【竹内久美子さん、例の睾丸記事を書籍化してた】

その②: 竹内久美子さん「(セクハラが許容されないと)社会がおかしな、不自由なことに」



   【前回
その①:竹内久美子さん、暴力を肯定してしまう
http://wsogmm.livedoor.blog/archives/17264691.html



   (承前)





そして話は浮気へ。


【浮気】

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私は「不倫」という言葉が嫌いなんです。単なる「浮気」に「倫理に反する」と言う価値観を導入しているのは人間だけですから。
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(P.78)

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 そうなると、浮気が発生するの当たり前でしょう(笑)。だから浮気はいけない、倫理に反すると言うのは、言葉によって他者をコントロールできるようになった人間特有の価値観であり、単に浮気に成功できない、冴えない男たちのプロパガンダではないかと思うのです。
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(P.79)

オスは交尾を繰り返すことで多くのメスを受精させられますが、メスは多くのオスを受け入れても産める子の数はほぼ変わりません。
そのため、オスは「質より量」でとにかく多くのメスと交尾したがり、メスは「量より質」で好みにうるさく、オスをじっくり選別します。
そのため、現代日本の「浮気=悪」という価値観は男性ではなく女性の立場に有利なものになっています。
プロパガンダ云々を持ち出すなら、コレってむしろ女性によるプロパガンダじゃね?

そもそも性的にも社会的にもヒエラルキーの底辺にいる筈の『冴えない男たち』がどうやってプロパガンダを成功させたんですか?
ナチスですら宣伝効果の薄さには手を焼いていたし、とっくの昔に選挙権を手にした黒人が米国大統領になったのはようやく2009年、人口の半分を占める女性は一度も大統領を輩出していません。
その辺の説明もなしに『冴えない男たちのプロパガンダ』とか言われても、その主張自体が学界で認められることのない「冴えない保守のプロパガンダ」にしか見えないです。

そして川村二郎は…

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竹内 そうです。だから、浮気が成就できるというオスは、メスから見て非常にレヴェルが高いんです(笑)。川村さんは浮気に成功されたんですよね(笑)。
川村 いやあ、どうだったか……訴追の恐れがありますから…… (笑)。とにかく、女はいつまでたっても忘れない動物ですからね(苦笑)。

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(P.84)

…と、相変わらずのオヤジ発言。
一方、竹内久美子は…

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男と女の浮気……どちらが罪が重いかというと、実は女の浮気です。この件については後で詳しく説明しますが、とにかく男は常に目を凝らして「浮気ができないかな」と思っていますが、女は「この人だ」と決めたら、一発で仕留められるくらいの"巧妙な手段"を駆使して浮気をし、その男の遺伝子を取り入れるんです。
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(P.84)

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たとえば結婚してる女性が、夫とは別の男性と交わり、子供ができたとします。そうなると、女は巧妙にその事実を隠しますから、「あなたの子よ」と言って、今の夫に子供を育てさせる。その事実を知らないままだとすると、夫にしたら大変な損害ですよ。女の浮気が罪深いというのは、そういうことです。
 それに対して、男が浮気をして子供ができても、相手に夫がいれば同じように騙されて子供を育ててくれるかもしれません。そうすると、浮気をしたほうの男も、浮気をされた女の方も、何も損をしない。
川村 男の浮気と女の浮気では、大変な違いがあるわけですね。

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(P.86)

…またしても事実と価値観のゴッタ煮
しかも「女の浮気の方が罪深い」という、男性優位文化を擁護しちゃってますね。

あとまるで男性が浮気しても誰も損しないみたいな口ぶりですが、「男性の浮気相手の夫」から見ると托卵されて大損害やんけ!
確かに「浮気してる男性とその妻」「浮気してる男性と浮気相手」の各カップル内では(遺伝的には)誰も損してませんが…そこだけわざわざ取り出して注目する理由はありません。
そもそもコレ、誰かが得すれば誰かが損するゼロサムゲームやろ…。

しかも竹内久美子はその後、
「男性はパートナーの体の浮気を嫌い、女性はパートナーの心の浮気を嫌う。
男性は体の浮気をされると托卵される可能性があり、女性は心の浮気をされると捨てられる可能性があるからだ」
という話をしています(P.87)。
つまり「浮気してる男性とその妻」の間でも、妻の側にはリスクがあるのに、そこには全く触れず…。

自分に都合の良い様にバイアス塗れの主張をする、竹内久美子の悪いトコが全開ですね。

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竹内 (中略)ある学者によると、「浮気相手九:夫一」の確率で子供ができる。まぁ、それでも夫の精子が勝った場合は致し方ありませんが(笑)。
川村 致し方ないは、夫に失礼でしょう。それにしても、とんでもない話ですね(笑)。女性は無意識的に優れた遺伝子を求めているんですね。
竹内 しかも無意識だから、夫の前で浮気してる自覚があまりないのでバレにくい。もし罪悪感を覚えていたら、挙動不審になってすぐわかってしまうでしょう

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(P.86)

川村二郎にまでツッコまれてしまう竹内久美子。
しかも女性に『浮気してる自覚があまりない』という部分は根拠レス。
女性にそんな凄い機能が備わってたらめっちゃセンセーショナルに発表される筈ですが、そんなん聞いたことないよ?


そして話は、喜多嶋舞の子をDNA鑑定したところ、夫である大沢樹生の子ではなかった事件について。
竹内久美子は発覚前から「大沢さん、それはあなたの子ではないでしょう」と思っていたそうです。
その根拠は…
性交渉を持ってから4週間ちょっとで妊娠が判明するのに、子供ができたと喜多嶋舞が大沢樹生に告げたのが2ヶ月後だったこと(P.90)。

え、普通にありえるやろ…
コレを竹内久美子は『明らかにおかしい』『数字が合わない』と言います。
普通「数字が合わない」って性交時期と妊娠時期が合わない場合やろ…
妊娠は個人差が激しく、2~3ヵ月は自覚がない人もザラにいますよね。
また、喜多嶋舞が妊娠を2ヵ月まで伝えないことで、何か得します?
根拠としては弱すぎ。

つまりコレ、テキトーに言ってたことがたまたま当たった時だけ大騒ぎする自称予言者と同じなんじゃ…。
しかも事後に持ち出す予言には何の価値もないよね。

自説に当て嵌まる事例を持ち出すのはこの人の得意技。
あと川村二郎も妙な特技なのかコレが上手く、対談中に竹内久美子が言ったことに合わせてその場で「当て嵌まる事例」を挙げてみせ、その能力を絶賛されてます(P.196)。
しかし、探すべきは「当て嵌まる事例」ではなく「当て嵌まらない事例」なんだよなぁ…。
「全てのカラスは黒い」と主張したいなら、黒いカラスをいくら集めても意味がありません。
「黒くないカラスがいないか」をチェックするべきです。

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一九七〇年代、コンドームが手に入りやすくなりました。それまでオギノ式などの避妊法がありましたが、強力な避妊具であるコンドームが普通に流通するようになった。それまでは浮気や婚前交渉で妊娠しやすい環境にあったところ、コンドームを装着することでほぼ完璧に避妊できる。そうすると、質の良い縁を持った男が、コンドームによって、その遺伝子を残すチャンスが奪われてしまいます。その影響で、日本人そのものが弱体化してしまったのかもしれません。
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(P.93)

えっ、コンドームで日本人が弱体化!?
それは大変です。
だとすれば、世界中で国民の弱体化が広く見られ、そのタイミングにはコンドーム普及との相関が見られる筈です。
その様な傾向は見つかっているのでしょうか?
だから思い付きを検証抜きですぐ口にすんなって。

あとオギノ式は避妊法ではなく受胎法です。



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竹内 (中略)虐待事件を見るとよくわかりますが、新しく迎え入れた男性が、女性の子供を虐待することはよくありますし、女性自身もそのことがわかっている。
川村 ライオンと一緒ですね。確かにそのパターンは多い気がします。
竹内 しかも、次の繁殖に重点をおきたいので、たとえ実の母親だとしてもその男の虐待に加担するなどして、自分の子供を殺してしまうことがあるんです。

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(P.96)

義父が虐待や子殺しを行う率が高いのは事実です。
マーティン・デイリーとマーゴ・ウィルソンによる研究は有名ですし、彼らの『シンデレラがいじめられるほんとうの理由』を翻訳したのは竹内久美子だったり。
義父が子殺しをする理由は「遺伝的なつながりがないから」なのですが…
コレは逆に「遺伝的につながりのある実母は子殺しをしない」ということなのに、どうしても動物行動学で全てを説明したい竹内久美子は、女性が
『次の繁殖に重点をおきたいので、たとえ実の母親だとしてもその男の虐待に加担するなどして、自分の子供を殺してしまうことがある』
とか言っちゃいます。
動物行動学的なロジックで言うなら、本当にあるかどうかも分からない「次の繁殖」よりも、目の前に存在する子を優先させた方が確実で有利やろ…。
こういう毒親の例は適応論ではなく、過剰な恋愛感情や刹那的で享楽的な生活による異常行動と捉えた方が良いのでは…
学説史的には「子殺し」は異常行動と見做されていたものが後に適応論で説明される様になったので、それに逆行したくない気持ちは私にもあります。
しかしそもそも現代の都市生活するヒトは、環境も行動も異常だらけなのもまた事実。

この手の竹内久美子の過剰説明はまだまだ続きます。


【人生二度結婚説】

若いうちに年上と結婚していろいろ教わり、その後若い人と結婚していろいろ教えてあげるという「人生二度結婚説」についての話で…

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竹内 素晴らしい考え方ですね。夫婦同士だったら、たとえば子供が二人生まれた時点で、「子づくりはこれで終りにしよう」となる。でも、それから離婚して、次の新しい異性と一緒になったら「また子供をつくろう」となる。
 つまり、離婚した方が子の数は増やせるわけです。一種の繁殖戦略でしょう。
 しかも、相手を変えているので、子に遺伝的なバリエーションをつけられるという大変有意義なことでもあります。

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(P.98)

…ちょっと聞いただけですぐに「説明っぽいもの」を思いついちゃうんだなぁこの人。
要するに竹内久美子の発言はその程度の思い付きでしかなかったりするってコトですね。

それにしても「2回結婚すると子の数が増える」というのがよく分かりません。
「結婚は2回」が前提の社会では、途中で「2回目の結婚のために子作りをセーブしとこう」となるかもしれませんが…
「結婚は1回」が前提の社会なら2回目のためにセーブする必要がないので、結局は子供の数は変わらないのでは…?
あと普及してる訳でもない仮想的な話で、自然選択の洗礼を受けた訳でもないのに『一種の繁殖戦略でしょう』ってナニよ?
コレくらい、この人の『繁殖戦略』認定は薄っぺらで意味がないんよね…。

しかしこんなん次のに比べれば序の口でした。


【セクハラ】

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川村 そもそも「ハラスメント」という言葉自体をどう捉えたらいいんでしょうか。
竹内 人間も含め、あらゆる動物、いや生物の二大テーマは「生存」と「繁殖」です。セクハラ行為は「繁殖」行為の一環ですから、そういうことがあっても不思議ではない。ただの「浮気」に「不倫」という価値観を持ち込んだのと同じで、「セクハラ」も価値観を導入した結果、社会がおかしな、不自由なことになっているんじゃないでしょうか。

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(P.102)

…とセクハラ容認。
それどころか、セクハラが許容されないせいで『社会がおかしな、不自由なことになっているんじゃないでしょうか』とまで言っちゃう竹内久美子。
これもう半分女性の敵だろ。

あと竹内久美子自身が「セクハラに価値観を持ち込むべきでない」とか「今の社会はおかしくて不自由なので元に戻すべきだ」といった価値観を持ち込んでる件。

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私の場合、学問的な師の日高敏隆先生が、まさにそういう人でした。日高先生は女性関係が派手で、セクハラ、パワハラ、おまけにアカハラ(アカデミック・ハラスメント)的な発言もとても多かった。
 でも、そういう欠点を全て補って余りあるほど、大きな人物でもあった。女性、男性に関係なく世話好きで面倒見が良かったんです。もし先生がセクハラ問題で失脚したら、研究室のみんなが困ってしまう(笑)。だから、密告するような人たちはいなかったんです。

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(P.103)

功績があればハラスメントも大目に見ちゃう竹内久美子。
そういえば、

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竹内 従軍慰安婦と同じ話ですね。慰安婦がいなかったら、普通の人が兵隊に犯されていた。
川村 従軍慰安婦は一種の必要悪ではないでしょうか。

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(P.22)

…とかも言ってたなぁ…。
無茶苦茶なロジックで保守を擁護するのも必要悪なんでしょーか?




   ※次回に続きます