2022年03月27日


石川幹人シリーズ続行。 



これまで見てきた様に、石川幹人が進化論を理解しているとはとても思えないのですが… 

石川幹人のサイト 
『超心理学講座―「超能力の科学」の歴史と現状―』 
https://www.isc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/index.htm 
の中にはこんなページがあります。 


超心理学講座 進化適応の理論 
https://www.isc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/5-2.htm 


…要するに、超能力の進化的基盤を探ろうという試みですね。
まぁ超心理学と進化心理学を標榜してるんだから当然の発想ですわな。 
全文をこのエントリの末尾に保存しておきます。 
ざっくり要約するとこう↓です。 

・・・・・・・・・・・・・・・・ 

<1> PSIは進化によって獲得されたか 

超能力は進化による適応か? 
生存上、有利になるからそうかも。 
では、その割に超能力が弱めなのはどうして? 
エネルギーコストが高すぎるのかも。 
まぁ超能力が物理的にエネルギーを要するのかは謎ですが。 


<2> 進化的安定戦略 

超能力が弱いのは「進化的に安定な戦略」(ESS)で説明できるかも。 
常に戦闘的なタカ派と、闘わないハト派のいる「ハト・タカ」ゲームを考えてみよう。 
タカ派は有利に思えるが、タカ派同士がぶつかると大ケガする。 
ハト派はハト派同士ではうまくやれるがタカ派には一方的にやられる。 
両者の中間、「状況次第で戦うこともあるし逃げることもある」が進化的に安定な戦略である。 
超能力もやたら発揮しない方が有利だったのかも。 


<3> 高級能力としてのPSI 

あるいは微弱だったり制御不能な能力が偶然、頭を出した「高級能力」かも。 
でもまず意識の研究が進まないと。 

<4> PSIは進化の原理を変えるか 

進化と関係ない可能性も。 
あるいは超能力に目的指向性があるなら、「獲得形質は遺伝する」というラマルキズムが復活するかも。 
ケストラーとかラインとか超心理学の先人たちはラマルク説を支持してたし。 

・・・・・・・・・・・・・・・・ 


なお、石川幹人のこのページには 

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<X> 付記 
本項の内容はSSPにおけるブラウトン氏の講演と,まえがきに掲げた彼の「文献4」をもとにしている。
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とあります。 
…ですよね、これだけ進化論の基本が解ってないのに、急にESSとか持ち出すなんて不自然です。 
しかし冒頭で 

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5-2 進化適応の理論 

明治大学情報コミュニケーション学部教授 
メタ超心理学研究室 石川 幹人 

本項では,我々がPSIという能力を持っていると仮定した場合,進化生物学から考えて,その性質はどのようなものかを検討する。 
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…と自らの文責で述べている以上、単に「紹介した」だけではなく、支持している筈ですよね。 

ではこれらの妥当性を検討していきましょう。 

・・・・・・・・・・・・・・・・ 
<1> PSIは進化によって獲得されたか 

超能力は進化による適応か? 
生存上、有利になるからそうかも。 
では、その割に超能力が弱めなのはどうして? 
エネルギーコストが高すぎるのかも。 
まぁ超能力が物理的にエネルギーを要するのかは謎ですが。 
・・・・・・・・・・・・・・・・ 

「超能力があるとすれば適応進化によるもの」「その割に超能力は力が弱すぎる」という認識は評価します。 

しかしエネルギーコストが高すぎるのだとすれば、では何故そんなにコストが引き合わない性質がわざわざ進化したのでしょうか? 
そして現状の、「ほぼ発揮されない超能力」がコストがちょうど釣り合う平衡点だ、とでも主張するおつもりで? 

超能力が物理的エネルギーを要しないとすればそれこそ驚愕です。 
質量保存則とかどうなってるのでしょうか? 

・・・・・・・・・・・・・・・・ 
<2> 進化的安定戦略 

超能力が弱いのは「進化的に安定な戦略」(ESS)で説明できるかも。 
常に戦闘的なタカ派と、闘わないハト派のいる「ハト・タカ」ゲームを考えてみよう。 
タカ派は有利に思えるが、タカ派同士がぶつかると大ケガする。 
ハト派はハト派同士ではうまくやれるがタカ派には一方的にやられる。 
両者の中間、「状況次第で戦うこともあるし逃げることもある」が進化的に安定な戦略である。 
超能力もやたら発揮しない方が有利だったのかも。 
・・・・・・・・・・・・・・・・ 

石川幹人はこのページでこう書いています。 

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PSI能力は,進化的安定戦略として,ある種のナワバリの内側でのみ有効に働くように抑制されているのでないか,という可能性が考えられる。PSI能力を使って資源を奪い合う個体群は絶滅し,個体の周囲に限って,あるいはまさかの時のみにPSIが発揮されるような謙虚な個体群が,現に今,生き残っているとされる。この理論に基づいて想像力をたくましくすれば,ナワバリの外側でPSIを発揮する個体がいたら,皆がPSIを働かせてやっつけてしまうというプロセスで,隠蔽効果も説明できよう。また,PSIが意識的には働きにくいという観察事実も,意識的に働かせることによって破滅的結果を招いた進化の歴史上の必然から,意識とPSIとを切り離す突然変異が起きたとも説明できよう。 
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…『PSI能力を使って資源を奪い合う個体群は絶滅し,個体の周囲に限って,あるいはまさかの時のみにPSIが発揮されるような謙虚な個体群が,現に今,生き残っているとされる』の部分は、またしても群選択ですね…。 

それはともかく、ここでは超能力は明らかに「生死に直結する能力」だと仮定されています。 
えらい強力ですね。 
『ナワバリの外側でPSIを発揮する個体がいたら,皆がPSIを働かせてやっつけてしまう』 
というあたりはほぼ戦闘能力だし。 
そんな直接に生死に直結する能力や戦闘能力だったら、持ってた方が有利だと思いますけど。 

「ハト・タカ」ゲームは、「常に少数派が有利になり、数を増やす。増えすぎると多数派になって不利になり、数を減らす…そして最適な比率に落ち着く」という「頻度依存」を説明するための仮想的な例です。 
頻度依存があてはまる具体例は、子供を生む時にオスを生むべきかメスを生むべきか、とかですね。 

逆に「ハト・タカ」ゲームのシチュエーションを愚直に踏襲するなら… 
そもそもハト派とタカ派って、「能力面で差がある」とは仮定されてないんですよね。 
タカ派は戦う、ハト派は逃げる、という戦意だけの問題なんで。 

という訳で、コレ無茶苦茶やんけ。 

これは「明らかにあれば有利な筈の超能力が発揮されない」ことを説明するために「有利に見える形質が発揮されない例」としてESS(進化的に安定な戦略)を持ち出しただけに見えます。 
男系天皇制論者が、男系でなければならない理由を無理やりひねり出してY染色体論を持ち出すのと一緒。 
アレは「Y染色体論が男系天皇制論の正しさを証明する」のではなく、「もし男系天皇制論の正しさを証明するものがあるとすれば、それはY染色体上にしか存在しえない」というだけなんよね。 
何も証明されてません。 
それと同じで、「ESSが超能力が弱い理由を説明する」というより、「超能力が弱い言い訳を考えつくの、難しいなぁ…なんか有利そうな形質やのに何故か進化しない例ってないかなぁ…あ、ESSがあるわ、これで説明したろ!」と考えただけに見えます。 

それだったらハンディキャップ理論でも持ち出して「あえて超能力を持たずに、それでも生き残れることを示して自分の優秀さをアピールしてるのだ」とか何とか説明した方がマシでは…? 
もっとも、超能力がダーウィニズムに乗ってる証拠を何一つ挙げずに、ダーウィニズムの特殊例であるESSやハンディキャップ理論に頼るのは無理筋だと思いますけどね。 


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<3> 高級能力としてのPSI 

あるいは微弱だったり制御不能な能力が偶然、頭を出した「高級能力」かも。 
でもまず意識の研究が進まないと。 
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例え偶然であれ、そんなとんでもなく便利な能力の基盤があるなら、最初はどんなに微弱であろうと制御不能であろうと、速やかに洗練された能力に進化すると思うんですけど。 
プリンストン大・ウプサラ大よるダーウィンフィンチの研究では、新種への進化は2世代ほどという短期間で進む場合があるとされてます。 


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<4> PSIは進化の原理を変えるか 

進化と関係ない可能性も。 

あるいは超能力に目的指向性があるなら、「獲得形質は遺伝する」というラマルキズムが復活するかも。 

ケストラーとかラインとか超心理学の先人たちはラマルク説を支持してたし。 
・・・・・・・・・・・・・・・・ 

ダーウィニズムは、我々が知る限り、適応を生み出す唯一の力です。 
超能力というすごい能力が、ダーウィニズムによって獲得されたのではないとすれば、それはとんでもないことです。 
ではどの様にして獲得されたのでしょうか? 

獲得形質の遺伝は、完全に否定されています。 
「ケストラーやラインはラマルク説を支持してた!」 
とか言われても、 
「超能力とか信じちゃう様な素朴な人は、ラマルク説も信じちゃうんだな~… 
アレか? 反ワクチンの人はしばしば911陰謀論も信じちゃう、みたいなコト? 
トンデモはトンデモを呼ぶなぁ…」 
としか。 


…という訳で、やはり「進化心理学の第一人者」石川幹人が進化論をちゃんと理解してるとは、とても思えないです。 






【資料】 

超心理学講座 進化適応の理論 
https://www.isc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/5-2.htm 
全文↓を保存。 
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5-2 進化適応の理論 

明治大学情報コミュニケーション学部教授 
メタ超心理学研究室 石川 幹人 

本項では,我々がPSIという能力を持っていると仮定した場合,進化生物学から考えて,その性質はどのようなものかを検討する。 

<1> PSIは進化によって獲得されたか 

ESPが五感と同様に人間の知覚能力の一部であり,PKが手足と同様に人間の運動能力の一部である,としてみよう。生物学的に考えれば,人間の能力は進化的に獲得されてきた。すなわち,生存競争に勝ち残ることによって,多くの変異種の中から環境に適応した種が繁栄する,そのプロセスで,必要な能力が獲得されるのだ。PSIが生物学的な能力であるならば,PSIは環境に適応的な役割を果たしていたので,我々に備わったことになる。他の個体よりも生存競争で優位に立ち,遺伝子を後世に残すのにPSIが利用されていたに違いない。 
確かに,ESP能力は食べ物を探すのに利用できるし,PK能力は食べ物を獲得するのに利用できる。PSI能力は高ければ高いほど,生存競争に有利であろう。ならば,何故我々は高いPSI能力を持っていないのだろうか。強靭な手足の筋力は生存競争に有利ではあるが,それを維持するのに多くのエネルギーが(すなわち多くの食べ物が)必要であるから,結局は進化の過程で最も効率が良い(現在の)手足の筋力に落ち着いたと考えられる。それと同じように,PSI能力の維持にエネルギーがいるのだろうか。残念ながら,PSIと物理的なエネルギーの関連は見出されていない(むしろ関係が無いと考える超心理学者が多い)。 
では,PSI能力の低さは,生物学的にどのように説明できるだろうか。そのひとつの可能性は進化的安定戦略である。 

<2> 進化的安定戦略 

進化的安定戦略とは,進化生物学者のメイナードスミスが理論的に導いた,進化上獲得される行動形態のことである。直感的に言えば,ある行動形態は,その戦略をとる個体が増えても安定であり,かつその増えた状態で他の戦略をとる個体が優位にならない場合に,進化的に安定な戦略として,生き残るのである。 
戦いを好む個体(タカ派)と,好まない個体(ハト派)の例で考えてみよう。力が強く戦いを好むタカは,生存競争に勝ち残り子孫を増やす。ところが,タカが大勢を占めるようになると,戦いばかりが発生し,互いに傷つけ合って安定した繁栄が望めない。一方で,戦いを好まないハトは,大勢になっても問題は少ないが,その状態にタカが現われると,食べ物を独占できてハトが追われてしまう。タカもハトも進化的安定戦略ではなく,進化上は,タカとハトが混在した状態で推移する。 
しかし,それらの中間的な行動形態には,かなり進化的に安定な戦略がある。それはナワバリ派であり,自分のナワバリの内側ではタカとして振舞い,他の個体の進入に対して戦いで排除しようとする一方,ナワバリの外側ではハトとして振舞って,他の個体に資源(食べ物,水,住居など)を譲るのである。ナワバリ派は,同一戦略を取る子孫が増えても,ナワバリに十分な資源がある間は繁栄を続けられるし,単純なタカやハトより,通常は進化的に優位である。 
PSI能力は,進化的安定戦略として,ある種のナワバリの内側でのみ有効に働くように抑制されているのでないか,という可能性が考えられる。PSI能力を使って資源を奪い合う個体群は絶滅し,個体の周囲に限って,あるいはまさかの時のみにPSIが発揮されるような謙虚な個体群が,現に今,生き残っているとされる。この理論に基づいて想像力をたくましくすれば,ナワバリの外側でPSIを発揮する個体がいたら,皆がPSIを働かせてやっつけてしまうというプロセスで,隠蔽効果も説明できよう。また,PSIが意識的には働きにくいという観察事実も,意識的に働かせることによって破滅的結果を招いた進化の歴史上の必然から,意識とPSIとを切り離す突然変異が起きたとも説明できよう。 

<3> 高級能力としてのPSI 

一方でPSIは,五感や手足のような原始的能力ではない可能性がある。PSIは,あまりに微弱(あるいは制御不能)であるため,進化上の環境適応手段として用いられてこなかった。ところが,人間が進化して意識が現われた進化の段階で,何らかの進化上の偶然で顔を出し始めた「高級な能力」なのかもしれない。 
こうした方向の研究は,意識の探究(8-4)を進めた上で,初めて取組めるものだろう。現在は「意識」の進化的説明に諸説が立てられている段階である。例えば,生化学者ケアンズスミスの『心はなぜ進化するのか : 心・脳・意識の起源』(青土社)を参照されたい。 

<4> PSIは進化の原理を変えるか 

そもそもPSIが存在するのであれば,生存競争に基づく進化の原理は修正されねばならないという議論も成立つ。タートが唱えるように,PSIによって自他の分離が消える(8-5)ならば,個体の環境適応度は,その個体の持つ遺伝子に直接起因するわけではなくなる。 
またスタンフォード(5-3)やシュミット(5-6)らが主張するように,PSIに目的指向性があるとすると,進化生物学が葬ったラマルクの獲得形質遺伝説が,一転して現実味を帯びてくる。エジンバラ大学に超心理学講座を寄付したケストラーは,ラマルク説をあからさまに支持していた(『サンバガエルの謎 : 獲得形質は遺伝するか』サイマル出版会)し,デューク大学に赴任した頃のラインは,マクドゥーガルとともにネズミの迷路学習の実験を行ない,獲得形質の遺伝に対して肯定的な結果(迷路の学習が速くなる)を得ていた。 

<X> 付記 

本項の内容はSSPにおけるブラウトン氏の講演と,まえがきに掲げた彼の「文献4」をもとにしている。 

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(00:16)

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