2022年09月20日
知人の子供さんが小学生の頃に「おもくろい」という言葉を使ってるのを耳にしてびっくりしたことがあります。
「面白い」の白を逆の黒に言い換えただけの他愛ない言葉遊びですが…
それ十返舎一九の『東海道中膝栗毛』、いわゆる「弥次さん喜多さん」「弥次喜多道中記」に出てくる由緒正しい江戸っ子ギャグやで!?
ちなみに意味も逆に取って「面白くない」の意で使われる場合もあります。
あと子供の頃に「バビ語」って使いませんでした?
例えば「ひみつ」が「ひびみびつぶ」になるやつ。
各音の後にバ行の同じ母音の音を挿入し、法則を知ってる人にだけ理解できる様にする一種の暗号遊びですね。
アレは「入れ詞」(いれことば)・「挟み詞」(はさみことば)・「唐言」(からことば)等とも呼ばれ、元は遊里の隠語でやはり江戸時代からある言葉遊びです。
海外にも「ピッグ・ラテン」という似た遊びがある模様。
ドラマ『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』でも「子供の頃に誰もが使っていた暗号で女子2人が内緒話する」というシーンに出てきました。
日本語吹替版では暗号部分はバビ語になり、この暗号を「ウビドゥビ」と呼んでいました…が、「ウビドゥビ」でぐぐっても何も出てこない。
翻訳担当者の周囲ではそう呼ばれてたんでしょうか。
私の住んでいた地域ではバビ語を「バビロン語」と呼んでました。
「バビロン語」「唐言」「ピッグ・ラテン」と、外国語っぽい名前が付けられがちなのが興味深い。
バビロンはバベルと関連付けられる地名で、聖書では「神が言葉を乱し、各部族がお互いに分からない言葉を使うことになった元凶の地」なので、暗号名にはピッタリですね。
しかし森昌子がTV番組「金曜プレミアム『訂正させてください』」(2019年3月19日フジテレビ系放送)で「アレ作ったのは私たち花の中三トリオ」とか言い出してて仰天。
いや江戸時代からあるし。
しかし現在、Wikipediaもこのエピソードを伝聞形式とはいえ検証抜きで載せてるため、「江戸時代からあるが森昌子が作ったという」的な、奇妙な記述になってたり。
この様に、現在流通している言葉に古くて意外な起源があったりするのはよくあります。
都市伝説「六甲の牛女」は、遡ると江戸時代から続く妖怪「件」(クダン)の伝承につながってたり。
怪談の定番「乗客が消えるタクシー幽霊」の話なんて西洋では乗合馬車の頃から語られています。
都市伝説「ダルマ女」の前半によく置かれる「若い女性がブティックの試着室に入ると鏡が回転してさらわれる」というエピソードは、1969年フランス発祥の「オルレアンの噂」という有名なデマが元ネタ。
その根底には「ユダヤ人が経営する店なんかで買物すると何されるか分かったもんじゃない」というゼノフォビア(外国人嫌い)とユダヤ人差別があります。
反ユダヤ主義に基づくデマはいろいろあります。
ドイツでは14世紀から「ユダヤ人が井戸に毒を流す」という噂がありました(Well poisoning)。
「特定の民族が井戸に毒」系デマとしては関東大震災時の朝鮮人虐殺につながった噂とそっくりですね。
ネトウヨさんにはいまだにコレを信じてる人が沢山います。
近年では大災害の度に「井戸に毒」系デマが流れますが、これは「ガチ勢」「悪意ある捏造」「パロディー」「ネトウヨさんへの釣り」がないまぜになっててややこしい…しかし「ガチ勢」「悪意ある捏造」はネトウヨさんが中心になって発信・拡散しているのは確かです。
また「ユダヤ人が子供をさらい、血を抜く」「その血を口にする」系のデマは『血の中傷』と呼ばれ、古代から連綿と続いてるのですが…
コレの系譜としてアメリカでは「悪魔崇拝者が子供に悪魔的儀式虐待を行なっている」という陰謀論が根強くあります。
一時「退行催眠などで失われた記憶を取り戻す」みたいなのがブームになり、そういうのにハマった人たちがうっかり取り戻しちゃった記憶というのがしばしば「うちの親は悪魔崇拝者で、私は儀式として性的虐待をされた」だったのですね。
あと「UFOにさらわれて宇宙人に身体検査された」とか。
どっちに転んでも裸にされる模様。
そういう流れで史上最大の冤罪事件・マクマーティン保育園裁判とか起きちゃいます。
…が、懲りずに現在でもコレの類話は語られています。
Qアノンやその前身となったピザゲートでの「子供たちが誘拐監禁されている」「ヒラリーや民主党の奴らが性的虐待を行っている」「子供の脳からアドレノクロムを抽出してドラッグや若返り薬として使っている」系の話がそうですね。
そうでなくとも極右の言うことは国を問わず、奇妙に共通しています。
最近、気付いた例をいくつか挙げると…
映画『否定と肯定』でも描かれた、「ガス室はなかった」と主張する歴史修正主義者デイヴィッド・アーヴィングは「ホロコーストは補償金目当てのでっち上げ」的な主張をしています。
慰安婦問題でのネトウヨさんの主張そっくりですね。
デマゴーグであるアレックス・ジョーンズが運営する陰謀論サイト『インフォウォーズ』は『イスラム諸国からの移民がフィンランドにおけるほとんどの性犯罪を引き起こしている』と主張。【※註1】
ネトウヨさんの「在日朝鮮人が日本におけるほとんどの性犯罪を引き起こしている」とそっくりです。
極右サイト『ブライトバート・ニュース』スティーブ・バノンは次回の大統領選の選挙管理スタッフにトランプ派を送り込もうと画策してる様ですが、その1人は『我が国を取り戻す』と言ってました。
どっかで聞いたフレーズ。
なお、バノンはトランプに首席補佐官の座から追い出された後、欧州で極右団体を結束させようと画策するも失敗した模様。【※註2】
そりゃそうだ、各国の愛国主義者をまとめるのは「一匹狼親睦会」を作る様なもんだもんね…
おかげで極右ポピュラリズムはあちこちで元気いっぱいだけど、横の連帯を欠くせいで文化的にはリベラリズムが世界に浸透してたり。
あと日米ネトウヨさんの主張があちこち似てる件については以下のエントリを参照。
想像以上に同じコト言ってます。
『アメリカ版ネトウヨさん、日本のネトウヨさんとそっくりな主張をしてしまう』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/15454473.html
【※註1】
ソースは『人は簡単には騙されない 嘘と信用の認知科学』
【※註2】
ソースは『町山智浩のアメリカの今を知るTV In Association With CNN』2022年9月8日放送「トランプ氏を大統領にした男スティーブ・バノン氏② 欧州で理想国家を目指す!?」。
この回はCNNの特集番組「スティーブ・バノン:決裂すれば倒れる」(『STEVE BANNON DIVIDED WE FALL』)を紹介・解説したもの。
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