2022年03月31日


さて、ここしばらく連続で石川幹人について批判したり、NHKの『ヒューマニエンス』に見られる問題を扱ってきた訳ですが…
遂に『ヒューマニエンス』の「“嘘” ウソでわかる人間のホント」(2022年3月10日放送)という回にかしこブレーンとして石川幹人が出演。 
これは以前に出演していた『チコちゃんに叱られる!』の様な雑学バラエティーではなく、れっきとした科学教養番組なので、NHKはさらにギルティ―。 
きっちり 「進化心理学がご専門の明治大学教授 石川幹人さん」 と紹介されてました。 

さらに今回も、 
◉『もし日常的にウソをつくと、そういった協力関係が破綻してしまいまして、集団の活力を失ってしまいます』 
◉『(ヒトは狩猟時代に)少人数の集団で協力して生活をしていました。食べ物も少ないのでお互い協力して分担してうまく狩猟や採集ができると。そういう集団が生き残った、ということになるんですね。どんな集団が生き残るかというと、やはり他者を信頼して嘘をつかないと。こういうことが大事だっていうことなんです。』 
◉「そういった嘘に関するバランスの良い人々が協力集団を作って、そういった協力集団が今日まで生き延びてきて、我々はそういった人々の末裔だという事ですね」 
などと発言。 
だからそれ群選択やて。 
詳しくはこの↓エントリを参照。 


【ありとあらゆる全般的ぐちゃぐちゃ】
『石川幹人が「進化心理学の第一人者」になってる件 前編』
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/13981620.html


今回はさらに「嘘の起源は一万年前の農耕革命によって人口密度が上がり、知らない人と付き合いだしたからでは」的な発言も。 
…いや、嘘はチンパンジーかてつくやん? 


【THE SANKEI NEWS】 
『【もう一人のあなた 嘘の構図(4)】チンパンジーは仲間をだましニヤッと笑った… 他者の心が分かる知性と表裏一体の「進化の副産物」』 
https://www.sankei.com/article/20150409-4GFIPFIBOJNMLDDKJ25ZDU3M4I/?outputType=amp

しかも嘘が選択によって獲得された能力であることを認めてる割に、その起源が一万年前からって…自然選択の働く時間ないやん。 

例えば、クリストファー・ライアン&カシルダ・ジェタの『性の進化論 女性のオルガスムは、なぜ霊長類にだけ発達したか?』では「一夫一妻制の起源は農耕革命以降」という、ちょっと見は似た仮説が唱えられているのですが… 
こっちは「ヒトは自然状態では一夫多妻制や乱婚制がデフォ、一夫一妻制は農耕革命以降の文化的流行に過ぎない」という話で、ここ1万年の間の急速すぎる進化は前提になってません。 

地質学的にはごく最近のことまで全て選択で説明しちゃうのは、竹内久美子くらいだと思ってたのに…石川幹人よ、お前もか。 


ヒトは表情のわかりやすい顔を進化させ、よりコミュニケーションの得意な動物になりました。 
そしてドーキンスとクレブスによれば、そもそもコミュニケーションの本質は「信号伝達」ではありません。 
そこには常に嘘によって利益を得たいという誘惑があります。 
しかしコミュニケーションの本質は「欺瞞」でもありません。 
それは正直な信号伝達が利益になるなら正直さを、欺瞞が利益になるなら嘘を選ぶ「操作」なのだ、というのが二人の結論でした。 
つまり「嘘」なんてのは、初めからコミュニケーションに織り込み済みなのですね。 
なので私は「嘘の起源は1万年前」とか言われても信じる気になれません。 


そして「嘘を見破るのが苦手」な我々はどうすればよいのか? というクエスチョンに、石川幹人が持ち出した答は…『懐疑の精神』。 
…一応は懐疑主義団体ASIOSに名を連ねてるとはいえ、超絶おまゆう。 


ちなみに他のかしこブレーンの話は面白かったです。 

まずは文教学院大学の村井潤一郎教授のお話。 
◉嘘と感じる理由は、 
 ・状況証拠 40% 
 ・その人への知識 30% 
 ・行動的手がかり 7% 
  で、しぐさ等の行動的手がかりはあまり使われない 
◉「ヒトが嘘を見破る正確さ」は、2000年代に出たメタ分析による有名な論文によれば54% 
◉嘘をついてる時に「視線が増える」という研究もあるが、減るという研究もある 
◉教授が大学生にアンケート調査した結果では、一日に嘘をつく回数は男性1.57回・女性1.96回。 
 しかし嘘を言われたと感じるのは男性0.36回・女性0.36回。 
 つまり嘘の多くはバレてない。 
◉ヒトは初期条件としてコミュニケーションの相手が正直であると仮定する(トゥルース・デフォルト)。 

「トゥルース・デフォルト」は興味深いですね。 
そう、問題は「何故ヒトは嘘をつくか」ではなく、「何故ヒトはもっと嘘をつかないのか」とか「何故ヒトは相手の話をとりあえず真実と見做すのか」の方なんですよ。だって嘘はコミュニケーションの本質に組み込まれてるのだから。 

こんな優秀な人が石川幹人の不誠実さを見抜けなかったのも謎ですが、まぁ嘘を見抜ける確率は54%でしかないらしいし、仕方ないですね。 


あと京都大学の阿部修士准教授によるコイントス実験の話が面白かったです。 
被験者は結果を心の中で予想してからコイントスし、当たってかどうかを申告する…これを繰り返す、というシンプルな実験。 
この実験が巧みなのは、嘘をついてるかが判る点です。 
コイントスの予想的中率は50%なので、それより大幅に多く的中申告する人は嘘を言っている蓋然性が高いですよね。 
そして報酬系である側坐核の働きが高い人は、的中率が高いのだそうです。 
つまり報酬に対する感受性が高い人ほど嘘をつきやすい、ということ。 

…コレ、ESP擁護派の石川幹人は、 
「側坐核の働きが高い人は確率を超えて的中率も高い…つまり側坐核こそ超能力の源泉なんだよ!」 
とか解釈しなくていいんですかね? 


あとこの回、ちょけた織田裕二が「嘘はついてません、という嘘をつく」といった小ギャグを噛ましまくってましたが、メタ発言のつもりだったんでしょーか。 

それよりも、先程の「チンパンジーも嘘をつく」という話で貼ったリンク先… 
アレは「チンパンジー 嘘」でぐぐるとトップに表示された記事なのですが、 
◉媒体が産経新聞 
◉研究してるのが京大霊長類研究所、コメントしてるのが松沢哲郎 
というところに戦慄。 
産経新聞社は歴史修正主義的なトンデモ企業。 
そして松沢哲郎って…研究資金5億円の不正支出で懲戒解雇された上、名門・京大霊長類研を解散に追い込んだ戦犯やんけ~! 
ちなみに京大前の古書店に、この人が他の研究者に贈ったサイン入り著者謹呈本があったのでGET。 
ため書きがあるので、叩き売った研究者の名前も丸わかり…。 

嘘を語る番組にあまり正直と思えない人が出ていたので調べていくと、こちらのソースにも背後に嘘や裏切りが…! 
地獄。 
こっちの方が織田裕二のギャグより遥かにメタ構造でした~。 




【オマケ】 

『ヒューマニエンス』、「“顔” ヒトをつなぐ心の窓」( 2021年12月2日放送)という回では 
「嘘は微表情で見抜ける」的な話をしていたのにねぇ…… 
そっちの方では元・京大総長の山極寿一が「ヒトは白目があるから表情によるコミュニケーションが発達した」的な話をしてました。 
こういうのはお互いがお互いを強化し合うサイクルだと思いますが、それでも順番から言えば「ヒトは表情によるコミュニケーションを発達させる方向に進化したから、視線方向が分かりやすい様に白目が目立つようになった」の方が適切では…逆~! 
そういやこの人も京大霊長類研の出身だな~… 





(02:26)

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