トンデモ科学の女王・竹内久美子。
ネトウヨさん御用達の『月刊WiLL』によく登場しますが、そこで今をときめく黒川伊保子と少なくとも3回に渡り、対談してました。
黒川伊保子と言えば『夫のトリセツ』などのトリセツシリーズでヒットを飛ばし、テレビや雑誌にひっぱりだこの文化人。
皆さん「脳科学のすごい人」みたいに思っておられるかもしれませんが…
黒川伊保子って疑似科学をウォッチングする懐疑主義界隈では有名なトンデモさんやで…!?
そして何故かやけに竹内久美子との共通点が多いという。
◉雑誌やテレビによく登場する女性文化人
◉と学会に批判された、公式認定トンデモさん
◉その割に経歴はちゃんとしてる
◉だが現在は研究者ではなく自称「研究家」
◉自分の思いつきを科学で修飾して正当化しようとする
◉批判をまともに受け止めない
…というあたり、丸カブり。
まさに疑似科学界の双璧。
この黒川伊保子という人は奈良女子大の理学部物理学科を出た後、富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ(つまりは民間企業)でAI研究をやっていた様子。
と言うと「おお、注目の最先端分野…!」と思ってしまいますが、勤務はせいぜい90年代までなので、技術的にはごく萌芽的な段階でしょう。
AI研究は学際的な分野ではありますが…
90年代の民間企業のAI研究って、言うほど脳科学や心理学と関係ありますかね…?
その後、コンサル会社や他の民間研究所に行った後、2003年に「感性リサーチ」という会社を作って代表取締役に。
2004年には『怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか』という本を書いて小当たりします。
Amazonの「本の説明」によれば↓こんな。
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● ゴジラ、ガメラ、ガンダム等、男の子が濁音好きな理由は? ● カローラ、カマロ、セドリック…売れる自動車にC音が多い理由は? ● キツネがタヌキよりズルそうな原因は? ● 「マキコ」さんが社交的な理由とは? ● 「ひかり」が「こだま」より速そうな理由とは? ● トマトジュースでキリンが苦戦する理由とは? ● プーチンよりもゴルバチョフのほうが何となく強そうのはなぜだろう? なぜ私達は濁音に迫力を感じるのでしょうか。なぜ清音に爽やかさを感じるのでしょうか。実は、この感覚は人類共通のものなのです。 そのすべての鍵は、脳に潜在的に語りかける「音の力」にありました。本書では脳生理学、物理学、言語学を縦横無尽に駆使して「ことばの音」のサブリミナル効果を明らかにしています。 さまざまな実例、擬音・擬態語の分析によって次々と「音の力」が解き明かされていきます。ネーミングなどビジネスの場面でも役に立つ知識も満載。 これまでになかった、まったく新しいことば理論です。
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内容は、「サブリミナル効果」という既にほぼ否定されたものを持ち出してるあたりでお察し。
そして本書はと学会の『と学会年鑑GREEN』(2006年)『トンデモ本の世界U』(2007年)に取り上げられるという栄誉に浴することに。
他にも批判の声は多く。
例えば…
【日本心理学会】
『社会における心理学の誤用とどう向き合うか』
https://psych.or.jp/publication/world096/pw03/
【朝日新聞DIGITAL】『妻のトリセツが説く脳の性差 東大准教授は「根拠薄い」』
https://www.asahi.com/sp/articles/ASM427TKZM42UCVL02J.html
【朝日新聞DIGITAL】(有料記事)
『男性脳・女性脳の論法、専門家「ステレオタイプを強化」』
https://digital.asahi.com/sp/articles/ASM43519FM43UCVL017.html?ptoken=01GYNQ20ZMD1N3JX9RQXDBEB7K【Togetter】
『グリコ特設サイトやアプリの監修者である黒川伊保子は「ジェンダー事案」ではなく偽科学者として批判されるべきである』
https://togetter.com/li/1433444
…学界・マスコミ・ネット界と全方向から叱られ、まんべんなく炙られるBBQ状態。
しかしご本人には全く響いていない様子で、上述の朝日新聞DIGITAL『妻のトリセツが説く脳の性差 東大准教授は「根拠薄い」』によれば
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記者が黒川氏に主張の根拠を尋ねると、「『脳梁の20%』は、校正ミスで数値は入れない予定だった」とし、そのほかは「『なるほど、そう見えるのか』と思うのみで、特に述べることがありません」と回答があった。
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…なーんそれ!?(ZAZY)
きちんと反論するでもなく、かと言って批判を受け入れ自説を撤回するでもなく。
竹内久美子の反応とそっくりですね。
あとこの人は学界での業績がない、という批判も。
自称「国際政治学者」の三浦瑠麗かよ。
試しにJ-STAGEで検索してみましたが、下記の3つしか出てきませんでした。
◉感性ビジネス : 時代の風を読み解く科学(キーノート3)
プロジェクトマネジメント学会研究発表大会予稿集
2008年
◉語感の正体を探る_から_サブリミナル・インプレッション分析法について
人工知能学会全国大会論文集
2005年
◉語感を科学する~ネーミング効果数値化への挑戦
騒音制御
2007年
…いずれも『感性リサーチ』立ち上げ後のもので、「感性」とか「語感」というふわふわしたテーマですね。
AI研究では論文は書いてないんでしょーか?
ついでに竹内久美子も検索すると、同姓同名の人がいるらしく看護畑などでヒットがあるのですが、ご本人とおぼしきものは見当たらず…
ちなみに最初にヒットするのは「竹内久美子による血液型別性格占い擁護」を別の人達が検証したものです。
結果はもちろん竹内久美子に否定的。
なお、Wikipediaによれば黒川伊保子の職業は「実業家・エッセイスト」、竹内久美子は「エッセイスト・動物行動学研究家」です。
で、ヒット作「トリセツ」シリーズ等の脳科学・心理学っぽい本についてですが…
基本的に「あ~、男の人ってこういうトコあるよね!」みたいな話の塊です。
良く言えばあるあるネタ、悪く言えば偏見ネタ。
話のソースの多くは個人的経験で、そこに脳科学っぽい言葉を少々ふりかけただけ。
例えば、滝の近くで
「あ~、めっちゃマイナスイオン感じる~!」
とか言っちゃう人いるじゃないですか。
アレってマイナスイオンを直接感じてる訳じゃないよね。
そもそも健康業界における「マイナスイオン」という言葉自体、定義も曖昧で効果もあやふやな代物だし。
ああいうのは滝近くの清涼感に「滝からはマイナスイオンが出てる」という(俗説に基づく)知識を後付けで当て嵌めて言ってるだけやん…
そんな感じで、例えば「私は恋した」を「私のA10神経を神経インパルスが駆け抜け、シナプスがエンドルフィンを放出した」とか脳科学っぽく言い換えることもできますよね。
黒川伊保子のやってることも大体これと同じ。
何かを説明してる様で全然説明してない。
それっぽく言い換えてるだけ。
たま~に説明めいたものも混ぜてきますが、おおむねこの手の俗流本に書いてあることと大体同じで特に深みはない上、ただの「神経神話」多すぎ。
経歴と合わせても、この人、脳科学を学んだとは思えないんですよね…
では何でそんな本がヒットしてるか、というとですね…
それは「ものすごく当たってる様に感じる」からです。
コレよく考えると当たり前なんですよ。
ヒトの行動を脳科学で説明する場合、広範な行動の中から、限界のある現在の脳科学で証明された、ごく狭い領域について語ることになります。
まともな研究者なら、世間が思う「女性ってこうよね」というイメージ全体ではなく、脳科学ですでに証明されたごく一部のことしか語れないのです。
しかし黒川伊保子メソッドはそれに縛られません。
最初から脳科学と関係なく、「息子ってこうよね」「妻ってこうよね」と、偏見と個人的経験から引き出したことを思うままに書けます。
その中に脳科学っぽい言葉を散りばめたり、俗流の「脳科学」的説明を当て嵌めてみたり。
そら科学的に証明されてないことまで含めて「夫とはこういうもの」とかキメウチで好き勝手に語れたら、「おお~当たってる!」ってなるよ。
世間のイメージがそのまま語られるねんから。
統計学者の語るふわっとした話よりも、占い師の言うことの方が詳細かつ具体的だけに当たってる様に聞こえるのと同じですね。
「個人的経験から引き出したこと」というのは結局のところ、偏見の塊です。
血液型性格占いや「満ち潮の日は出産が、引き潮の日は死亡が多い」という俗説も、体感してる人はいっぱいいます。(※【註】)
…が、統計を取ると綺麗に消えちゃうというミステリー。
それらの傾向はいくら存在している様に感じられても、実在しないのです。
そして黒川伊保子が語る「女性はこう」みたいな話も、本当に存在する傾向なのかどうかすらあやふや。
結局、この人のやってることは、証明されてないことをさも科学である様に語る「疑似科学」でしかないのでは…
それにしてもWiLLは何故こんなトンデモさんを重用するのか…
竹内久美子はJアノンまで発症してたゴリゴリのネトウヨさんなので、実にWiLL向きですが…
黒川伊保子はたいしたコト言ってません。
『WiLL』を作ってるWACという会社は、めちゃくちゃ素晴らしい科学ドキュメンタリー番組『ガリレオX』を製作しており、一流の科学者たちとのコネクションなどいくらでもある筈なのに…
やはりまともな科学者なら、ネトウヨさん雑誌で竹内久美子と対談なんてしたくないんでしょーか?
あ、竹内久美子と黒川伊保子の共通点をもうひとつ見つけました。
2人とも「タケウチクミコ」「クロカワイホコ」と、名前に濁点がありません。
科学を破壊するトンデモ界の2大怪獣なのだから、黒川伊保子の理論に従って「ダゲウヂグミゴ」「グロガワイボゴ」ぐらいの迫力あるネーミングであってしかるべきなのでは…?
良いじゃんグロガワ。
※【註:「満ち潮の日は出産が、引き潮の日は死亡が多い」という俗説】
コレ実際に言いたいのは「大潮の日には出産が、小潮の日には死亡が多い」だよね…
潮の満ち引きは1日2回あるし。
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