうだ、木下さんなんてそこらじゅうにいる一方、在日コリアンは44万人(人口の0.38%)しかいないんだし。
ちなみに安倍元首相銃撃事件の山上容疑者を『苗字が韓国系』と言ってるネトウヨさんがいますが、山上姓はこのランキングに登場すらしません。
一方、『NHK幹部や職員、出演者も多くがコリアン系』『サントリーのCMに起用されるタレントはほぼ全員がコリアン系の日本人』と言ってたDHC吉田嘉明会長の吉田姓は通名ランキング24位、吉田姓に占める割合は0.5%。
日本第一党党首にして元在特会会長の桜井誠は本名「高田誠」で通名ランキング48位、高田姓に占める割合は1.0%です。
しかもネトウヨさんはよく「在日は名前の漢字が左右対称」とか言うけど、吉田も高田も左右対称だし。
ちなみに上記サイトには「通名に使用する漢字の上位10個」も載ってるのですが、そのうち左右対称なのは6個。
姓は大抵は2文字の組み合わせなので、両方とも左右対称な姓はさらに少なくなります。
おまけに日本人の約3割は左右対称なんですけど。
『ネトウヨ「苗字が左右対称の漢字は在日」→現実「日本人でも約30%は左右対称な漢字の名字」』
https://blog.goo.ne.jp/ngc2497/e/7dd33582338931e05817e6dcd71c57a9
…しかしいくら事実を重ねたところで、こういうことを言い立てる人たちは意に介さないかもしれませんね。
YAHOO!知恵袋とかえらいことになってます。
【YAHOO!知恵袋】
『木下優樹菜の本名が朴優樹菜って本当ですか?』
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11228179636
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sos********さん
2020/7/13 19:08
何か字が汚い説を必死になって広めてる人がいますが、ネットでこれだけ「朴」説が広まっているんであれば、雑誌で誤認があったことをその雑誌の編集部なり出版社なり、記事を書いた本人が出てきて訂正してもいいと思うんですよね。
「朴」だと何か都合が悪いんだろうな…と思われてもしょうがないですね。
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sos********さん
2020/7/14 16:32
ひとつあとの回答者さんが画像を出してますが、上手い字ではないにしてもとても「朴」とは読めない気がします。
その後帰化をしているのならば立憲民主党(?)の福山(陳)哲郎議員のように記録があるはずです。
そもそも、重要なのはこの人が取っている行動がとても普通の人とは思えない、何とも言えない「下層臭」があるところだと思います。木下なのか朴なのかなんてことは二次的な問題です。
そのいかにもな「下層臭」が、朝鮮民族的な生き方と一致しているからこそ「朝鮮人説」が出てくるわけで。
私の母親の父親、私から見て祖父ですが早世しているので会ったことはありませんが、いずれにせよ食事時に行儀が悪い子供に対しては「朝鮮人みたいな食べ方するな!」と言って叱ったらしいですよ。
「朴」説がデマだったとしても、この人の下層臭が消えるわけではありません。
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「朝鮮民族かどうかはどうでもよいが、朝鮮民族っぽい生き方をしてるトコがアウト」ってコト…?
朝鮮民族かどうか気にしない振りして思いっきり気にしてますね。
「私は差別と黒人が嫌いだ」を地で行くスタイル。
あとこんな質問も。
【YAHOO!知恵袋】
『某木下さんが朴疑惑を否定してるみたいですが彼女に限らずなんで在…』
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12263668392
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ID非公開さん
2022/6/22 1:23
4回答
某木下さんが朴疑惑を否定してるみたいですが
彼女に限らず
なんで在日は国籍を隠すんですか?
自分の国に誇りはないんですか?
日本人がいいんですか?
理解出来ません
流行、話題のことば・67閲覧
共感した
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…こういった「この人は在日なのに何でそれを隠すの?」式の質問は『多重質問』という誤謬です。
例えば「あれ? 君、万引きはやめたの?」という質問は、イエスで答えてもノーで答えても「万引きしてた」ことを認めることになってしまいます。
それと同じで、コレどう答えても在日認定は確定やん。
在日であることが前提なので、否定しても在日認定。
本人が肯定したらもちろん在日認定。
どちらに転んでも結果が同じで反証する方法がない「反証可能性のない議論」でもありますね。
通用する筈のないロジックを使う人たちは流れ流れてこういうトコに吹き溜まってるんだな~…。
【※註:これオンリー】
強いて言えばチョッパリピースと結び付けたものもありますが、チョッパリピース自体がデマだし。

詳しくは↓この辺りを参照。
【脱「愛国カルト」のススメ】
『いいかげん「チョッパリピース」なんてデマを信じるのはやめましょう』
2022年07月25日
心理学者のハリー・ハーローはこんな実験を行った。
生まれたてのアカゲザルを母親から引き離し、2体の「代理母」と過ごさせる。
代理母のうち、一体は針金製。
胸には哺乳瓶が取り付けられ、ミルクが出る様になっている。
もう一体の代理母はタオル製。
タオル母には哺乳瓶は付いていないが、ふかふかと柔らかい。
すると何が起こったか?
仔ザルはミルクをくれる針金母ではなく、ずっとタオル製の母親にしがみついていたのである。
ミルクを飲む時だけ針金母のところに行き、すぐに走ってタオル母に戻るのだ。
彼は「接触」が重要な変数であることを見出した。
仔ザルには接触が必要なのだ。
ふかふかとして暖かい存在を抱きしめ、抱きしめられることが。
そしてそれは給餌よりも大切なことであるらしい。
我々がハグなどのスキンシップを好むのも、根源的にはこれと同じ理由であると思われる。
孤独に震え、温もりを求める仔ザルは、私やあなたの心の中にもいるのだ。【註1】
この実験から教訓を引き出すなら、「子育ての際にはできるだけ赤ちゃんを抱きしめてあげましょう」ということだと現代に生きる我々なら誰もが思うだろう。
だがハーローの結論は別の方角を向いていた。
彼は「母親による授乳はあまり重要ではない」と考え、女性が積極的に社会進出することを薦めた(当時はフェミニズム台頭の時代だった)。
しかし後に「代理母に育てられた仔ザルは攻撃的で暴力的で反社会的に育つ」ことが判明。
そこでハーローは、代理母が自動的に揺れる仕掛けを組み込んだ。
仔ザルをあやし、遊ばせる様に。
事態はやや改善されたが完全ではなかった。
ハーローは実験を続け、「一日に30分、本物の母ザルと一緒にさせる」ことで仔ザルは正常に育つことを発見した。
接触・動き・遊び。
愛にはこの3つの変数が関係しており、この3つを与えてやれば、霊長類の欲求は満たせるのだ、と彼のチームは主張した。
こうして彼は自分の結論を守ることができた。
30分のケアなら女性の負担になることもない、と。【註2】
…それから数十年、現在では孤独なサルの物語はどう扱われているのだろうか?
アメリカのコメディードラマ『ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則』にその片鱗を見ることが出来る。
主人公の一人、レナードは合理的すぎる冷淡な母親に育てられ、そのことについて複雑な感情を抱える青年だ。
彼は小学生の時にハグ・マシーンを製作した、と語る。
いつでも自分を抱きしめてくれる機械を。
その話を聞いたヒロイン、ペニーは「そんな悲しい話、初めて聞いた…」と絶句する。
だがレナードは続けてこう言う。
「一番悲しかったのは、パパも使っていたことだ」
…機械化されたハグはギャグのネタになるほど文化に根を下ろしたらしい。
ハーローの一連の実験はかなり有名だが、実際に使われた代理母の画像は不思議と目にしない。
「針金でできている」とか文章ではよく見るのだが、一体どんなデザインだったのか?
以前は探すのも一苦労だったが、ネットの発達した現代ではぐぐればすぐに見つかる。
えっ、こんなんなの!?


…だが「こんなん」であっても、仔ザルは明らかにタオル母に愛着を示した。
「空腹時にはミルクを、そうでない時は居心地の良い場所を求めているだけ」では決してない。
タオル母のデザインを少し変えただけで怒る。
仔ザルに向かって棘を突き出したり、冷水を浴びせる「悪魔的な」タオル母も作られたが、仔ザルはどれほど虐待されようともタオル母から離れようとはしなかったという。
ハーローの一連の実験はその残酷性を非難され、動物権利運動のきっかけとなった。
ハーローは挑発的な物言いをする人間で、動物嫌いだったらしい。
彼は実験に使うサルを少しも愛していないと公言した。
実験のせいで正常に育たなかった雌ザルは正しい交尾姿勢を取らなかったので、ハーローは実験用の仔ザルを得るために雌ザルを拘束具に固定し、雄ザルをけしかけて妊娠させた。
彼はこの器具を「レイプラック」と呼んだという。
ヒトも幼少時に愛情が不足するとその影響はしばしば大人になっても続く。
おそらくは幼少時の親との接触不足から、一時の温もりと肌の接触を求め、明らかに「そいつはやめとけー!」というパートナーたちと次々に性的関係を持つ女性はどこにでもいる。
だが彼女たちにはサルと違う点もある。
むしろこのことが悲劇を拡大させているとも言えるのだが──彼女たちは正しい交尾姿勢を取ることはちゃんと出来るのだった。
【参考】
あなたの中にもサルがいる、というテーマのエントリは他にも書いている。
公平性を求める心─あなたの中の「キュウリを投げるサル」
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/10241126.html
【付記】
今回の元ネタはローレン・スレイター『心は実験できるか―20世紀心理学実験物語』(邦訳2005年)。
興味深くも危険な本である。
著者は歴史的に有名な10の行動実験をおそるべきフットワークで取材しているが、「ドラッグの効果が知りたいからキメてみる」とか、いろいろ頑張りすぎ。
著者の個人的な感想や妄想がかなり混入しているのでその辺を割り引いて読む必要がある。
このテーマだけを扱った『愛を科学で測った男―異端の心理学者ハリー・ハーロウとサル実験の真実』 (邦訳2014年)という本も後に出たが未読。
【註1: 仔ザルは、私やあなたの心の中にもいる】
「あなたの心に淋しがりの仔ザルがいる」という考えかたは、実のところ「あなたの心の中の無垢な子供の部分、『インナーチャイルド』を抱きしめてあげましょう」といったスピリチュアルな主張と紙一重である。
私にとって前者は受け入れ可能だが、後者は鳥肌が立つ。
口当たりの良い表現でお手盛りの救済を得るなどという芸当は私にはできそうもない。
だが、ほとんど同じメッセージがハーローの実験という形でなら受け入れ可能になる。
両者は厳密には同じではない。
ハーローの実験は実証的で、インナーチャイルドほど無根拠ではない。
心の中に仔ザルがいるという捉え方は「それを受け容れましょう」といった価値判断を含まない。
しかし同時に「結局、人間は自分の信じたいことしか信じない、勝手な生き物だな」ということも痛感する。
自分の世界観に合ったモデルだけを採用しているのだ。
これは科学的思考の放棄ではないし、「科学は科学を信じたい人間の願望の反映に過ぎない」と主張しているわけでもない。
そもそも私が科学的世界観を採用したのはそれだけの充分な根拠があったからだ。
これはむしろ「イデオロギーは情報の取捨選択に影響を及ぼす」という警告として受け取っていただきたい。
要するに私は「ポジティブシンキングとかうさんくせぇ」という偏見を持っているのだ。
だがこの偏見は必ずしも間違ってはいない。
【註2: 30分のケア】
ヒトの子供も30分のケアで大丈夫なのだろうか?
私は両親の愛情を疑ったことはない。
だが両親は共働きで多忙な人で、愛情の質はともかく、量についてはいささか不十分だったのではないか、と思わざるをえない。
この件については妹とも話し合い、同じ結論に達した。
我々二人には明らかに奇妙に欠落した部分がある。
それが両親との接触時間の不足のみによるものだとは思わない。
だが遠因のひとつではあると思う。
そのことで両親を恨もうとは思わないが、残念なことではある。
失われたものはあまりに大きいからだ。
少なくとも私にとっては。
2022年07月23日
ネトウヨさんのデマを検証する良質サイト『ネトウヨの寝耳にウォーター』が更新され、2回分けで「食糞民族とは何か」を扱っています。
【ネトウヨの寝耳にウォーター】
https://aiko-hj.blog.jp/archives/33366285.html
【ネトウヨの寝耳にウォーター】
『食糞民族とは何か【後編】』
https://aiko-hj.blog.jp/archives/33558621.html
いや~素晴らしい!
まさにトンスル・食糞デマに対する最終解答とも言うべき内容…ボリュームもものすごく、大量の文献にあたった苦労がしのばれます。
という訳でこのアクションに勝手に賛同し、同趣旨のネット記事をご紹介。
【mixi日記】
『日本人がトンスルを馬鹿にするのはブーメランですぞえ?』
ネトウヨさんが徒党を組んでイイネを押し合い、コメント上位を独占するmixiに於いて、最も熱心にヘイトスピーチ反対を叫び続けている方でもあります。
そのためミクウヨさんたちに目を付けられ、むちゃくちゃディスられてるのにキレない煽り耐性も凄い。
mixiにログインすると他の日記やつぶやきも読めるので、IDをお持ちの方は是非。
ついでに手前味噌ではありますが、当ブログのトンスル・食糞デマを扱ったエントリ。
『糞喰い民族とは誰のことだったのか ートンスル伝説ー』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/10239569.html
先人の皆様によって書かれたトンスル・食糞デマ反論記事をまとめた内容になっています。
ネトウヨさんたちはいまだにこれらのデマをガチ信じしてる様ですが、そろそろそれが色んな意味で恥ずかしい行為だと気付いていただきたいものです…が、なかなか気付かないんでしょうね〜…。