2022年08月26日



コロナで「新しい生活様式」が取り沙汰され、だいぶ経ったが…。



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怠惰の象徴であるのび太のライフスタイルがいまや最も倫理的とは…
なかなかに奇妙ですな。


この「感染症対策のために社会モラルを変える」という問題について、MERSが問題になっていた2015年6月にこんなmixi日記を書いていたので加筆の上で再掲。



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MERSに関して「韓国への渡航及び入国禁止措置を取るべき」という意見が多いが、これは防疫上、選択肢に入れるべきだし、やるならやるで後手後手に回らない様に早目に対応するべきではある。 
韓国政府の対応の遅れに批判が出るのも理解はできる。 

だが対応に必要なリソースがそもそも不足している国もあるので、何でも批判できる訳ではないとも思う。 
その点、普段は「韓国はまだまだ後進国」と主張しがちな保守派が今回の件についてはいきなりトップレベルの対応を求めたりするのはやや無理がある。 

そもそも疫病というのは発生国こそ被害者な訳で、それを加害者扱いするのは間違っていまいか? 


疫病への恐怖はヒトが道徳律を踏み外すきっかけになりやすい。 

HIV感染が男性同性愛者に多いことから「ホモがエイズになるのは自業自得」「ホモはHIVをばらまくから害悪」といった主張は繰り返し行われてきた。 

「どうである」という事実命題から「どうであるべき」という価値命題は導出できないので、これはヒュームの法則に反する誤った主張である(自然主義的誤謬)。


今回のMERSに関するmixiニュースでもこんなことをつぶやいている人がいた。 
しかも100近くのイイネを獲得している。 

【mixiニュース】
『韓国で広がるMERS感染 外務省が注意呼びかけ』

http://mixi.at/a9INk15
(現在はリンク切れ)
へのつぶやきより

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朝鮮半島全土をナパーム弾で焦土にする以外、人類の繁栄はない、そう考えましょう。変な宗教野郎も焼き討ちだな。 
う~ちゃん イイネ!97人 コメント2件 

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…疫病の感染拡大防止を理由に大量虐殺を行うことは正当化できるのか? 


20年前にすでにエボラウィルスの感染爆発を驚くほどリアルに描いていた名作映画『アウトブレイク』(95年)にこんなシーンがある。 
小さな街からエボラそっくりのウィルスが広がりそうになり、大統領補佐官会議が開かれる。 
そこで街を焼き払う提案が行われ、主席補佐官はこう言う。 

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「君の提案とは 人口2,600のシーダー・クリークの街に非核兵器として最も強力な気化爆弾を投下 
爆発と同時に周囲の酸素を吸い込み 周囲1.6キロ以内の全てを 人間からウィルスまで気化する 
全て消滅 危機は消える 

(本を取り出す) 
これは合衆国の憲法だ 
2,600人の市民を消すなんて話は書いてない 
こういう記載はある 
“国民の命と自由と財産は不当に奪ってはならない” 

“一掃作戦”を検討する前に確認しておきたい 
この場の全員が一致して 大統領の決定を公に支持すること 
死なばもろともだ! 
次に権威ある専門学者に完備した実験資料を提示させ “一掃作戦以外に道はなかった”と証言させること 
閣僚が新聞社に駆け込み “私は反対した”などと言う事は許さん 
反対する者は今この場で発言しろ 

(写真の山をデスクにぶちまける) 
シーダー・クリークの住民だ 
彼らは統計数字じゃない 血の通った人間だぞ 
彼らの顔を心に焼きつけろ 死ぬ日まで我々にとりついて離れない顔だ」 
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もしこれをやれば非難轟々になることは安易に予想できる。 
だが彼はやるのだ。 
大統領や誰かに責任転嫁することなく。 
それが全く問題のない行為だ、と強弁したり正当化することもなく。 
望んだ結果ではないが他に選択肢がないからやる、だが責任は取る、と。 

57億人(95年当時の世界人口)を救うために2600人を犠牲にする──これは一種のトロッコ問題だ。
トロッコ問題ではどちらを選んでも倫理的問題が発生する。だが逆に言えばそれは、どっちを選んでも非難しようがないということでもある。
しかもこちらは1人と5人のどちらを犠牲にするかではない。2600:57億──およそ1:220万だ。

彼の選択が許される行為なのかどうか、私には判らない。 
彼の主張の全てに諸手を挙げて賛同できる訳でもない。

だがどうしてもやらざるを得ないのならば、これくらいの覚悟を持ってやってほしい。 
「朝鮮半島全土をナパーム弾で焦土にする以外、人類の繁栄はない、そう考えましょう。変な宗教野郎も焼き討ちだな」 
と妙に嬉々としてやるのではなく。 





この様に防疫とモラルは相容れないことがある。 
そこでモラルの方を防疫に沿わして改変する、という方法もある。 
だがそんなことしちゃって大丈夫なのか? 

それを実際に行っている事例を見つけた。 

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『セックスにノーと言おう ヴァージンパワー、ヴァージンプライド!』
と書かれた看板。 
アフリカ諸国でHIV対策のために純潔教育を行う社会運動の様だ。 
防疫のために特定の価値観を普及させている模様。 

まぁこれだけなら無害にも思える。 
だが「HIV感染防止のために婚前交渉は避けましょう」というのと同様に「HIV感染防止のために男性同性愛は避けましょう」という社会運動が起きた時、我々はそれを許容すべきなのだろうか? 
婚前交渉も男性同性愛もコンドームの使用を推奨すればこと足りるのではないのか? 



SFの役割の一つは、現実世界のある面を途方もなく拡大して思考実験を行い、そこで起きる問題や矛盾を提示してみせることにある。 
現代最高のSF作家と称されるグレッグ・イーガンは『道徳的ウィルス学者』という短編を書いている。 
こんな話だ。



主人公のウィルス学者はあまりにも「道徳的」であるあまり、「複数の相手とセックスした者」「同性とセックスしたもの」だけが発病する致死的なウィルスを作成し、ばらまく。 
つまり処女と童貞が結ばれ、生涯その相手とのみセックスすれば大丈夫だが、それ以外のあらゆるセックスは死に至る。 
ちなみにこのウィルスはゴムを溶かすのでコンドームも役に立たない。 

ところがこのウィルスには致命的な欠陥があった。 
新生児は生後1ヶ月までは母乳を飲んでも問題ないが、それ以降はウィルスの影響で死んでしまうことが判明したのだ。 
主人公大ピーンチ! 

だが彼はちょっとしたトンチを利かせてこのピンチを脱出する。 
彼はこう考えることにしたのだ。 
「浮気する子はいねーが!? 同性愛にはしる子はいねーが!? そして一ヶ月を超えて乳児に母乳を与える子はいねーが~!?」 


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…これが7年前の日記だ。

サル痘が問題になっている今、読み返してみると現在の状況にも則していると思う。


ただひとつ、この頃のネトウヨさんは『朝鮮半島』にいる『変な宗教野郎』を敵視してたんだなぁ…今とは違って。







(00:38)

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