2022年03月22日


2年前、Twitterにこんなつぶやきが。 


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牛乳雑巾ヽ(`ι _´;)ノ@kz1300kawasaki·2020年6月4日 
オランダの博物館から問い合わせ。これはアマビエのミイラなんじゃないかって様な事を言ってんだけども(;´・ω・) 

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牛乳雑巾ヽ(`ι _´;)ノ@kz1300kawasaki·2020年6月4日 
倉庫を片付けていたら奇妙な物を見つけた。鳥に似た姿だが、脚が3本ある。恐らく古い日本で作られた。 
「COVID-19」を鎮めるために日本にはアマビエと言う妖怪がいると聞いているが、その容姿を再現した物ではないかと思う。あなたの意見を聞かせて欲しい。 

だとさ(;゚Д゚) 

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牛乳雑巾ヽ(`ι _´;)ノ@kz1300kawasaki·2020年6月4日 
オランダの博物館には江戸時代に日本から持ち帰った人魚や河童のミイラがたくさん収蔵されている。ウロコは恐らく鮭、毛髪は麻だろう。言うまでもなく、コイツはフェイクだ。 

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これが本当なら、凄い発見ですね! 

…でもアマビエって資料はあの有名な刷り物1点のみの超マイナーな存在やで…? 
そもそもアマビエはアマビコの誤記と思われる訳ですが… 

アマビコの方は近年 資料も増えて、めちゃめちゃバリエーションがあることが判明しています。 
様々な漢字表記があったり、姿かたちが多様であったり、毛むくじゃらの山モノから鱗まみれの海モノに移行中のアマビコ図まであったり… 
それだけ広く知られていた存在でした。 
しかしアマビエはそうではありません。 

また、怪物のミイラはわりと個性的な顔をしてがち… 
「え、コレがカッパなの…?」みたいなやつとか。 
なのにこのアマビエミイラはあまりにもあの図に似すぎ。 

あと造形の上手さも気になります。 
通常、昔の人が作った怪物のミイラはデッサン狂いまくりで、骨格や生物感を押さえない、ハリボテ丸出しの稚拙なものです。 
特に頭部は造形家が一目見ればフェイクと判ります。 
ところがこのアマビエは、ツイート主自身が(昔の)フェイクだと認めているにも関わらず、頭部形状、特に正面から見た時の破綻があまりありません。 
明らかに近代的な作りです。 
その一方で色は妙に白く、古びた感じがあまりしません。 
例外もあるものの、通常は黒ずむものですが… 


そして謎なのは、仮にこんなモンが倉庫(収蔵庫?)から出てきたとして、何故オランダの博物館がこの人に聞くのか? ということです。 
普通、大学の研究者とかに聞かないですか…? 

そして怪しげ情報の常として、さっぱり続報ないやん…。 


しかもこの発信者、造形畑の人みたいなんよね。 


Twitterのプロフィールは↓こんな。 

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牛乳雑巾ヽ(`ι _´;)ノ@kz1300kawasaki 
人形(`ι_´;) 
妖怪(`ι_´;) 
能面(`ι_´;) 
ミニカー(`ι_´;) 
プラモデル(`ι_´;) 
昔の名前で出ていますヽ(`ι _´;)ノ 

女性は太目が好き(超小声) 
日本 京都2015年7月からTwitterを利用しています 
346 フォロー中 
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この方、このツイート当時は『笑ひ般若(`ι _´;) · @kz1300kawasaki』という名前で、プロフィールの下には↓こんなリンクが置かれてました。 

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リンク 京都妖怪博覧会 妖の宴~アヤシノウタゲ 
京都妖怪博覧会 妖の宴~アヤシノウタゲ 
古来からの伝統的素材と技法で妖怪を製作&コレクションしているヲモカゲ一座のサイト。 作者がこの世に存在しなくなっても次世代に、100年先まで継承される作品となる事を願って。 
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リンク先はココです。 


【京都妖怪博覧会 妖の宴∼アヤシノウタゲ】 
https://womokage.amebaownd.com/
ちなみにこのサイトによれば、2013年の京都妖怪博覧会には漫画家の永野のりこ(個人的に超リスペクト)が参加していたようです。 
スゲェ! 

ここの「WORKS」のページには↓こうあります。 

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-妖怪- 

はっきりとは見えない、感じられない、けれども日本人が恐れと畏れを抱き続けてきた存在… 

文明開化以前の日本の美意識から生まれた妖怪を 
古来からの伝統的素材と技法で製作&コレクションしているヲモカゲ一座のサイト。 

作者がこの世に存在しなくなっても次世代に、100年先まで継承される作品となる事を願って。 

womokage@gmail.com 
(ご連絡頂く場合は@を半角に) 

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さらに↓こんなプロフィールも載っています。 

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PROFILE 


-人形師- 

前島哲也  

静岡生まれ。木彫胡粉彩色と言う昔ながらの製法で御所人形を製作。 

1982年静岡学園高等学校卒業後、300年続くと言われる京都の有職御人形司に師事 

以降人形制作と古い人形の修理などを手がける 

1990年静岡松坂屋にて初個展 

1992年静岡松坂屋にて個展 

松坂屋では2002年~2014年と二年毎に個展 

2005年、2007年11月 京都人形ギャラリー久樂にて個展 

2006年京都宝鏡寺人形展に出品 

2009年3月京都同時代ギャラリーにて個展 

2009年4月京都同時代ギャラリーにて同時代展出展 

2009年10月横浜ギャラリー元町にて個展 

2010年12月横浜そごう美術画廊にて個展 

2013年・2014年、京都の古刹大善院にて「京都妖怪博覧会」を開催。 

2017年西願良平原作、山崎貴監督の東宝映画「DESTINY鎌倉ものがたり」にて 

妖怪ミイラ、人形、妖怪面制作、装飾協力などで参加。 

(2017年12月9日公開。2018年度正月映画。堺雅人・高畑充希ほか) 

日清食品 やきそばUFOウェブCM上で藤岡弘氏の人形「フジオカッパ」を製作。 

他個展、古典人形の修理多数 

お問い合わせは womokage@gmail.com まで 

(@を半角に替えてください) 

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…『妖怪ミイラ、人形、妖怪面制作』とありますね。 



ネットの反応はどんな感じでしょうか? 

【Togetter】 
『オランダの博物館「これはアマビエのミイラなんじゃないか」→その正に特徴を捉えた姿に、正体やルーツが気になる皆さん』 
https://togetter.com/li/1535926 …普通にガチ信じしてるやん…。 


しかしこんなのも発見。 

↓最初のツイートへの返信 
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返信 
mei@gabumei·2020年6月4日 
返信先: @kz1300kawasakiさん 
うまく作られましたね口を開けた笑顔 
新作ですか? 

どこかの個展でみられるかな、楽しみ 
( *´艸`) 
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さらにこんなツイートも。 

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松浦 だるま@darumaym·2020年6月5日 
アマビエのミイラの造形や年代よりも「アマビエはあの絵通りのミイラが作られるほど知名度があった、信仰されていた」という誤情報が一般化する可能性へのモヤモヤがある。 
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佐藤有文や中岡俊哉といった昭和の子供向けオカルト本ライターは、平気でインチキ情報を書いていました。 
例えば↓こんな。 


【いちばんくわしい「びろーん本(仮)」まとめ】 
http://raira314.web.fc2.com/kuwasii.html 


中にはそれらのインチキ情報を水木しげるが逆輸入して自分の本に載せてしまい、お墨付きを与えてしまうことも…。 
しかし妖怪・怪物クラスタはよく訓練されているため、それらすらも「怪しげな魅力」と解釈することがしばしばあります。 

例えば水木しげるの妖怪画の元ネタを徹底リサーチした同人誌があるのですが… 
その本は水木しげるがルドン等、シュルレアリスム界隈の画家から大量にパクってることを明かしながら、一切責めません。 
むしろ「天才が天才の作品を使って極上のパズルに仕立ててくれてる」みたいなコト言って大喜びです。 

…という業界なんよね。 

さらに、怪物系の本はしばしば『鼻行類』『秘密の動物誌』『ツチノコ―幻の珍獣とされた日本固有の鎖蛇の記録』の様に、フィクションであることを明言しない場合があります。 
種明かししちゃうのは粋じゃない、というコトでしょうが… 
懐疑主義的には、真と偽が不分明なまま流通しちゃうのは問題です。 

竹内久美子なんて、『鼻行類』の著者とされるシュテュンプケの名を持ち出して、自分の著作を『シュテュムプケ流の高度なジョークとして楽しんでほしい』と正当化してますからね。 






(03:28)

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