2022年03月
2022年03月31日
さて、ここしばらく連続で石川幹人について批判したり、NHKの『ヒューマニエンス』に見られる問題を扱ってきた訳ですが…
遂に『ヒューマニエンス』の「“嘘” ウソでわかる人間のホント」(2022年3月10日放送)という回にかしこブレーンとして石川幹人が出演。
これは以前に出演していた『チコちゃんに叱られる!』の様な雑学バラエティーではなく、れっきとした科学教養番組なので、NHKはさらにギルティ―。
きっちり 「進化心理学がご専門の明治大学教授 石川幹人さん」 と紹介されてました。
さらに今回も、
◉『もし日常的にウソをつくと、そういった協力関係が破綻してしまいまして、集団の活力を失ってしまいます』
◉『(ヒトは狩猟時代に)少人数の集団で協力して生活をしていました。食べ物も少ないのでお互い協力して分担してうまく狩猟や採集ができると。そういう集団が生き残った、ということになるんですね。どんな集団が生き残るかというと、やはり他者を信頼して嘘をつかないと。こういうことが大事だっていうことなんです。』
◉「そういった嘘に関するバランスの良い人々が協力集団を作って、そういった協力集団が今日まで生き延びてきて、我々はそういった人々の末裔だという事ですね」
などと発言。
だからそれ群選択やて。
詳しくはこの↓エントリを参照。
【ありとあらゆる全般的ぐちゃぐちゃ】
『石川幹人が「進化心理学の第一人者」になってる件 前編』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/13981620.html
今回はさらに「嘘の起源は一万年前の農耕革命によって人口密度が上がり、知らない人と付き合いだしたからでは」的な発言も。
…いや、嘘はチンパンジーかてつくやん?
【THE SANKEI NEWS】
『【もう一人のあなた 嘘の構図(4)】チンパンジーは仲間をだましニヤッと笑った… 他者の心が分かる知性と表裏一体の「進化の副産物」』
https://www.sankei.com/article/20150409-4GFIPFIBOJNMLDDKJ25ZDU3M4I/?outputType=amp
例えば、クリストファー・ライアン&カシルダ・ジェタの『性の進化論 女性のオルガスムは、なぜ霊長類にだけ発達したか?』では「一夫一妻制の起源は農耕革命以降」という、ちょっと見は似た仮説が唱えられているのですが…
こっちは「ヒトは自然状態では一夫多妻制や乱婚制がデフォ、一夫一妻制は農耕革命以降の文化的流行に過ぎない」という話で、ここ1万年の間の急速すぎる進化は前提になってません。
地質学的にはごく最近のことまで全て選択で説明しちゃうのは、竹内久美子くらいだと思ってたのに…石川幹人よ、お前もか。
ヒトは表情のわかりやすい顔を進化させ、よりコミュニケーションの得意な動物になりました。
そしてドーキンスとクレブスによれば、そもそもコミュニケーションの本質は「信号伝達」ではありません。
そこには常に嘘によって利益を得たいという誘惑があります。
しかしコミュニケーションの本質は「欺瞞」でもありません。
それは正直な信号伝達が利益になるなら正直さを、欺瞞が利益になるなら嘘を選ぶ「操作」なのだ、というのが二人の結論でした。
つまり「嘘」なんてのは、初めからコミュニケーションに織り込み済みなのですね。
なので私は「嘘の起源は1万年前」とか言われても信じる気になれません。
そして「嘘を見破るのが苦手」な我々はどうすればよいのか? というクエスチョンに、石川幹人が持ち出した答は…『懐疑の精神』。
…一応は懐疑主義団体ASIOSに名を連ねてるとはいえ、超絶おまゆう。
ちなみに他のかしこブレーンの話は面白かったです。
まずは文教学院大学の村井潤一郎教授のお話。
◉嘘と感じる理由は、
・状況証拠 40%
・その人への知識 30%
・行動的手がかり 7%
で、しぐさ等の行動的手がかりはあまり使われない
◉「ヒトが嘘を見破る正確さ」は、2000年代に出たメタ分析による有名な論文によれば54%
◉嘘をついてる時に「視線が増える」という研究もあるが、減るという研究もある
◉教授が大学生にアンケート調査した結果では、一日に嘘をつく回数は男性1.57回・女性1.96回。
しかし嘘を言われたと感じるのは男性0.36回・女性0.36回。
つまり嘘の多くはバレてない。
◉ヒトは初期条件としてコミュニケーションの相手が正直であると仮定する(トゥルース・デフォルト)。
「トゥルース・デフォルト」は興味深いですね。
そう、問題は「何故ヒトは嘘をつくか」ではなく、「何故ヒトはもっと嘘をつかないのか」とか「何故ヒトは相手の話をとりあえず真実と見做すのか」の方なんですよ。だって嘘はコミュニケーションの本質に組み込まれてるのだから。
こんな優秀な人が石川幹人の不誠実さを見抜けなかったのも謎ですが、まぁ嘘を見抜ける確率は54%でしかないらしいし、仕方ないですね。
あと京都大学の阿部修士准教授によるコイントス実験の話が面白かったです。
被験者は結果を心の中で予想してからコイントスし、当たってかどうかを申告する…これを繰り返す、というシンプルな実験。
この実験が巧みなのは、嘘をついてるかが判る点です。
コイントスの予想的中率は50%なので、それより大幅に多く的中申告する人は嘘を言っている蓋然性が高いですよね。
そして報酬系である側坐核の働きが高い人は、的中率が高いのだそうです。
つまり報酬に対する感受性が高い人ほど嘘をつきやすい、ということ。
…コレ、ESP擁護派の石川幹人は、
「側坐核の働きが高い人は確率を超えて的中率も高い…つまり側坐核こそ超能力の源泉なんだよ!」
とか解釈しなくていいんですかね?
あとこの回、ちょけた織田裕二が「嘘はついてません、という嘘をつく」といった小ギャグを噛ましまくってましたが、メタ発言のつもりだったんでしょーか。
それよりも、先程の「チンパンジーも嘘をつく」という話で貼ったリンク先…
アレは「チンパンジー 嘘」でぐぐるとトップに表示された記事なのですが、
◉媒体が産経新聞
◉研究してるのが京大霊長類研究所、コメントしてるのが松沢哲郎
というところに戦慄。
産経新聞社は歴史修正主義的なトンデモ企業。
そして松沢哲郎って…研究資金5億円の不正支出で懲戒解雇された上、名門・京大霊長類研を解散に追い込んだ戦犯やんけ~!
ちなみに京大前の古書店に、この人が他の研究者に贈ったサイン入り著者謹呈本があったのでGET。
ため書きがあるので、叩き売った研究者の名前も丸わかり…。
嘘を語る番組にあまり正直と思えない人が出ていたので調べていくと、こちらのソースにも背後に嘘や裏切りが…!
地獄。
こっちの方が織田裕二のギャグより遥かにメタ構造でした~。
【オマケ】
『ヒューマニエンス』、「“顔” ヒトをつなぐ心の窓」( 2021年12月2日放送)という回では
「嘘は微表情で見抜ける」的な話をしていたのにねぇ……
そっちの方では元・京大総長の山極寿一が「ヒトは白目があるから表情によるコミュニケーションが発達した」的な話をしてました。
こういうのはお互いがお互いを強化し合うサイクルだと思いますが、それでも順番から言えば「ヒトは表情によるコミュニケーションを発達させる方向に進化したから、視線方向が分かりやすい様に白目が目立つようになった」の方が適切では…逆~!
そういやこの人も京大霊長類研の出身だな~…
(02:26)
2022年03月30日
…さて、前回ワカシムという名が出たのでちょっとその辺の話を。
その前に。
ここしばらく、私自身が尊敬してやまない人々に結構、弓曳いちゃってる訳ですが、コレほんとに本意じゃないのよ。
でもね、科学と懐疑主義の自浄作用として、あるいは記録として、誰かがやらなきゃダメな訳ですよ。
とは言え、そもそも私みたいに知性に限界がめちゃめちゃある人間がこんなことするの、無理あるし。
かといって本当に知的な人にこんなことにリソースを割いていただくのも何だし。
私としても無理してやってることなので、「こいつレベル低っ!」と思われる向きは、もっと知的レベルの合う場を探した方が賢明かと。
発表してる以上 責任は取りますが、あまり高度なことを期待されても困っちゃう。
で、ワカシムという人なのですが、いろいろ書きづらいのです…
何しろご本人のサイトから何からほぼ消えてて、記憶に頼らないと仕方のない部分が多く、ソースが示せないんですよね…でも頑張る。
ASIOS公式サイトの「メンバー情報」によれば↓こう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
若島利和(Wakashima, Toshikazu/客員)
ASIOS創立時副会長。2009年から客員に移行。個人サイト「懐疑論者の祈り」を運営。2011年に重篤な若年性脳梗塞で入院後、奇跡的なレベルで回復したが半隠居中。現在、一般社団法人超常現象情報研究センターの事務局長を務め、超常現象とされる主張の信頼度を査定し、国内外の関連情報を収集整理している。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
…ということで、大病をされたのですね。
サイト『懐疑論者の祈り』も消滅してしまいました。
mixiもやっておられましたが、今は廃墟状態です。
そのmixi、時々拝読していたのですが、ある時、急に
「日本は韓国にやられまくってます! これは妻とも話し合った結論です」
みたいなことを書き出され…
その時は、まぁネトウヨさんみたいなのではなく、単に韓国の政策を批判したものかと思っていたのですが…
前回もふれた「ながぴぃ」こと長澤裕は↓こう指摘しています。
【Skeptic's Wiki】
『「ながぴい」こと長澤裕による「ASIOS」の項』
http://sp-file.qee.jp/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?page=ASIOS
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
…ということで、大病をされたのですね。
サイト『懐疑論者の祈り』も消滅してしまいました。
mixiもやっておられましたが、今は廃墟状態です。
そのmixi、時々拝読していたのですが、ある時、急に
「日本は韓国にやられまくってます! これは妻とも話し合った結論です」
みたいなことを書き出され…
その時は、まぁネトウヨさんみたいなのではなく、単に韓国の政策を批判したものかと思っていたのですが…
前回もふれた「ながぴぃ」こと長澤裕は↓こう指摘しています。
【Skeptic's Wiki】
『「ながぴい」こと長澤裕による「ASIOS」の項』
http://sp-file.qee.jp/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?page=ASIOS
若島利和氏は「一般社団法人潜在科学研究所」事務局長の肩書きで、「幸福の科学」が出版する「ザ・リバティ」2014年10月号において、「健全な懐疑派は強引な否定論に批判的」というタイトルのインタビューに応じている。
また、「懐疑論者の祈り」のサイトには以下のような懐疑論とどういう関係があるのかよくわからない内容のコンテンツもある。
「フジテレビ韓国偏向問題抗議及び周知デモの実態と正当性」 平成23年12月10日 ワカシム(HN)以下15名, 懐疑論者の祈り
このうち特に「添付⑥:抗議資料『フジテレビドラマに散見される反日演出』」というのは、懐疑論とは本来相容れない内容だと思う。
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…「フジの偏向ガ―!」ですか…わりとわりかしですね~…
で、mixi絡みで奥様の話が出たので触れておくと、この方もASIOSメンバーです。
ASIOS公式サイトの「メンバー情報」によれば↓こう。
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若島美穂(Wakashima, Miho/客員)
Webサイト「気になる資料室」の元運営者。旧名・那須野。2008年12月に若島利和と結婚。多忙につき2009年4月より客員に移行した。一般社団法人超常現象情報研究センター会員。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
この方は「NAZOO」名義で『気になる資料室』というサイトを運営されていましたが…こちらも今はありません。
そしてこのサイト、めちゃめちゃ面白かった!
特に様々なオーパーツの正体を暴くページはそのまま出版していただきたいレベルで、失われたのは本当に痛手。
さらに「ミイラ船 良栄丸」「ソニー・ビーン一家」などの奇談も充実。
特に「タイタニック号とオリンピック号のすり替え説」はここで初めて知りましたが、あまりにも都市伝説っぽい話なのでにわかには信じられず、当時ぐぐってみたけど何も見つからなかった覚えがあります。
このサイトが日本で最初の情報だったのでしょう。
しかし結局のところ、タイタニック号すり替え説は根拠となる「二隻は窓の数が違う」という情報がガセでした。
どちらの船も途中で窓の数が変更されたため、窓が少ない時期と多い時期があった様です。
またソニー・ビーンの方も、実在を証明する書類の類が見つからないという謎…
結構やらかしてますね。
『気になる資料室』はリンク切れになりましたが、分室だけ残ってました。
【気になる資料室 〔分室〕 職員のサボリ部屋】
http://nazoo.blog18.fc2.com/
そしてワカシムの『懐疑論者の祈り』も一部が↓ミラーで残ってました。
【懐疑論者の祈り】(ミラーサイト)
https://geolog.mydns.jp/www.geocities.co.jp/wakashimu/
ながぴぃが指摘した部分は↓ココ。
【懐疑論者の祈り】
[フジテレビ韓国偏向問題抗議及び周知デモの実態と正当性
添付⑥:抗議資料『フジテレビドラマに散見される反日演出』]
上記リンク先からは入れませんが、下記URLから入れる模様。
https://geolog.mydns.jp/www.geocities.co.jp/wakashimu/hoki06.html
そしてココ↓によると…
【懐疑論者の祈り】
『プロフィール』
https://geolog.mydns.jp/www.geocities.co.jp/wakashimu/prof/prof.html
…職業犯罪者という異例の出自。
ちなみにASIOSは原田実や故・志水一夫もリサーチ会員です。
原田実については以前に扱いました。
この方は「NAZOO」名義で『気になる資料室』というサイトを運営されていましたが…こちらも今はありません。
そしてこのサイト、めちゃめちゃ面白かった!
特に様々なオーパーツの正体を暴くページはそのまま出版していただきたいレベルで、失われたのは本当に痛手。
さらに「ミイラ船 良栄丸」「ソニー・ビーン一家」などの奇談も充実。
特に「タイタニック号とオリンピック号のすり替え説」はここで初めて知りましたが、あまりにも都市伝説っぽい話なのでにわかには信じられず、当時ぐぐってみたけど何も見つからなかった覚えがあります。
このサイトが日本で最初の情報だったのでしょう。
しかし結局のところ、タイタニック号すり替え説は根拠となる「二隻は窓の数が違う」という情報がガセでした。
どちらの船も途中で窓の数が変更されたため、窓が少ない時期と多い時期があった様です。
またソニー・ビーンの方も、実在を証明する書類の類が見つからないという謎…
結構やらかしてますね。
『気になる資料室』はリンク切れになりましたが、分室だけ残ってました。
【気になる資料室 〔分室〕 職員のサボリ部屋】
http://nazoo.blog18.fc2.com/
そしてワカシムの『懐疑論者の祈り』も一部が↓ミラーで残ってました。
【懐疑論者の祈り】(ミラーサイト)
https://geolog.mydns.jp/www.geocities.co.jp/wakashimu/
ながぴぃが指摘した部分は↓ココ。
【懐疑論者の祈り】
[フジテレビ韓国偏向問題抗議及び周知デモの実態と正当性
添付⑥:抗議資料『フジテレビドラマに散見される反日演出』]
上記リンク先からは入れませんが、下記URLから入れる模様。
https://geolog.mydns.jp/www.geocities.co.jp/wakashimu/hoki06.html
【懐疑論者の祈り】
『プロフィール』
https://geolog.mydns.jp/www.geocities.co.jp/wakashimu/prof/prof.html
ちなみにASIOSは原田実や故・志水一夫もリサーチ会員です。
原田実については以前に扱いました。
【ありとあらゆる全般的ぐちゃぐちゃ】
『原田実の微妙なポジション』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/12835457.html
志水一夫は「夜帆」という名でmixiをやっておられましたな。
優れた著作から懐疑主義者だと思っていたのですが、亡くなられた時の山本弘のコメントで実はビリーバー側の人物であったことを知りました。
まぁどの様な信念を持っていようが、事実と根拠に基き論理的に考え、不適切な仮説をちゃんと排除できるなら文句はないです。
志水一夫はそういう人物だったし、そういう意味では懐疑主義者であったと思います。
…が、原田実・志水一夫は素晴らしい仕事をしていながら、元「つくる会」会員なんだよなぁ…。
二人ともビリーバー出身という異例の経歴だし。
そしてワカシムも異例の経歴に嫌韓という極右属性…この界隈、何かあんのか…?
全方向に喧嘩を売り過ぎたのでちょっとフォロー。
志水一夫はカメラを「キャメラ」、キャスターを「アンカーマン」と表記するなど、言葉に神経質な人でした。
それが女性アイドルや女優の名を表記する時は「○○さん♡」とか書いてて、おたくへの同属嫌悪でぞわっとしたものです。
…が、その辺はガチガチの科学主義&左寄り、という、志水一夫の対極にいる山本弘も同様で、トンデモさんを嘲笑する時に
「ぎゃはははは!」とか書いてるのにぞわぞわ。
まぁネット用語とか多用してる私も誰かに同じ目で見られてるんだろうけど。
あ、フォローのつもりで余計に敵を増やしてしまいましたかね?
でも山本弘への尊敬の念はガチですよ!
この方もご病気されてるので、これまで様々な作品で楽しませていただいたお礼に、一万円くらいなら余裕でカンパしたい…
どっかで課金できないんですかね?
ご本人は覚えておられないでしょうが、某イベントの打ち上げで一緒に無料の素麺(通称フリーソーメン)を食べたり、隣の席で一つ皿の料理をつつき合った仲だし。
あの時は「うわぁ、コレ実質ディードリットと間接キスやんけ!」とどちゃくそ興奮しましたよ!(←クソバカ)
政治が絡む問題は難しいものです。
先ほど触れた原田実に関する日記を読んでいただければ分かる様に、ともに超有能な懐疑主義者である山本弘と原田実の間でも、南京事件については意見が一致しません。
価値観が人それぞれなのは当然としても、事実を巡ってすら一致しないのです。
歴史修正主義者やトンデモさんは引き分け狙いで両論併記に持ち込もうとするため、本来はこういう扱いはしたくないのですが、山本弘と原田実のどっちが正しいにせよ、片方は間違ってる訳です。
名うての懐疑主義者と言えども、イデオロギーの影響は拭い難いものなのですね。
払拭しきれないまでも、せめてそのことには我々は自覚的になるべきでしょう。
【オマケ】
『懐疑主義者の祈り』ロゴ部。

…うわぁ。
単なる差し色かと思いきや、よく見たら日の丸やん。
さすが懐疑主義にイデオロギーを持ち込んでいる、と指摘されるだけのことはありますね!
『原田実の微妙なポジション』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/12835457.html
志水一夫は「夜帆」という名でmixiをやっておられましたな。
優れた著作から懐疑主義者だと思っていたのですが、亡くなられた時の山本弘のコメントで実はビリーバー側の人物であったことを知りました。
まぁどの様な信念を持っていようが、事実と根拠に基き論理的に考え、不適切な仮説をちゃんと排除できるなら文句はないです。
志水一夫はそういう人物だったし、そういう意味では懐疑主義者であったと思います。
…が、原田実・志水一夫は素晴らしい仕事をしていながら、元「つくる会」会員なんだよなぁ…。
二人ともビリーバー出身という異例の経歴だし。
そしてワカシムも異例の経歴に嫌韓という極右属性…この界隈、何かあんのか…?
全方向に喧嘩を売り過ぎたのでちょっとフォロー。
志水一夫はカメラを「キャメラ」、キャスターを「アンカーマン」と表記するなど、言葉に神経質な人でした。
それが女性アイドルや女優の名を表記する時は「○○さん♡」とか書いてて、おたくへの同属嫌悪でぞわっとしたものです。
…が、その辺はガチガチの科学主義&左寄り、という、志水一夫の対極にいる山本弘も同様で、トンデモさんを嘲笑する時に
「ぎゃはははは!」とか書いてるのにぞわぞわ。
まぁネット用語とか多用してる私も誰かに同じ目で見られてるんだろうけど。
あ、フォローのつもりで余計に敵を増やしてしまいましたかね?
でも山本弘への尊敬の念はガチですよ!
この方もご病気されてるので、これまで様々な作品で楽しませていただいたお礼に、一万円くらいなら余裕でカンパしたい…
どっかで課金できないんですかね?
ご本人は覚えておられないでしょうが、某イベントの打ち上げで一緒に無料の素麺(通称フリーソーメン)を食べたり、隣の席で一つ皿の料理をつつき合った仲だし。
あの時は「うわぁ、コレ実質ディードリットと間接キスやんけ!」とどちゃくそ興奮しましたよ!(←クソバカ)
政治が絡む問題は難しいものです。
先ほど触れた原田実に関する日記を読んでいただければ分かる様に、ともに超有能な懐疑主義者である山本弘と原田実の間でも、南京事件については意見が一致しません。
価値観が人それぞれなのは当然としても、事実を巡ってすら一致しないのです。
歴史修正主義者やトンデモさんは引き分け狙いで両論併記に持ち込もうとするため、本来はこういう扱いはしたくないのですが、山本弘と原田実のどっちが正しいにせよ、片方は間違ってる訳です。
名うての懐疑主義者と言えども、イデオロギーの影響は拭い難いものなのですね。
払拭しきれないまでも、せめてそのことには我々は自覚的になるべきでしょう。
【オマケ】
『懐疑主義者の祈り』ロゴ部。

…うわぁ。
単なる差し色かと思いきや、よく見たら日の丸やん。
さすが懐疑主義にイデオロギーを持ち込んでいる、と指摘されるだけのことはありますね!
(05:47)
2022年03月29日
石川幹人シリーズ、4回目。
…という訳で、石川幹人はかなりのトンデモさんなのですが…この人、一応「懐疑主義者」ってコトになってます。
出版社のサイトには、『超心理学を例にした疑似科学研究』を続けている、とあります。
https://www.sunmark.co.jp/detail.php?csid=3907-8
ちなみに進化心理学系だと『だまされ上手が生き残る 入門!進化心理学』『人は感情によって進化した 人類を生き残らせた心の仕組み』といった著作もある様です。
さらに文科省科学研究費の支援を受けて運営されているサイト「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」の統括研究員も。
なお、このサイトは菊池誠によって批判されています。
まぁキクマコ先生も911以降、福島の安全をやたら強調したり、発言が右傾化したり、といろいろありますが、それはさておき。
あと石川幹人は日本最強の懐疑主義団体「ASIOS」のリサーチ会員なんよね…
ところが石川幹人への評価をめぐり、内紛が勃発。
「ながぴい」こと長澤裕が脱退してしまいます。
その辺りの経緯は↓この辺を参照。
【Skeptic's Wiki】
『「ながぴい」こと長澤裕による「ASIOS」の項』
http://sp-file.qee.jp/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?page=ASIOS
『ながぴい(@Nagapiii)/「ASIOS」の検索結果』
https://twilog.org/Nagapiii/search?word=ASIOS&ao=a
ながぴい「ファッ!? 懐疑主義団体にトンデモさん混じってるやんけ!」
本城会長「いや、ウチ別に懐疑主義団体ちゃうんで」
ながぴい「ココに懐疑主義団体って書いてあるやろ! 大体、ASIOSって『Association for Skeptical Investigation of Supernatural』(超常現象の懐疑的調査のための会)の略やろが!」
ワカシム「もっと勉強しようや」
ながぴい「もうええ、やってられるかー! 辞めたるわ!」
…って感じ。
まぁ「と学会」なら懐疑主義的イメージが強いものの、実際には「おもしろがり集団」であって懐疑主義団体ではない、と言えるでしょうが…
ASIOSはなぁ…。
「と学会」の名が出たついでに触れておくと、高須クリニックの高須克弥院長は「と学会」に入ろうとしたら「あなたがウチに入るのは、バードウォッチングの会に鳥が入る様なものですよ」とか言われて断られたとか…(その後、いろいろあって入会。ちなみにご子息の高須力弥はその前から「と学会」会員で、Twitterでは父親のネトウヨ発言を諫めるなどまっとうな人だったり)。
…話を戻して。
この様に石川幹人は「私、懐疑主義者です!」という体で活動し、その実、結構怪しい主張を混ぜ込んできている訳ですが…
まともなコト言って信頼感を演出しつつ、こっそりトンデモぶちこんでくるって…山口敏太郎かよ!
しかし、超能力としか思えない事件は実在します。
何しろ私自身が実際に体験したので間違いありません(個人的経験の絶対化)。
始まりは2013年―
BSフジの科学番組『ガリレオX』に「疑似科学!~これからの科学との付き合い方とは?」という回がありました。
そこに「人々が興奮する場では乱数発生装置の出力に偏りが出るのではないか」という実験が(懐疑的に)取り上げられていたのですね。
その研究で紹介されていたのが石川幹人でした。
うわぁ、胡散くせぇ!
…それから数年後。
その番組を観返してみたところ…え、石川幹人なんて出てへんやん!?
実際にはその研究をしていたのは蛭川立という人でした。
どうやら私の記憶違いだった様です。
石川幹人先生、ごめんなさい。
先生はこんなトンデモ実験に手を染めたりしてなかったんですね。
ではこの蛭川立とはいかなる人物なのか…?
調べてみて驚きました。
明治大学情報コミュニケーション学部で超心理学的な研究を行っているのが石川幹人教授や蛭川立准教授だったのです。
しかもWikipediaの「石川幹人」の項にはこうあります。
『ディーン・ラディンが主要メンバーとなり、1997年にスタートした地球意識計画[20]によって世界各地に100台設置してある乱数生成装置(RNG)の一つが石川の研究室に置かれているとし、』
…件の乱数発生装置があるのは石川幹人の研究室…ミラクル!
私は蛭川立なる人物を知らなかったし、ましてや石川幹人の関係者だなどとは思ってもみなかったのに、どうして蛭川立を石川幹人と勘違いしたのでしょうか?
もうね、超能力。
それしか考えられません。
私に眠りし超能力が開花し、石川幹人と蛭川立に共通する胡散臭いオーラを感じ取ったに違いありません。
良かったですね両先生、超能力はちゃんとありました~!
【ちょっぴり補遺】
さらに蛭川立&石川幹人は共同で『ねぶた祭における乱数発生器の特異的変動』という研究を行ってる模様。
『超心理マニアのためのブログ』
ねぶた祭における乱数発生器の特異的変動
https://blog.goo.ne.jp/metapsi/e/9ea6ba7a9143901bdc841a8c21b0d4cd
さらに石川幹人&蛭川立でトークイベント↓してたり。
『紀伊国屋書店』
【新宿南店】 2012年11月1日(木)19:00~石川幹人さん・蛭川立さんライブトーク@ふらっとすぽっと/『超心理学―封印された超常現象の科学』(紀伊國屋書店)※このイベントは終了しました
https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Shinjuku-South-Store/20121001110000.html
あと蛭川立も『性・死・快楽の起源――進化心理学からみた〈私〉』という、進化心理学を標榜する本を出してました。
あ~、この本、京都の丸善で著者のトークイベントやってたわ。
仕事の都合で行けへんかったやつや。
コレ著者、この人やったんか…あっぶな~!?
ちなみに蛭川立もASIOSのリサーチ会員だそうで…大丈夫かASIOS!?
ASIOS公式サイトの「メンバー情報」にはこうあります。
『ビリーバーでもディスビリーバーでもなく、公正な懐疑主義者でありたいと思っており、2013年よりロンドン大学ゴールドスミス校変則的心理学研究室(APRU)の客員研究員として、クリストファー・フレンチに師事した。』
…スゲー偏った側にいる人が中立を気取るのって、トンデモさん界隈でよく見るよね…
「子供達には進化論とID理論、両方を教えて、好きな方を選ばせれば良い」
とか、
「右でも左でもない、普通の日本人です」
とかね。
(00:58)
2022年03月28日
私は決定論者であり、自由意志というものを信じていません。
したがって、人の行動には選択肢などないと思っています。
ということは、ある人がものを盗むのも、殺人を犯すのも、厳密にはその人の責任とは言い難いということになりますよね。
しかし「何の責任も取らなくても良い」のであれば、社会は成り立たないため、「疑制」として責任というものが仮定され、背負わされる…それもまた仕方のないことです。
それは本当は不条理なことなのかもしれないけれど、「人々が責任の存在を信じ、社会が責任というものを前提にすること」自体が変えようがなく、決定論的に不可避なのかもしれません。
犯罪者は本当は責任などないのに、社会維持のために犠牲にならざるを得ないのかもしれません。
もっと言えば、大半の人は決定論を理解していません。
自由意志は本当にあるとしか感じられないからです。
しかし「感じる」から「存在する」ということにはなりません。
神様はいませんが、宗教的法悦を感じる人はいます。
幽霊はいませんが、「霊感が強い」と自称する人はクラスに一人はいましたよね。
ちなみに私は霊は信じないけど心霊スポットにはビビりまくりですし、愛の永遠とか崇高さとかも信じてませんが、恋愛中は「この感覚…! こ、こらぁ人が崇高な愛とか信じるのも無理ないで…!」と思ってます。
しかし一方で日常の、例えば政治レベルで発言をする際は、私はこのようなことはいちいち考えてはおらず、普通に「責任というものは存在する」という前提で話をしています。
これは話のレベルやレイヤーが異なるからです。
建物の強度を計算するときには建材としてのコンクリートの強度が分かっていればいいのであって、コンクリートを構成する物質の分子が結びつく仕組みについて考える必要はありませんよね?
また量子レベルの物質の振る舞いとマクロレベルの物質の振る舞いが異なるからといって、その矛盾を解消しないと建物を建てられないわけでもありません。
「自由意志」はあたかもある様に感じられるので、本当は無いと判った上で、近似としては「あるもの」と仮定しているのです。
我々のモラルは進化心理学的な傾向に深く根ざしています。
モラルは決して恣意的に成立するものではなく、盗みや近親婚の禁止といったルールは普遍的に見られます。
特に我々のモラルの根本に深く根差すのは「仲間には厚く」というルールでしょう。
それは利他主義の進化…血縁選択・互恵的利他主義・間接互恵によるものです。
人類の歴史はこの「仲間」をどこまで広げるか、の歴史でもありました。
最初は自分の部族のみが「仲間」でしたが、やがて「仲間」は国家を同じくする「国民」にひろがり、宗教家は敵を愛することや全ての人々や生命のつながりすら説く様になりました。
現在ではこの「仲間」は人類全体へと広がり、種の壁を越えて一部の動物にまで広がりかけています。
私はドーキンスの日本への普及の実質的功労者は佐倉統ではないかと思っています(そして誤解した形で普及させたのが竹内久美子かと)。
その佐倉統は「自然主義的誤謬は、最も根源的なレベルについては例外かも」的なことを言っています。
「自然主義的誤謬」(ヒュームの法則)とは、
「ものごとが『どうである』という事実命題から『どうであるべき』という価値命題は導出できない」
というものです。
例えば、「我々はこれまで神を信じてきた」という事実から「だから我々は今後も神を崇めるべきだ」という価値観は導けません。
でないと、
「人類は歴史の大部分において地球が丸いとは思ってなかった」のだから「我々は地球平面説を信じるべきだ」
ということになってしまいます。
特に世間では「自然であること」イコール「良いこと」という考えがはびこっていますが、これも同種の間違いです。
でなければ、
「自然なことは良い、不自然なことは悪い」のだから「我々は近代医療の恩恵を受けるべきではない」
ということになり、
「レイプは雄の繁殖戦略のひとつであり、自然な行動である」と証明されたなら「レイプしても構わない」
ことになってしまいます。
つまり倫理と事実は無関係、とされている訳ですね。
しかし、倫理の起源に進化的理由があるとすれば、倫理と事実は全くの無関係とは言えません。
我々が「子供は大事にするべき」という倫理を持つ理由が、「そうする個体が子孫を残しやすかったから」だったとすれば、
「子孫を残しやすい」という事実から「子供は大事にするべき」という倫理が生まれたことになります。
佐倉統はそれを指摘した上で、「そこは仕方ないやん」と言ってる訳ですね。
でも石川幹人の自然主義的誤謬に陥った言説は、そういうのとは全く異なる、浅いレイヤーのものです。
石川幹人の群選択に陥った言説が、マルチレベル選択などの深いレイヤーとは異なる、浅いものだったのと同じですね。
そんな石川幹人ですが、ダニエル・C・デネット『ダーウィンの危険な思想 生命の意味と進化』の訳者に名を連ねます。
おかげで名著が読めたので感謝です。
まぁ翻訳だけなら竹内久美子も良い仕事してますからね!
(00:23)
2022年03月27日
石川幹人シリーズ続行。
これまで見てきた様に、石川幹人が進化論を理解しているとはとても思えないのですが…
石川幹人のサイト
『超心理学講座―「超能力の科学」の歴史と現状―』
https://www.isc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/index.htm
の中にはこんなページがあります。
超心理学講座 進化適応の理論
https://www.isc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/5-2.htm
まぁ超心理学と進化心理学を標榜してるんだから当然の発想ですわな。
全文をこのエントリの末尾に保存しておきます。
ざっくり要約するとこう↓です。
・・・・・・・・・・・・・・・・
<1> PSIは進化によって獲得されたか
超能力は進化による適応か?
生存上、有利になるからそうかも。
では、その割に超能力が弱めなのはどうして?
エネルギーコストが高すぎるのかも。
まぁ超能力が物理的にエネルギーを要するのかは謎ですが。
<2> 進化的安定戦略
超能力が弱いのは「進化的に安定な戦略」(ESS)で説明できるかも。
常に戦闘的なタカ派と、闘わないハト派のいる「ハト・タカ」ゲームを考えてみよう。
タカ派は有利に思えるが、タカ派同士がぶつかると大ケガする。
ハト派はハト派同士ではうまくやれるがタカ派には一方的にやられる。
両者の中間、「状況次第で戦うこともあるし逃げることもある」が進化的に安定な戦略である。
超能力もやたら発揮しない方が有利だったのかも。
<3> 高級能力としてのPSI
あるいは微弱だったり制御不能な能力が偶然、頭を出した「高級能力」かも。
でもまず意識の研究が進まないと。
<4> PSIは進化の原理を変えるか
進化と関係ない可能性も。
あるいは超能力に目的指向性があるなら、「獲得形質は遺伝する」というラマルキズムが復活するかも。
ケストラーとかラインとか超心理学の先人たちはラマルク説を支持してたし。
・・・・・・・・・・・・・・・・
なお、石川幹人のこのページには
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<X> 付記
本項の内容はSSPにおけるブラウトン氏の講演と,まえがきに掲げた彼の「文献4」をもとにしている。
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とあります。
…ですよね、これだけ進化論の基本が解ってないのに、急にESSとか持ち出すなんて不自然です。
しかし冒頭で
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5-2 進化適応の理論
明治大学情報コミュニケーション学部教授
メタ超心理学研究室 石川 幹人
本項では,我々がPSIという能力を持っていると仮定した場合,進化生物学から考えて,その性質はどのようなものかを検討する。
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…と自らの文責で述べている以上、単に「紹介した」だけではなく、支持している筈ですよね。
ではこれらの妥当性を検討していきましょう。
・・・・・・・・・・・・・・・・
<1> PSIは進化によって獲得されたか
超能力は進化による適応か?
生存上、有利になるからそうかも。
では、その割に超能力が弱めなのはどうして?
エネルギーコストが高すぎるのかも。
まぁ超能力が物理的にエネルギーを要するのかは謎ですが。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「超能力があるとすれば適応進化によるもの」「その割に超能力は力が弱すぎる」という認識は評価します。
しかしエネルギーコストが高すぎるのだとすれば、では何故そんなにコストが引き合わない性質がわざわざ進化したのでしょうか?
そして現状の、「ほぼ発揮されない超能力」がコストがちょうど釣り合う平衡点だ、とでも主張するおつもりで?
超能力が物理的エネルギーを要しないとすればそれこそ驚愕です。
質量保存則とかどうなってるのでしょうか?
・・・・・・・・・・・・・・・・
<2> 進化的安定戦略
超能力が弱いのは「進化的に安定な戦略」(ESS)で説明できるかも。
常に戦闘的なタカ派と、闘わないハト派のいる「ハト・タカ」ゲームを考えてみよう。
タカ派は有利に思えるが、タカ派同士がぶつかると大ケガする。
ハト派はハト派同士ではうまくやれるがタカ派には一方的にやられる。
両者の中間、「状況次第で戦うこともあるし逃げることもある」が進化的に安定な戦略である。
超能力もやたら発揮しない方が有利だったのかも。
・・・・・・・・・・・・・・・・
石川幹人はこのページでこう書いています。
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PSI能力は,進化的安定戦略として,ある種のナワバリの内側でのみ有効に働くように抑制されているのでないか,という可能性が考えられる。PSI能力を使って資源を奪い合う個体群は絶滅し,個体の周囲に限って,あるいはまさかの時のみにPSIが発揮されるような謙虚な個体群が,現に今,生き残っているとされる。この理論に基づいて想像力をたくましくすれば,ナワバリの外側でPSIを発揮する個体がいたら,皆がPSIを働かせてやっつけてしまうというプロセスで,隠蔽効果も説明できよう。また,PSIが意識的には働きにくいという観察事実も,意識的に働かせることによって破滅的結果を招いた進化の歴史上の必然から,意識とPSIとを切り離す突然変異が起きたとも説明できよう。
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…『PSI能力を使って資源を奪い合う個体群は絶滅し,個体の周囲に限って,あるいはまさかの時のみにPSIが発揮されるような謙虚な個体群が,現に今,生き残っているとされる』の部分は、またしても群選択ですね…。
それはともかく、ここでは超能力は明らかに「生死に直結する能力」だと仮定されています。
えらい強力ですね。
『ナワバリの外側でPSIを発揮する個体がいたら,皆がPSIを働かせてやっつけてしまう』
というあたりはほぼ戦闘能力だし。
そんな直接に生死に直結する能力や戦闘能力だったら、持ってた方が有利だと思いますけど。
「ハト・タカ」ゲームは、「常に少数派が有利になり、数を増やす。増えすぎると多数派になって不利になり、数を減らす…そして最適な比率に落ち着く」という「頻度依存」を説明するための仮想的な例です。
頻度依存があてはまる具体例は、子供を生む時にオスを生むべきかメスを生むべきか、とかですね。
逆に「ハト・タカ」ゲームのシチュエーションを愚直に踏襲するなら…
そもそもハト派とタカ派って、「能力面で差がある」とは仮定されてないんですよね。
タカ派は戦う、ハト派は逃げる、という戦意だけの問題なんで。
という訳で、コレ無茶苦茶やんけ。
これは「明らかにあれば有利な筈の超能力が発揮されない」ことを説明するために「有利に見える形質が発揮されない例」としてESS(進化的に安定な戦略)を持ち出しただけに見えます。
男系天皇制論者が、男系でなければならない理由を無理やりひねり出してY染色体論を持ち出すのと一緒。
アレは「Y染色体論が男系天皇制論の正しさを証明する」のではなく、「もし男系天皇制論の正しさを証明するものがあるとすれば、それはY染色体上にしか存在しえない」というだけなんよね。
何も証明されてません。
それと同じで、「ESSが超能力が弱い理由を説明する」というより、「超能力が弱い言い訳を考えつくの、難しいなぁ…なんか有利そうな形質やのに何故か進化しない例ってないかなぁ…あ、ESSがあるわ、これで説明したろ!」と考えただけに見えます。
それだったらハンディキャップ理論でも持ち出して「あえて超能力を持たずに、それでも生き残れることを示して自分の優秀さをアピールしてるのだ」とか何とか説明した方がマシでは…?
もっとも、超能力がダーウィニズムに乗ってる証拠を何一つ挙げずに、ダーウィニズムの特殊例であるESSやハンディキャップ理論に頼るのは無理筋だと思いますけどね。
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<3> 高級能力としてのPSI
あるいは微弱だったり制御不能な能力が偶然、頭を出した「高級能力」かも。
でもまず意識の研究が進まないと。
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例え偶然であれ、そんなとんでもなく便利な能力の基盤があるなら、最初はどんなに微弱であろうと制御不能であろうと、速やかに洗練された能力に進化すると思うんですけど。
プリンストン大・ウプサラ大よるダーウィンフィンチの研究では、新種への進化は2世代ほどという短期間で進む場合があるとされてます。
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<4> PSIは進化の原理を変えるか
進化と関係ない可能性も。
あるいは超能力に目的指向性があるなら、「獲得形質は遺伝する」というラマルキズムが復活するかも。
ケストラーとかラインとか超心理学の先人たちはラマルク説を支持してたし。
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ダーウィニズムは、我々が知る限り、適応を生み出す唯一の力です。
超能力というすごい能力が、ダーウィニズムによって獲得されたのではないとすれば、それはとんでもないことです。
ではどの様にして獲得されたのでしょうか?
獲得形質の遺伝は、完全に否定されています。
「ケストラーやラインはラマルク説を支持してた!」
とか言われても、
「超能力とか信じちゃう様な素朴な人は、ラマルク説も信じちゃうんだな~…
アレか? 反ワクチンの人はしばしば911陰謀論も信じちゃう、みたいなコト?
トンデモはトンデモを呼ぶなぁ…」
としか。
…という訳で、やはり「進化心理学の第一人者」石川幹人が進化論をちゃんと理解してるとは、とても思えないです。
【資料】
超心理学講座 進化適応の理論
https://www.isc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/5-2.htm
全文↓を保存。
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5-2 進化適応の理論
明治大学情報コミュニケーション学部教授
メタ超心理学研究室 石川 幹人
本項では,我々がPSIという能力を持っていると仮定した場合,進化生物学から考えて,その性質はどのようなものかを検討する。
<1> PSIは進化によって獲得されたか
ESPが五感と同様に人間の知覚能力の一部であり,PKが手足と同様に人間の運動能力の一部である,としてみよう。生物学的に考えれば,人間の能力は進化的に獲得されてきた。すなわち,生存競争に勝ち残ることによって,多くの変異種の中から環境に適応した種が繁栄する,そのプロセスで,必要な能力が獲得されるのだ。PSIが生物学的な能力であるならば,PSIは環境に適応的な役割を果たしていたので,我々に備わったことになる。他の個体よりも生存競争で優位に立ち,遺伝子を後世に残すのにPSIが利用されていたに違いない。
確かに,ESP能力は食べ物を探すのに利用できるし,PK能力は食べ物を獲得するのに利用できる。PSI能力は高ければ高いほど,生存競争に有利であろう。ならば,何故我々は高いPSI能力を持っていないのだろうか。強靭な手足の筋力は生存競争に有利ではあるが,それを維持するのに多くのエネルギーが(すなわち多くの食べ物が)必要であるから,結局は進化の過程で最も効率が良い(現在の)手足の筋力に落ち着いたと考えられる。それと同じように,PSI能力の維持にエネルギーがいるのだろうか。残念ながら,PSIと物理的なエネルギーの関連は見出されていない(むしろ関係が無いと考える超心理学者が多い)。
では,PSI能力の低さは,生物学的にどのように説明できるだろうか。そのひとつの可能性は進化的安定戦略である。
<2> 進化的安定戦略
進化的安定戦略とは,進化生物学者のメイナードスミスが理論的に導いた,進化上獲得される行動形態のことである。直感的に言えば,ある行動形態は,その戦略をとる個体が増えても安定であり,かつその増えた状態で他の戦略をとる個体が優位にならない場合に,進化的に安定な戦略として,生き残るのである。
戦いを好む個体(タカ派)と,好まない個体(ハト派)の例で考えてみよう。力が強く戦いを好むタカは,生存競争に勝ち残り子孫を増やす。ところが,タカが大勢を占めるようになると,戦いばかりが発生し,互いに傷つけ合って安定した繁栄が望めない。一方で,戦いを好まないハトは,大勢になっても問題は少ないが,その状態にタカが現われると,食べ物を独占できてハトが追われてしまう。タカもハトも進化的安定戦略ではなく,進化上は,タカとハトが混在した状態で推移する。
しかし,それらの中間的な行動形態には,かなり進化的に安定な戦略がある。それはナワバリ派であり,自分のナワバリの内側ではタカとして振舞い,他の個体の進入に対して戦いで排除しようとする一方,ナワバリの外側ではハトとして振舞って,他の個体に資源(食べ物,水,住居など)を譲るのである。ナワバリ派は,同一戦略を取る子孫が増えても,ナワバリに十分な資源がある間は繁栄を続けられるし,単純なタカやハトより,通常は進化的に優位である。
PSI能力は,進化的安定戦略として,ある種のナワバリの内側でのみ有効に働くように抑制されているのでないか,という可能性が考えられる。PSI能力を使って資源を奪い合う個体群は絶滅し,個体の周囲に限って,あるいはまさかの時のみにPSIが発揮されるような謙虚な個体群が,現に今,生き残っているとされる。この理論に基づいて想像力をたくましくすれば,ナワバリの外側でPSIを発揮する個体がいたら,皆がPSIを働かせてやっつけてしまうというプロセスで,隠蔽効果も説明できよう。また,PSIが意識的には働きにくいという観察事実も,意識的に働かせることによって破滅的結果を招いた進化の歴史上の必然から,意識とPSIとを切り離す突然変異が起きたとも説明できよう。
<3> 高級能力としてのPSI
一方でPSIは,五感や手足のような原始的能力ではない可能性がある。PSIは,あまりに微弱(あるいは制御不能)であるため,進化上の環境適応手段として用いられてこなかった。ところが,人間が進化して意識が現われた進化の段階で,何らかの進化上の偶然で顔を出し始めた「高級な能力」なのかもしれない。
こうした方向の研究は,意識の探究(8-4)を進めた上で,初めて取組めるものだろう。現在は「意識」の進化的説明に諸説が立てられている段階である。例えば,生化学者ケアンズスミスの『心はなぜ進化するのか : 心・脳・意識の起源』(青土社)を参照されたい。
<4> PSIは進化の原理を変えるか
そもそもPSIが存在するのであれば,生存競争に基づく進化の原理は修正されねばならないという議論も成立つ。タートが唱えるように,PSIによって自他の分離が消える(8-5)ならば,個体の環境適応度は,その個体の持つ遺伝子に直接起因するわけではなくなる。
またスタンフォード(5-3)やシュミット(5-6)らが主張するように,PSIに目的指向性があるとすると,進化生物学が葬ったラマルクの獲得形質遺伝説が,一転して現実味を帯びてくる。エジンバラ大学に超心理学講座を寄付したケストラーは,ラマルク説をあからさまに支持していた(『サンバガエルの謎 : 獲得形質は遺伝するか』サイマル出版会)し,デューク大学に赴任した頃のラインは,マクドゥーガルとともにネズミの迷路学習の実験を行ない,獲得形質の遺伝に対して肯定的な結果(迷路の学習が速くなる)を得ていた。
<X> 付記
本項の内容はSSPにおけるブラウトン氏の講演と,まえがきに掲げた彼の「文献4」をもとにしている。
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