2022年04月25日


最近、ネトウヨさん達を中心に、「答合わせ」という言葉がよく使われる様になっています。 


例えば 
「野党が喚いたら、マスゴミがそれを垂れ流しだしたな。これもう答合わせじゃん」 
といった具合に使われます。 


でもコレおかしくないですか…? 


例えばこんな例を考えてみましょう。 

A君が万引きの疑いをかけられました。 
クラスメートのB君はこう言います。 

「彼は根っからの悪人だ、万引きしたに違いない。 
ああいう奴は問い詰められてもシラを切るに決まってる」 


そして実際、A君は万引きを認めませんでした。 
それを聞いてB君はこう言います。 

「な、思った通り否定しただろ? 
もうコレ答合わせだろ…やっぱりあいつは万引きしたんだよ



…いやちょっと待って下さい、本当に万引きしてない人だって否定する筈ですよね? 
疑われたら最後、認めても認めなくてもアウトって魔女狩りかよ…。 


ネトウヨさんの論理もコレと同じで、 
「自分の予測通りに進んでるから、自分の解釈は正しい」 
という話ですよね。 

しかしコレは『後件肯定』というよくある誤りです。 
『後件肯定の誤謬』 
『後件肯定の錯誤』 
『後件肯定の虚偽』 
とも呼びます。 

後件肯定は以下の様な形を取ります。 

【大前提】 もしPならば、Qである。 
【小前提】 Qである。 
【結論】  したがってPである。 


…一見、仮言的三段論法として成立している様ですが、よく見ると小前提は大前提の後半(この部分が『後件』)をなぞってるだけで丸カブリ… 
なので『後件肯定』と呼ばれています。 

先ほどの万引きの例で言うと、 

【大前提】 悪人なら、罪を否定する筈である。 
【小前提】 彼は罪を否定した。 
【結論】  彼は悪人である。 


という訳ですね。 


これだとどこが間違っているのか判りにくいので、判りやすい例を挙げましょう。 


《例1》 

【大前提】 ヒトであるならば哺乳類である 
【小前提】 イヌは哺乳類である 
【結論】  したがってイヌはヒトである 


《例2》 

【大前提】 ニューヨークがあるのはアメリカである 
【小前提】 ワシントンがあるのはアメリカである 
【結論】  したがってワシントンはニューヨークである 



…どう考えてもおかしいですね。 


しかし、同じ形式でも正しい場合もあります。 


《例1´》 

【大前提】 イヌであるならば哺乳類である 
【小前提】 チワワは哺乳類である 
【結論】  したがってチワワはイヌである 


《例2´》 

【大前提】 ニューヨークがあるのはアメリカである 
【小前提】 エンパイアステートビルがあるのはアメリカである 
【結論】  したがってエンパイアステートビルがあるのはニューヨークである 


…これらが正しいのは推論の形式が正しいからではなく、ただの偶然に過ぎません。 
形式は明らかに間違っている方と同じです。 


ここでは判りやすい例で説明しましたが、詭弁というのは巧妙にやられると意外に判りにくいものです。 
それでも、仕組みが解れば見抜くことはそれほど難しくありません。 


ではネトウヨさんたちによる実例をいくつか見てみましょう。
Twitterを検索すれば↓こんなのがいくらでも出てきます。 

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風日祈@kazehinomi 

「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が「日韓市民は連帯しよう」で答え合わせ完了。単なる在日の反日団体。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190820-00000044-cnippou-kr 

午後10:46 · 2019年8月20日·Twitter Web App 
1件のリツイート 
1件のいいね 
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旦ちゃん@danchan0111 

【速報】ニューヨーク・タイムズ、編集拠点を香港からソウルに移転へ | 保守速報 


どうりでいつも反日記事ばっか書いてんなーと思ってたら…答え合わせ終了やんw https://hosyusokuhou.jp/archives/48882791.html 


午後4:54 · 2020年7月16日·Twitter for iPad 
4件のリツイート 
3件のいいね 
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ステロイドパワーズ@DPowers2020 
返信先: @ChiakiAsamiさん 

今の日本、 


オールドメディアが偏向記事を書く 
↓ 
ネトウヨがSNSで「正論」で訂正 
↓ 
パヨクが発狂、最後は「差別!」か 
「中指立てて」政権批判 
↓ 
そして立憲民主党の支持率が下がる 


SNSは今や 
メディア、マスコミの 
「反日答え合わせ」 
になってる。 


午後11:50 · 2020年9月23日·Twitter for Android 
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…はい、どれも見事に『後件肯定』ですね。 


見ていると『答合わせ』はどうやら「ほら見ろ、思った通りだぜ」の意で使われている様ですね。 


例えば上記の最初の例は 

「反戦系団体は日韓連帯を叫んでる、だから正体は在日だ、思った通りだぜ」、 


2番目のやつは 

「反日記事ばかりのニューヨーク・タイムズが編集拠点を香港からソウルに移転した、つまりその正体は韓国だ、思った通りだぜ」、 


というニュアンスがある訳ですね。 

3番目のやつは都合の良い修飾だらけ… 
これは『含みのある言葉』『充填された語』(loaded language)と呼ばれる詭弁です。 
おまけに最後の段には飛躍がありますが、煎じ詰めれば 

「メディアの記事をネトウヨが批判すると左翼が反論する、思った通りだぜ」 


ということで、やはり同じです。 


しかし最初の例は単に 

「左翼は共感的で連帯しがち」 
「自慰史観を批判する団体同士は一致点が多い」
、 


2番目のやつは 

「中国はメディアが抑圧されるので近くにあって自由に報道のできるソウルに移転した」、 


3番目のやつは 

「お互いに論陣を張って反論・再反論を繰り返す」、 


というだけでは…? 
どれもごく当たり前のことですよね? 
このへん、万引きの例で言うと 
「A君は本当に万引きしてないので否定しただけ」 
と解釈できるのと同じです。 


むしろ2番目のやつなんか、もし他社は香港から逃げ出してニューヨークタイムズだけが残り続けたら、それはそれで「中国政府と仲良しだからだ」ってコトにされ、どっちにしてもネトウヨさんは「中韓ガ―!」と言い続けるのでは…? 


この3つはいずれも 

「実は左翼は在日」 
「実はニューヨークタイムズと韓国はつながっている」 
「実はメディアは左翼とつながってる」 


…つまり 
「世間には知られていないが実は○○と△△は裏でつながっている」 
という話な訳です。 
一般的には認められていない陰謀によって全てを説明する… 
これって陰謀論じゃん。 


そして陰謀論はどんな証拠が出ても結論は変わりません。 
2番目の例でも、どっちに転んでもネトウヨさんは意見を変えなさ気でしたよね… 


例えば「アメリカ政府は宇宙人と密約を云々」といったUFO陰謀論系の人たちは、 
アメリカ政府がUFO関係の情報を積極的に出すと 
「政府ももう認めざるを得なくなってきて、今のうちから情報を小出しにし、世間のショックを和らげようとしてるのだ」 
と解釈します。 
逆に政府が 
「密約などない」 
と否定しても、 
「密約を隠蔽するために否定してるのだ、これだけ頑なに否定することこそが密約の証拠だ!」 
と解釈し、「密約がある証拠」にカウントしてしまうのです。

陰謀論は都合に合わせて解釈を変更することで自論を守るため、いかなる方法でも反証されません。 
それってズルくないですか? 


ネトウヨさんは左翼に動機がありそうな事件が起きると「パヨクの仕業だ!」と言い立てますが、 
右翼に動機がありそうな事件ではしばしば「パヨクの自作自演だ!」と人のせいにします。 
そしてマスコミが事件を報道すれば 
「いつものパヨクの自作自演を反日マスゴミが必死に報道…これもう答合わせだろ」 
と都合よく解釈する訳です。 


陰謀論者は 
「いや、そう解釈すれば全てがつながって何もかもが上手く説明できるのだ」 
と主張します。 

確かに陰謀論でも現実を「説明」することはできます。 
しかしそれが事実であるかは別問題。 


あなたの帽子が突然ふわりと落ちたとしましょう。 
その理由は「風が吹いたから」でも「妖精のいたずら」でも同じ様に説明できます。 
しかしそれを支持する証拠が何もないなら、わざわざ妖精に登場願う必要はないのです。 


スティーヴン・ジェイ・グールドが‪「矛盾のない説明をひねり出す事はどんなバカにでもできる。問題はそれが実際のデータと一致するかだ」みたいなことを言ってた様に思うのですが、どこに書いてあったか思い出せないので、リチャード・ファインマンさんの言葉を(ファインマンさんは常に「さん」付けですよな)。 
‬ 

『理論が美しいかどうか、あなたがどれくらい賢いかは大事ではない。事実が伴っていなければ全ては間違いなのだ。』 


そして、普通に説明できることにわざわざ妖精や陰謀などを持ち出す必要はありません。 
それは説明している振りをしつつ、「妖精」や「陰謀」など余計に説明が必要なものを増やしているだけです。 
「余計な説明を増やすべきではない」「単純な説明ほど正しい」のです。 
この経験則は『オッカムの剃刀』と呼ばれています。 


「シンプルな方が正しい? 
物事をあれやこれやの原因で説明するより、全てを陰謀で説明する方がシンプルじゃねーか」 


と思うかもしれません。 
しかし、陰謀論は先ほど触れた通り、説明が必要なものを増やしてしまっているので、ちっともシンプルではないのです。 


例えば何でも「神の思し召し」で説明する宗教は一見、シンプルに世界を説明している様に思えます。 
超複雑な仕組みを持つ生物はどうやって存在する様になったのか? 
なぜ何も悪いことをしていないのにとてつもない災厄に襲われる人がいるのか? 
全て「神の思し召し」の一言で説明できます。 
しかしそんなことが出来る超知性体である神は生物よりも遥かに複雑な筈…その神はどうやって存在する様になったのでしょう? 
災厄が「神の思し召し」なら、神は何故そんな理不尽に思える判断をしたのでしょうか? 
「神の思し召し」は謎をひとつ先送りしただけで、何も解決していません。 
むしろ余計な謎を増やしてしまっています。 
何でも説明できる理論は何も説明しないのです。 


シンプルなのは宗教や陰謀論による説明ではなく、それらを信じる人々のメンタリティーの方です。 
世界は超複雑であり、それを貫くシンプルな法則もまたいくつもあります。 
それらは相互作用し、その結果として立ち現れる現象は複雑怪奇なものとなります。 
それを理解できない素朴な人々は過度に単純化された世界観に飛びつくのです。 
「全ては神の思し召し」だとか、「全ては中韓の陰謀」だとか、ね。 



実際に低学歴な人ほどダーウィン進化論を信じないというデータがあります。 
ソース↓ 

【NATROMのブログ】 
低学歴ほどダーウィン進化論を信じない 

https://natrom.hatenablog.com/entry/20071203/p1 

さらに『保守支持が低い認知能力と関連している』という研究もあったり。 
↓それによると『右翼イデオロギーは世界の複雑さを最小化するので、低いメンタルの人を惹きつける』のだそうです。 


【忘却からの帰還】 
『「低い認知能力・右翼イデオロギー・偏見」という連鎖についての研究』 

http://transact.seesaa.net/article/411217415.html 


そんな右翼に人気なシンプルマインドのひとつが『自己責任論』です。 
何かが起きた時、 
「その環境は? 社会背景は? 成育歴は? 責任能力は? 情状酌量の余地は? 全ての要素を吟味しよう」 
よりは 
「ゴチャゴチャうるせー、とにかくやった奴に全責任があるんだよ!」 
の方が解りやすいですからね。 

かつて人類が進化した環境においては、グズグズと決断を迷っていると命に関わるため、「ざっくりで良いので、おおむね正しそうな判断を瞬時に下せる者」が生き残ってきました。 
遅巧より拙速という訳ですね。 
こういう、近道で効率的だけど手抜きの思考を『ヒューリスティック』と呼びます。 
我々はその子孫なので、そういった傾向を受け継いでいます。
しかし現代の議論や裁判は石器時代とは違い、じっくり判断しても普通 危険はありません。 


こういう粗雑な思考や
「世界観に合わないなら、現実の方を捻じ曲げれば良いじゃない」 
というミラクル解釈(ネトウヨさんの得意技のひとつ)が自己責任論と結びつくと、しばしば『被害者叩き』が起こります。 


もともと左翼は 

「いつ何時、事故や災害や犯罪に巻き込まれるか判らない」 

と考えがちなのに対し、右翼は 

「普通に善良に暮らしていればおかしなことにはならない」 

という世界観を持ちがちです。 
すると、不幸な目に遭った人に対して左翼は 

「いつ何時、事故や災害や犯罪に巻き込まれるか判らない」 
   ↓ 
「誰でもそうなりうるのだから社会的弱者には共感的であるべきだし、自分がそうなっても困らない様にセーフティー・ネットは拡充しておくべき」 


と考えがちなのに対して、右翼は 

「普通に善良に暮らしていればおかしなことにはならない」 
   ↓ 
「おかしなことに巻き込まれるのはそいつ自身のせい
」 

という自己責任論的な考え方をしがち… 

その果てに 
「被害者側に落ち度があったに違いない」 
と考え、被害者叩きを行うことになります。 

例えば性犯罪被害者に対して 

「隙があったのでは」 
「誘うような恰好をするからだ」 
「全力で抵抗したのか?」 
「本当は合意では」 


などとセカンドレイプを行う、とかですね。 


その背後には 

「この世界は公正に出来ていて、善は報われ、悪は罰される様になっている」 

という『公平世界仮説』があります。  
これは 

「世界は公正なのだから、不幸に見舞われるのはそいつが悪いせい」 

という自己責任論に直結します。 


しかし、よく考えればこの世界はその様に公正になど出来てはいません。 
確かに、この世界は「公正であるべき」です。 
しかし「どうであるべきか」というか価値命題から「どうであるか」という事実命題は導出できません。 
それをやっちゃうのは『道徳主義的誤謬』と呼ばれる誤りです。 

『公平世界仮説』と被害者叩きについては、近年ネットを中心に急速に知られるようになってきました。 
かつての『悪魔の証明』がそうであった様に。 

私が最初にこの概念に触れたのは↓ココで、2014年に紹介されています。 


【忘却からの帰還】 
被害者叩きの心理 

https://seesaawiki.jp/transact/d/%C8%EF%B3%B2%BC%D4%C3%A1%A4%AD%A4%CE%BF%B4%CD%FD 


『公平世界仮説』に基づく被害者叩きは、宗教界でもよく見られます。 
苦しんでいる人に向かって 
「前世の行いが悪かったから」 
とか 
「神罰だ」 
とか言っちゃう人、いますよね…。 


性犯罪被害者へのセカンドレイプは伊藤詩織をめぐる事件でも問題になりました。

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   ↑
伊藤詩織を揶揄する漫画を見て談笑する長尾たかし(自民党国会議員) 、杉田水脈(自民党国会議員)、千葉麗子、花田紀凱、門田隆将、加藤清隆、漫画の作者であるはすみとしこ。 


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   ↑
同じ様なシチュエーションでめちゃめちゃ笑ってるはすみとしこ、杉田水脈、千葉麗子。


やっぱり宗教とネトウヨさんってアレですねぇ…。 








(01:16)

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